気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

たしかなこと 2 (9)

2020-05-22 19:54:00 | ストーリー
たしかなこと 2 (9)






「あっ、、もっと、、もっと欲しい!」

香さんは色っぽい声でおねだりをしてきた



「もっと?」


香さんの茶碗にご飯を “盛った”

今夜は香さんが僕の部屋に泊まる夜
僕も明日は休みで一緒に引っ越し準備を始める


「最近ご飯が美味しくて美味しくて!なんだかちょっと太ってきちゃったんです… 結婚式前なのにマズイ…」


身体がふくよかになってきたという香さん
それも愛らしいと思う


「僕は構いませんよ(笑) それはそれで可愛い(笑)でもドレス大丈夫ですか?」


「やっぱりダイエットしないと!」



気合いが入った言い方だけど
本当にダイエットするのかな


「香さん。ご飯じゃなくて 僕を欲しがって欲しいんですがねぇ? 」


意味がわかっていない顔をした


「え??」


「ここしばらく貴女に触れさせてもらえていません。貴女は僕を欲求不満にする気ですか?(笑) 」


理解したのかハッとした


「このお腹は見せられないです(汗)」

焦った表情でお腹に手を当てた



「なんだ(笑)そんなことが理由?」


「恥ずかしいからダメですっ」


「んー。なら…」


渡そうとした香さんの茶碗を引っ込めた

「しばらく白米抜き!」


「そんなぁ、、」泣きそうな表情をした


「冗談だよ(笑) 沢山お食べ(笑)」

茶碗を差し出すと笑顔で受け取った



香さんのこの美味しそうに幸せそうに食事をする姿が僕は大好きだ

初めて一緒に食事した時からそうだった


この人と一緒に食事をするのが楽しくて何でも美味しく感じる


「なんですか?」


「いいえ?なんでもないですよ(笑)」


福福したというお腹を今夜は見せてもらうとするかな(笑)





一緒に布団に入り 香さんに触れようとしたら本当に避けられた


「本当に駄目なんですか?」


「駄目なんですぅ~」と口を尖らせた

その言い方も顔も可愛くてズルい



「ならもっと暗くしたら?」

部屋を真っ暗にしてカーテンを開いて薄いカーテンだけにすると月明かりが差し込んだ


「そんなにしたいんですかぁ~?」

困ったような声で目だけ布団から出して僕を見ている


「だって香さんと久しぶりにこうして一緒にいられる夜ですから。


「嫌わないでくださいね?」


「僕が貴女を嫌う訳ないでしょう(笑)」

微笑んで髪を撫でた





香さんに触れる
手に伝わる感触と体温

少しだけふくよかになり 柔らかで滑らかなその女性らしい肌に触れると僕の心と身体は高揚してきた


月明かりの下の貴女はとても美しい

指先や唇で優しく 時に強く触れながら全身に愛撫をすると艶かしく陶酔していく


いろんな表情が見たい 声が聞きたい

貴女の中にゆっくりと入り
緩急をつけながら貴女を奏でると

それに合わせるように吐息混じりの艶っぽい快楽の声を上げはじめる




ねぇ 香さん…

僕はね
恒久的に変わらず存在するないものなんてこの世界にはないと思っていたんだ

ーー たとえ 愛でさえも


いつか消えてしまうからこそ
壊れないよう いつまでも大切にして

いつもどんな時も心は繋がっていようと意識し続けてきたけれど


もしかすると本当に恒久的に変わらない愛が
この世界にはあるのかもしれないと

貴女に出逢えたことでそう思える


貴女の この柔かな唇に唇を合わせながら

“ねぇ香さん こうして僕らが出逢えたことは奇跡だと思わない?”


