■マーケット
イギリスの鉄鋼産業が危機
英国で製鉄会社を所有するインドのタタグループが先週、英国からの全面撤退を発表し、英国の鉄鋼産業は存亡の機に直面しています。タタは2007年に約1兆4,000億円で英国の製鉄会社を買収しましたが、最近は中国産の安い鉄に押されて採算が悪化し、企業価値はほぼゼロになっています。現在、英国の運用会社などが買収を検討していますが、情勢は不透明で製鉄所で働く1万5,000人を含め、約4万人が失業の危機にさらされています。
《イギリス/キャメロン首相》
「国の重要な鉄鋼産業を守るため、政府はできることはすべてやる。」
かつて中国産の安い鉄鋼製品にEU=欧州連合が関税をかけようとしたところ、中国との関係を重視するキャメロン政権が強く反対しました。よって今回の危機をまねいたのは英国政府だとの批判も強まっています。
中継担当:ロンドン支局 豊島晋作記者
■【コメンテーター】髙橋進氏(日本総研 理事長)
・物価上昇率
--取材をしておりますと、この先、賃金が上がらないと物価上昇には限界があると強く感じました。先行きで賃金が上がる期待が持てなければ、物価の上昇は消費者にとって負担でしかない。生活防衛意識、デフレマインドにつながるようなものが和らがない限りはなかなかうまく行かいのではないか。物価目標達成が難しいのであれば、東大の渡辺先生によると、政策を賃金をターゲットにしたものに変えるという手法もあるのではないか、という話でした。
政府も賃金上昇を求めて、それなりに上がっているがまだ十分ではない。特に大企業経営者は賃金をコストと考えるから消極的になりあまり歓迎しない。ところが賃金が上がって消費が伸びて経済が大きくなって名目成長率が上がると売上も上がる。そうすると賃上げをしてもコストにならない。だから鶏と卵で賃金から始めてもよいと思いますが、どうもやはり企業経営者のマインドが変わっていいかない。そこが変わるまでもう少し時間がかかる。それから消費に着目すると、特に30代などは賃金がそこそこ上がっていますが消費は伸びていない。何故マインドが変わらないのか。賃金が上がったと言ってもしれている。一方で消費税や社会保険料が上がるという負担感があり、さらに上がったお金は自分たちでなくて高齢者の方に回る。そういう将来不安があるので、そこにも手を打つ必要があると思います。それは金融政策ではなく構造改革や社会保障改革などで政府が頑張らないといけない。
・経済財政諮問会議
--民間議員として高橋さんも出席されたわけですが、消費喚起策が今必要だということですか。
短期的に景気を持ち上げるだけではなく、安倍政権のとって経済を持続的に良くしていく上では消費が柱になる。ところがどうしても消費税を上げてから、消費の調子が良くないので、ここをテコ入れしないと安倍政権の経済政策全体が回っていかないということだと思います。
--そんな中で財政出動という言葉が出てきましたけれども・・・
これは日本だけの話ではなくて、世界全体を見てみた時に実は物価が上がらないという状況が先進国で共通しているんです。そういう意味では先進国が日本化しています。先進各国みんな金融緩和をやってきました。(アメリカはいまちょっと方向が変わっていますけれども)世界全体を見た時にもう金融緩和は限界だ。一方で中国が今まで世界を引っ張ってくれていたけど、もう中国は当てにできない。為替はみんなで自国通貨安をやったらだめだから、じゃあ財政しかないということです。今度のサミットではG7各国が財政を通じて協調して世界経済をどう持ち上げていくか、が非常に大きなテーマになると思います。
--消費を喚起するような、需要を作り出すような財政出動ですか。
そうです。例えば消費税を上げるならば、それによって大きな影響が出ますからそれでも大丈夫なように消費を支えなくてはいけない。一方で消費税を上げなければ消費は大丈夫かというと、過去の消費税の影響を受けているわけですから、どっちにしても特に消費を中心に財政面でテコ入れをしていくということは日本としても考えなくてはいけないと思います。
“企業子宝率”格差の背景は?
--中小企業の方が子宝率が高いといいますが、それはどうしてだと分析していますか。
いま中小企業は人手不足なので、女性を戦力化、主力化しないといけない。そのためには女性に働いてもらうために制度を変えなくてはいけない。それに比べると大企業は、そういう制度が整っていないということでしょうけれども、それだけではなくて大企業は都会にあるので核家族化が進んでいます。だから地方の中小企業に比べたら確かに子供の数は少ないです。そういう面もあるにはありますが、大企業はもっともっと改革をしなくてはいけないと思います。例えば長時間労働や有給休暇が取れないことなど男性にとっても働きづらい職場なので、そこを変えていくということをしなくてはいけない。政府としては大企業の働き方を変える、風土を変えることについて、まだまだできることはたくさんあるので政府として企業にガンガン押していかなくてはいけない。一方で大企業の中でもこういうことに先進的に取り組んでいる企業にはアメをあげてもいいと思う。具体的には法人税を下げてあげるとか。それくらいあからさまにやっていいと思う。
■特集 “企業子宝率”で何が見える?
