気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 18

2021-12-26 00:45:00 | ストーリー
beautiful world  18





12月に入り予測通り私は多忙極まっていたけれど
ようやく落ち着いた今日は会社の忘年会

「仕事収めまであと2営業日!皆さん頑張りましょう!取りあえず今日はお疲れさまでした!では!カンパーイ!!」

皆で乾杯をした
やっと乗り越えた…

来週は残務処理と会社の大掃除でやっと年末年始の休みに入る

周りのみんなは談笑しながら実家の帰省話をしている
私は逆に陽太さんとの同棲のために家を出ることを両親に話さないといけないと考えていると

正面に座っている葉山さんが話しかけてきた

「お疲れ。」

「お疲れさまでした(笑) 葉山さんはご実家暮らしなんですか?」

「実家は鎌倉。」

「近いですね!ならいつでも帰れますね(笑)」

「…まぁ。正月の年イチしか帰らないけど。」

近いのにそんなに帰らないのは家庭に事情でもあるのかな

でもそこは触れないでおこう…

隣の席の先輩の関さんが
「田中ちゃんは?」と聞いてきた

「ウチは元々実家暮らしなので(笑)」

「違う違う(笑) 今日イブじゃん?この後デートでしょ?」

「え!?ど、どうしてですか!?」

「とぼけちゃってぇ(笑) 彼氏できてるんでしょ~?最近かなり綺麗になっちゃって(笑)」と私の頬を軽くつついた

あ…
チラッと葉山さんを横目で見た

葉山さんは聞こえていないように知らん顔で料理をお皿に取っていた

「あはは… まぁ、そうですね(苦笑)」

「ほらぁやっぱり!だと思ってたんだよねぇ!(笑)」

関さん、ちょっと声が大きすぎますっ
でも周囲の人達は騒がしく雑談していて聞こえていない様子だった

「ねぇねぇ、」
私に耳打ちしてきた

「(まさかだけど相手は葉山じゃないわよね?)」

「違いますっ!」
私も大きな声が出てしまった

「もしかしてそうかもってちょっと思ってた(笑)」
全力否定した私に関さんが笑った

「なんだぁ?なにが違うんだー??」と遠い席から少し酔った課長が聞いてきた

「なんでもないでーす(笑)」
関さんが応えてくれた

「で?で!?どんな彼氏なの?どこで出会ったの?そういう話聞くの私大好きなの♡」

「あ〜、えーっとぉ…」

「おい。田中さん困ってんだろ。もういいじゃん。」

向かいの葉山さんが話を切ろうとした

「何?ヤキモチ?ダッサ!(笑)」
関さんがニヤニヤ顔で返事をした

「はぁ!?ちげぇわっ。」
葉山さんがムッとした表情になった

「ほんっと、あんたってなんでいつもそんなに感じ悪い物言いするの?」
関さんもムッとしてビールを飲み干した

あぁぁっ… 
気まずい…!!

「あー… えっと、、関さんビールのお代わり頼みますね(苦笑)」

田中ちゃんありがと♡あんた(葉山)に田中ちゃんはもったいないからね。」

「は!?」
葉山さんが眉間にシワを寄せた

ちょっとちょっと、ほんとやめてくださいよぉ!
これじゃ本気の喧嘩になっちゃう!


「だってあんたやたら田中ちゃんに当たりキツイじゃん。」

「んなことねぇよっ!」
声を荒げた

ほんともうやめてー!!(泣)
「あっ、あの、ほんとそんなことないですからっ!(苦笑)」

周辺の先輩方が一斉にこっちを向いた
「またあの二人やり合ってんのかぁ?誰だぁ?あそこくっつけたのは!」

「まぁまぁ(笑)」
関さんの隣の先輩がなだめに入ってくれた

なに!?
こんな小競り合い、頻繁にあることなの!?

