東京都知事選が23日告示(2月9日投票)されます。前日の22日、「希望のまち東京をつくる会」の宇都宮けんじ候補(67)=日本弁護士連合会前会長、日本共産党など推薦=は千代田区の日本記者クラブで記者会見し、「誰もが希望を持って生きられる、暮らしやすい東京をつくりたい」と訴えました。
宇都宮氏は40年以上、弁護士としてクレジット・サラ金の被害者、オウム真理教事件の被害者の救済に取り組み、国に立法措置をつくらせた実績を強調。「五つの基本政策と二つの特別政策」を説明しました。
石原・猪瀬都政14年間の福祉切り捨て路線を転換し「世界一働きやすく、暮らしやすい東京をつくる」と主張。特別養護老人ホームや認可保育所の待機者の解消、ブラック企業規制条例の制定などを進めると述べました。首都直下地震の防災・減災対策を強化し、原発再稼働に反対して東京電力の大株主として原発の廃炉を提案すると強調しました。
また、「安倍政権の暴走にストップをかけ、憲法9条を守る」と表明し、秘密保護法の廃止を求める考えを示しました。
宇都宮氏は、安倍政権の経済政策について記者から問われ、「大企業はもうけているが、賃金は下がり貧困と格差が広がっている。消費税増税や社会保障削減を進めれば経済は破綻する」と批判しました。
細川護熙(もりひろ)元首相が「脱原発」を掲げ立候補することについて「脱原発は重要課題だが、都政は、都民の命と福祉を守る仕事も重要。安倍政権と憲法についても、細川氏は何ら見解を示していない」と指摘しました。
宇都宮さん政策要綱(要旨)
東京都知事選に「希望のまち東京をつくる会」から立候補する宇都宮けんじ氏=無所属、日本共産党など推薦=が21日発表した、基本政策と特別政策の要綱(要旨)を紹介します。
5つの基本政策
I 世界一、働きやすく、くらしやすい希望のまち東京をつくります
(1)「くらし・住まい・雇用保障条例」を制定し、都民がいつでも頼れる東京都版の生活保障システムをつくります
(2)「子育てしやすい環境づくり条例」で、待機児童ゼロ、学童保育・児童館の充実などの子育て環境を整えます
○待機児童ゼロにするために、5年間で5万人、当面2万人超の認可保育園等の定員増をはかります
○18歳まで医療費無料化を拡大します
○都立児童相談所を現行11カ所から26カ所へ大幅に増やします
(3)働きやすく、だれでも人間らしく生活できる生活保障をつくります
○「ブラック企業規制条例」を制定し、若者の使い捨てを許しません
○若者自身が若者政策を立案し、それを都政に反映させます
○都営住宅建設ゼロから脱却して、都営住宅の新規建設に取り組みます。また区市の家賃補助制度へ東京都の上乗せを検討します
○違法な解雇・賃下げ・賃金不払いなどについての対策として、東京都労働相談情報センターの拡充と機能強化を行い、労働委員会の機能も強化します
○都の最低賃金を時給1000円以上にするよう国に働きかけます
(4)「お年寄りにやさしい福祉条例」で、都財政をお年寄りのくらしの支えに活用します
○後期高齢者の保険料、国保保険料(税)、介護保険料の値下げをめざします
○都独自の高齢者医療費無料化(65歳以上の窓口負担ゼロ)にむけて、当面、75歳以上の医療費の無料化を検討します
○認知症者の家族の支援を強化します
○特別養護老人ホームを拡充して、4万3000人を超える特養待機者を段階的にゼロにします
○シルバーパスの無料化を含め、高齢者の交通費負担の軽減を検討します
(5)だれもが安心して医療を受けられる東京をつくります
○国民健康保険の無保険者をゼロにします。区市町村に対して、国民健康保険証のとりあげ(短期保険証や資格証明書)をやめるように指導します
○後期高齢者医療制度の保険料の未払いによる、保険証の未交付をやめるように、東京都後期高齢者医療広域連合に求めます
○新しい都立病院の建設により、民間でできない行政医療の拠点を拡大します ○小児科・産婦人科・周産期医療の体制をいっそう充実させ、「大都会の医療過疎」をなくすようにつとめます
(6)女性の意見が反映され人権が尊重される東京をつくります
