気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 7

2021-10-17 21:47:00 | ストーリー
beautiful world  7





「じゃあ…僕も田中さん撮っても良い?」

そう言いながら鞄からカメラを取り出そうとした



えっ!?


「駄目?(苦笑)」

「良い、ですけど…」


嬉しい!!
けど照れる…


「何年ぶりだろうなぁ〜 女性を撮るの(笑)」


ーー “女性” 


先生には私がちゃんと女性として見えているんだ… 


胸の辺りがふわふわする



「あ、じゃあ海近いし海岸に行ってみようか。」


海岸で普通に歩いてみてと言われて歩いてみる

ぎこちない動きになっちゃう!



「ふはははははっ!(笑)」

先生が豪快に笑った


「そ〜んなに緊張する〜?(笑)」

先生がカメラ越しに私を見てると思うと そりゃ緊張しますよ…



「そういや田中さんの下の名前聞いてなかったね?」


え?そっか


元生徒だとバレないよう言ってなかったんだった


でももう完全に覚えてないのはわかったから教えてもいいか…



「奈生(なお)です。」

「漢字は?」

「奈良の奈に生きるです(笑)」

「OK!奈生ちゃんね(笑)」


“奈生ちゃん”!?

名前を呼ばれて顔から火が出そうになった



カシャッ


「ふふっ(笑)」

「あっ、変な顔撮りましたね!?」

「変じゃない全然(笑)」

と言いながら連写で撮られた



「もっと良い顔撮ってくださいよぉ!」


カメラから顔を離した


「自然体の良い顔じゃない(笑) じゃあ奈生ちゃんの“良い顔”、してみて(笑)」



あらためてそう言われると…
照れる…


カシャッ


「良い表情(笑)」

「だから、不意打ちやめてくださいよ〜!」

「奈生ちゃんはコッソリ撮っただろう?(笑)」


確かに…(苦笑)


「緊張は溶けた?(笑)」


そっか

緊張してたから和ませてくれたってことなんだ…


「そうですね…(笑)」


カシャッ


「ね、今恋してるならその相手のことを 思い出してみて。」


あなたが好きだから
言えません…



「好きな人なんて… いません… 」


カシャッ 


「…… 」

先生が何か呟いたような気がした


「えっ?」


カメラを下ろし私に優しく微笑んだ


先生はずっと笑顔で私に話かけながら
私をカメラに収めてくれた




「人物撮影、得意なんですか?」

「いや全然(笑) 人物写真は彼女ぐらいかな。昔はよく撮ってたけどね(笑)」


先生の口から出た“彼女”という言葉に胸が詰まった


「へぇ… 彼女さんですか…」

「昔付き合ってた彼女ね(笑) でももっぱら街並みや自然の風景ばかり。あ、星とかも時々撮りに行くよ?」


どんな彼女だったんだろう…


「早見先生の今まで撮影した写真見てみたいなぁ〜、、なんて(笑)」

「僕の写真かぁ。うん、良いよ!(笑)」


…やった!
先生んちに行ける!


「次会う時に適当に持って来るよ(笑)」


…あれ? 持ってくる?


「ですよね(笑) 先生の家で見られるのかな〜なんて勝手に思っちゃいました(笑)」

「僕んち?」

私ったら勘違いも甚だしい



「あぁ~。確かにその方が沢山見られるのか… ならウチ来る?」


へ?
いいの!?


「ほんとに良いんですか?」

「写真の量 結構あるからねぇ。その方が良いかもね(笑)」

「ほんと嬉しいです!(笑)いつならご都合いいですか!?」

「そうだねぇ…」

先生が手帳を取り出した




何でも言ってみるもんだなぁ♪
こんなにラッキーなことが続くなんて夢みたい

「えーっと… ね。直近だと次の土曜の夕方か再来週の、」

「次の土曜で!!」


食い気味に返事をした私に先生は少し圧倒されたような表情をした

「そう、、なら土曜で(笑)」



先生の部屋に行ける!
あ~ほんと言ってみて良かった!


「田中さんは本当に写真好きなんだねぇ(笑)」


また“田中さん”呼びに戻ってる
さっきのは撮影中の限定だったんだな...(苦笑)



「そうだ、だったら僕の師匠が来月写真の個展を開くから良かったらそれも一緒に見に行ってみる?」


先生の師匠さん?

スマホで個展の案内情報を送ってくれた



あれ
この方…



「“矢野導信”って知ってる?」


えっ!!
あの有名な写真家の!?


「もちろん知ってます!!」

先生は巨匠と言われている矢野導信から少し学んだと話し始めた


きっかけは一人で撮影旅行に行った時 

先生がまだ大学生になったばかりの頃

無鉄砲にも大御所の矢野導信に声をかけたらしい



「今思うと無謀にもよく話しかけたもんだ(笑) 今なら絶対に声なんてかけられないよ(苦笑)」


若さ故の身の程知らずというか
無鉄砲さが逆に矢野導信から気に入られ

時々レクチャーを受ける仲になったと笑いながら話してくれた



先生の写真がどこか違うと感じてたのはそういうことだったのかも…




「それまではただ写真を撮ることが好きだったけど、写真の奥深さを知って世界が広がってもっと好きになったんだよ(笑)」


先生の幸せそうな微笑みに
本当に写真が好きなんだと感じる


「個展、是非ご一緒に行きたいです(笑)」

「ん(笑)」




それから鎌倉のお土産物店の通りをお互いに撮影した

先生の撮った画像を見せてもらうと


「なんで?どうして?」


同じ風景を撮影しているはずなのに
やっぱり全く違う趣きの風景になっている


別世界を映しているように印象的な映像

やっぱり先生は凄いんだと実感した



ーーー


帰りの電車は混んでいて
先生との距離が密着した


「やっぱりこの時間帯は混んでるね(苦笑)僕に掴まってて良いよ。」

先生の腕に初めて触れた…


心臓がドクドクしてるのがバレちゃいそう


先生の腕の筋肉 凄いな
柔道してるから?


電車に揺られていると

今頃になって寝不足の影響と疲れが出てきて立っているのに凄く眠い…



「眠い??」

「は…ぁ… 」


“…田中さん?”


先生の声が遠のく…






ーーーーーーーーーー


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