MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2066 「新型コロナ」 変異と対応

2022年01月17日 | 社会・経済


 感染症法は、指定感染症をその危険度に合わせて1類から5類までに分類し、それぞれの疾病に対する対応策を定めています。基本的に数字が小さいほど危険度は高く、例えば、1類はエボラ出血熱やペストなど、感染による死亡率がかなり高いもの。2類は結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)などが対象で、今回の新型コロナウイルスもこれに当たります。

 そして、3類にはコレラや腸チフス、細菌性赤痢などが挙げられ、4類は黄熱やマラリア、狂犬病など、そして5類に当たる感染症としてはインフルエンザ、麻疹(はしか)といった私たちにも身近な病気が並んでいます。感染者に対して(法律で)求められる措置は指定感染症の類ごとに異なり、例えば「死体の移動制限」が課せられるのは1~3類。中でも1~2類と診断された場合は、(感染者には)即刻「入院の勧告・措置」が行われることとされています。

 新型コロナは(先に述べたとおり)「2類相当」に分類されており、感染者には医療機関での入院加療が求められているわけですが、実態としては感染拡大に医療体制が追い付かず、宿泊療養施設での大気や自宅療養なども認められているのが現状です。また、「第6波」と呼ばれる今回の新型コロナウイルス「オミクロン株」の感染急拡大に際し、感染しても重症化する例が少なく感染者に軽症者や無症状者も多いことから、入院体制などの医療がひっ迫する前に、感染症法上の区分を現在の2類相当から(インフルエンザと同じ)5類相当に引き下げてはどうかという声が各方面から上がっているのはご存じのとおりです。

 新型コロナはもはや「特別の」感染症ではなくなっている。バタバタ人が死ぬような病いではないのだから、「怖い病気」扱いせず、ふつうの医療機関で個別に診療できるような体制に戻すべきだということでしょう。

 大阪府の吉村洋文知事は1月12日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症が感染症法上「2類相当」となっていることについて、「感染者数が数万単位になれば手に負えなくなる。このままの路線で行くのか、季節性インフルエンザなどと同じ『5類相当』にするのか、国は、専門家も入れた本質的な議論を行うべきだ」と話しています。また、東京都の小池百合子知事は都内の感染者数が急激に増えている状況を踏まえ、1月13日の記者会見で、政府には「(新型コロナ感染症を)5類への適用類型への変更も含めて、科学的な知見を集めていただくようお願いを申し上げたい」と述べたところです。

 一方、岸田文雄首相は、同日、都内で行われた(ぶら下がり)会見で、こうした感染症法上の分類の見直しに関し「感染が急拡大している状況の中、変更するのは現実的ではない」と話し、(分類見直しは)時期尚早との認識を示しました。新型コロナはこの先どのように変異するかはわからない。目の前の変異に応じて変更を繰り返せば、「大きな問題を引き起こす」というのが政府の見解のようです。

 ウイルスの急激な感染拡大を前に、医療現場を預かる知事と感染対策の総責任者である首相との判断が食い違いを見せるのも、(ある意味)やむを得ないことと言えるでしょう。しかし、新方コロナの症例や知見が蓄積されてきた現状を踏まえれば、そろそろ長期的な視点に立って対策を再検討してもよい時期が来ていると感じるのは私だけではないでしょう。

 (とは言え)現在は世界的な規模でオミクロン株に置き換わっている新型コロナウイルスも、この先またどのような特性を持つウイルスに変異していくかはわかりません。それを考えれば、小池都知事や吉村府知事のように「医療体制の確保が大変だから対応レベル(の方を)を下げろ」というのも、ずいぶんと乱暴な意見のように聞こえます。

 では、私たちは一体、どうしたら良いのか。病気の特性や症状が変化してきているにもかかわらず、必要以上の体制をキープしていくのは、その他の医療を圧迫したり、経済活動の妨げにつながることも事実です。政府や有識者会議の専門家の方々には、(この機会にぜひ)2類か5類かといった感染症法上の区分を硬直的に考えるのではなく、状況に応じた(柔軟な)対応を求めたいと改めて考えるところです。



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