気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 13

2021-11-10 21:48:00 | ストーリー
beautiful world  13






僕は柔道の稽古が終わり
何気なく電車の車窓から外を眺めていた

電車は次の駅に停車するため減速に入っていた

――え…?

今のって奈生ちゃんだったような
見間違い…か?

でも僕には奈生ちゃんが困っているような泣いていたように見えた

電車は完全に停車しドアが開いた瞬間電車を降りた
人をかき分けながら改札出口に向かいながら

“まさか”という思いと
“人違いであって欲しい”という気持ちが入り交じる

改札を出て走りながら奈生ちゃんに電話をかけた
でも電話に出ない

あれは本当に奈生ちゃんだったのか?
泣いていた?
気のせい?
見間違いか?

僕は全力で走った

さっきまでの柔道の稽古で身体は疲れきってるはずなのに
こんなにも全力で走れるのは 

それだけ僕は君を想ってるってことなんだ…

見えた!
やっぱり見間違いじゃなかった


ーーえっ
なん、だ…?

見知らね男が彼女の腕を掴み
それを拒む君の姿が見えた

その瞬間 全身の血液が逆流し沸き立つほどの強い闘争心が内側から汲み上げてきた

彼女を奪われたくない
守りたいという強い思いと

もう二度と大切な人を放さないという決意に似た思いも同時に湧き上がってきた

やっぱり僕には君は必要な存在なんだとあらためて知った瞬間でもあった


ーーー


先生は私を一切見ようとせず
一刻も早くあの場を立ち去ろうと私の手を引っ張って歩く

「先生、あのっ、、 」
歩くの、早い、、

歩く早さがゆっくりになった

「もうプライベートであの男と二人きりで会わないで欲しいんだ…」

やっと私の顔を見てくれた先生のその表情と声はいつものように穏やかになっていた

「さっき君が言った“私の事情に付き合ってもらっただけ”って、どういう事情だったの?」

「すみません…ほんとは大した理由じゃないんです… 言うのも恥ずかしい話で…」
 

実は最近ダイエットしなきゃって思ってたことや

先生の家に行く前に決まっていた約束で断りきれなかったこと

それを先生に言い出せなかったことを

恥ずかしいけど私は正直に伝えた


「先生に誤解されたくなくて言わなかったんです…でもこんなことになっちゃって…本当にごめんなさい…」

「事前に聞いてたら絶対行かせなかったな(苦笑)」
眉尻を下げ 微笑んでくれた

「それに僕は今の君は十分魅力的だと思ってるのに(笑)」

先生は私の贅肉を知らないから(苦笑)

「それと僕は…」
歩みを止めた

「君を独占したい気持ちがかなり強いみたい。今回のことでよくわかった(苦笑)」

今 胸がキュンってなった…

「これからもこんな風にお互いを知っていかない?(笑)」
眉尻を下げ 優しく微笑んだ


私達はそのまま
川沿いの遊歩道を歩いた

休日の割に歩いている人が少ない



先生は今日は柔道の稽古日で

稽古が終わって電車に乗っていると車窓から私を見かけ全力で駆けつけたと笑った

「動体視力が凄いんですね。走ってる電車から見えたなんて(笑)」

「駅が近かったから電車が減速してたんだ(笑) 君が他の男に奪われそうだったから焦ったよ(笑) ははっ!」

私は先生一筋
だから心配ないです

「それだけ僕は君が大切なんだ。」
先生の手の力がこもった

私の手を握る力も 
見つめるこの瞳も

全力で駆けつけてくれたことも
葉山さんと争う姿勢も発言も

全て私への想いがあったからってわかるから…

私は世界一の幸せ者だ…


「何故泣くの…?」
困った顔をして微笑んだ

生まれて初めて恋をした人…
高一の時に一目惚れをしてからの9年間

私は先生しか好きになれなかった


「先生は知らない。私の方が先生よりずっと大好きだってこと…」

先生は一瞬言葉に詰まったような表情をした

「もうっ(笑)」

苦しいくらい強く抱きしめられた
「僕だって負けないくらい君が大好きだよ。」                               

先生の大きく硬い手が顔を包んで
先生の唇が私の唇に重なった



―――


突然俺と彼女の前に
以前から気になっていたあの“先生” が現れた

なんなんだよっ!
付き合ってる男はいないなんて言ってたくせに
やっぱ“先生”ってカレシだったんじゃねぇかよ!!


...そうじゃないかって
薄々思ってたけどさ...

身長は俺より少し高いくらいなのに
俺より何倍もデカく感じたのは

威圧感や気迫が凄くて
まるでヒロインを守るために現れた正義のヒーローみたいに見えた

そして俺はそのヒーローに負けちまう悪役キャラみたいに瞬殺で捻り潰されたような

そんな惨めな思いだ

悔しい…
悔しい…!
悔しい!!


俺だって彼女が好きだったんだ

初めて本気で好きになった女だったんだ…

誰かのために
彼女のために
初めて変わろうって思えたんだ

こんなに悔しく惨めな気持ちも
こんなに辛い胸の痛みも

初めてだ

あいつみたいに
俺もヒーローみたいな漢になれんのかな…

こんな事で涙が出るなんて
俺やっぱ小せえ男だわ…

悔しい
情けねぇ…




――――――――――


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