MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2603 この地球の生い立ち

2024年06月30日 | うんちく・小ネタ

 半世紀近い時間を超えて、今も日本のアニメファンに人気の「機動戦士ガンダム」シリーズは、地球資源の枯渇によって人類が宇宙に移住した時代を舞台にした物語です。

 機動戦士ガンダムシリーズで描かれた宇宙移民時代の背景には、科学技術と資本主義の過剰な拡大による資源の枯渇や地球環境の破壊があります。人類は人口が増えすぎて地球に住めなくなり、一部は宇宙移民としてスペースコロニー(宇宙ステーション)に移住。そして、国家や民族を超えたスペースノイドとしての宇宙移民者と地球居住者の間には、価値観も含めた様々な対立構造が生まれ、戦いが始まるというストーリーです。

 46億年に及ぶその歴史の中で、人類が、生命をはぐくみ人支えてくれてきたこの地球を離れる日は本当にやって来るのか。人間たちは地球の重力圏を離れた環境で生きていくことができるのか。そんなことを考えていると、そもそも私たちはこの母なる地球の成り立ちをあまりに知らなすぎることに驚かされます。

 そんな折、5月21日の総合情報サイト「DIAMOND ONLINE」において、米国の生化学者デイヴィッド・ベイカー氏の話題の近著『早回し全歴史─宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』の一部が紹介されていたので、参考までに概要を小欄に残しておきたいと思います。(「地球と月が「同じ1つの星」だった時の大破局とは?」2024.5.21)

 太陽系の初期に生まれた30個ほどの原始惑星は、黙示録さながらの衝突を繰り返しながらどんどん大きくなっていった。例えば45億年前の地球の軌道上では、地球程度の大きさの惑星と火星程度の大きさの惑星の二つが衝突し、地球サイズの惑星が衝突で飛び散った破片をほとんど吸収して現在の地球が生まれたと、ベイカー氏は説明しています。またその際、破片の1.2%は吸収されずに地球の軌道上に流れ出し、そこで結合して現在の月になったということです。

 そのころの地球は、衝突時の火で非常に高温だったうえに、多くの小惑星との核戦争並みの衝突が続いていたと氏はしています。地球が軌道上の物質を吸収しつづけた結果、その重さがもたらす圧力によって地球のコア(核)が発熱。45億年前の地球は何千度もの高温で燃えて泡立つゼラチン状の球の状態だったということです。

 一方、そんな液状に溶融した岩石の球の中を物質は比較的自由に移動し、鉄や金のような重い元素の多くは灼熱のスープを通り抜けて地球のコアにまで沈んでいったと氏は話しています。

 鉄は地球のコアに半径3400キロメートルの球を作って地球に磁場を生み出した。一方、地殻に残った重い元素はごくわずかで、人間が金を探してもなかなか見つからないのはそうした理由から。もしも誰かがどろどろのマントルやコアにまで潜ることができれば、地表を覆い尽くすほどの金を見つけることができるだろうということです。

 他方、軽い元素は表面に浮き上がり、ケイ素(地球の化学組成の大部分を占める)、アルミニウム、ナトリウム、マグネシウムによって地殻が形成されたと氏はしています。そして、さらに軽い炭素や酸素、水素といった元素は、気体として放出され、初期の地球の大気を形成したということです。

 しかし、こうした長期間にわたる地殻の冷却は、「後期隕石重爆撃期」と呼ばれる時期に小惑星が頻繁に衝突したことで、たびたび中断された(ようだ)と氏は指摘しています。溶けたスープの表面で地殻が固まりかけると、新たな衝突が薄い層を破壊し、地球はそのつど熱くなった。ようやく40億年前頃に衝突が終わって地殻が凝固したということです。

 熱く煮えたぎった元素の海が何度も何度もかき回され、溶岩地獄の中で地球に固有の複雑な構造が形成された。当初の惑星が持っていた組み合わせ可能な化学物質はおよそ250種類だったものが、最終的に分化が完了するころには1500種類以上の化学物質が存在していたと氏は話しています。

 さて、なるほどこうした特別の環境の中で、今の地球は生まれ育ってきたということなのでしょう。地球の表面は冷えて固まっているけれど、薄い地殻を一枚めくれば今でもマントルは熱く煮えたぎっている。もしも人類の科学技術が飛躍的に発展すれば、(地球を見捨てコロニー生活などをするまでもなく)エネルギー問題などはあっという間に解決してしまうのだろうなと思わないでもありません。



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