気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 15

2021-11-24 22:22:00 | ストーリー
beautiful world 15




今日の予定は昼までは柔道の稽古
稽古が終わり飯を食ってから一旦風呂に入るために帰宅して
それから家電屋に行く予定を立てていた

なのに今…
 【奈生ちゃんが僕のウチでシャワーを浴びている】

まさか今日こんな急展開が起きるとは全く予想もしていなかった

この状況に
心の動揺が激しい

「あ…!」

“アレ”が無い!

もう何年も使う機会がなかったんだ
当然持ってるはずがない

まさか今日 突然必要になるとは

彼女がシャワーを浴びている間に買って帰らないと

僕は一番近いドラッグストアに急いで向かった



―― 奈生ちゃんの純粋で無邪気な笑顔が脳裏に浮かぶ


性急すぎた?
それとも君は不本意なのに
僕が強引に合意させてしまったとか?
もう一度 君の意思を確認するべきなのか?

あぁ 今日の僕はずっと走ってるな…


ーーー


部屋の鍵を開けると静かだった
もうシャワーの音はしていない…

もしかしてもう出てるのか...?


紙袋を取り出した
まずはこれを隠さないと…

「どこに行ってたんですか?」
彼女が写真の部屋から突然出てきて驚いた

大きくてダボついた僕のTシャツにジャージの裾を巻き上げている

着てるのは普段僕が着てる服だけど
奈生ちゃんが着るとなんかちょっと…

エロい…


直視できないまま然り気無く紙袋をジーンズの後ろポケットにねじこんだ
飲み物を買ってきたとスポーツドリンクが入った袋を見せた

「急いで買ってきたんですか?(笑) 汗、凄いですよ?(笑)」

「も、もう一回汗流す、よ、」

着替えを取りに寝室に入り
ポケットにねじこんだ紙袋から少しへこんだ箱を取り出して中を開けた

これを使う時が来たのか…

枕の下に入れた


ドクドクと心臓がうるさい!
これは大会の試合前なんかよりずっと緊張してる

なんでもない平常なフリをして着替えを持ち寝室を出た
「ほんと今日は暑いなぁ…(笑)」

脱衣所のドアを閉めた


落ちつけ心臓!

初めての体験になる彼女を
何年もご無沙汰のこの僕が…

不安もあるけれど
彼女を想う気持ちは

今日のあの男との出来事で
より強くなった



ーーー


ドキドキがずっと止まらない
また顔が熱くなってきた

長年憧れていた大好きな人にこんなみっともない身体を全部晒してしまうと思うと

羞恥心と恐怖と緊張で逃げ出したくなってきた

いいなんて返事するんじゃなかったかもしれない


先生がシャワーから出てきたら直ぐなの?
普通、なにか暗黙のルールとか合図みたいな事とかあるの?

私は何をすればいいの!?

全くわからない…
こんなこと25にもなって今更友達にも聞けないよっ!


「ぅん~~っっ!!」
スマホを握りしめた

「なんだ!? どうした!」
驚いた表情で先生が立っていた

「検索… 」する間がなかった…

「検索?」

こういう時なにしたらいいのかなって、何も検索できなかったことを話すと先生は愉快そうに笑った

笑ってくれて逆に緊張がほぐれた…(苦笑)