そう 心の中で貴女に問いかけた

もし本当に神がいるなら 心から感謝をするよ




ーーー




紘隆のインスタに

今度の日曜に国営昭和記念公園で撮影する予定と書かれていた

イチョウが色づいている時期だからそこに行けば紘隆に会えるかもしれない





ーー 日曜



撮影で訪れるのは何時頃だろうか
予想がつかないから朝から待ってみたけれど

紘隆はなかなか現れない



すると 一人の男性が僕に話しかけてきた


「今日は暖かくて良かったな(笑) あれ?カメラは?」

どうやら紘隆と間違えている様子だった
やはり紘隆はここに今日必ず現れる ーー


「私は白川宣隆と申します。紘隆は私の弟です。」

「は?(笑)」


紘隆と待ち合わせをしているのかを問うと待ち合わせてはいないが紘隆は13時頃にここに来ると言ったようだ

13時まであと15分… か


彼は初対面の僕にも気さくに
紘隆と本当によく似てると笑顔で話しかけてくれた


彼は紘隆とは写真仲間で今度写真のコンクールにチャレンジしてみるらしい

そんな紘隆の近況が聞けて良かった


「あ、来ましたよ。」

振り返ると紘隆がスマホを見ながら歩いてきた
顔を上げ 僕に気付くと立ち止まった



“…なんで”

口の動きがそう呟いたように見えた



紘隆に歩み寄った

「元気、だったか。」

「まぁ。…変わらず。」

僕から視線を外した

まだわだかまりがある様子だった



「すまないが、場所を変えて今から話せないか。」


「突然だな。まぁ、構わないよ。」



近くの喫茶店に入った

僕と弟の紘隆とこうして膝をつきあわせて会うのは17年ぶりだ

歳を取っても
僕らはやっぱり似ていた



「悠太くんはもう大きくなったか?(笑)」


「悠太はもうガキじゃない。25で今は一人暮らししながらつまんない会社員なんかやってる。」



あぁ こいつはこういう奴だった

変わらないな


あの頃のように僕に対して反感は持っている様子だが強く反発する嫌悪感まではもう無いように見える

紘隆は僕と見た目はよく似ているけれど性格は正反対

冷静に客観視する僕に対し 弟の紘隆は感覚で判断し自分の感情に素直だ

好きな女性に対しても
僕は好きだからこそ慎重になるけれど
紘隆は玉砕覚悟で猛アピールをする

フラれて一時的には落ち込むけれど直ぐに立ち直れるタフな男

会社員なんてクソみたいなつまんない仕事なんかできるか!という紘隆は割烹料理屋で板前として修行をしいずれ自分の店を持ちたいと言っていた

きっと もう自分の店を持っているかもしれない



本題である母に対する僕の謝罪の気持ちや
当時の思いを伝えると

紘隆は表情ひとつ変えず
腕を組んで黙って僕の話を聞いていた



紘隆の僕への気持ちを聞いた


「別に俺は… もう何も。」


「なら何故 連絡してくれなかったんだ。」


「俺と兄貴はそもそも性格合わなかったろ。それに俺は俺で自分の店出して軌道に乗せるまで大変だったんだ。」


「そうだとしても僕はずっとお前のことを心配してたんだ。」


「兄貴がそれ言う? 兄貴だって母さんに会いに行かなかったろ。人のこと責められる立場じゃないだろ。母さんも同じ思いだったんだ。兄貴のことばっかずっと気にしてたよ。ずっと心配してたんだ。」