○副知事ひとりを女性とし、東京都の審議会や管理職へ女性を登用します
○公契約において男女平等の視点を入れます
(7)障がいのある人もない人も、ともに生きる東京にします
○障害当事者が参画して「障害のある人の権利確保のための条例」を制定します
○障がい者のためのバリアフリーの都営住宅を建設します
○障害があっても働ける仕事の確保に努めます
(8)消費税増税に反対します。消費税増税後も都営地下鉄・バスの運賃の値上げを実施しません。上下水道料金の値上げを実施しません
II 地域経済を活性化し、環境重視・防災減災重視のまち東京をつくります
(1)災害に弱い都市政策を転換し、命と生活を守る防災・減災政策を進めます
○首都直下地震への防災・減災対策を強化します
○木造密集地域を含めた耐震・耐火対策をすすめます
○公共施設の耐震・耐火対策を強化するとともに、災害時の安全な避難施設としても機能するようにします
○東京湾岸の石油コンビナートに係る防災対策を強化します
○中枢機能維持に名を借りた都心部大規模開発に反対します
○伊豆大島の被災者と災害復興を全面的に支援します
(2)都心一極集中・大規模開発優先の都政を転換し、コミュニティーと環境を重視する都市構造をつくります
○東京都心の大型開発・再開発に歯止めをかけます。「オリンピック」に名を借りた大型開発は行いません
○道路政策の軸足を、新規建設から、防災減災・老朽化対策(維持・補修)中心に移します
○学校・保育・介護など生活に身近な公共施設の老朽化対策では、(1)防災減災の視点、(2)都民・利用者の視点を重視します
○都独自の大気汚染医療(気管支ぜんそく)費無料化制度を延長します。都心の自動車交通の総量を減らします
(3)グローバル経済に翻弄(ほんろう)されない東京の地域経済をつくり、雇用を増やし、都民にとって一番暮らしやすい・働きやすいまちにつくりかえます
○都内の産業構造を組み替え、雇用を増やし、内需を拡大し、地域経済を活性化させます。アベノミクス型「成長戦略」とはちがう、もう一つの経済政策を進めます
○カジノ開設に反対します
○新銀行東京は、清算します
○築地市場を守ります。豊洲移転を見直します。豊洲での土壌汚染対策を強化します
○八ツ場ダムについては、都の予算支出を行いません
○東京の農林水産業・中小企業と、消費者の食や生活の安心・安全を守る立場から、TPPに反対します
(4)中小企業は、東京の地域経済を支える重要な存在です。中小企業を発展させ、自営業者の生活を守ります
○都として中小企業予算を大幅に拡充し、公・民の中小企業むけ投資を増やします
○最低賃金引き上げに伴って、中小企業にたいする経営補助制度を創設します
III 原発事故被害者の支援に取り組み、原発再稼働・原発輸出を認めず、「脱原発都市東京」を実現します
(1)原発事故被害者を積極的に支援し、東京電力の責任を問います
○福島原発事故被害者の財産の損失や身体的かつ精神的被害に対して、東京電力がきちんと賠償を行うよう、株主として求めます
○国および東電に、汚染水対策などの事故収束の着実な実施と、収束作業にあたる作業員の被ばく低減と身分の保障、健康管理を求めます
○国に対して、東電の破綻処理と国有化を求めます。被害賠償や事故収束は、新しい体制のもとで国が直轄で行うことを提案します
(2)東京都から脱原発を実現します
○東京都として「脱原発都市宣言」を発します
○再稼働に反対し、福島第1原発、福島第2原発、柏崎刈羽原発の全炉の閉鎖を株主提案します
○柏崎刈羽原発の再稼働を前提とした東電の新「総合特別事業計画」に反対します
(3)「希望のエネルギー政策」を実現します
○「東京都希望エネルギー政策会議」を設けて、効果的な脱原発・エネルギー政策を立案します
○「自然エネルギー(再生可能エネルギー)促進条例」と「省エネルギー促進条例」を提案し、補助金や投資を誘導する施策を立案します
(4)脱被ばく政策を進めます
○都民を放射能汚染から守るために、都独自の「食品の安全規制」と都民と連携した食品や土壌等の放射能測定ネットワークをつくります