「いろいろ考えてくれたのか(笑) 実は僕も考えてたけど…もう考えないことにする。」


先生…

「だから今度は恐がらないで。」

「え?」

フッと抱き上げられた
でも今度は何故か恐くない…

「先生…?」

「“陽太”(笑)」

「陽…太さん」
初めて先生の名前を口にした…

「僕も奈生って呼んで良い?」



寝室のベッドに降ろされた
…ドクン ドクンと鼓動を感じる

「恐くてやめたいなら今しかない。本当に良い?」

大好きな人の優しい微笑みが
私の不安が消していく…

「うん… 」



ーーー


彼女は眠ってる

時計を見ると夜の7時
晩飯を作ってから起こしてあげよう

冷蔵庫から抵当な野菜と玉子を出した


奈生の全てが無性に可愛いくて…
「ふぅ…」

僕は元々淡白で性欲は強くない方だとずっと思っていた

でも…

腹は減ってないと思っていたのに一口食った瞬間
本当はめちゃくちゃ空腹だったことに気づいたような

そんな感じに似ている



――もっと抱きたい

でも初めて経験する彼女に無茶はできないと思っていたからな

このままずっと僕の腕の中にいて欲しいとか
僕だけを見て、求めて欲しいとか


彼女を抱いている内にそんな欲が湧いてきた

こんな独占欲は
舞の時には無かった感情だ



職場のあの葉山という男の顔がチラついた

あの男は間違いなく奈生のことが好きだ

そういう目をしていた――


―――


晩飯を作り終え寝室に入ると
君はまだ眠っていた

「そろそろ起きない?腹減ってない?」
声をかけると奈生はモソモソと布団の中で動いた

「もう7時半だ(笑) 晩飯食お?」

「う…ん」
身体を起こした彼女の
白く柔らかな胸の膨らみが見えた

さっきまで見ていたのに
つい目を逸らしTシャツを渡した

不完全燃焼だからかまた身体が反応しそうになる

「腹、減っただろう?適当に作ったよ。」

「ふふっ(笑) 先生の手料理が食べられるなんて…贅沢(笑)」

まだ寝起きでぼんやりした奈生の微笑みが色っぽい女に見えた

あぁ… 
やっぱりまだ足りない――

「僕は奈生の先生じゃない...」

彼女にキスをし
また抱いた――


―――


「ごめん!本当にごめんっ!!」

「そんな、大丈夫でしたから(笑)」

――時間はもう午後10時を回っていた

「叱られた…?」

「そんな(笑) 私子供じゃないんですよ?それに明日も休みだし大丈夫です。そんな心配そうな顔しないでください(笑)」

彼女は家に電話して
友達の家に泊まるとご両親に嘘をついた

いや、一緒にいたいと言う僕のわがままで嘘をつかせてしまったのだ


「嘘をつかせてごめん。本当に良かったのかな。」

「泊まっちゃ駄目なんですか?」

「違うよ、そうじゃなくて、凄く嬉しいんだ!」

彼女はクスクスと笑った
「うん。私も嬉しい…(笑)」

やっぱり可愛い…
抱きしめるとギュッと抱きしめ返してくる

「なぁ奈生。一緒に風呂入らない?」

「それは流石にちょっと…(苦笑)」
困った表情でうつむいた

「どうして?恥ずかしい?」

「うん。」

「もう全部見てるのに。」

「そういうこと言うのやめてくださいっ」
叩かれたのに全然痛くない(苦笑)

「あははははっ(笑)」

イチャイチャするって
こんな感じだったことを思い出した


――僕は今 最高に幸せだ

「ずっとこうしてくっついていたい。」
奈生を抱きしめた

「陽太さんはそういう人だったんですね(笑)」

「そういう人?」

「甘えん坊さん(笑)」

「あははは(笑) それは僕も知らなかった(笑) 幻滅した?」   

「可愛いです(笑)」

「可愛い?(苦笑)」

「ふふふっ(笑)」


ーー こういう時間がずっと続けば良いなと思っていた






ーーーーーーーーーーー

beautiful world 14

2021-11-18 14:55:00 | ストーリー
beautiful world  14





「これから何か予定入ってる?」

「特には… ボーリング7ゲームもしたしちょっと疲れましたし終わったら帰るだけでした(苦笑)」

でも帰りたくない…な

「え?7ゲームもしたの?」

ですよね(苦笑)
私もそこまですることになるとは思ってなかった

「ボーリングそんなに好きなんだ(笑)」

「それは私じゃなくて、」
あっ…

「彼がボーリングしたかったんだ(笑)」

私ってほんとデリカシー無さすぎだ

「この後時間あるならどっか行かない?疲れてるならゆっくりできるとこでも行く?」

ゆっくりできるとこ?

「僕 稽古終わりだし汗くさくない?」

「そんなことは…」

え?
ゆっくりできるとこ?
汗くさくないかって

まさかのラブ…
「カフェでもって思ったけど、汗くさいなら入りづらいかな(苦笑)」

私 何恥ずかしい勘違いしてんだろう!
先生がいきなりそんなとこ行こうなんて言う訳ないじゃん(苦笑)

「汗くさくないですよ?」

「一旦家に帰ってシャワー浴びてから出直していい?(苦笑)」

「私もついていっても構いませんか?というか…カフェじゃなくて先生んちでも良いですけど…」

「僕んちでいいの?(笑)」

「写真見たいですし…(笑)」
というか、先生と二人きりの方が嬉しい


電車に乗って二駅先
駅から徒歩10分ぐらいで先生の家だから近い

休日だけど最寄り駅が高校に近いから一応注意しておかなくちゃ

電車は少し混んでいて乗り込んだ反対側の扉の手すりに掴まった

フードを被りマスクを着けたら先生が不思議そうな顔で私の顔を覗き込んだ

「暑くない?」

「いえ、、」

だって誰に見られるかわかんないもん

電車を降りて改札を出ると
「あ!早センだ!」

女子高生の三人組が先生に声をかけてきて私は通りすがりの他人のふりをし駅を出た

「あれ?どうした。部活か?」

「そう練習~。今から遊びに行くんだぁ(笑)」

「試験も近いんだからちゃんと勉強しておけよ?」


教師の顔の先生、久しぶりだ(笑)

やっぱり教師の早見先生も素敵だなぁ…
私も高校生の時にあんな風に気安く先生に話しかけたかったな

でもそれじゃ今みたいな恋人関係にはなれてないよね…(苦笑)


「じゃあねぇ~早セン(笑)」

この駅ではこんな風に誰かと会う危険があるんだよね、ほんと要注意!