嘘でしょ…

そういや二人が会話してるとこ見たことない…



―――


忘年会も終わり
店を出ても二人は何やらブツブツと言い合っていた

あの二人があんなに仲が悪いなんて知らなかった…

まさかあんな言い合いになるなんて思いもしなかった

一人っ子だから喧嘩とかしたことない見慣れてないし

恐いよ、ほんと…

あぁ 疲れた…
「はぁ~」

他のみんなは気にする様子もなく駅まで談笑しながら歩いている



そろそろ陽太さんに忘年会が終わった報告の連絡をしなくちゃ

私はスマホを取り出した時

誰かが私の肩をポン触れた
振り返ると


「えっ!!陽… 」

「シッ!(笑)」


陽太さんだった
腕を引かれ細い横路に入っていった

他のみんなは私に気づかず
そのまま駅まで歩いていった


「え?えっ!?なんで...」

陽太さんは早足で歩きながら振り返り
突然消えた私を誰かが気づき探しに来ていないことを確認し足を止めた


「迎えに行くからって言っただろう?店の場所も聞いてたし(笑)」

「でも、ここは遠いから来なくていいって、、」

「今日は特別な日だからね(笑)」

今夜は二人で迎える初めてのクリスマスイブ

「ずっとこの寒い中待っててくれてたの?」

「寒かったけど今はこうして奈生がいるから温かい(笑)」
私の手を握った

そういう彼の手は凄く冷たく冷えきっていた

一体いつから待ってたの?


「もう、嘘つきですね!こんなに冷たくなってるじゃないですか(苦笑)」

「そんなことはないぞ?心はメチャクチャ温かいんだ(笑)」


満面の笑みで私に笑いかけた


ーー キュンとした…

背伸びして陽太さんにキスをしたら
眉尻を下げて彼は嬉しそうに微笑んだ

「わっ(笑) 早速奈生からクリスマスプレゼントをもらってしまった!(笑)」 

「違いますよぉ〜プレゼントはちゃんと別にありますからね?(笑)」

「ほんとに?今のがプレゼントだろう?」
と微笑んでまた手を繋いで歩きだした

「そんな訳ないですよ(笑)」

「じゃあまだ他にもあるの!?今年はのクリスマスはなんて贅沢なんだろう!(笑)」
大袈裟に言いながら嬉しそうに笑った

「こうして奈生とクリスマスを過ごせるだけでも贅沢なのに(笑)」

気づくと彼の手は本当に温かくなっていた…



ーーー


駅にはもう社員の姿は見えない

お泊まりの準備物が入ったバッグを駅のコインロッカーから出すと

陽太さんが当たり前のように自然に持ってくれた

そして一緒に電車に乗り彼の家に向かった




電車を降りといつものように手を離そうとしたら私の手を強く握った

「もう離さなくていいんだ。」

心がふと軽くなった…



ーーー


彼の部屋に到着して荷物を置いた

「ケーキ買ってるよ(笑) 寒いけどほんとに行く?」

「行く(笑)」


ケーキを持って展望所に登った

風が無くて良かったねと言いながら彼はロウソクに火をつけた
プリンを買ったら付けてくれるプラスチックの小さなスプーンを取り出した。

「ごめん、これしか持ってきてないんだ(苦笑)」
彼は困った顔をして苦笑いした

「あはは(笑) 良いですよ♡」

「んじゃあ、メリークリスマス(笑)」


お互い笑いながら一口分 ケーキをすくって口に入れた

恋人と過ごすクリスマスは初めて

むちゃくちゃ寒いけれど心は温かくて
とても幸せを感じる…


「あ!忘れる所だった(笑)」
彼はリュックからカメラを取り出した

「記念 記念(笑)」


彼は私にレンズを向け
幾つか写真を撮ってくれた

私もカメラを借りて陽太さんを写真に納めた


今夜は星が見えないねと言う私に
陽太さんは星は奈生の瞳の中にあると微笑んだ

時々ロマンチックなことを言うから照れる…


そしてまたリュックをゴソゴソを覗いて
中から赤いリボンがついた大きな袋を取り出した

「これ、クリスマスプレゼント(笑)」

「わ…ありがとうございます...見ても良いですか?」

「ん(笑)」


淡く優しいピンクベージュのストールが入っていた
柔らかい… これカシミアだ!

「嬉しい…ありがとうございます…」

「なんだか奈生みたいに優しくて柔らかくて温かいから…選んだ(笑)」

うっ…
恥ずかしくなる

あっ、私も…

「あの…私も陽太さんに…」

私はマフラーをプレゼントした
実は手編み
手編みだということは言わないつもり…

「もしかしてこれ編んでくれたの?」

「えっ!」

なんでわかっちゃったの!?
市販の物と遜色ないレベルで編めたと思ってたのに!


「以前、“準備してる”って言ってたからもしかしてそうかなって(笑)」

うわぁ~っ!
手編みなんてすっごく重い女だって思われる!

