MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#1966 女性社長たちのプロフィール

2021年09月15日 | 社会・経済


 帝国データバンクは今年4月、全国の約117万社を対象にした「全国女性社長分析調査(2021年)」を実施し、7月にその結果を公表しました。

 報告書によれば、4月時点における女性社長比率は(前年比0.1ポイント増の)8.1%となり過去最高を更新したとされています。全体の1割未満とはいえ、1990年の調査ではわずかに4.5%だったということですので、バブル経済崩壊後の「失われた」と呼ばれるこの30年間で、女性社長の割合は概ね2倍となった計算です

 因みに、女性社長を年代別の構成比で見ると、最も多いのは「70─74歳」の15.9%。次いで「65─69歳」の13.2%、「60─64歳」の13.1%と減ってゆき、平均年齢は63.2歳で男性社長の平均である60.7歳を大きく上回っているということです。

 就任の経緯では、「同族承継」が50.8%と全体の半数を占め、次いで「創業」が35.3%と約3分の一。一方、やはり組織の中で男性と競って実力で社長に上り詰めるのは難しいようで、「内部昇格」は一割未満の8.3%にとどまっていることがわかります。

 また、女性社長をいただく企業を資本規模で見ると、「1000万円未満」が9.1%で最も多く、「1億円以上」はわずかに2.3%と、中小・零細企業がほとんどと言っても過言ではありません。業種としては、保育所、化粧品販売、美容業、老人福祉事業、結婚相談・式場紹介、各種学校といった生活関連のサービスを提供するものが多いようです。

 「女性活躍」が政治のキーワードとして語られる昨今ですが、長く続いてきた男性中心の企業風土の中で女性の昇進はハードルが高く、かといって政府が力を入れる女性の起業もそう簡単には進まない。

 こうした状況に関し6月12日の東洋経済ONLINEでは、「女性社長.net」の運営者であり女性経営者・個人事業主の事業継続サポートを行う「コラボラボ」の横田響子代表へのインタビュー記事を掲載しています。(「日本の女性社長が令和でも「1割未満」に留まる訳」)

 労働人口が減少の一途を辿る一方で、頼みの女性社員を未だ戦力化できていない日本企業。女性従業員の活躍推進のみならず企業における女性リーダーの拡大も課題となる中、諸外国と比べ、日本の女性起業家支援は大きく立ち遅れていると横田氏はインタビューに答えています。

 海外の女性活躍支援に関するカンファレンスに参加すると、女性の起業支援が一大テーマとして扱われている。一方、日本で開催される場合は、大企業の女性リーダーを育成する話が中心で、起業についてはマイナーなトピック扱いだと氏は言います。

 いくら女性の起業支援が重要だと主張しても、たとえば企業からは「いや、うちにはまだ(女性の)部長だっていないから」と言われてしまう。大手企業の目下の最大の関心は、コーポレート・ガバナンスコードという「黒船」によって、女性の役員比率といった形を整えるところにあるということです。

 一方、経済社会における女性活躍を語る際に、社内昇格と起業のどちらがより重要かというのは本質的な議論ではないと氏は指摘しています。

 日本が女性経営者を育てるには、この2つを同時進行で支援していく必要がある。それに加えて、女性が社外取締役として外部の組織の経営に関与することで、女性が経営に携わる土壌が育まれていくというのが氏の見解です。

 いくら企業内で女性を昇格させていくことが重要だからといって、現在、課長の女性をいきなり取締役にするわけにはいかない。そうした企業ではまず、女性起業家など、すでに経営の経験がある女性を社外取締役として招くことで、経営陣と女性との親和性を高めていく選択肢があってよいということです。

 さて、氏はインタビューに応え、女性が起業するに当たっての特徴をここでいくつか挙げています。例えば、女性起業家には、男性を上回る実績を上げている(得意分野の)事業領域があるということ。

 女性の場合、消費者向けのサービスを展開しているケースが多く、最近なら(女性が抱える健康問題を解決する)フェムテックのスタートアップで女性社長はどんどん増えているということです。

 また、マーケティングやコンサルティングといった分野は、起業にあたっての資金が少なくて済むもこともあってハードルが低い。女性の従業員が多い保育園や介護関連なども、男性に比べると女性が起業するケースが多いと氏は話しています。

 さて、女性の起業は、こうした女性独自の観点が生かされる消費者向けの事業分野が多いが、女性起業家には組織で働いた経験がない人も少なくないため、BtoCからBtoB、対企業の事業展開に繋がっていきにくいと氏は言います。
そこで、政策として女性起業家を支援するのであれば、起業そもそもの支援をするだけではなく、こうした企業とのマッチング支援などにも力を入れていく必要があるというのが氏の指摘するところです。

 そもそも、従前の女性の起業には、主に「人脈」と「資金」の双方においてアドバンテージがないことがネックになる場合が多いと氏は説明しています。

 男性の起業よりも廃業率が高いのはそうした基盤に安定性がかけているため。特に資金調達面では、以前よりはハードルが低くなったとはいえ、(“マッチョ系”の組織だけを経験した男性のベンチャーキャピタリストが審査をするのであれば)不利な部分もあるということです。

 一方、事業が一度立ち上がりさえすれば、女性のほうが経営の安定性は高いというのが氏の見解です。いくつかの調査結果を見ても、例えば不況のときなど女性が経営する企業のほうが、倒産しにくいとされている。リーマン・ショックのときも、アメリカでは女性経営者の企業のほうが男性経営者の企業よりも倒産する確率が低かったとのデータもあるということです。

 その背景には、女性の企業のほうが無駄な投資をしていないことに加え、これまでのしがらみにとらわれず、堅実な判断ができる傾向にあることが指摘できると氏は話しています。

 さて、たしかに私の周囲を見てみても、こうした経営上の堅実性は女性経営者の大きな特徴となっていると言えそうです。今後、女性経営者の輪がさらに広がれば、そのネットワークによってBtoBの世界でも、また違った事業展開が期待できるかもしれません。

 デジタル技術の普及や新型コロナの感染拡大などで経営環境が大きく変化する中、生活に根付いたきめの細かなサービスを堅実かつ安定的に提供できる女性起業家が活躍する時代は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。



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