「お待たせ(笑)」

「ささっ!早く行きましょう!」

また誰かに会うかもしれませんからね!
足早で歩く私に先生はクスクスと笑いながら後から着いてくる

「そんなに急がなくても、、(笑)」

先生のアパートが見えてきた
ここまで来れば大丈夫

「笑いごとじゃないですよ。誰かに見られて噂を立てられたら先生のお仕事やりづらくなりますよ?」

「もし聞かれたら“彼女”だって言うから大丈夫(笑)」

「大丈夫ってそんな、ダメですよ~(苦笑)」

「どうして??教師だって恋愛や結婚も当然してるのに。」

先生はのんきだなぁ…

階段を登り一番奥の先生の部屋の前に着いて
先生は部屋の鍵を取り出しドアを開けた

「おじゃまします(笑)」

先生は熱気がこもってる部屋の窓を開き 冷蔵庫から冷たいお茶を出しグラスに注いでテーブルに置いた

「即行で入って来るから待っててね。」

「ゆっくりでいいですよ(笑)」


先生がいない先生の部屋
写真のある部屋で写真のアルバムを開いた

先生といろんな所に撮影旅行とか行けたらいいな… 

一緒にキャンプしたりとか?
先生ならソロキャンプとかやってそう(笑)

「ふふっ(笑)」

昼間撮影で回って夜は温泉旅館とかに泊まってまったりと...

胸板厚いし浴衣も似合いそう(笑)

紅葉で色づいた紅葉や銀杏の葉が鮮やかな写真

もう直ぐしたらこんな紅葉が見られるかな(笑)
写真撮りに行こっ!


“舞” のアルバムが目に入った

このアルバムだけはまだ開く勇気がない…

きっと今でも時々見てるからいつでも見られる所に置いてあるんだろうか...


リビングの隣の部屋の扉を少し開き覗いてみた

大きなベッドが置いてあった

ダブルベッド?
先生身体大きいもんねぇ(苦笑)

起きた時に乱れたままの掛け布団

目が覚めて眠そうに起き上がる先生の姿が想像つく(笑)

「ふふっ(笑)」

布団を綺麗に直してると…
「ごめん、ありがと。まさか今日田中さんに会えるとは思ってなかったから、、」

まだ髪が濡れたままタオルを被ってる先生が立っていた

早っ!もうお風呂出たんだ!
「ほんとに早かったですね!」

「君が来てるのにのんびり入ってられないよ(笑)」

「前髪降ろしてるの初めて見ました(笑) 良い感じです!(笑)」


先生はそう?と言って笑いながら髪をガシガシ拭いた

濡れた髪の先生
雰囲気が変わるんだ

なんだかドキドキする…

水を飲む先生が
「田中さんも風呂入る?」と普通に聞いてきた

それが凄く自然だったから戸惑った

普通は彼氏の部屋に来るとお風呂入るものなんだ!? 

顔がカーッと熱くなって汗が滲んできた

「あ、変な意味はなくて、電車の中で暑そうだったから、、ははっ(笑)入らないよね(苦笑) 」

ビックリしたぁ…
彼氏の家でお風呂に入るのが普通なのかと思った

初めての交際
初めての彼氏とお付き合い

25にもなってわかんないことが多くて恥ずかしい…

「あ、そういや7ゲームもボーリングして腕疲れたんじゃない?」

「はい、だるいです(苦笑)」

「よし、どれどれ。」
私の隣に座って腕に触れた

「い、いいです、ほんと、」

「明日辛いかもよ?(笑)」

私の太い腕を先生に触れられているのが恥ずかしくて顔から火が出そう

「少し熱持ってるから冷やそうか。」と立ち上がった

「私太いから…ほんと痩せなきゃ…」
マジでこのままじゃ…

「まだそんなこと気にしてるのかぁ。」と持ってきた湿布を私の腕に貼りながらチラッと私の顔を見た

「そりゃ…気にしますよ。」

「僕は初めて触れた時凄く良いなって思ったんだけど。」  

初めて触れた時…?
「あ、電車の中で立ったまま爆睡した時ですか!?」

「そうそう(笑)」

「もうイヤだ…思い出さないでください…」
ずっと寄りかかっててきっと重かったに違いない

「ほんと…迷惑かけてすみません…重かったですよね。」

「え??普段から体幹鍛えてるし全然大丈夫だったけど?」
確かに鍛えられてて凄いですけど…

「田中さんぐらいなら軽くお姫様抱っこぐらいできるよ。」

「ほんとですか!?」

「そんなに頼りないと思ってた?ならやってみようか(笑)」

「いやいや!いいです、いいです!!」

全力で拒否すると目を細め怪訝そうな顔をした
「信じてないな。そんなに弱っちい男だと?」

「そうじゃなくて、先生はウエイトリフティング選手じゃないんですよ!?」

その言葉に先生は爆笑した
「頭上まで、持ちあげる訳じゃ、ないし、、くくくっ(笑) 」

「そんなに笑わなくても...(苦笑)」

「あーなんか悔しいな。そのくらいできるのに。」
少し拗ねた顔をした

「そんなことしなくていいんですっ!先生だって稽古でお疲れでしょ?」

「疲れてたってそのくらいできるんだっ。」
やっぱり負けず嫌いみたいだ…(苦笑)