ーー 胸が痛んだ



「そう、だな。すまない…」


「話ってそれだけ?なら俺、用事あるから。」

席を立った


「待て、連絡先を教えてくれ。」


「なんでだよ。必要ないだろ?」


「今度 再婚するんだ。」


驚いた表情をした
「…再婚?」


「彼女がお前を見かけたと言っていた。お前にも結婚式に来て欲しい。」



怪訝そうな表情をした

「は?なんで俺が参列しなきゃならないんだ。」


「お前は唯一の兄弟だからだ。お前に彼女を会わせたいんだ。」


渋い表情で少し考え
財布から一枚の名刺を取り出し僕に差し出した

「…結婚式に出るかどうかはわからない。じゃ。」


完全に心が打ち解け合えたとは言えないが
連絡先を教えてくれたことは大きな成果だった


香さんに紘隆と会えて話せたことを報告すると喜んでくれた

その夜 名刺に書かれているメールアドレスに

会えて良かったというメッセージと僕の電話番号と結婚式の日時と場所を記して送った





ーーー




香さんと暮らす家を一緒に決めて
一緒に引っ越し準備をした


やることが多くて大変だけど香さんとの作業はとても楽しい


引っ越しを済ませて 一緒に暮らし始めた翌月に予定通り僕達は結婚式をおこなった


披露宴などはなく 後日こじんまりと身内だけで食事会を開いた


結婚式は弟の紘隆は来てくれなかったけれど
結婚式の当日 手紙が届いていた


メールでも電話でも簡単に言葉が伝えられるこの時代に手紙か、と思ったけれどそれもあいつらしいと思った


“結婚おめでとう 今度は幸せになれよ”


ぶっきらぼうに
ただそれだけしか書かれていない手紙


それでも僕は嬉しくて涙が溢れた

「相変わらず下手くそな字だ… (笑)」


香さんは嬉しそうに 隣で微笑んでいた







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たしかなこと 2 (8)

2020-05-17 09:43:00 | ストーリー
たしかなこと 2 (8)