でも編み物は昔からそれなりに得意だったから
私が編んだ物を使って欲しいと思ってたけど…

「奈生?」

「私のは手編みで…すみません…」

「どうして?手編みを貰ったの初めてで凄く嬉しいよ(笑) ありがとう…」

「…手編みの物なんて重くない?」

「どうして?(笑)奈生が僕のために編んでくれたのが嬉しくないはずないだろう?ずっと大切にするから。」

陽太さんは柔らかい手触りが好きなのを知っていたから実は私もカシミヤの毛糸で編んだものだった

深みのあるエメラルドグリーンのマフラー
きっと陽太さんに似合うと思ってた


「早速着けてみる(笑)」
嬉しそうに首に巻いた

「柔らかいなぁ…(笑)」
嬉しそうに微笑んだ

やっぱり柔らかい肌触りの物、好きなんだ(笑)

「私も早速ストール使わせてもらいます(笑)ふふっ(笑)」

「似合ってる。良かった(笑)」

「陽太さんも(笑) ふふっ♡」

「ははっ(笑)」


なんて幸せなクリスマスイブなんだろう…





――――――――――


beautiful world 17

2021-12-04 20:42:00 | ストーリー
beautiful world  17





待ち合わせた駅で奈生の姿を探した

電話をかけると
『陽太さんはもう着いた?私は着いてるよ(笑)』
といつもの明るい奈生の声だった

「どこだ!?」

『あっ、見つけた!ここです!(笑)』

手を振っている奈生の姿を見つけた

――奈生!

「お疲れさまでした!平日に会えるなんてなんだか新鮮(笑)」

「そう、だね…」

いつもと変わらない奈生だった

今直ぐにでも聞きたい
でも…

「友人にオススメしてもらったお店なんですよ~楽しみ!ふふふっ(笑)」

隠している理由がきっとあるはずだ

「陽太さん?ここです。」

「あっ、あぁ、」


今どきの洒落た創作料理の店だった

なんだか疲れてる?と聞いてくる君はいつもと同じだ
僕もいつものようにそんなことないよと応えた

大人になれば人それぞれ人生経験の中で他人には言えない過去や事情のひとつやふたつあるもんだ

でも僕ら二人に関わることだから知りたい
できれば君から話して欲しい…


「何をすれば陽太さんの元気が出るでしょうか。一緒に写真撮りに行くにも今月はお互いに難しいですしね?」

「(クリスマス)イブの日は一緒に過ごせるだろう?」
 
奈生はイブの金曜は会社の忘年会があるからその後なら大丈夫と笑顔を見せた

料理が出されるたび奈生の瞳はキラキラと輝いた

今こうして僕に朗らかに笑いかけてくれているこの笑顔に嘘はない

僕は君が隠していることを知っていると打ち明ける必要はないのか?

でも…

「陽太さん、イブの夜はどこかに行きたいですか?(笑)」

「それは僕からの質問(笑) どこ行きたい?」

「私は… あの展望台が良いかな(笑)」

展望台?
あぁ、近所のあの小さい展望所のことか

「あんなとこ?」

「あんなとこって!」スネた表情になった

スネた顔をしてブツブツと独り言のように
「私にはファーストキスの大切な思い出の場所なのに…」と呟いた

あぁ そうだったな…(笑)