「君はお姫さま抱っこが嫌いなんだな。これも覚えておく(笑)」

「そういう訳では…」
ないんですけど…

「風呂上がりだから暑いなー。冷蔵庫からお茶持ってきてくれる?」

「あ、はい、」

立ち上がったら先生も立ち上がった

すると足がフワッと宙に浮いた
「えっ!?」

「ほら、できるだろう?(笑)」

人生初めてのお姫様抱っこをされた

それはめちゃくちゃ
「こっ、恐いっ!恐いー!」

先生の首にしがみついた

「あはははははっ(笑)」
余裕で笑ってる

「やっぱり初めてなんだなー!(笑)」
落ちそうで恐くて感動どころじゃない!

「仕方ないなぁ~(笑)」
危なくないようにベッドサイドに座るように降してくれた

片膝を立て目線を合わせるようにしゃがんだ先生は
「人生初のお姫様抱っこは恐かったかぁ(苦笑) 初めてが僕とは嬉しいね(笑)」と笑った


“人生初めて”
先生とは初めてのことばかりですよ…

「キスも…初めてですよ、、」

少し驚いた表情をした
「…そうか。君の人生初を僕は2つも貰ったのか(笑)」

眉尻を下げて優しい表情で微笑んだ

唇が重なる…
初めての甘い大人のキスだった

溶けていくような不思議な感覚がした
頭がふわふわする


「僕はこんなにも強欲な男なんだと君と出会って思い知ったよ。」

強…欲…?

「君の3つ目の“初めて”も欲しい。」

「3つ目…?」

「君の身体も… 欲しい。駄目、かな。」

そんなこと聞かないで欲しい

“いいよ”って
どう答えたらいいのかわからない…

「急がないよ。いつかで良いんだ(笑)」


先生――

「だからいつか僕に、」

「いつでもいい…ですよ 」

「それは…今でもっていいってこと?」


言ってしまった








ーーーーーーーー


beautiful world 13

2021-11-10 21:48:00 | ストーリー
beautiful world  13






僕は柔道の稽古が終わり
何気なく電車の車窓から外を眺めていた

電車は次の駅に停車するため減速に入っていた

――え…?

今のって奈生ちゃんだったような
見間違い…か?

でも僕には奈生ちゃんが困っているような泣いていたように見えた

電車は完全に停車しドアが開いた瞬間電車を降りた
人をかき分けながら改札出口に向かいながら

“まさか”という思いと
“人違いであって欲しい”という気持ちが入り交じる

改札を出て走りながら奈生ちゃんに電話をかけた
でも電話に出ない

あれは本当に奈生ちゃんだったのか?
泣いていた?
気のせい?
見間違いか?

僕は全力で走った

さっきまでの柔道の稽古で身体は疲れきってるはずなのに
こんなにも全力で走れるのは 

それだけ僕は君を想ってるってことなんだ…

見えた!
やっぱり見間違いじゃなかった


ーーえっ
なん、だ…?

見知らね男が彼女の腕を掴み
それを拒む君の姿が見えた

その瞬間 全身の血液が逆流し沸き立つほどの強い闘争心が内側から汲み上げてきた

彼女を奪われたくない
守りたいという強い思いと

もう二度と大切な人を放さないという決意に似た思いも同時に湧き上がってきた

やっぱり僕には君は必要な存在なんだとあらためて知った瞬間でもあった


ーーー


先生は私を一切見ようとせず
一刻も早くあの場を立ち去ろうと私の手を引っ張って歩く

「先生、あのっ、、 」
歩くの、早い、、

歩く早さがゆっくりになった

「もうプライベートであの男と二人きりで会わないで欲しいんだ…」

やっと私の顔を見てくれた先生のその表情と声はいつものように穏やかになっていた

「さっき君が言った“私の事情に付き合ってもらっただけ”って、どういう事情だったの?」

「すみません…ほんとは大した理由じゃないんです… 言うのも恥ずかしい話で…」
 

実は最近ダイエットしなきゃって思ってたことや

先生の家に行く前に決まっていた約束で断りきれなかったこと

それを先生に言い出せなかったことを

恥ずかしいけど私は正直に伝えた


「先生に誤解されたくなくて言わなかったんです…でもこんなことになっちゃって…本当にごめんなさい…」

「事前に聞いてたら絶対行かせなかったな(苦笑)」
眉尻を下げ 微笑んでくれた

「それに僕は今の君は十分魅力的だと思ってるのに(笑)」

先生は私の贅肉を知らないから(苦笑)