よく見ると髭も剃ってなくて 耳の横や後ろの髪がはねてる


いつも身なりはきちんとしている彼のこんな姿…

初めて見た


それだけ慌てて家を飛び出してきたことがわかった



「僕と弟は子供の頃からとてもよく似ていたんです。年子だから年齢もそう変わらないから双子のようだと言われることもあった。」



紘隆さんの話を話し始めた彼が
何故だか少し小さく見える…


宣隆さんと弟の紘隆さんは幼い頃は仲の良い兄弟だったようだけど

二人が社会人になってお母さんが病で患い

その頃から徐々に不仲になったという


お母さん子だった弟の紘隆さんは毎日お母さんの見舞いに病院に通っていたけれど

宣隆さんはその頃は仕事に追われる毎日でお母さんのお見舞いで顔を出すのも月イチがやっとの程度だったと話してくれた


「でも… 忙しいなんてそんなのただの言い訳だったんですよ。本当はいつだって会いに行けたんです。ただ僕が辛くて… 行けなかったんです。」


子供の頃から兄として厳しく育てられていた宣隆さんは お母さんに甘えることができないまま大人になり

そんな宣隆さんは大人になってもお母さんとのコミュニケーションが上手く取れなくて

会う度に弱っていくお母さんの姿を見るのも辛く でもその気持ちを誰にも伝えることができなくて

宣隆さんは病院へのお見舞いも次第に行けなくなってしまった


そして
お母さんが亡くなって
紘隆さんと音信不通になった…



「僕は自分のことしか考えていなかったんです。母の本心は僕に会いたがっていたようなのに、母は僕が元気にしてるならいいと少し寂しそうに笑っていたそうです。」


「そうなんですか… 」


「もう随分と昔の話なんですけどね。紘隆は母の想いを知っているので僕を許せないのかもしれません。」


「紘隆さんとまた会えるとしたらどうしますか?」


「…どうかな。話ができれば… いいんですけどね。もう連絡が取れなくなってしまってるんです。今は家族とどこでどう過ごしているのか…」




ふとグレンさんと紘隆さんが親しげに話していたことを思い出した

もしかしたらグレンさんなら紘隆さんと連絡が取れるかもしれない


「宣隆さん。今夜、食事に行きましょ。」





ーーー




香さんの店から一端帰宅し

ふと視界に入った鏡越しの自分の姿に驚いて苦笑いした

寝癖を直し髭もきちんと剃ってスポーツジムに向かった


毎日 少しの時間でもジムには通うようにしている
ジムで勧められたプロテインも飲んで

筋力も体力も少しずつついてきた

ランニングで持久力もつけるようにしている

若い彼女と一緒にいて少しでも違和感が無いよう見た目も若々しくなれれば…


帰宅して部屋の掃除をし
夜のデートのために準備をしながら紘隆の事を思い出していた




ーーー




待ち合わせた駅前のコンビニ前に着いたら香さんも走ってきて僕の腕に腕を絡ませた

香さんの方からこんな風に腕を絡ませてくれることが珍しくて僕は内心浮かれていた



「どうしたんですか?珍しいですね(笑)」

「宣隆さん、大好きです(笑)」


…香さん


「唐突ですね(照) 僕もです(笑)」


微笑むと彼女は照れ笑いした

本当に可愛い人だ…



「何のお店に行くんですか?」

「イタリアンのお店です!」


イタリアン…って



「紘隆を見かけた店…ですか?」


「そうです。紘隆さんの情報が少しは得られると思います。」


…… 気にかけてくれていたのか

「ありがとう…」




ーーー



店に入ると外国人オーナーのグレンさんが話しかけてきた

グレンさんは紘隆かと思った!と驚いた


紘隆との関係を説明するとグレンさんは紘隆の情報を教えてくれた


紘隆とグレンさんはカメラの趣味仲間のようでインスタもやっているようだった

グレンさんから聞いた紘隆のハンドルネームで検索をかけると紘隆らしき人物のアカウントが見つかりグレンさんに確認してもらうとそれが紘隆だと教えてくれた




「良かったですね(笑) 紘隆さんと会えると良いですね(笑)」


「ええ(笑) …香さん、ありがとう。もう寒いですね。 そうだ。香さん、ちょっと寄り道しませんか?」



目黒川沿いの紅葉が進んだ紅葉を見ながら歩いた
赤い紅葉の葉が時々 はらはらと落ちている



「美しい景色は貴女と一緒に見たいんです。」


「美味しい物を食べる時も宣隆さんと一緒がいいです。ふふっ(笑)」


僕に微笑みかけた


「さっきの店で紘隆さんと目が合った時、私のことを知らないから当然なんですけど、冷たく感じたんですよね(笑) 私は宣隆さんだと思ったから、その他人を見るその目が… 寂しく感じたんですよ(笑) そもそも紘隆さんと宣隆さんを間違えるなんて私も酷いですよね(笑) ははっ(笑)」


「んー。じゃあ僕も知らない人にはそう思われるという事ですね。気をつけないといけないな(笑)」


「え? “白川部長” は前から近寄りがたい人ですよ?」


「そういう空気を出しているつもりはないのですが(苦笑)」


「なんとなく恐いみたいです(笑)」


「人前で怒ったことなんてないんですけどねぇ(笑)」


「人がいない時は怒ることもあるんですか?」


「イライラすることはありますよ(笑)そういう時は人が離れていきます。あぁ、それはすれ違う見知らぬ人にも自然に避けられるんですよ(笑)

感情は人の意識に自然と伝わるものなんですね。僕の場合は特に伝わりやすいのかもしれない。だから気をつけています。貴女の前では特に(笑)」


「イライラって… 宣隆さんが? え~?想像つかないなぁ(笑)」


「貴女に避けられたら僕の精神的なダメージは相当なものです。だから気をつけてるんです。ふふっ(笑)」


「そうなんですか?」

照れくさそうな表情をした





周囲に人がいないか然り気無く確かめ
香さんを抱き締めると

「温かい… 」と香さんは小さく呟いた


「早く貴女と一緒に暮らしたい。毎朝顔が見たい。毎晩こうして抱き締めたい。」


「宣隆さんはずっと変わらず私に優しくしてくれますね。戸惑うくらい(笑)」


戸惑う?