「じゃあ寒いけどあそこでケーキにロウソク立てようか(笑)」

「ふふっ(笑) きっとめちゃくちゃ寒いけど(笑) 陽太さんへのクリスマスプレゼント、今準備してるんですよ(笑)ふふっ」

…奈生

「奈生からのプレゼントならなんでも嬉しい(笑)」

「…うん(笑)」
頬が少しピンク色に染まった
君の笑顔はキラキラして綺麗だ…

君は自分は太ってるからとか
もっと目が大きかったらとか
そんなどうでもいい小さなことを気にしているけれど

僕にはそんなこと全然気にならなくて
ただ目の前にいる君が心から美しいと感じてる

君が僕のことを大好きだってことも感じているし
僕も君が大切な存在だということは揺るがない

今 君が何のためにごまかし隠していても
僕のこの気持ちは変わらない

だからこそ僕はもう知っていると伝えた方がいいのかもしれない

きっと君の心は今より軽くなる
楽にしてあげたい…



―――

店を出ると冷たい空気に包まれた
寒いねと微笑む彼女の手を握った

「陽太さんの手は大きくて温かくていつも安心します(笑)」

そう言う君の手も僕の心を温かくする

「なんだか雪が降りそう...ほら!こんなに空気が冷たい(笑)」
白くなる息を指さした

奈生は時々子供みたいに無邪気なことを言う
そんなところも全て愛おしい

だからこそ…

「今日ね、学校を出る時 同僚の先生に声をかけられたんだ。」

「ええ...?」

「鈴木先生って言う人なんだ。」

「はい。」

奈生の声が少し沈んだように聞こえた
僕は足を止め奈生に向き合った

「でね。その鈴木先生が僕と奈生が一緒にいる所を見かけたって言ったんだ。」

奈生の驚いた表情が次第に曇っていく

「奈生… 君はいつから僕のことを知っていた?」



奈生は次第に涙目になっていった
僕の胸はズキズキと痛くなる

「どうして黙ってた。」

「ごめんなさ…」
声が震えていた

「奈生。誤解しないで欲しい。僕は君を責めてる訳じゃない。ただ理由が知りたいだけなんだ。」

奈生の冷たい頬に手をあてた

「ごめんなさい…」
ポロポロと涙を流しだした

「なぜ謝る?泣かないでくれ…泣かせたい訳じゃないんだ。」

「……かった」

「え?」

「気持ちを…拒否… されるって…思って… 恐かった」

拒否?
僕が 君を?

「そんなことする訳ないだろう(笑)」

「…先生が転任してきたあの日からずっと、ずっと好きでした…」

―― そんな…

だったらもう9年近いじゃないか
そんなにも長く一途に想ってくれていたってことなのか?…

「そうか… 」
あの頃の僕は元彼女の舞とまだギリギリ付き合ってた頃だ

僕が今の学校に転任して少し経った頃
舞は僕に別れを告げ日本を発った…

奈生が顔を見上げた
「黙っていて… ごめんなさい…」

奈生…

「でも奈生からのアプローチ、全っ然無かったなぁ(笑)」

「え…?」顔を上げた

「ほら、バレンタインデーの日とか?僕なんか義理以外貰ったことなかったぞ(笑) まぁ、それは今でも同じだけどな(笑) 鈴木先生なんか今でもめちゃくちゃチョコ貰ってる(笑)」

「私は早見先生の方が格好良いって思っていたしずっとずっと…好きだった…」
そう言ってまたうつむいた

「ずっと好きだったなら なんでチョコくれなかった?(笑)」

「だって…」困ったように口ごもった

「“だって” なんだよっ!(笑)」
両手で頬を挟んで顔を覗き込んだ

「渡さなかったから…今があるんだよね?」

「えっ…」

…あぁ、そうか
そうだな…

「ん~~っ!じゃあ許す!(笑)次は欲しい!約束だよ(笑)」

「先生… 」またポロポロと泣き出した

「今の僕は君の先生じゃないだろう(笑)」

「あっ、あの、」
スマホを取り出し僕に画像を見せた

「これをずっと見てました…」

これは…
制服を着た奈生と僕が一緒に写った卒業式後の画像だった

今にも泣きだしそうな目で笑顔を作っている奈生と
そんな奈生の気持ちを微塵も知らない笑顔の僕の姿がだった


――奈生との接点は本当にあったんだ…

…胸がジンとなる


「御守りみたいにずっと持ってました...早見先生が私にくれた言葉と。」

「僕なんて言った?」

「“卒業おめでとう。幸多き人生になりますように” と。早見先生のその言葉通り 今とても幸せです。」

また奈生の目からポロポロと涙が落ちてきた

きっとこの時 奈生に告白されていたとしても
僕は生徒の奈生の気持ちを受け取ることはしなかっただろう

高原で出会った時その事を知らされたとしてもきっと同じだった

“気持ちを拒否されるって思って恐かった”

だからずっと隠してたんだな…

「…また君と出会えて 僕は本当に幸せだ…(笑)」

また手を繋ぎ歩きだした
時々 グズッと鼻をすする音が聞こえる

ほんと子供みたいだ(笑)


このまま
帰りたくないなぁ…

敢えて人通りの少ない遠回りの道を選んで歩く

ずっとこのまま君の傍にいたい
そして…

―― 君と夫婦になりたい

「話があるって僕言ってたよね。」

「ん…」

「僕ら付き合って三ヵ月だな。」

「はい。」

「まだ三ヶ月… 早いかもしれないけど。僕と一緒に暮らさない?」

「嬉しい...」

――え?
OKってこと?