「それと僕は…」
歩みを止めた

「君を独占したい気持ちがかなり強いみたい。今回のことでよくわかった(苦笑)」

今 胸がキュンってなった…

「これからもこんな風にお互いを知っていかない?(笑)」
眉尻を下げ 優しく微笑んだ


私達はそのまま
川沿いの遊歩道を歩いた

休日の割に歩いている人が少ない



先生は今日は柔道の稽古日で

稽古が終わって電車に乗っていると車窓から私を見かけ全力で駆けつけたと笑った

「動体視力が凄いんですね。走ってる電車から見えたなんて(笑)」

「駅が近かったから電車が減速してたんだ(笑) 君が他の男に奪われそうだったから焦ったよ(笑) ははっ!」

私は先生一筋
だから心配ないです

「それだけ僕は君が大切なんだ。」
先生の手の力がこもった

私の手を握る力も 
見つめるこの瞳も

全力で駆けつけてくれたことも
葉山さんと争う姿勢も発言も

全て私への想いがあったからってわかるから…

私は世界一の幸せ者だ…


「何故泣くの…?」
困った顔をして微笑んだ

生まれて初めて恋をした人…
高一の時に一目惚れをしてからの9年間

私は先生しか好きになれなかった


「先生は知らない。私の方が先生よりずっと大好きだってこと…」

先生は一瞬言葉に詰まったような表情をした

「もうっ(笑)」

苦しいくらい強く抱きしめられた
「僕だって負けないくらい君が大好きだよ。」                               

先生の大きく硬い手が顔を包んで
先生の唇が私の唇に重なった



―――


突然俺と彼女の前に
以前から気になっていたあの“先生” が現れた

なんなんだよっ!
付き合ってる男はいないなんて言ってたくせに
やっぱ“先生”ってカレシだったんじゃねぇかよ!!


...そうじゃないかって
薄々思ってたけどさ...

身長は俺より少し高いくらいなのに
俺より何倍もデカく感じたのは

威圧感や気迫が凄くて
まるでヒロインを守るために現れた正義のヒーローみたいに見えた

そして俺はそのヒーローに負けちまう悪役キャラみたいに瞬殺で捻り潰されたような

そんな惨めな思いだ

悔しい…
悔しい…!
悔しい!!


俺だって彼女が好きだったんだ

初めて本気で好きになった女だったんだ…

誰かのために
彼女のために
初めて変わろうって思えたんだ

こんなに悔しく惨めな気持ちも
こんなに辛い胸の痛みも

初めてだ

あいつみたいに
俺もヒーローみたいな漢になれんのかな…

こんな事で涙が出るなんて
俺やっぱ小せえ男だわ…

悔しい
情けねぇ…




――――――――――

beautiful world 12

2021-11-07 14:53:00 | ストーリー
beautiful world  12




ーー  “約束。絶対に守れよ。”

今日は葉山さんとボーリングの約束の日…

先生と毎日メールや電話をして
ウキウキしてたこの一週間

昨日まで完全に葉山さんとの約束を忘れてしまっていた

なんで…

なんで私約束なんてしちゃったんだろっ!
なんで忘れてたんだろーっ!
私のバカ〜ッ!!


「おい。何やってんだ。」

「行きますよっ!」

思い出した時に今日のこと先生に伝えておくべきだったかな…

まさか先生とお付き合いできるなるなんて奇跡が起きてしまったんだもの!

浮かれて忘れて当然だよね!!

もし葉山さんと一緒にいるところを先生に見つかったら…

誤解しちゃう…?
私、嫌われちゃう…?

そんなのイヤだ…

やっぱり葉山さんには仮病使って断れば良かったのかな…

でももう今さら遅い!

とにかく人目につかないように…

パーカーを深く被りだて眼鏡とマスクをし誰にも私だと気付かれないよう葉山さんについて歩く

「なんか、、まるで不審者だぞ… 暑くねぇの?」

「私のことは気にしないでください、話しかけないでくださいっ」

どんなに怪訝そうな目で葉山さんに見られても暑くても今日はずっとこうしてなきゃ!
とにかくこんな人混みにいたくない!

「は、早く!行きましょ!!」

「(ボーリング)やる気まんまんだねぇ(笑)」
ニヤリと笑った

やっとボーリング場に入った
周囲を見渡しても見知った顔はない

「ふはぁ〜!暑かったぁ〜!」

「そりゃそうだろうよ。ほれ。」

葉山さんは自販機で買った水を手渡してくれた

「足のサイズ幾つ?受け付けしてくっから。」

慣れたように受付に向かった

よく見ると普段着の葉山さんって結構オシャレさんなんだな

黙ってたらそれなりに良い男?みたいだけど 何考えてるかほんとわかんない人だからな

根っから悪い人じゃなくて
ただ不器用なだけなんだろうなって最近わかってきた


―――


「葉山さーん。まだやるんですかぁ?もう終わりにしましょーよ。疲れましたよぉ。」

6ゲーム目が終わっても葉山さんは7ゲーム目を続けようとしている…

どんだけボーリング好きなのよっ!!!

