MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2158 いやならとっとと買い替えろ(笑)

2022年05月17日 | 環境

 先日、自宅の郵便受けを覗いたら、今年もまた律儀に届いていた(封筒だけで一目でわかる)自動車税の納付書。ゴールデンウィーク前の風物詩とでも言うように、今年もまたその季節がやってきたのだなぁと改めて感じたところです。

 自動車の登録者に毎年課せられる自動車税は地方税。各自治体の一般財源として、広く公共事業や社会保障などに充てられます。ほとんどの都道府県で自動車税の納期限は5月31日となっており、これを過ぎると延滞税が発生したり、自動車税納付証明書が発行されないことにより、車検を通すことも出来なくなります。

 添付されている説明書きによれば、「自家用かつ令和元年10月1日以降の初回登録」において、課税額は「電気自動車・1リットル以下は2万5000円、1リットル超-1.5リットル以下は3万500円、6リットル超(つまり6000cc以上の車)の場合は11万円」とされており、排気量の多寡によって課税額が異なるようようです。

 ターボだハイブリッドだとエンジンの排気量と車の大きさが比例しなくなっている昨今、時代遅れの観もありますが、今回、驚いたのはその金額がいつもの年よりもずいぶんと高いこと。「間違いじゃないの?」と調べたところ、2014年の税制改正で、所有年数が13年を超えると約15%も増税されることになっていることが判りました。

 古い車を大切に乗っていることで、(褒められることはあって)お役所からペナルティを受けるいわれはありません。しかも、7万円も8万円も支払わされるのでは、(車検を盾に)なんか「ぼったくっれている」ような気もします。

 こうして、高額な請求書に納得がいかず少し憤慨していたところ、5月10日付けの「くるまのニュース」に、自動車ジャーナリストの瓜生洋明氏が「「恐怖の手紙」は届いた? なぜ自動車税の「13年超車」は税金高い?」と題する一文を寄せているのが目に留まりました。

 自動車税に関しては、新車登録から13年が経過したクルマについては概ね15%の重課措置がとられている。長く乗り続けることは「持続可能な開発目標(SDGs)」といえなくもないのに、なぜ13年超えのクルマは重課税の対象となるのか。

 この措置が導入された背景には、(多くの人が予想するとおり)「地球温暖化対策と大気汚染対策」があると、瓜生氏はこのコラムに綴っています。

 税制の基本的原則として「受益者負担」というものがある。この場合でいえば、古いクルマは最近のクルマに対して環境負荷が高いことから、古いクルマのユーザーがより多くの税金を負担するべきだという発想に基づくものだと氏はしています。

 13年超のクルマへの重課措置を批判する人の多くは「古いクルマを長く乗り続けたほうがエコである」という説を唱えることだろう。しかし、環境省の資料によると、この説は必ずしも正しくはないというのが氏の指摘するところです。

 瓜生氏によれば、2018年時点で登録されている乗用車における重課措置の対象車(つまり、新規登録から13年以上経過した車)は、保有台数全体の19.0%に及ぶということです。

 一方、13年前の2005年に(JC08モードで)14.0km/Lだった新車の平均燃費は、2018年時点では22.0km/Lにまで伸びている。つまり、日本の自動車は新技術の導入によりこの13年で57%もの燃費改善を実現していると氏は話しています。

 これらのデータをもとに環境省が行ったCO2の排出量に関するシミュレーションは以下のとおり。

① 2000年に新車を購入し2025年までクルマを利用するユーザーAとBを想定し、Aは重課措置を避けて2013年時点で新車に買い替え、Bは25年まで同じクルマに乗り続けるとする。

② 2000年にAとBが購入したクルマの燃費を12.5km/L、2013年にAが購入したクルマの燃費を20.5km/Lとし、年間走行距離は1万kmと想定する。また、新車の製造に排出されるCO2については、これまでの研究論文をもとに、概ね4.1tとして計算する。

③ 最初の新車の購入年(製造年)には(それぞれ)4.1tのCO2が排出されるとして、AとBのCO2排出量は2012年までは同一量だが、2013年にAが新車に買い換えることで一時的にAのCO2排出量の方が大きくなる。

④ しかし、2018年を境にAとBは逆転し、2025年時点ではAのCO”排出量が46.472tであるのに対しBは51.616tと、約10%の差が生じる。 …ということのようです。

 この結果を見る限り、13年超のクルマにおける重課措置の目的が「地球温暖化対策と大気汚染対策」であり、CO2排出量の削減であるなら、重課措置を課すことはしっかりと根拠のあることになると、瓜生氏はこのコラムで説明しています。

 さらに自動車税制には、重課措置だけではなく排出ガス性能や燃費性能に応じた軽課措置も設けられている。実際、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)などであれば、おおむね75%も軽減される場合などもあるようです。

 時代は既に「環境」にシフしている。なので、余計な負担がいやだったら、とっとと(お得な)環境性能の良い車に買い替え、消費の拡大に貢献しろということなのでしょう。

 しかし、そうは言っても、古い車には古い車なりの愛着や良さがあるのもまた事実。新車を作るのに必要な資源や環境への影響、コストなどを考えれば、やたら乗り換えればよいというものではないはずだと抵抗のひとつもしたくなる自分は(やはり)古い人間なのだろうなと、氏のレポートを読んで改めて苦笑いしたところです。

 



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