MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2589 揺りかごから墓場まで

2024年05月29日 | 社会・経済

 2022年時点の日本の総人口は1億2,495万人。そのうち65歳以上の人口は3,624万人を占め、総人口に占める65歳以上の割合は既に29.0%に達しています。そうした中、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の65歳以上の一人暮らし高齢世帯は2020年の738万から2030年には887万に、そして50年には1084万へと増える見込みとされています。

 さらに細かく見てみると、現在の独居高齢者の約35.9%が男性、約64.1%が女性という結果である由。平均寿命の観点から女性の方が長生きしやすいことから、男性は65~74歳の割合が多く、女性は85歳以上が多いということです。

 こうして独居高齢者が増加している大きな要因のひとつに、配偶者がいない人が増えていることが挙げられます。高齢化の進展に伴い、離婚や死別などの理由により、結果として一人暮らしになる人が増えているとのこと。また、生涯未婚の高齢者も年々少しずつ増えているとされています。

 昭和の高度成長期、1960年頃の未婚の割合は、全体の約1%程度とかなりの少数派でしたが、2015年には男性5.3%、女性4.3%に増え、加えて離婚の割合も1960年に男性1.3%、女性1.7%だったものが、2015年には男性4.4%、女性5.6%に増えているということです。

 一人暮らしの高齢者の増加で心配されるのが、増え続ける彼ら彼女らの生活を誰が支えていくのかという点です。年を取れば誰でも生活機能は衰えていく。社会的に孤立すれば活動機会が低下しフレイルが進行する可能性もあるでしょう。交流の減少や脳への刺激の低下により、認知機能の低下や認知症の発症の危険性も高まります。

 病気に対する気づきの機会の減少や、自己管理能力の低下によりケガや病気への対処が遅れたり、突然の事故が起きても助けを呼ぶことができず、孤独死に至ってしまうケースだって考えられます。

 さらには、周囲に頼れる人がいなくなるため、詐欺や悪徳商法などの犯罪に遭いやすくなったり、地震や風水害、火災などの災害の際に逃げ遅れて被害に遭ったりといったリスクも想定されるところです。

 一方、高齢者を巡るこうした状況を踏まえ、厚生労働省が独居高齢者に対する支援制度を強化する方針を固めたと5月6日の朝日新聞が報じています。(「身寄りなき老後、国が支援制度を検討 生前から死後まで伴走めざす」2024.5.6)

 頼れる身寄りのいない高齢者が直面する課題を解決しようと、政府が新制度の検討を始めた由。今年度、行政手続きの代行など生前のことから、葬儀や納骨といった死後の対応まで、継続的に支援する取り組みを一部の市町村で試行。経費や課題を検証し、全国的な制度化をめざすと記事は伝えています。

 記事によれば、高齢化や単身化などを背景に、病院や施設に入る際の保証人や手続き、葬儀や遺品整理など、家族や親族が担ってきた役割を果たす人がいない高齢者が増え、誰が担うかが課題になっているとのこと。

 多くは公的支援でカバーされておらず、提供する民間事業者は増えているようですが、契約に100万円単位の預かり金が必要なことも多く、消費者トラブルも増えている。本人の死後、契約通りにサービスが提供されたかを誰かが確認する仕組みもないと記事はしています。

 さて、差し迫った状況に国もようやく重い腰を上げ始めたのかな…というところですが、その一方で、独居高齢者の生活を見守り、それぞれが抱える問題に一緒に向き合い、解決に導いていくのはそう容易いことではありません。いつものように、社会保険料からお金を捻出し、後は市町村や地域社会に丸投げして終わりというわけにはいかないでしょう。

 もちろん介護のニーズも増えるため、社会保険料のさらなるアップも避けられません。『ゆりかごから墓場まで』…政府は、全世代で社会保障を賄っていく「全世代型社会保障」を進めるとしていますが、その分、特に現役世代に保険料の負担が重くのしかかってくることは確実と言えるでしょう。

 起死回生の妙案は浮かびませんが、社会の変化に合わせこれだけの需要が生まれるのであれば、まずはそこを市場とみなし商売にならないかと考えるのは必然のこと。

 とりあえずは中間層以上(くらい)をターゲットに見守りや問題を解決するための「市場モデル」を検討し、商売として成り立たせること。すべてを国や自治体に期待するのではなく、それぞれの生活実態に合ったサービスを選択し、ある程度はそれぞれが「金で解決」できる仕組みを(まずは)作ってみることが大切なのではないかと思うのですが、果たしていかがでしょうか。



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