MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

♯1648 ニューノーマルへの期待

2020年06月16日 | 社会・経済


 5月26日の日経新聞の紙面において、コモンズ投信会長の渋沢建氏はアフターコロナ社会のニューノーマル(新常態)関し、「たぶん経済や社会は元には戻らないだろう。時代の変化はある日突然に起こるのではなく、底流にあったものが何かのきっかけで一気に表に出てくるものだ。」と答えています。(「働き方 大きく変わる機会」2020.5.26)

 人々の行動や価値観が、「効率性」や「利益」をひたすら追求するだけでいいのかと(疑問に)思っていた人はこれまでも少なくなかったのではないか。そうした中、今回の感染拡大は、「人間にはもっと違う生き方があるのではないか」「社会にはもっと違う繁栄があるのではないか」というメッセージとして受け止められていく可能性があるということです。

 経済にもマーケットにも、人間関係にも一定のリズムがある。自身が世代を超える長期投資を呼びかけている立場からも、明治以降の日本は(ひと世代)30年の周期で繁栄と破壊が繰り返されてきたと考えていると氏は話しています。

 2020年はその節目の年であり、日本の人口動態が『逆ピラミッド型』にシフトするタイミングにも当てはまる。1990年代から続いた『破壊』の最後の年に非常に大きなショックが起こり、様々なことがリセットされるのではないかというのが渋沢氏の指摘するところです。

 例えば、働き方ひとつをとっても、感染拡大に伴う外出自粛は究極の働き方改革と言える。報告事項だけの朝の会議に出席するために、不快な思いをして満員電車で会社に通勤していたことに改めて疑問を持つ人が増えてしまったし、本当に必要なのかどうかわからない仕事があることに気づいた人も多かったはず。

 概して言えば、日本の大企業のホワイトカラーは人手不足ではなく、実は人材配置が適正ではなかったように思えるというのがこのインタビュー記事における氏の見解です。

 その一方で、テレワークの普及に関し渋沢氏は、「(このことで)むしろアナログでリアルな関係は非常に重要だと再認識されるようになるだろう。単なる打ち合わせはオンラインでいいので、大事なことにリアルな時間を使おうという価値観を人々が持つようになるのではないか。」と指摘しています。

 都心に立派な構えのオフィスを設ける必要はなくなっても、人がリアルに集まって、さまざまな接点を持ち、そこから新しいアイデアが次々生まれるような(居心地の良い)場所は絶対に必要となるということです。

 実際、アフターコロナの社会への意識に関するアンケート調査では、約6割の人が「よくなる」と回答している。人々が抱くこうした期待感に、氏は、変革の兆しと未来を信じる力を感じるとしています。

 さらに、社会的課題への関心が高まっているのも心強い。国連の『持続可能な開発目標(SDGs)』は目標年まであと10年だが、どういう社会を実現したいのか、今こそそのベクトル(方向性)をしっかりと確保する時だというのが渋沢氏の認識です。

 さて、ライフネット生命創業者の出口治明氏は5月21日の「現代ビジネスONLINE」において、「ペストがルネサンスや宗教改革のきっかけとなったように、新型コロナの収束後は、働き方も学び方も生き方も今とは違ったより良いものに進化する。」と断言しています。(「楽しい人生を送るための「底力」とは」2020.5.2)1

 破壊の後には挑戦が生まれ、新しい価値観が築かれていく。それまでの常識として扱われてきたことが疑われるようになり、精神の開放と行動の自由が生まれるということでしょう。

 そういう意味で言えば、各年200万人前後はいる団塊世代が既に現役から退場しつつある現在の日本は、「脱昭和」「脱戦後」の大きな世代交代の時期を迎えていると言っても過言ではありません。

 新型コロナによって、戦後日本の経済発展を支えた(古い)社会慣行が破壊されるとすれば、その後にやって来るのは、本当に渋沢氏の言うような「繁栄の30年」となるのか。

 もしかしたら、そこにある「繁栄」は、これまで私たちが目指してきた繁栄とは少し違ったものになっているかもしれませんが、(これから先の日本については)そうしたことも含め、ニューノーマルの到来を私も期待して待ちたいと思います。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