つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

中国の「一人っ子政策」は、なぜ成功したのか?-トーク会 at Stanford

2012-09-20 09:18:07 | 日記
夏休み最後の一週間を、懐かしいStanfordに来ている。
図書館でのやり残していた調べ物をする外に、久々にみなと太極拳の練習をしたり、こちらの友人たちと旧交を暖めたり。
で、今日はこのブログでも紹介したことのあるベイエリアの日本人女性中心の「トーク会」で、研究テーマについて話をさせていただいた。
タイトルは、<中国の「一人っ子政策」は、なぜ成功したのか?>

内容を簡単に紹介すると;
中国の「一人っ子政策」は、出生率を低下させたという点では、疑いなく成功したといえる。この政策に対しては、中国国内では 成功を誇るとともに「女性に生殖自主権を獲得させた」と高く評価されているのに対して、国外では妊娠中絶を容認・強要していることやリプロダクティブ・ヘルス&ライツを損なっているとする批判が強い。しかしいずれいせよ、当の中国女性の眼から見た評価はわかりにくい。
私は、中国人共同研究者とともに、この数年、中国の複数の都市や農村で現地女性から1950年代以来のリプロダクションの経験について聞き取りをしている。
その結果、上からのバース・コントロールの推進は、「計画出産」として早いところでは1950年代から始まっており(ただし70年代までは一人っ子は提唱されず、罰則などもなかった)、それは上からの行政=医療ネットワークと連動して展開されたこと、多くの女性はそれによって初めてバース・コントロールにアクセスすることができるようになったこと、そのような条件の中で、国家が子供の数を規制することは当然視されるようになってきたこと、などがわかった。
女性たちは、上から推進される「計画出産」と、伝統的な多子・男児を重視する家族観、そして個々の身体的条件や経済的条件などの中で、時には計画出産の政策を利用し、時にはそれから逃げて、自分の望む子産みを実現しようとしたたかに対応している。
計画出産を理解するためには中国社会の文脈にそってそれを読み解くことが必要で、その改善の方向も、中国の現実に根ざして考えてゆくことが前向きな結果をもたらすと思われる。

研究を大きくまとめて話す機会をいただいたとともに、久しぶりにお世話になった方たちとも会えた、貴重なひと時だった。