「香さんだからです(笑) これからも大切にします。」

「あ、甘える宣隆さんもまた見たいです(笑)」


「…甘えて欲しい?」


「はい!是非!可愛いので(笑)」


「可愛い!?」


「はい!可愛いですよ?帰らないでって、ふふっ(笑)」


ほんと、、恥ずかしい、、
顔から火が出そうだ


「…もう、ほんと、、勘弁してください(苦笑)」


「嬉しかったんです。私には素直な気持ちを出してくれたのが(笑)」



自分は甘え下手だと思っていたけれど香さんには素直に甘えられるのかもしれない


「…わがまま言っていいですか?」


「わがまま??」


「結婚前ですけど… 貴女が良ければ一緒に暮らしたい。ずっと思っていました。もちろん、貴女が良ければ… ですけど…」


「それ、わがままじゃないですよ(笑) もちろん良いです!」


えっ…


「本当に?ありがとう(笑) なら貴女のお店の近くで探しましょう!」


「宣隆さんが通勤しやすい場所にしましょ?私の方が仕事に出かける時間が遅いですし(笑)」


「いいえ!もし妊娠した時のことを考えると、」


「え?」


「あ… 香さんは子供… 欲しくないですか?」


「欲しいなんて…言ってもいいんですか?」


戸惑いながらも嬉しそうに瞳を潤ませた

欲しいのに自分からは言えなかった、という事?


「もちろんです(笑) 僕、こんな歳ですけど(笑)」


前から考えていた
経済的なことも含めて

香さんと僕の子供が欲しい


「…ありがとうございます。嬉しいです…(笑)」


嬉しそうな表情でポロポロと涙が溢れ流れた

今までなんでも思ったことを素直に口にする人だと思い込んでいた

僕の年齢を考えて遠慮していたのか...


「もっと僕に甘えてください(笑) 欲しいなら欲しいと言ってください。これは僕からのお願いです。」







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たしかなこと 2 (7)

2020-05-09 19:42:00 | ストーリー
たしかなこと 2 (7)






宣隆さんは何事もなかったようにまた同席の女性の方に向いてしまった

「(今こっち向いたよね!このカレシに似てるよね!)」
スマホの宣隆さんを見比べた

「どうして… ?」

おかしい
今 確実に目が合ったよ?

知らない人のふり?

胸が 痛い…


美南が私と宣隆さんと交互に見ながら
「あれって浮気じゃ… 」


ーー 浮気?

胸がまたズキンと痛んだ


「ははっ、まさかぁ… (笑)」

宣隆さんが浮気なんて

グレンさんが宣隆さんに話しかけている
二人が親しいのは話し方でわかった

「香… 顔、真っ青だよ」


宣隆さんが女性と立ち上がった

また宣隆さんは私の方に視線を向けそうになり私は咄嗟に目を反らした

その間に二人は店を出て行った


「なんで声かけなかったのよ…」
美南は怪訝そうに店の外に出た二人を見送った


だって…
宣隆さんなのに宣隆さんじゃないみたいな…

まるで私のこと
初めから知らない他人みたいな…



食事を済ませて私達も席を立った


宣隆さんに今電話をかけても…
きっと出てくれないよね


見送りに出てくれたグレンさんに声をかけられた

「香織、どうしたの?」

「え?あ、すみません(笑) また来ます(笑)」

グレンさんと美南が戸惑った表情をした


あれ? 涙が…

美南が慌ててグレンさんに挨拶をして店から離れた



「泣くなら何でさっき怒んなかったのよっ」

「私なんで泣いてるんだろ?あはは(笑)」

「そんなの腹が立つからでしょうが!(私もだけど!)」


腹が… 立つ?


「結婚の約束してるのにあんな堂々と彼女の前で平然と浮気する?… あ、もしかして本人じゃなくて双子の兄弟だった!とかかも!?」

「弟はいると聞いたけど詳しくは… 」

「じゃあそっくりな兄弟だったとか!? 」

「どうなんだろ… 」

「そんな偶然、ないか… でも確かめた方がいいからね。」





ーーー



0時を回った
遅くても23時には寝る宣隆さん

必ず寝る前にはメールをくれるけど
今夜はまだメールが来ない


やっぱりあれは宣隆さん… だよね
ソックリな兄弟?

