気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 22

2022-07-02 23:00:00 | ストーリー
beautiful world  22




照れくさそうな表情で僕に差し出した綺麗にラッピングされた箱を僕は両手で丁寧に受け取った

彼女からのバレンタインチョコレートなんて何年ぶりだろう


「ありがとう(笑)」

パッケージには“GODIVA”と書いてある

これってめちゃ高いやつじゃ…


さっきまで奈生は落ち込んでいたけれど

今は初めて本命チョコを渡せたと嬉しそうに笑顔を見せてくれた

奈生の手料理を一緒に食べ
ひと段落してチョコレートの箱を開いた

「美味そうだ(笑)」

チョコレートを摘んで奈生の口に入れた

「う〜ん♡美味し〜い♡」

「そうか(笑)」
その幸せそうな表情に癒される

「あっ!私が陽太さんにプレゼントしたのに!」
焦っているその顔がまた愛らしい(笑)

「全然構わないよ(笑)」

ん?
でもなんか…

冬だからいつも厚みのある服だったから?
最近肌を見ていないから?

痩せたように感じる...




「奈生、痩せた?」

「ダイエットしてて…(苦笑)」


ダイエットって…




前からぽっちゃりしていることをずっと気にしてたのは知ってたけどそれが奈生の魅力のひとつだと僕は思っていたんだけど…

すると奈生はモジモジし始めた
「実はもうひとつあるんです…プレゼント」

「?? これで十分嬉しいのにまだあるの?」

ん?
なんだ?

目が泳いでる…

すると奈生はチラチラと僕の顔色を伺いながら座ったまま服を脱ぎ始めた




「えっ!?何どうした!?」


最近全く奈生の肌を見てなかったからか胸が高鳴ってきた



綺麗な刺繍の入った白い大人っぽい下着を着けていた


おおっ!!

「これ…なんですが…」

想像もしなかった奈生の色っぽい姿に言葉も出ず目が釘付けになった

白く滑らかな肌に純白の下着
光沢のあるキャミソール
シルク…なのかな

胸の部分には美しい白の花の刺繍が付いている


ーー なんか豪華…!!


「どっ、どう、ですかね…」


凄く良い!!!
天使みたいだ!!!

でも想像以上に痩せてる…

しかも見たことのない綺麗な下着を着けたその姿がなんだか奈生じゃないみたいで戸惑った

「私にはやっぱりこういう大人っぽい下着、似合わないですよね…(苦笑)」

恥ずかしいのかまた服を着ようとして僕はハッとした

「あっ!ちょっ、待って!」
慌てて奈生の手を握って止めた

「もっとちゃんと見たいよ。」

服を掴む奈生の手を降ろした

「似合って…ますかね…」

「色々びっくりして… うん、凄く似合ってるよ(笑)」

痩せてはいるが
本当に似合ってる

今 目の前にいる痩せた奈生も
変わらず綺麗だ…

ドキドキしながら
まじまじと観察した

中に着けているブラも白い刺繍の花が透けて見えている

この透けている感じがいろんな想像を掻き立てるな


なんか腰に紐が…

「これ…」

えっ!?
ひ、紐パン!?

初めて生で見た紐パンに驚いた
興味津々で背中側を覗き込んだ

「んっっ!?」

紐パンの後ろは総レースになっていて
完全に尻が透けて見える

じゃ、じゃあ、、
前は一体どうなって…

「あのっっ!!」

突然の奈生の大きな声に驚いた
「はっ、はい!?」

「そんなにマジマジと観察されると超恥ずかしいんですけどっ、、」

奈生の顔が真っ赤になっていた

「あっ、、ごめっ、はははは…(苦笑)」

ずっと心臓がドクドクと打ち付けている

なんだこの感じ…
上手く言葉が出て来ない

「…凄く、いい、、」

うっ…

ずっとこの美しい奈生を眺めていたいような
でも脱がせたい想いも当然あるから

ガチガチに硬くなり早く奈生の中に入りたくて興奮している下半身は本能に正直だとつくづく感じる

「奈生が僕へのプレゼントってことで良いんだよな…?」

「はい…その…最近してなかったし…私も…」

小さな声で恥ずかしそうにそう呟いた


その言葉は
僕の理性のスイッチを切った 



ーーー


ーー 翌朝

魅惑的な奈生の残像が
まだしっかりと頭に残ってる

またあの下着着けて来てくれないかな

僕は下着とかシチュエーションとかで燃える男なんだと知った


いかん!

