beautiful world 10
やっと先生と会える土曜が…
「来たーっ!!」
先生とは午後3時に指定された駅で待ち合わせ
張り切りすぎて15分早く着いた
実はこの駅は高校の通学で毎日使ってた駅
懐かしいなぁ~
先生は高校の近くに住んでたんだなぁ(笑)
「…あれ?田中?」
声がした方を振り返ると
高2の時の担任 鈴木先生が立っていた
「わぁ!鈴木先生お久しぶりですぅ~(笑)」
「久しぶりだなぁ(笑) 元気にしてたか?」
「はい!(笑) あ… 」
これはマズイよ!!
鈴木先生と親しく話してる所を(早見)先生に見られたら私が卒業生だとバレちゃう!!
「す、鈴木先生も、、お元気そうで、なによりです、、」
周囲を見渡してもまだ(早見)先生の姿は見えない
早くここを立ち去らないと、、
「田中は幾つになったんだっけ?もう就職したんだろう?今どこに勤めてるんだ?」
「ええ、、私は中小企業の、会社員、で… 」
チラチラと周囲を見渡した
「あっ、すみません先生!私そろそろ時間で、行かないと、、」
「そうか。たまには学校に顔でも出しに来いよ(笑)」
「あっ、はいっ! ありがとうございます、それじゃ失礼しますっ!!」
駅から離れるため学校とは反対方向に向かった
あぁ、、
やっぱりこの駅は用心しないとだよ、、
振り返って駅を見たらもう鈴木先生の姿はなかった
「はぁ~…」
胸を撫で下ろした
「田中さん?」
「は、はいっ!?」
振り返ると早見先生だった
「もう着いてたんだ(笑) 駅で待ち合わせしたよね?」
「は、早く着きすぎたので周辺を散策してまして!あはは(笑)」
「そう(笑)ちょっと寄り道してもいい?」
良かった…
この様子じゃ鈴木先生と一緒にいた所は絶対に見られてない
スーパーマーケットに立ち寄り
「直ぐに夕方になるし一緒に晩飯、どうかなって(笑)」
「なら私が何か作りましょうか?」
「それは悪いよ、お客さんなんだから(笑)」
「いいえ、任せてください!(笑) と言ってもそんな上手くはないので期待はしないでください(苦笑)」
「はははっ(笑) 僕も全然上手くないよ(笑)」
野菜などの食材とビール6缶パックを購入して
先生のアパートに到着した
階段を登って一番奥の部屋
いよいよ先生のお部屋に…
緊張するっ!!
「どうぞ〜」
「おじゃまします…」
整然と片付けられた部屋
お掃除したって言ってたもんね
これが先生の匂いなのかぁ…
凄くいい匂い♡
ドキドキしながら部屋を見渡した
「適当に座ってて(笑)」
買い物した食材を冷蔵庫に入れている
ほんと先生ってたくましい体格…
Lサイズの私でもお姫様抱っこが可能なんじゃ…
…って、そんなシチュエーションある訳ない!
それにもしお姫様抱っこが出来ても…
平気な表情で
内心“重っ!”とか思われるよ(苦笑)
「そうだ!」
突然先生が振り返りドキッとした
「写真だよね。こっちの部屋にあるから。」
案内された部屋にはお仕事部屋らしきデスクとパソコン
それに大きな棚と...
筋トレ器具!!
「こっちの棚は全部写真だから適当に見てて構わないよ(笑)」
沢山あるアルバムの中から一冊手に取って開いて見ると
そこにはいろんな美しい風景が収められていた
「…わぁ... 綺麗 」
とても鮮やかで美しい...
眩く輝く水面や紅葉の進んだ森と差し込む光
先生の見てる世界はこんなに輝いて見えているのかな
北海道の富良野の風景や
九州の夜景とか
全国各地の写真が揃っていた
「全国各地をまわったんですか?」
「あ〜うん。若い頃夏休みとかにバイクでね~(笑)」
珈琲の良い香りがしてきた
「舞…?」
タイトルに “舞” と書いてあるアルバムが数冊あった
人の名前らしきタイトル
これってまさか
前の彼女…
「珈琲入れたのでどうぞ~?」
「あ… ありがとうございます(笑)」
先生が入れてくれた珈琲
とても美味しい
写真にしてもこの珈琲にしても
先生が作るものって何故なんでも素晴らしいの?
「写真結構あるでしょ(笑) 段ボールにしまってあるのも含めたらアルバムが500冊にもなってそろそろ困ってきた(苦笑)」
「500冊も?」
「フイルム写真はやっぱり手放せなくて(苦笑) データで保存してるものだけでも処分しないととは思ってる(笑)」
「確かにフイルム写真は捨てられませんよね(笑)」
“舞”って元カノさんですか?
「あの中に人物写真ありますか?」
一瞬目が少し大きく見開き直ぐ笑顔になった
「ん、あるよ(笑) 見たい?」
「いえ、そういう訳では(笑)」
見たくない
でも好きな人を先生がどんな風に撮ったのか見てみたい気もする
複雑な気持ち…
「あぁ、そうだ、忘れない内に(笑)」
アルバムを持ってきた
開いてみると…
「??」
写真が一枚も入っていない…
「君にプレゼント。撮った写真入れて(笑)」
「良いんですか?ありがとうございます(笑)」
「それと…」
もう一冊別のアルバムを手にしていた
「こっちは僕が撮った君の写真を入れようと思ってる。もっと君の写真を増やしたいんだけど…構わない?」
優しい眼差し…
海岸で先生に撮ってもらうの楽しかったな…
大好きな人が優しい眼差しで
今 真っ直ぐ私を見つめてる
人物写真を撮らないこの人が
私を撮りたいと思ってくれていたことに
言葉では表せないほどの幸せを感じてる…
「…是非、お願いします」
いつまでも
こんな時間が続けば良いのにな…
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