でも兄弟についてきちんと話してもらってない
双子なら双子の兄弟がいると言ってもおかしくない



もう寝よう
夜中に悶々と考えてもろくなことしか浮かばないから

布団に入った

ーーあぁ、、やっぱり眠れない




結局 外が明るくなり朝日が登ってきた

仕事に行く準備しないと…





家の鍵をかけて駅に向かっていたらメールの受信音が聞こえた

開くと宣隆さんだった




“おはようございます。昨夜はメールができなくてすみません。帰宅が遅くなりましたのでメールをひかえました。香さん。今夜会えませんか?”


昨日のあの女の人の話… とか
“話があるんですか? ”

“ただ貴女に会いたい。その理由ではダメですか?(笑)”


ーー いつもの宣隆さんだ



“昨日会いましたよね?”

しばらく返信が来なかった



“それはどういうことでしょう? どこかで僕を見かけたという意味ですか?”

“昨夜、中目黒の店で女性とデートしてましたよね”


あ、電車!
そう送ってスマホを閉じた





ーーー




お店を開いて掃除をしていると
汗だくで息を切らした宣隆さんがお店に現れた


「なっ!なっ、、(ゼェゼェ)」

「え!?お、おはようございます(笑) 駅から全力疾走して来たんですか!?今お水入れますね!」

「一体、なんの、こと、ですかっ!(ゼェゼェ)」


まだ呼吸が整っていない宣隆さんに水を入れた


「なんのことですかって なんのことですか?」


水を一気飲みした
「デートって、どういう、こと、、」


昨日の夜の宣隆さんと別人みたい


「昨日は終日仕事で社内にいたんです。貴女は何か誤解してます!」

でもあの人は確かに…
「イタリアンのお店で女性と食事しているのを見ましたけど... 」

ハッとした表情をした
「えっ、どこの店ですか!?」

「中目黒のお店ですけど、、」


お店を掃除をしている私の後ろからずっと戸惑った表情でついて来る

「行ってません、 本当に行ってませんよ、嘘じゃないです、それは僕じゃない… 信じてください、本当なんです、香さん、あの、香さん、、」

こんなに動揺している宣隆さん… 初めて…


「 あ!もしかして双子の兄弟とかいます?(苦笑)」

視線を落とした
「それは… 本当に 顔も声も僕でしたか?… 」



気まずそうな表情だなぁ…


「目も合いましたし間近で見たので見間違いではありません。」

「あの、香さん 怒っていますか… 」

「怒ってませんよ(苦笑)」

怒りより…

「ただ… 悲しかっただけです。」



その瞬間 彼は眉間にしわを寄せた


「悲しい想いをさせて本当にすみません。でも本当に僕じゃない。その男は多分… 」

意を決したように彼が口を開いた


「もう十年以上会っていない僕の弟だと思います。」








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たしかなこと 2 (6)

2020-05-08 17:45:34 | ストーリー
たしかなこと 2 (6)







私のインスタの別アカウント“香織”
これが初めてインスタを始めたら時の古いアカウント

こちらのアカウントではプライベートな事を投稿してきた

そのアカウントの方のフォロワーに毎回必ずコメントをくれる印象的な男性がいる

そのフォロワー男性は “グレン”さんというハンドルネーム

カメラが好きなのか一眼レフで撮影した素敵な写真をアップしている方で、記事が更新されるのをいつも楽しみにしている

花の接写や綺麗な色の鳥の写真の中で列車や列車から見える景色の写真が多くて鉄道写真マニアさんなのかも?と思っていた

そのグレンさんが個展を開くとインスタに書いてあった

“へぇ! 行ってみようかな♪”


グレンさんの個展に行ってみるとインスタで見たことのある写真もチラホラあった

スパニッシュ系の男性が女性と歓談していた


あの人がグレンさん??
あ~、やっぱり日本人じゃなかったんだね

日本人とは骨格の作りが違う堀の深いイケメン外国人男性

日本の鉄道好きなスパニッシュ系の男性かぁ(笑)

