つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

反日デモをめぐって―社会・政治・歴史から(3)

2012-09-23 19:19:02 | 日記

(「反日デモをめぐって」の続きです)
3.歴史:
ところで、このような中国の「反日デモ」のからくりを聞くと、「やはり中国というのはよくわからない国だ」と更にだに嫌中観を増す方もおられるかもしれない。
とはいえ、中国は未来永劫の隣国で、現在とこの先当分の間、日本にとって最大の経済パートナーでもある。よくわからないからといって、付き合わないでいい相手ではない。
必要なのは、まず、相手を知ることである。その際、今現在の中国だけでなく、長めのタイムスパンを取って知ることが、中国を理解するためには大変重要だ。
昨年出版された岡本隆司『中国「反日」の源流』(講談社選書メチエ)は、そのためにとても役に立つ一冊なので、ここで紹介してみたい。
この本には、17世紀以来の中国の社会構造が日本のそれと非常に違っていること、中国の日本イメージのベースには軍事的脅威としての「倭寇」があり、19世紀後半に、中国にとっての最大の脅威としての日本が、特に朝鮮に侵攻されることへの警戒をもって定着したこと、「社会構造およびその差異が、経済制度・政治権力の性質とそのちがいとなってあらわれ、それがさらに、対外姿勢とその齟齬を作り出す。そのそれぞれが、相互の理解不足をもたらし、歪んだイメージや誤解、矛盾をうみだし、対立を重ねて破局にいたる。その破局の結果がまた、あらたな対立の出発になる」(231ページ)19世紀の日中関係の具体的な様相が、最新の研究成果を背景に分かりやすく展開されている。
日中関係が今も何かの契機ごとにこじれるのには、いうまでもなく日中戦争における日本軍が中国に与えた莫大な被害(しかも戦後史のいきさつの中で、日本は戦争賠償を払っていない)が背景にある。だが本書は、中国の「反日」はそれよりもさらに長い歴史的な「根」を持つ問題であることを、両者の社会構造の違いから説き起こす。
本書を読めば、日中関係とはいかに一筋縄でいかないものであるかリアルに理解できるだろう。そして近視眼的な対応を脱して、腹をくくって長期的な視野で、中国との関係を作っていくしかないことが、実感できると思う。
好き嫌いにかかわらず、われわれは中国と関わり続けなくてはならないのだから、より良い関係を築くに越したことはない。そのためには、相手を知り、自分を知って、関係のあり方を考えてゆくしかない。