この本は2021年10月に読了したものを著作権の消滅を確認したので改めて再掲した
谷崎潤一郎 近代日本文学館 16から 「春琴抄」
下の写真は、著作権が消滅しているので、本から転載した
伊東深水 挿画 左 佐助に手を引かれ、お花見する春琴
右 盲人になろうと目をつぶす佐助
春琴、ほんとうの名は鵙屋琴、大阪道修町薬種商の生まれで没年は明治十九年十月十四日、墓は・・・で始まる短編。
美人の誉れ高い琴は、9歳の時失明し58歳で亡くなるまで、3歳年下の丁稚の佐助が生涯支えつづける。サディスティックな春琴とマゾの佐助との関係は「瘋癲老人日記」と同様の構成。
春琴17歳の時妊娠、出産したが相手は佐助と疑われたが2人とも否認し続け、里子に出すことに。後年、夫婦同然の生活になるも2人の関係に変化なし。つまり我が儘なご主人様に仕える家来。
美人を妬まれたか、夜中に侵入した賊に熱湯を浴びさせられて顔面を負傷、以来ずきんで顔を隠す生活になる。負傷した春琴の顔を佐助に見られたくない、というのを知り自ら目をつぶして盲人になってまで尽くす姿に驚く。
文体が独特で読みにくい。句読点の打ち方、改行がごくわずかで、余白が殆ど無い。
谷崎潤一郎 近代日本文学館 16から「刺青」
鏑木清方 挿画
江戸後期、清吉という若い刺青師は奇警な構図と妖艶な線とで名を知られていた。彼は予てから念願の宿願を抱えていた。それは、光輝ある美女の肌を得て、それへ己の魂を刺し込むことであった(345頁)。しかし望みの女性に出会えずやっと4年半も過ぎた頃、深川の料理屋平清でそれらしい女性を見かけたが籠に乗って走り去ってしまった。
清吉の憧れごこちが、激しき恋に代わって、その年も暮れ-中略-見慣れぬ小娘が入ってきた。それは清吉が馴染みの辰巳の藝妓から寄こされた使いの者であった。中略-「ちょうどこれで足かけ五年、己はお前を待っていた」(345-6頁)。この出会いを得て、彼は望の刺青を彫ることが出来た。
7頁の掌編小説でした。鏑木清方の挿画とは、何とも贅沢なことかと驚いた、春琴抄の伊東深水も同様、流石文芸春秋社。
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