気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 25

2022-08-20 11:04:00 | ストーリー
beautiful world  25


【初めての彼女 (2)】





舞ちゃんと付き合い始めて3ヶ月

僕は国立大学への受験勉強に集中していたため
自然に彼女と連絡を取る回数が減っていった


もしかしたらこのまま自然消滅してしまうかもな…という考えも過ぎったけれど


それでも
それが残念だとか寂しいとか

そういう感情は湧かなかった



その時の僕は

彼女に恋愛感情を抱いていなかったということだろう




そんな時ーー

突然 夜中に電話がかかってきた


『ごめん、遅くに。』

『ううん、起きてたから大丈夫(笑)』



付き合うのをやめない?とでも言われるのかもしれないと思った


『今度の日曜、3時間ぐらい時間取れない?』


...声は明るい


『うん。わかった(笑)』




日曜の昼

約束していた待ち合わせ時間よりも先に彼女は着いていた



『陽太〜(笑)』



おぉっ...

やっぱり実際に会うと…

実感が湧くというか
ドキドキするっ!!



『3時間しかないから早く行こっ!(笑)』


僕の手を引いて歩き出した

わっ、、
女の子と手を繋いでる!


『ど、何処に!?』


季節は秋なのに
今日は冬のような寒さ


なのに
めちゃくちゃ顔が熱くなってきた



『私んち!時間が少ないから出歩く時間が勿体ない(笑)』


えぇっ、舞ちゃんち!?
舞ちゃんって一人暮らししてたよね!?

女の子の一人暮らしの部屋に行くって、流石にちょっと…


良いのかな…



『どうして舞ちゃんちなの?』


『来ればわかるよ(笑)』



舞ちゃんちは待ち合わせた駅から徒歩で10分程度と近かった


ドキドキしながら初めて女の子の部屋に入る

男の部屋と違って清潔感がある


しかもなんか美味そうな料理の匂い…


案内されリビングに入ると
テーブルには料理が沢山乗っていた



『凄っ!』


『まずは、陽太くんの胃袋を掴む作戦!私の料理を食べてもらおうと思って(笑) 』


『ははっ(笑) そういう“作戦”とかってバラしちゃったらダメなんじゃないの?(笑) 』



…僕はてっきり


今日 別れ話でも切り出されるのかなって思ってた



『早く早く、食べてみて♡(笑)』



なんか拍子抜けした…

箸を持たされた


『それは陽太くんのお箸!買ってきた(笑)』


『…って事は、、これからもここで食事をする機会があるって事…?』


『もちろん(笑) また来て欲しいと思ってるよ? なんでそんなに意外そうなの?』


『しばらく会えなかったし… 僕ら4回しか会ってないから… きっともう僕はフラれるのかもなって思って来たから…(苦笑)』


『なに、それ…』



声色が急に変わって
彼女の顔を見ると怒りの表情をしていた


『それ!いつから考えてたの!?』


『ご、ごめん、、いつからって…会おうって誘ってくれた時…』


『あのねっっ!!』


彼女は早口で捲し立ててきた


『陽太くんが柔道と受験勉強の両立に必死で頑張ってるのなんてわかってた!だって陽太くんは目標に向かって全力を出す人だと知ってる上で好きになったんだもんっ!陽太くんのこの大事な時期に私の存在が邪魔にならないようにって気を遣って連絡を控えてたのにっ!やるべき事に集中してて、もう私のことなんかどうでも良いなんて思ってるかも、もしかしたら存在自体薄れてきてるかも、なんて悪い方に思ったりして、毎日ずっと不安だった!私は…ほんとは毎日だって陽太くんに会いたかったし、それをガマンしてたのに!陽太くんは私の想いを1ミリも考えてはくれなかったのっ!?』



彼女は想いを全て吐き出して気が抜けたのか悲しそうな表情に変わり涙ぐんだ



『えっ…舞、ちゃん、ごめん、、』


その熱い想いを真正面からぶつけられ
僕は戸惑った



『ありがとう…(笑)』


『今日は時間が少ないんだから!早く食べて食べて!』

彼女はテーブルの料理を指差した


『あ、うんっ、』


料理を口に入れた


なんだこれ!!

『美味っ!!凄く美味いよ!(笑) ありがとう、舞ちゃん!(笑)』



さっきまで激怒し
泣きそうな表情に変わり
今は凄く嬉しそうに満面の笑みになった



『胃袋掴む作戦、成功かな??(笑)』


『ははは(笑) 大成功じゃない?(笑)』


僕が彼女を想う以上に
僕が想像していた以上に

僕の事を想ってくれていたことを知った



『どれも凄く美味くて驚いたよ(笑) なんかお礼しなきゃ…と言っても僕、バイトしてないから、』


『じゃあ、さ… 』



彼女は僕の隣りに座り直し
突然僕を抱きしめた



えっ!?
ええっ!!



『どうしたのっ!?』



また心臓が強く打ち始め
汗が吹き出てきた



『ま、舞ちゃん!?』


『キス…してくれないかな…』



えっ!?
僕 キスなんてしたことないよ!!


緊張で全身が心臓になったみたいにドクドクと早く鼓動を打って
額や手に汗が滲んだ


優勝をかけた決勝戦でも
こんなに緊張しない




『イヤ…かな(苦笑)』


舞ちゃんは不安そうな表情で僕の目を見つめた


彼女の想いが
今日はいっぱい伝わってくる…



『陽太くんのこと大好きだよ…だから私のことも…好きになって欲しい…』



朗らかで友人も多く
思い描いた事は全て叶える行動力があって

綺麗で 可愛いくて
恵まれたスタイル

欲しいもの全てを手に入れているような彼女が



今 不安そうな表情をしている


今まで
自分の“会いたい”という想いを堪え
僕のことを尊重してくれていた


僕は自分のことで頭の中はいっぱいで

君の気持ちを思いやることすらしなかった



こんなに僕のことを想ってくれた女の子は初めてだった


それまでの僕は
恋愛なんて興味すらなく

女の子の気持ちにも疎くて
柔道と写真を撮る事にしか興味が向かなかった


彼女と過ごしたその日
たったの3時間しかなかったけど

彼女の僕への熱い想いも 
密かな気遣いも一所懸命作ってくれた料理の味も


激昂した表情に不安な表情
照れた表情も

見せてくれた沢山の感情や表情の全てが僕の胸に焼き付いて

このまま彼女の表情を見ていたい
触れたいと思った




好きにならない訳、ないよ…


それが僕の初めての“恋” の感情だった


そして僕はドキドキしながら
彼女の唇にそっとキスをした


それが僕の
ファーストキスだった






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