朝っぱらからこんな事を考えてたら直ぐに時間が経ってしまう

リュックの中を確認しているとまだ開封していない中林の手紙が目に入った

ーー 完全に忘れてた

“手紙… 読んでくれましたか…”
“早見先生 酷い!!”

読まずにそのまま返した方が良いだろうか



放課後

柔道部の部員はランニングを終えて道場で準備運動をしていた
予選会に向けての強化練習のため
終了はいつもより30分遅くしている

「よし!終了だ!」

「はい!!」

号令に部員達らは掃除を始めた

ルーティング通りの片付けと掃除が終わり
主将の号令で集まり最後の挨拶をし生徒は帰り始めた

前回 東京代表になった選手を排出した強豪校には
今回も優勝候補者の一宮という二年の生徒が有名だ

道場に鍵をかけ
その鍵を持って職員室のキーボックスの所定の位置に掛け
机の上に置いてある書類に目を通してからフォイルに閉じ

ノートパソコンをリュックに入れた

「では、お先に失礼します。」
残っていた他の先生に挨拶をして学校を出た

僕自身、あと何回大会に出られるだろう

「早見先生!」

駅を通り過ぎた自宅近くの公園で声をかけてきたのは中林だった


「こんな所で何やってる。」

薄暗い公園
もう夜9時を回っている

まだ寒い二月
今日の気温は3℃程度しかない

まさかずっとこんな所で待ってたのか?

「…中林。手紙は読んでいないんだ。」

「昨夜あの彼女が一緒だったからですか。あんな…あんな普通の女のどこが良いんですか!?」

中林…

お前のその感情は一時のものだ


「お前の気持ちには応えてやれない。」

「お願いします!私の事も考えて欲し、」

「無理だ。」

僕のスマホが上着のポケットの中でマナーモード着信が鳴っている

時間的に多分奈生からだろう

「お前はもう直ぐ卒業して進学する。これから沢山の出会いがある。だから、」

「卒業しちゃうからです!三年間ずっと先生のこと好きだった…だから私は…」

バレンタインデーにチョコを欠かさずくれたのは中林だけだった

授業の質問を一番熱心に聞いてきていたのも中林で

それも全て僕に気があったからなのか?


「じゃあ私が卒業してもう先生の生徒じゃなくなったら可能性はありますよね!?」

「何年経とうが成人してようが、お前のことを恋愛対象として見ることはない。」


傷つくのはわかっている

それでも教師の僕が生徒の中林にできることは突き放すことしかできない


「…諦めたら本当に終わってしまう… 」


確かに
全てにおいて諦めたら終わりだ

僕もそれを理解しているからこそ
諦めさせないといけないこの状況に胸が締め付けられる


「好きになってくれたことは嬉しい。だが、気持ちには応えられない。」

「そんな言葉 聞きたくない!」


こんな時どうすれば…

「とにかく遅い時間なんだ。もう帰るんだ。」
肩に手を置き促した

「なら…せめて想い出をください。」

思い詰めた表情で僕を見上げた


「思い出って、」

顔を引き寄せられ
唇が重なった


――は?


ハッとして中林を引き離した

「お前、」

「こんなことで諦めなんかつかないけど!私が本気だったこと!絶対に忘れないでください!」

中林…

「私のファーストキスだったんです…それが早見先生で良かった。」

気丈に笑顔を作ってみせ
背を向け駅の方向に向かっていく中林のその後ろ姿に


教師としてではなく
男として心が痛んだ


「…なんでだよ」

僕とはさほど接点なんて無かったじゃないか

ファーストキスはもっと大切に取っとくもんだろう…


不本意な不意打ちキスを食らってしまった情けなさと

教師としての対応の未熟さを痛感しながら

冷たく突き離し生徒を傷つけた胸の痛みも感じながら

家路に向かって歩きだした


「はぁ… 」

溜め息が白い…

雪でも降りそうだな


中林の手も唇も

…氷のように冷えていた


こんな寒い中ずっと僕を待っていたんだな…

短くも大切な高校生という青春時代に
僕を想ってくれたんだな…

中林のその想いは

無下にしてはいけないし
忘れてはいけないと思ったーー



スマホを開いた

多分奈生だろうと思っていた着信は未登録の番号からだった

この番号は

また“舞”からだ…



「はぁ…」



また溜め息が出た


12月のクリスマス頃にも舞から着信が入っていた

もう終わっている
電話をする関係じゃない

何故 今更電話をしてくるんだろうか
知ったところで何かが変わる訳でもない

でも

その理由を知りたい気もするーー





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