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オーバー・フェンス

2017-03-30 18:30:12 | 映画
佐藤泰志氏作品の映画「海炭市叙景」「そこのみにて輝く」に続く三部作か。

観たのは昨年になるがいつもテアトル新宿。ここはいい映画をやる。近くにピカデリーがあるが客層は明らかに違う。
文芸とか小説好きな人が観る映画だ。
メジャーな文芸モノ映画ならそこそこ売れるが、本作品はどうだろうか?

近頃本も売れないらしい。「スマホで映してるのがいるんだよ!」本屋のオヤジが嘆いていた。かく言う小生とて近頃、Amazon fireなるタブレットで映画を観ているどころか、Kindleで文藝春秋まで電子化してしまった裏切男だ。

主人公白岩(オダギリ ジョー)は故郷函館で職業訓練校の建築科で学んでいる。喫煙室の何気ない会話から映画は始まる。よくあるコミュ二ケーション風景だ。訓練校の生徒の動機や事情はそれぞれ。前歴もバラバラ。互いに詮索しないのが大人の付き合い。
あたりさわりない会話で距離感を保つ白岩。妻に見限られ故郷函館で訓練校とアパートの往復、寛ぎは帰宅後のカンビール位か。

ある日訓練校仲間の代島(松田翔太)に誘われキャバクラに行く。そこでホステスの聡(蒼井優)に遭遇する。聡の鳥を真似たエキセントリック踊りに客の好奇や馬鹿にした眼差しが注がれる。
彼女は自身の素直な感性のまま生きている。それゆえ周りと摩擦を生じさせ傷を負っている。孤独な女なのだ。

白岩は当初どうでも良かった聡の存在が、次第に心のなかで大きくなっていく。共感する何かがあるのだ。
互いに惹かれていく。

訓練校の実態について知識がないが、学校のように担任教官がいる、生徒が一応まとまるとするとソフトボールかなんだろうか?

科対抗のソフトボールの試合に白岩は聡を誘う。

唐突だが何故だろうか?女たちがとても逞しくみえてくる。蒼井優と優香のせいか?
依然男社会だとか言われるとしても、現代は男は子孫を残す為だけの存在のような気がしてくる。求められのは生殖機能だけで、役割を果たしたらもはや邪魔な存在で、女性だけの世界で充分な世の中になってきているような気がしてきた。

観てから半年以上が経つが、結構いいよこの映画。久々にパンフ買った位だから。監督が「苦役列車」の山下氏。成る程だ。

白岩の元妻役で優香が出てくるが、パンフに書いてあったよう、奥行きを与えている。
やはりそれなりの美人でなければならないし、妙な癖のある女では白けてくるからだろうか。

オーバー フェンスとは、自らつくってしまった囲い、フェンスを自ら超えて行くことなんだろうな、と素直に解釈した。
ラストシーンが原作佐藤泰志の映画にしては珍しく明るい。