「これが最後だっ!今度こそパーフェクトを取ってやる!!」

めっちゃ燃えてる…
もう執念としか思えないんですけど…

「じゃあ一人でやってくださ~い」

「は?何言ってんだ!痩せたいからここに来たんだろ?」

「もう3キロは痩せましたぁー。」

「んな訳ねぇだろっ!ほら、やんぞっ!」

結局 7ゲーム目も付き合って葉山さんは最後の最後で1本だけピンが残ってしまいめちゃくちゃ悔しがりながらもボーリングを終了してくれた

「ほんと腕の力無くなっちゃいましたよ。」

「弱っちいな。図体だけかよ。…あ、いや、すまん… 腹減ったし飯行こうぜ…」


…今 謝った?
葉山さんが? 空耳?聞き間違い?

ほんと
どうしちゃったんだろう…?


ーーー

創作料理のお店に入って周囲を見渡した
よし、ここも知り合いはいないなっ!

「なぁ。なんでそんなに周り気にしてんだよ。」

「えっ、そんなことないですよ?(苦笑)」

「…… 」
怪訝そうな目で私を見てメニューに視線を移した

いつもの葉山さんだ…(苦笑)

そんなにつまらなそうな顔してるのになんで私と今こうして向き合ってるのか全く理解できない

「ダイエット中だもんな。俺が決めてやるよ(笑)」

おや?ちょっと笑った?

「なんでもいいんで早く頼んでください、お腹空いたので!(笑)」

葉山さんが頼んでくれたのはほんとにヘルシーなものばかり

「こんなんで葉山さん大丈夫です??」

「俺は晩飯でガッツリ食うさ。」
と言ってニヤリと笑った

「一応気遣いしてくれてるんですね(苦笑)」

「ったり前だろ。ダイエットに付き合うって約束したしな(笑)」

なんだか超ご機嫌…
今日は貴重な葉山さんの笑顔をよく見る…

って、ちょっと!
約束なんてしましたっけ!?

あ、そうだ
俺が痩せさせる!なんてこと言ってた… 
私、頼んでないんですけど!!


―――

食事を終えてお店を出た

「よし。飯食ったし今から一駅分、歩くぞ!」

そう言って歩きだした
また歩くんだぁ…

できればもうここで解散しませんかね…

線路沿いの道を歩く
ウォーキングというより散歩の速度

やっぱり私のことを気遣ってくれてる…?

何本もの電車が通り過ぎて行く
もう目的の駅が見えてきた

「そういえば、葉山さんなんか話があったんでしたよね?」

「あ、あぁ…」

それっきり黙ったまま歩き続けてる
話は?? なんなのよぅ

「ダイエットなんですけど、これからは一人で頑張りますから葉山さんにはもう、」

「俺が…田中さんに付き合いたいんだ。 」

ドキッとした
 「なんでそこまで、、」

葉山さんの足が止まり
また電車が私達の横を通り過ぎていった

「… 俺、田中さんが… 好きなんだよ… 」


ーーは?



