4月29日、ドル円相場が160円を一時突破したことを受けて、財務省は円安ドル高是正を目的とした為替介入に踏み切ったと伝えられています。同省は為替介入を行ったかどうかの明言は避けていますが、ドル円相場の値動きや日銀当座預金の動向からは、加えて5月2日にも為替介入が実施された可能性が高いとされています。
その規模は、4月29日が5兆4,000億円程度で、5月2日は3兆7,000億円程度と推測される由。大きく値下がりした円を9兆円を超える公金で買い支えるとは、「何ともったいないことを…」と考える向きも多いかもしれませんが、実際はこの介入で日銀が大きく利益を上げていると聞けば、なになら狐に鼻をつままれた気分にもなろうというものです。
一般人の誤解を招くその辺の仕組み(からくり?)に関連し、5月9日の日本経済新聞の経済コラム『大機小機』に「もうかる介入は良い介入でも…」と題する一文が掲載されていたので、参考までに小欄にその一部を残しておきたいと思います。
大型連休のさなかの4月29日と5月2日に政府・日銀が踏み切ったとされる円買い・ドル売りの為替介入。介入の狙いは円の急落防止だが、実はそこには思わぬ副産物があると筆者はこのコラムに綴っています。今回の場合、円高の時代に安値で購入していたドルを、高値で売却することになる。結果、相当の利益(実現益)が生じているはずだということです。
財務省からは、1991年分からの介入実績のデータが公表されており、(それを見ると)2024年3月末までに合わせて、A円売り・ドル買い介入が79兆8237億円、B円買い・ドル売り介入は14兆674億円行われたことがわかる。Aで購入したドルからBで売却した分を差し引いた金額のドルを、政府は(その間の)介入に伴い保有していると筆者は話しています。
これを最近の1ドル=160円で円換算すると、その額は109兆円あまりとのこと。現在、政府は(円換算で)100兆円規模の資金をドルで保有していて、必要に応為替市場に向け介入の動きを見せることができるということです。
そこで、(問題の)今回の介入でどれだけの利益を見たかという話です。Aドル買い介入の際のドル円相場は平均で101円70銭で、一方のBドル売り介入の時は平均で139円40銭とのこと。つまり、(均すと)101円70銭で買ったドルを139円40銭で売ったことになるので、1ドル当たり37円70銭の利益が出た勘定だというのが記事の計算するところです。
そして4月29日、160円で、財務省は新たにドル売り介入に踏み切った。つまり、1ドル当たりで160円から101円70銭を差し引いた58円30銭が、介入で生じる利益であり、例えば5兆円の介入であれば1.82兆円の利益が生じているはずだということです。
さらに財務省は、5月2日にもおよそ3兆円規模の介入を行ったとみられており、その時の相場水準で考えると(ここでも)1.05兆円の利益が生まれているはずだと筆者はしています。合わせて3兆円程度にのぼるこの利益は、帳簿上の利益ではなく手元に残る実現益、税外収入として国庫に納付されるということです。
実は一昨年(2022年)9月と10月のドル売り介入でも数兆円規模の実現益が生じているはずで、こうしてみるとドル売り介入は財務省にとって「打ち出の小づち」ともいえると筆者はこのコラムに記しています。
だが、売ることのできる手持ちのドルには限りがある。1991年以降のドル買い介入で(円高の際に安値で)積み上げたドルは円換算で前出の109兆円。だからと言ってむやみに介入を連発するわけにはいかないというのが筆者の指摘するところです。
さて、2022年度の日本の税収は、総計で71兆円。うち、消費税だけでも23兆円という話ですので、為替介入で得られた利益が(この2年程度の間に)数兆円から10兆円と聞けば、その規模の大きさ、影響力がわかります。
一方、政府の一般会計とは別の「外国為替資金特別会計」(外為特会)で管理されている資金の残高は1兆2789億ドル(約200兆円)で、中国に次ぐ世界2位の規模とされている由。こうした状況に与野党からは、 「こんな莫大な外貨準備を保有していく必要があるのか」「埋蔵金として国の財源にすべきだ」との声が上がっているとの話も聞きます。
「お金がない、お金がない」と言いながら、ある所にはあるということでしょうか。海千山千が集う外国為替市場において、訳のわからないまま翻弄されているのは誰なのか?ともあれ財務省のお歴々には、(私たちのお金を抱いて)このマネーゲームの海をうまく泳ぎ渡ってほしいものだと感じるところです。
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