MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

#2506 血液型と健康リスク

2023年12月03日 | 医療

 普段の生活の中ではほとんど気にする必要がないのに、いざ輸血の必要などが生じると急に重要になるのが「血液型」の存在。実際は広く知られたAOB血液型やRh血液型などのほかにも、合わせて41種類もの血液型があるのだそうです。

 中でも最も一般的なAOB型血液型とは、赤血球上などの糖鎖の末端にある糖の違いによりA,B,AB,Oの4つのタイプに分類されるもの。抗原抗体反応を避けるため、原則として同じABO血液型間でしか輸血することが出来ないとされています。

 ちなみに日本人ではおよそ10人に4人がA型,3人がO型,2人がB型,1人がAB型とされていますが、基本的に遺伝により継承されるため、国や地域によってその割合は大きく変わるとのこと。世界的に見るとO型が多い国が一番多く、A型、B型がそれに続く割合で、中南米は特にO型の比率が高いとのことで、驚くことにコロンビアやベネズエラではO型が(ほぼ)100%を占めているのだそうです。

 さて、私たち日本人が日常で血液型を意識させられるのは、輸血や手術といった(深刻な)場面よりも、むしろ「血液型占い」や「血液型性格診断」のような、あまり科学的とは言えない場面の方が多いかもしれません。

 因みにA型の人は、真面目で几帳面、責任感が強く心配性などといわれることが多いようです。一方、B型の人は対照的にマイペース。気分野で飽きっぽいなどとともされており、「あなたB型でしょ?」などといわれるのは決して誉め言葉ではないかもしれません。

 日本人に2番目に多いO型は、楽観的で細かいことを気にしない温和な人が多いとの話も。社交的でロマンチストなど、こちらは誉め言葉がいっぱいです。他方、日本人では一番少ないAB型は、ドライで天才肌の合理主義者。無駄なことを嫌い他人にはあまり興味がないなど、一匹狼の人を指して「あの人、きっとAB型だわ」などと噂されたりするのでしょう。

 まあ、ドナルド・トランプがA型、岸田文雄現首相がAB型などと聞くと、こうした枠組みが本当に当てになるかどうかは眉唾ですが、様々な統計によれば、人の健康と血液型との間には、かなり大きな関連があることも分かっているということです。

 9月27日の経済情報サイト「PRESIDENT ONLINE」によれば、血液型によってかかる病気のリスクが大きく違うとのこと(「血液型で病気リスクがこんなに違う」2023.9.23)。血液型は「血液」だけではなく、個人を血清学的に識別する方法のひとつであり、どんな病気になりやすいかなどの特徴があるのは、ある意味当然のことだということです。

 特にここ数十年の研究の数々から判ってきたことは、血液型によって病気のリスクが異なるということ。例えば、2010年にスウェーデンの大学が発表した研究結果によると、A型の人の胃がんのリスクは最もリスクの低いO型の人と比べて1.2倍高く、2009年にアメリカ国立がん研究所が発表した論文では、B型の人は最もリスクの低かったO型に比べて、膵臓がんのリスクが1.72倍高いことが報告されているということです。

 さらにB型の人は、O型に比べ2型糖尿病になる頻度が1.21倍。一方、脳卒中のリスクでは、AB型の人は最もリスクの低かったO型の人と比べて1.83倍高く、さらにAB型の人は、認知症になる可能性も、O型に比べ約1.82倍高いという研究結果もあるようです。

 なんか、やっぱり楽観的なO型の人は(ストレスが少ないせいか)病気にかかりにくく、一方、孤立しがちなAB型は脳卒中や認知症など踏んだり蹴ったりの印象ですが、まあO型の人は「蚊に刺されやすい」といったデメリットもあるようなので許してあげましょう。

 さらに言えば、O型の人は、大量出血するような大怪我をした場合の死亡率が他の血液型の倍以上になるとのこと。重症外傷の患者901人の分析から、O型の患者さんの死亡率が28%、そのほかの血液型は11%とのデータもあるようです。

 記事によればそこには理由があって、O型の人は健常者であっても、血を止めるための大切な因子の一部が他の血液型に比べて25〜30%しかないため。止血能力や血液を凝固させる能力がO型は弱いということなので、十分に気を付けた方がよさそうです。

 まあ、それ自体は悪いことではなくて、O型の人はそれだけ血液が「さらさら」だということにもなる。これによりO型以外の人は、O型の人と比べ、心筋梗塞のリスクが1.25倍、エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)のリスクが1.79倍との報告があると記事は説明しています。

 血液型による性格診断も、社会の中での自分の生き方を考えるのに役立つかもしれないが、血液型の科学的な特徴を知り食事や運動など日常生活を見直せば、健康被害のリスクを確実に減らすことができる。例えば、O型の人は、(蚊に刺されないように気を付けることはもちろん)大怪我をしたときに自分の血がほかの血液型よりは止まりにくい可能性についてより気をつけることが大切だと語る記事の指摘を、私も興味深く読んだところです。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