1970年ごろまで年間100万組を超えていた日本の「婚姻数」が2011年以降は年間60万組台に減少し、昨年2023年には(ついに)47万4717組と戦後初めて50万組を割り込んだと、6月5日の「朝日新聞DIGITEL」が報じています。
一方、同記事によれば、結婚した夫婦が持つ子どもの数を示す「完結出生児数」は1970年代から2.2前後で推移し、現在でも1.9と大きくは変わっていない由。日本は婚外子が少ないことから、専門家は少子化の主要な原因が(この)「未婚化」にあると指摘しているところです。
まあ、若い人が減っているのだから婚姻数が減るのも当然ですが、それにしても(特に未婚の女性たちから)よく聞くのは、「出会いがない」とか「適当な相手が見つからない」という言葉。正直、私の周りでも独身男性が余っているように見えるのに、これは一体どうしたことなのでしょう?
結婚問題に詳しいコラムニストの荒川和久氏が、9月25日のYahoo newsに寄せた『女性の上方婚志向「せめて私と同額か、それ以上稼げていない男は相手にしない」が9割』と題する論考においてその理由に迫っているので、指摘の一部を小欄に残しておきたいと思います。
結婚における女性の「上方婚志向」というものが、しばしば指摘される。ここで言う「上方婚」とは、女性が結婚相手に対して自分より収入が上の相手を求めるという志向のことだと荒川氏はこの論考に記しています。
とはいえ、これは圧倒的なお金持ちの男性を希望するという非現実的な「玉の輿」願望ではない。結婚後の経済生活や子育て等を考え、「せめて自分の年収よりも高い男性と結婚しておかないと…」というリスクを考えての希望だというのが氏の認識です。
これは、これから結婚に踏み切ろうとしている女性としては、当然の願望(そして条件)の一つと言える。実際、昭和の皆婚時代も、大正時代の第一次恋愛至上主義旋風の時代も、「相手の稼ぎ」は優先順位の高い条件として存在していたということです。
しかし、残念ながら、結婚を希望するすべての女性の上方婚を満足させられるほど、現代の結婚適齢期の男性は稼げていないと氏は言います。
もちろん、(「机上の空論」と言われればそれまでですが)未婚男女の年収格差がないのだから、男女それぞれが年収同類婚を達成できれば(少なくとも数字上は)「皆婚」が可能となるはず。しかし、現実はそううまくいくはずもなく、年収同類婚で満足する女性の割合はせいぜい2割程度。7割以上の女性が「自分より上の収入男を狙う」ということです。
結果、男性は順番に年収の高い方から男は売れていくが、女性の場合は、必ずしも年収基準で男が選ぶわけではないので、バラツキが出る。わかりやすく言えば、年収500万以上の男性は完売しても、同額以上の女性は余る可能性があると氏は現状を説明しています。
そうした組み合わせのいたずらによって、女性は「自分より稼ぐ男が婚活市場にいない」という状況に直面する。婚活の現場で「適当な相手がいない」と女性が嘆くのはそういうことだというのが氏の見解です。
そして、問題はここから始まる。上方婚する相手がいないとわかった婚活女性は、(だからといって)下方婚を選択することはしない。自分より稼げない相手と結婚するくらいなら、自分で経済的に自立してたくましく一人で生きることを選択しがちだと氏はしています。
このようにして、本来結婚のボリューム層を構築するはずの(皆婚時代はまにそこが婚姻数のメインだった)300-400万円台の年収層が、軒並み「結婚相手がいない」と途方にくれることになる。同じ「相手がいない」でも、女性は相場通り「希望する年収の相手がいない」なのだが、男性は「こっちが好きになっても相手から好きになってもらえない」がゆえの「相手がいない」になるということです。
だからと言って、「女性は上方婚志向をやめるべきだ」などと主張したいわけではない。それでなくても夫婦で生活していく中では、出産や子育て期にどうしても夫の一馬力にならざるを得ない場合もあると氏は言います。
実際、1980年代から、フルタイム就業の妻割合は大体3割で変わっていない。そもそも、専業主婦世帯が減ったのも、夫の稼ぎでは回らなくなって妻がパートに出ざるを得ないようになったからだということです。
そのような状況(リスク)を考えた時、今現在の結婚相手の収入に固執してしまうのは、将来の収入の見通しがあまりにも立たない不安があるからではないか。その不安の元凶になっていることこそが、若者の手取りが30年間も増えていないという「失われた30年」だと荒川氏はこのコラムの最後に綴っています。
昨今では、さらに「新しい資本主義」だの「異次元の少子化対策」などの名のもと、社会保険料の負担までがそこに繰り返し加わっているとのこと。結婚を希望する男女のミスマッチは、政府主導のマッチングアプリとか、そうした「小手先」の対策で何とかなるようなものでないのは素人の私でもわかります。
今、政府に必要なのは、若者たちが将来の家庭生活をイメージできるようなビジョンを持てる環境を整えること。「異次元の少子化対策」と花火は打ちあがるが、最近では政府の政策はまるで「結婚滅亡計画」のように見えるとコラムを結ぶ氏の指摘を、私も興味深く受け止めたところです。
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