「…じゃあ」

「私も一緒に暮らしたいです…(笑)」
奈生の潤んだ瞳はキラキラしていた

「ん、一緒に暮らそう(笑)」

奈生を強く抱きしめると
空から雪がふわふわと僕らの上に舞い落ちてきた


「やっぱり降ってきた(笑)」

「この冬の初雪だな(笑)」


そしてクリスマスイブに

プロポーズしよう…






―――――――――


beautiful world 16

2021-12-02 15:47:00 | ストーリー
beautiful world  16






奈生と付き合い始めて3ヶ月

明日から12月
今年 最後の月

街はクリスマス仕様の街灯や飾り付けに変わり
時々クリスマスの音楽も耳にするようになった

奈生との交際は変わらず順調だった――

毎日メールをし 時々電話をする

奈生と付き合うようになって
初めてビデオ通話というスマホ機能を使うようになっていた

やっぱり声だけより顔が見たいからな!

ビデオ通話って本当に近くにいると感じられる
でもその画面の奈生の頬には触れられない

それがもどかしくて
より一層 会いたくて恋しくなる時もある

最近は奈生の仕事が忙しくて直接会う機会が減っていた

今でも時々気になるのは奈生の職場の葉山だった

葉山は毎日会社で奈生と会っていると思うと
やっぱりモヤモヤする

あれ以来 お互い葉山の事には触れていない

でも僕の中ではずっとあいつが気になっていた…


「奈生。今日も仕事忙しかった?」

『うん、月末だから特に(苦笑)』

「職場で、その…忘年会とか、やっぱりあるよなぁ。」

『毎年同じ店でやっていますね(笑)』

もちろん葉山もそこに参加するだろう

「そっか。忘年会の夜、迎えに行こうか。」
酒に弱い君と葉山が一緒だと思うだけで気になる

『え?そんな、遠いし、』

「僕が行きたいんだ。」

『陽太さん、もしかして今 寂しいんですかぁ?(笑)』と奈生が冗談ぽく言った

「寂しいに決まってるだろう(苦笑)」

こんなにも僕は
素直に気持ちを言葉にするようになっていた

『私もです(笑) えへへ(笑)』
照れて笑う君は今も変わらず本当に可愛い

付き合い始めた頃よりずっと
君を好きになっていると実感する


一緒に暮らしたい――

日々少しずつその想いが積もっていた

「奈生… 大事な話があるんだ。」

『なんですか??』

「電話じゃなくて会ってから話すよ(笑)」


―――


部活が終わり生徒を全員学校から送り出した
今夜は平日だけど食事をする約束をした

それは大事な話をするためだ

待ち合わせた駅に行くには1時間近くかかるだろう
早く机の上を片付けて向かわないと約束した時間には間に合いそうもない 


「早見先生、ちょっといいですか?」

鈴木先生が声をかけてきた

「この後予定があるので、今度じゃダメですか?」

「じゃあ手短に。」

廊下は声が響くからと外に出た


鈴木先生はたまたま休日に僕を見かけたと話した
「早見先生はいつから田中と付き合ってたんですか?」

――えっ…
奈生のことを知っている…?

「どうして…鈴木先生が知ってるんですか…?」 

「二人が一緒に歩いてるところを見かけまして。田中は僕が担任していたクラスの生徒だったんですよ。」
 
――は?

「ここの卒業生だったんですか?」


――どういうことだ!?
そんなこと奈生から一言も聞いていない

「まさか知らなかったんですか?早見先生がここに来た時は田中は在校生でいましたよ。でも教科担任じゃなかったらわからない…か…」

「…ええ」
頭が混乱してきた

「本当に知らずに付き合ってたんですね…」

「…はい...全く」

――じゃあ僕のことを奈生は高校生の頃から知ってたことになる


「しまったな… 内緒だったのか。余計な事を言ってしまった。あっ、もう田中も成人してますし僕は二人の恋愛にどうこう口を挟むつもりは全くないですからね(苦笑)」


――奈生は何故それを隠してたんだ…


「早見先生…」


――いつも不自然に駅周辺を気にしてたのも隠していた事と関係していたのか?

「すみません…僕、もう、行かないと…」

どうしてずっと隠してた?
隠す必要なんか何もないだろう?


気付いたら僕は駅まで全力で走っていた

彼女の笑顔がフラッシュバックする

隠さなければいけないような事ってなんだ?

なぜ?
なぜ!?


奈生――





―――――――――――――