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#2637 どのくらい年金があれば老人ホームに入れるのか

2024年09月14日 | 社会・経済

 三井不動産レジデンシャルが今年10月に開業すると発表したシニア向け住宅「パークウェルステイト西麻布」。東京都港区に新築中される入居時年齢60歳以上が対象の有料老人ホームで、地上36階、総居室数は400室とのこと。プライベートガーデン、スパ、フィットネスエリア、ライブラリーなどの共用施設を備え、35階のスカイダイニングと36階のプライベートダイニングでは帝国ホテルが食事とサービスを提供するということです。

 同施設にはクリニックが併設され、日常診療に加え、定期的な健康診断を実施し、健康相談対応などの医療サービスも提供される由。東京海上日動が日常的な看護・介護サービスを提唱し、看護スタッフと専任の介護スタッフが24時間体制で常駐するとされています。

 因みに気になる料金は、約49平方メートルの1LDKに1人で入居する場合、一時金が約1億5000万円で、共益費とサービス料として別途月25万円ほど。130平方メートルの部屋に2人で入居する場合は一時金約5億4000万円と、さらに月額約54万円の費用がかかるということです。

 三井不動産レジデンシャルによれば、今後、西麻布に加え、「パークウェルステイト幕張ベイパーク」、「パークウェルステイト湘南藤沢 SST」を2024年秋に開業する予定とのこと。超高齢化の進展を踏まえ、高齢富裕層をターゲットとした生活支援サービス市場の拡大も、いよいよ本格化の局面を迎えているようです。

 まあ、こうした富裕層向けの老人ホームは別格としても、(子供があてにならない現在)どこかに「終の棲家」を求める高齢者の動きは、これからもどんどん大きくなっていくことでしょう。

 そうした折、7月24日の金融情報サイト「THE GOLD ONLINE」に、『年金20万円でも「収支ゼロ」…残酷すぎる「老人ホーム月額」の現実』と題する記事が掲載されていたので、老後の参考に概要を小欄に残しておきたいと思います。

 少子高齢化が深刻化する日本社会。高齢人口の増加に伴い老人ホームも増加傾向にある、令和4年度末現在、老人ホーム(有料老人ホームは除く)の施設数は13,823施設で前年度に比べ79施設増加。定員も前年度に比べ5,724人増加していると記事は説明しています。

 施設の種類別に定員数を見ると、前年度に比べ最も増えたのは(比較的重度の要介護者向けの)「特別養護老人ホーム」の6,615人とのこと。軽費老人ホームや都市型軽費老人ホームが微増する一方で、養護老人ホームは前年比14施設、軽費老人ホームA型は1施設減少したということです。

 そうした中、「ゆくゆくは老人ホームに入って…」と考えている人にとって、やはり気になるのは費用のこと。介護のプロは、「利用者の所得が低ければ補助給付があり、数万から十数万円程度に抑えられるが、一般的な企業で定年まで勤め上げたホワイトカラーの人であれば、(一般的な)特別養護老人ホーム(特養)の個室ユニットに入所すると、月額だいたい20万円程の費用負担が生じる計算になる」と話しているということです。

 これは子供にとっては、両親ふたりが施設に入所するのであれば2倍の40万円ほどが毎月必要となるということ。つまり、親を施設に預けるのであれば、本人の年金だけで介護費用をまかなうのは限りなく難しいというのが記事の指摘するところです。

 月額20万円といっても、これは「老人ホーム代」だけの金額。実際の生活には雑費ももちろん発生する。一 方、厚生労働省によれば、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、令和4年度末現在で老齢年金は「14万4,982円」。 国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額5万6,428円を合わせても、ざっと20万円ほど受給できれば「御の字」だと記事はしています。

 「平均」でこのくらいなので、年金だけ生活していける人は決して多くない。需要が多く、「なかなか入れない」「順番待ち」と言われる特養ですが、お金の面でもかなり厳しいと感じている人はきっと多いことでしょう。

 経済産業省『2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について』(平成30年)によれば、少子高齢化が進む日本では、2050年頃には100歳以上の高齢者が「50万人」を超える見通しとのこと。1920年ごろの日本人の平均寿命が60歳前後だったことを考えれば、約100年の間に平均寿命が20年以上も伸長していることに驚かされると記事はしています。

 さらに実態を見れば、男性の平均寿命81.09歳、女性の平均寿命87.26歳と言っても、実際の死亡数のピークは男性で87歳、女性では93歳にまで高まっていて、比喩ではない「人生100年時代」がまさに到来しているというのが記事の認識です。

 定年を過ぎたら、孫たちに囲まれて余生をゆっくり過ごすといった(磯野家の波平さんのような)老後は、これからの日本ではもはや望むべくもないのでしょう。定年60歳がもはや過去の話となった現在、「生きている限りは働き続ける」ほかない。少なくとも、老後に備えた資産形成が重要であることは間違いないようだと結ばれた記事の指摘を、私も我が事として重く受け止めたところです。



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