MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯23 今どきの女子高生のスカートとは?

2013年06月26日 | 社会・経済

 6月22日の朝日新聞の教育特集に「ズボン女子のスクールデイズ」と題する女子高生の制服に関するトピックが掲載されていました。メインとなる話題は、昨年度、新たに制服を導入した大阪の府立高校で、女生徒もズボンを選択できるよう制度が改められた…というひとつの出来事です。

 その学校では、新しい制服を検討する際、ある「教員」から(注:「生徒」から…」ではありません)「なぜ女子だからといってスカートを強要されるのか…」という疑問が出されたのを受け、女子にもズボン(の併用)を許可しようということになったということです。

 結果、この学校では2年生の女子59人のうちの4人がズボンをはく(併用する)ようになり、そのうちの一人は「ズボンをはくことで自分を出せるようになった」と言っている…と、こういう内容です。

 さらに記事は続きます。神奈川県の県立高校でも、この春から女子もズボンを選ぶことができるようになった。ズボンをはいているある女生徒は、入学以来27回も「君、女の子だよね?」と聞かれた。

 でも、その子の母親は「中が見えなくて安心ね」と言っている。そして、今ではその子も、朝起きた時の気分でスカートかズボンかを選んで楽しんでいる…このようなコメントを併せて掲載しています。

 「なるほど、それはよかったね。」と、単純に読めばそういうことになるでしょう。選択肢が増えるのはよいことだ。ズボンは動きやすいし、寒いときスカートはちょっとね…と。

 だけど、少しの違和感が残ります。それだけであれば、少なくとも全国紙の囲み記事になることは(たぶん)ないでしょう。朝日新聞のこの記事は、当然ながらもう一歩進んだ解釈を読者に期待している…そう読むのが普通だろうな、と感じたところです。

 御存じのとおり、性別の違いで一定の生き方を規定(強要)することを「ジェンダー」といいます。スカートという女性固有のファッションは、このジェンダーのシンボルとしてこれまでもしばしばフェミニストと呼ばれる人たちから注目されてきました。

 そうしたスカートの歴史を織り込んで読む、これがこの記事の「正しい読み方」だと、多くの読者の意識はそういった風に繋がっていくのではないでしょうか。

 しかし記事をよく読むと、せっかくの先生方の配慮にもかかわらず、実際ズボンを選ぶ女生徒は決して多くはなかったことがわかります。前述の大阪の高校でさえ、1年生の女子生徒89人は全員がスカートを選択し、一人もズボンをはいてこないとのこと。また、学校がズボン併用を許可した背景には「制服の短いスカートは扇情的すぎる」という保護者の意向が強く働いていたということも、記事の後ろの方に少しだけ触れられています。

 さて、記事にもありますが、大手の制服メーカーでは、そうした選択肢を与えても「ズボンを選ぶ女生徒は今後もなかなか増えないだろう」と見ているそうです。

 現代の女子高生にとって、制服の短いスカートは「期間限定のファッション」として既に定着しているということです。生徒達は思い思いに制服をアレンジし、生徒自身の世界観の中で着こなしを楽しんでいる…これが今どきの女子高生の現実ではないでしょうか。

 さらに「そもそも論」ではありますが、防寒対策などで女生徒がズボンをはくということは、学校当局の「許可」をいただかなければならないような、そんな「大それた」ことなのでしょうか。その辺がまずとても気になります。

 風邪をひいて、スカートの代わりにズボンをはいて登校してきた女生徒を校則違反として処分する。それが今どきの高校における生徒指導の実態であるとすれば、私にはそちらの方がよほど残念な事態のような気がします。

 そこで考えるのですが、男子生徒がスカートをはいて登校したいと言ってきたら、この学校ではどのように対応するのかということです。規則だからと処分するのでしょうか。それとも「男子もスカートをはくことを許可する」と、校則に一文を加えるのでしょうか。

 もしそうであれば、そうした決断に至る過程を丁寧に取材し全国に紹介して、現場の先生や生徒の葛藤を共有しながら国民的な議論することにも大きな意味があるのではないかという気がします。

 しかし、現在の日本の教育界で特に争点となっていない(そして、生徒自身ほとんど意識していない)女子のスカート制服について、女性への抑圧につながるような文脈の中で大メディアが大袈裟に語るのは、どうも「大人げない」(言い方は悪いですが「ひねりが足りない」というか「古くさい」というか…)そんな気がするのですがいかがでしょうか?

 前述の大阪の高校では、一部の「教師」から「女子はスカートと決めつけるのは古い」との意見が出され、女生徒にもズボンの着用を許可したということです。

 しかし、実際に制服を身につける女子高生は、どうやらスカートを決して「抑圧のシンボル」とは認識していない。むしろ女性の「特権」として積極的に受け入れられている。とすれば、あえて「ズボン」にこだわってしまう教員の意識の方がよほど「古い」ということになってしまうのではないでしょうか。

 残念ながらこの記事からは、フツーの女子高生の少しテキトー(自由)な感覚とか、ワードローブとしての制服の現実的な運用といった現場感覚をあまり感じることができません。個人的な意見を言えば、今どきの女子高生の意識や学校現場の空気は、もう少し柔軟でもう少ししたたかで、そしてもう少し大人なのではないかと思うのですが、いかがでしょうか? 



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