グレンさんは私の事を知ってる訳じゃない
ただ、インスタでコメントをくれるだけ

声はかけずに帰ろうと思っていた


「この写真の撮影場所は北海道ですよ。」

後ろからグレンさんが声をかけてきてドキッとした


渋い声!(笑)

「そう、なんですね。素敵な写真ばかりですね。」

「来てくれてありがとう。香織(笑)」

ん??
「インスタの香織だよね?(笑)」

えっ!!
「どうしてわかったんですか??」

「どうしてって前に記事にあなたの顔を載せていただろう?僕は女性の顔は忘れないからね(笑)」

「はははっ(苦笑) そうなんですか。」

イタリア(?)男性って私のイメージ通りなの!?

イメージ:イタリアの男性は女性は口説かないと失礼にあたるという考えを持っている
(※私、笹山 香の勝手なイメージ)

「香織、これ」名刺とチラシを渡してくれた

「僕、こういう店もやってるんだ。良かったこちらも来てみてね(笑)」


昼間はイタリアンレストランで夜はバーにもなるお店のチラシ

「グレンさんはオーナーさん?写真家さん?」

「どれも僕さ(笑)」小首を傾け笑った

「香織、待ってるからね!」

イケメンで陽気なノリのスパニッシュ系男性に頭と目がクラクラしながら個展の会場を出た


流暢な日本語だったなぁ
日本に来て長いのかしら

イケメンだった(笑)
鉄道写真マニア? なんだか不思議ね(笑)


それからグレンさんからインスタのメールが送られてきた

来てくれてありがとう、今度は店にも来て欲しい!

この日は女性にはデザートサービスするからね


という内容だった

営業上手〜!私も見習わなきゃ(笑)


女性客限定かぁ…
だったら宣隆さんじゃなく女友達を誘って行ってみようかな!

高校、大学が一緒でずっと友達の美南を誘うことにした




ーーー




美南と会うのは久しぶり

もう結婚もして独身のように気軽に出かけることが容易ではなくなってしまったから久しぶりに友達と食事に行けることを満喫したいようでワインが飲みたいと注文をした


「おぉ!香織♪お友達と来てくれたんだね(笑)」
グレンさんから声をかけられた

美南がワクワクした表情をしてグレンさんを見つめていた

グレンさんを紹介したけど、会ったの2回目だよ?と言うと美南は外国人は距離詰めるの早いよねぇと楽しそうに笑った


美南には宣隆さんのことを話していた
画像はないの?と聞かれ見せると


「50代半ばだっけ?10ぐらい若く見える。美容師みたい。」

あぁ!なるほどね!
「とても優しいんだよ♡」とノロケると

「…なんかコワモテ(強面)だね(笑) ふぅん、優しいんだ(笑)」


「コワモテ… かなぁ…?? 全然恐くないよ? ガーデニングとか天体観測とか趣味だし!」

「ギャップあるね(笑) ギャップに惚れたとか?」

「あ、そうかも(笑) 酔うと可愛いんだぁ♡」


可愛いの言葉に美南はニヤニヤした
「まさにギャップね!(笑)」

「あははは♡」

「…あれ? あの人カレシに似てない?」


美南の視線の先にいた男性は背中を向けていた
向かい側には40代ぐらいの綺麗な女性でメニューを見ながら男性に話しかけている


「顔が、、見えないなぁ、、」

その男性の横顔が少し見えた

ん?

「すみません。」店員を呼んだ


えっ…

この低いトーンの声…



「え?なに!? ホントにカレシ??」


平日なのに仕事のスーツじゃない
女性のためにわざわざ着替えたの?


美南が声を潜めて話しかけてきた
「…ちょっと… ヤバくない?」

「… 仕事の服じゃないの。」

「(気になるのそこじゃないでしょ!)」

「ちゃんと顔が見えない… 声は彼に似てるけど… 」

私と美南の視線を感じたのか男性がゆっくり振り返って目が合った



ーー 宣隆さん







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