 “好き”って…

真剣で真っ直ぐな視線
でも少し悲しげに見えて

あの夜の葉山さんだった


「いつも会社では私だけ厳しいのに…」

「違うんだ… ほんとは俺、」

「ごめんなさい!私には好きな人がいるんです!」

葉山さんは複雑な表情をした
「俺じゃ… ダメなのか…?」

なんでそんな泣きそうな目をするの?
傷つけてるみたいで胸が痛くなるよ…

でも、私には
「ダメです。」

突然手首を強く掴まれ驚いた

「今まで本当にすまなかった。もっと大事にする。俺、ほんとはもっと優しくしたいって思ってんだ。なのに全然…うまくいかない… 」

最近なんだか様子が変だと思ってた
以前よりずっと優しくなったのは気付いてた

それはそういうことだったんだ…


「わかって欲しい、俺の気持ち、俺は本気で田中さんのこと、」

掴まれた腕を離そうとしても強く握られて振り離せない

「困りますっ、離してください、」

その瞬間
突然 私を掴んでいる葉山さんの手首を誰かが強く掴んだ


「何やってんだ!」


――先生だった


なんでここに…
どうして…

いつも穏やかな先生が
見たことのない激怒の表情をしていた


葉山さんは険しく眉間にシワを寄せた
「お前誰だよ!離せ!」

「お前こそ誰だ。早くこの手を離せ。」

冷静な口調なのに威圧的な低い声に私は動揺した


葉山さんを掴んだ先生の手がギリギリと強く握ると私を掴む葉山さんの手が緩んだ

葉山さんから私を引き剥がし先生の腕の中に引き寄せられた

「せっ、先生、あのっ、この人は職場の先輩で、」

葉山さんはハッとした表情をしていた
「“先生” …だって?」

内緒で葉山さんと二人で会っていたことを知られてしまったことに血の気が引いてきた

「職場の先輩だろうがなんだろうがそんな事は関係ない。この男が今君を困らせているのは事実だ。」

先生の恐ろしく鋭い眼は葉山さんから逸らさない

理性的に話そうとしている口調は力強くて
まるで今から男同士の決闘でも始まるかのように見えた


私の知らない先生の一面だった

「カレシ…なのか?」
葉山さんは戸惑いの表情で私を見た

「そうだ。こんな所でなにしてた。明らかに嫌がっていただろう。」
私を抱く腕の力が強くなりその声も更に威圧的になった


「あの、あの、先輩とは、何でもなくて、、」

私が話しかけても
先生は葉山さんから視線を全然逸らさない

「俺は今 田中さんと大事な話をしてたんだ。邪魔すんな。」

葉山さんも怒りを滲ませている…

本気で大人の男同士が言い争う場面なんて関わったことも見たことすらない

…恐くて震えてきた



「は?話なら電話で済ませられるだろう。なのにわざわざ休日に呼び出してまで話す内容とは何なんだ。それにこれは仕事じゃなくプライベートだろ?一体何が目的なんだ。」

私を抱くその手にますます力がこもった


「俺はただ彼女に、」

葉山さん!それ以上言わないで!
「葉山さんは!今日私の事情に付き合ってくれただけで、本当にそれだけなので、だから先生、」

それでも先生は私を見ようとしてくれない

「二度とこんな風に彼女をプライベートな事で呼び出したり関わろうとしないでいただきたい!もしまたこんなことがあったら次は絶対に許さないからな。」

強い口調で葉山さんに警告を言い放ち 
私の手を強く握りしめその場を後にした

振り返ると葉山さんは何か言いたげな悲しい表情で連れていかれる私を見つめていた

―― 葉山さん


「先生、先生、あのっ、」

黙ったまま真っ直ぐ前を向いて歩く先生のその眼差しは険しいままだった






――――――――


beautiful world 11

2021-11-06 23:41:00 | ストーリー
beautiful world  11






「… 是非、お願いします… 」

彼女のその柔らかな微笑み
あぁ そっか…

一週間ずっと頭の中で考えてたけど
ふと感覚的に答えは落ちてきた

なんだ… そっか
僕はこの人に惹かれてるんだ


「先生…?」


君には他に好きな男がいるってことは感覚的にわかった

でもそれは僕のこの気持ちとは関係ない

「君に惹かれてるみたいだ(笑)」


彼女は驚きと戸惑いの表情に変わっていく

「…どうして私を」

「君が輝いて見えたから。鎌倉に行った日から気付くと君の事ばかり思い出してた…(笑)」

田中さんの瞳が次第に潤んで
瞬きするたびに涙がポロポロと落ちた

どうして泣いてしまったのかわからず戸惑った


「ご、ごめんね!?驚かせた?」

「いえ、すみません、嬉しくて...(笑)」


ーー“嬉しくて”

それって
僕のこと好意的に思ってくれてたって、都合のいい解釈していいのか?



「経った三度しか会ってないし、君のことほとんど知らないのにこんなに気になるのってなんでだろうって。でもわかったんだ。」

この頬を伝う涙も美しく綺麗だと思うよ…


「君のことが好きだって…」


僕は人生で初めて
好きな女性に“好きだ”と告白した


もしかしたらもう
田中さんは僕と会ってくれなくなるかもしれない

でも
気持ちは伝えたい時に伝えないとダメだと思ったから

田中さんはどう思ってる...?

迷惑...だろうか



ーーほんの少しの沈黙が
凄く長く感じた




「私は… 初めて先生を見た時からずっと好き、でした…」


ーーえっ


君の好きな奴がいると思ってた
それが僕だったってこと?

そうか
腑に落ちた

僕に付き合っている人はいるのかと聞いてきたことも
好きなタイプは僕に似てるとも言ったことも


そうだったのか


頬の涙を拭うと
彼女は照れながら絞り出すように呟いた

「本当に… 大好きなんです…」


―― 胸がキュンとした

胸がバクバク音を立てている


何年ぶりだろう
これは本物の

“恋”だ…




夕日に朱く染まっていた部屋が
次第に薄暗くなっていき

彼女の表情が見えづらくなくなってきた

君を抱きしめたい…


「先生、あ、あの、そろそろ暗くなってきましたし、晩飯作りますね(笑)」

「あっ、僕も、手伝うよ(笑)」


きっと今 君も僕と同じように
ドキドキしているんだろう

僕もきっと君も
凄く不器用で

こういう雰囲気に慣れてなくて

だからなんとなくこの空気が照れくさくて気まずく感じてる



部屋の電気を点けると
彼女は冷蔵庫を開いて食材を取り出した

僕も手伝うからと言っても彼女は座って待っててと微笑んだ

まだ鼻の頭が赤くて
可愛い...(笑)