IV 教育現場への押し付けをなくし、すべての子どもたちが生き生きと学べる学校をつくります
(1)すべての子どもたちが平等に学べる学校、教育をつくります
○格差なく学べる教育の無償化を進めます
○公立高校授業料の無償化を継続し私立高校の所得制限付き授業料無償化を導入します
○特別支援学校を10校から20校増設します
(2)競争の教育に歯止めをかけ、すべての子どもたちが生き生きと学べる学校を再建します
○子どもと教師との間の人間的触れ合いを実現するのに不可欠な少人数学級を実現します
(3)伸び伸びとした教育が行われるよう、教育の統制、教育現場への押しつけをなくし、教職員が子どもの教育に打ち込める環境づくりをすすめます
○安倍内閣が「教育再生」の名目で推し進めようとする教育の統制、押しつけに反対し、自由な教育を守ります
○学校儀式における「日の丸・君が代」を強制し、あるいは職員会議における挙手を禁止した通達など、石原教育改革によるさまざまな抑圧的な学校管理・教員管理政策を見直します
○教員の多忙化を緩和できる教員配置基準を導入します
(4)いじめ、体罰のない学校をつくります
○いじめの実態の調査を緊急に行い、専門家の総力を挙げて、都がやるべきこと、対策を検討します
○「東京都いじめ問題対策会議」を設置し、総合的な対策の立案と推進を行います
(5)生き生きした学校づくりのための教育行政と教育運営を民主的なものに変えます
○安倍内閣が進める教育委員会制度の改変に反対し、教育委員会制度を政治に従属させることなく、教育に民意を反映できるように改善・強化します
(6)おとなになっても学べる東京をつくります
○区市町村の公民館・公立図書館の施設と機能の充実に努めます
V 安倍政権の暴走をストップし、憲法を生かし、アジアに平和を発信する東京をつくります
(1)アジアに平和と核廃絶を発信するまち東京をつくります
(1)東京からアジアに平和と核廃絶を発信します。アジアの諸都市と連携し、地域の平和をめざします
(2)靖国参拝、集団的自衛権などアジア諸国の対立を煽(あお)る安倍政権の政治を東京から変えます
○特定秘密保護法の廃止をめざし、「知る権利」のモデルとなる東京をつくります
○安倍首相の靖国参拝に抗議し、「戦争の記憶」を風化させず、次の世代に受け継ぐための取り組みを市民の力ですすめます
○東京都の平和関係予算を拡充し、「東京平和プロジェクト」を立ちあげます
(3)基地のない平和のまち東京をつくります。平和の日本をつくるためのイニシアチブをとります
(2)憲法の生きる東京をつくります。だれもが排除されない参加できる東京をつくります
(3)憲法の地方自治の理念である住民福祉の増進を市民参加で実現します
○都「公契約条例」を制定し、契約事業者に下請けの適正価格、適正労賃、非正規雇用の改善、同一賃金など雇用ルールを義務付けます
○都の臨時・非常勤職員の条件を改善し、「官製ワーキングプア」と呼ばれる差別をなくします。非常勤職員の正職員化に道を開きます
(4)多摩・島しょ振興を実現するために、地域格差の是正に取り組み、市町村の自治強化を応援します
特別政策1 オリンピック・パラリンピック政策
(1)コンパクトで、シンプルで、エコロジー重視の大会をめざします。都民の税金を無駄に使わず、自然・生態系を損なわず、大型開発を行わないようにします
○新国立競技場については、新設案を見直し、現競技場の改築案も検討するよう要請します
(2)パラリンピック大会を重視します
(3)「平和」のメッセージを世界に発信します
(4)4000億円をこえる都のオリンピック基金は、大型インフラ開発だけでなく、都民の誰もがスポーツに日常的にアクセスできる身近なスポーツ施設の整備などにも支出します
特別政策2 カネと利権から決別する都政を
○カネと利権から決別した都政をつくります
○猪瀬前都知事が徳洲会から受け取っていた5000万円の問題は、全容解明できていません。都議会が百条委員会を設置することをすすめるように都議会に都知事として要請します