「でもお客さんにそんなことさせられないよ。」

「私が作りたいんです。ふふふっ(笑)」


彼女に笑顔で促され
料理を任せることになった

女性がキッチンに立つ後ろ姿って良い…

背は165くらいだろうか

少しぽっちゃりしたその後ろ姿


やっぱり
抱きしめたかった…


今 僕は君が好きで
君も同じ想いだとわかったことがわかって

凄く嬉しい…


世の中の大勢の男と女がいる中で
自分が好きな人が同じ想いで好きになってくれている

きっとこれは奇跡が起きたんだと思った


だから今は
この嬉しい気持ちを感じていたい…


「先生、お皿何でも使っていいですか?」

「あっ、えっ?いいよ(笑)」

彼女の料理はもう出来上がっていた
そんなに時間経った...?

時計を見ると7時を回っていた
もう30分も経っていた

「簡単な物ばっかりですけど。」

「どこが(笑)30分でこんなに作れることに驚いたよ(笑)」

ポトフにアスパラの肉巻き、甘辛ひき肉野菜にが玉子の上に乗ってる

「旨そ(笑) では、遠慮なくいただきます(笑)」

日頃から作ってる手早さだったし料理上手くないなんてあれは謙遜だったんだ


「次はもっと勉強してきますから、、」

照れくさいのか
目を合わせてくれない


「充分だよ、ほんとに(笑)」


“次は”
その言葉も嬉しい…


「あ、田中さんビール飲む?」

「いえ、弱いので飲むと帰れなくなります(苦笑)」


“帰れなくなります”


「…僕が帰したくないって言ったら…帰らない?」 

みるみる顔が赤くなりフリーズした


「あっ、ごめん(苦笑)変な下心とかじゃなくて、その...写真もまだ全然見てないだろうと思ったからで、ほんと… それ…だけで、、」


思わず言い訳がましく言ったけれど

本音は抱きしめたい
キスもしたい

そしたらきっと
それ以上のことも…


彼女は真っ赤な顔でぎこちなくご飯を口に運んだ

こんなに純粋に素直な反応をする君をちゃんと大切にしないといけないと思った


「そ、そう、ですね、写真、まだ殆ど見せてもらってないから、食後見せてもらいます(笑)」

「ん(笑)」


それから一緒に写真を見ながら撮影した当時のエピソードを話す僕に彼女は笑顔で聞いてくれた

そしてまた一緒に撮影に行こうと約束をした

楽しい分だけ時間が経つのは早くて
時計はもう9時を回っていた

そろそろ家に帰してあげないと…


僕はもっと一緒にいたい気持ちを抑え駅まで送り届けることにした

夜の空気は冷たくて
もう秋を感じさせていた


「寒くない?」

「大丈夫です(笑)」

彼女の口数が少ない
僕らはお互いを意識してる…


ーーここは男のけじめとしてちゃんと言おう

「10分でいい。少し寄り道しても構わない?」

「え?」

途中狭い石段を登ると
小さい展望所があって

そこは昼間は散歩をする年配の人がベンチに座っていたりと見晴らしの良い場所

「こんな場所があるんですね!下の道からは全然見えなかった(笑)」

石段を登ったからか彼女の柔らかそうな頬が赤く染まっていた

まるで子供の頬みたいだ(笑)


「田中さん。」

「はい?」

「僕と、付き合ってもらえませんか?」


彼女からの返事を待つほんの数秒がとても長く感じた


「はい… 嬉しいです…(笑)」

彼女の潤んだ瞳に街灯の光が映りこみ
まるで星が輝いているように見えた

柔らかな彼女の頬に触れると
彼女は何度か瞬きをした

ほんとに君は綺麗だ…


優しく僕の腕の中に入れた

「…嬉しい」

彼女は静かに泣き出した
嬉しくてと微笑んだ

僕への想いが溢れているのを肌で感じる

そんな彼女が堪らなく愛おしくて

彼女の唇にキスをした――



―――


駅までの道
彼女の手を握って歩く

本当はもっと一緒にいたい

照れて口数が少ない彼女が可愛い


「田中さんの料理旨かったなぁ~(笑)今度は僕が作るよ(笑)田中さんほど上手くないけど(笑)」

そんな楽しかった今日の話をしながら…


「またメールします。あの、電話とかしてもいいですか?」

「もちろんだよ!僕もする(笑)」


彼女が改札に入り見えなくなるまで名残惜しそうに何度も何度も振り返りながら僕に笑顔で手を振った 

ーーそして楽しい時間はあっという間に終わってしまった


さっき彼女と一緒に歩いた道を一人歩きながら
今別れたばかりなのにもう寂しい気持ちになっていた


こんなにも僕は田中さんが好きだったんだってことを
身に染みて実感していた


こんな恋しさも嬉しい…







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