「企業子宝率」という指標が注目を集めています。東レの渥美由喜主任研究員が提唱し、男女問わず従業員1人当たりが在勤中に持てる子どもの数を算出した、いわば企業版の「合計特殊出生率」です。「子宝率」を従業員別に見ると、500人以上の企業の平均値1.22に対し、10~29人の企業では1.38と、企業規模が小さくなるほど上昇する傾向があります。静岡県にある「子宝率」2.15の「NTN袋井製作所」は社長自ら社内を一日2回巡回、社員の「顔色」を見て回り、社員に不安があればすぐ解消します。当初から、育児しやすい環境が整っていたわけではありませんが、風通しのいい社風で、社員と経営陣が相談しながら制度を整えました。同じ静岡県内で2.17を誇る「いちまるホーミング」は女性社員全員が中途入社。子育てと仕事の両立目指し、理解ある会社に移ってきました。女性陣の活躍もあり売上高は5年で倍増しました。
《取材先》
・オリックス 人事部人事チームダイバーシティ推進担当
・NTN袋井製作所
・いちまるホーミング
企業子宝率は男女問わず1人の従業員が在勤中に持てる子供の数の指標。東京都港区のオリックスは女性正社員のうち、3割がワーキングマザーで、手厚い育児支援を行っている。人事部の脇真由美課長はこれ以上ないほど整っていると話した。ところが企業子宝率は1.19、全国平均1.30を下回る結果でした。脇さんはなぜかわからないと話した。財務部の矢野晴香さんは現在は時短制度を利用して保育園の送り迎えなどできて上司や同僚に恵まれているが、大企業なので人事異動などでそれが変化する不安は拭えないといいます。
企業子宝率はから見えるものは何なのか。生みの親である東レ経営研究所の渥美由喜主任研究員は、「大企業は制度が整っていて子育てがしやすいと言われる。一方で長時間労働で子育てしながら働きづらい環境を見てきました。制度よりも風土がはるかに社員の公道を左右する。ただこの風土というのはなかなか見えにくいので、風土を定量化する指標として子宝率を開発した。」という。
子宝率の高い会社とはどんな会社なのか。
静岡県袋井市のNTN袋井製作所は企業子宝率2.15と全国有数の数値を出した。この会社はドライブシャフトと呼ばれる自動車部品を製造する従業員259人の中小企業で、子育てする社員の満足度が高い。中島淑岳社長は毎日2回社内を見まわる。社長は社員に何か不安があればすぐに解消することが大事だという。しかし最初から育児環境が整っていたわけではない。10年前に夏目和美さんが入社し妊娠したことから、会社と相談しながら育児休業や時短制度を一から作り上げていった。実は子宝率は企業規模が小さくなるほど上昇している。渥美研究員は「中小企業は人に会社・制度を合わせようとし、大企業は制度・会社に人を合わせようとする」と指摘。
静岡県焼津市で住宅リフォームを手掛けるいちまるホーミングは企業子宝率が2.17と高い数値。従業員20人の小さな企業だが、売上はここ5年で倍増している。松村吉樹社長は建築業は人が来ないので、女性が主力になるとした。精鋭チームは女性が中心となっている。女性正社員は中途入社、子育ての不安で転職した女性が多い。糟屋実華さんはシングルマザーで、7年前に転職。静岡市のショールームでは子育て世代の人と話せることが強み。糟屋さんは去年マイホームを建てた。仕事と育児で充実している姿を見て、入社する人もいる。
起業を通して見た少子化の現場、制度とともに風土の改善が求められている。
--企業子宝率には自治体も注目していまして、県単位で企業の調査をするところもあるそうです。というのは子育てだけではなくて、子宝率の高い企業は介護をすることになったときなど、家族の問題が出てきたときに対応しやすい環境であるだろうと考えられる。そういったことが自治体にとってはUターンやIターンを働きかける時にその魅力としてアピールできるポイントになるということです。
■ニュース
街の物価を独自に点検
日本銀行の黒田総裁の金融緩和発表から丸3年。黒田総裁は「2%の物価上昇率を2年程度で達成する」と自信を示していましたが、今年1月にマイナス金利政策の導入を決定した際には、2%の物価上昇の達成時期を「17年度前半」に先送りしました。なぜ物価は上がらないのか。大江キャスターが、独自の物価指数「日経CPINow」を開発した東京大学の渡辺教授と小売りの現場を取材しました。「日経CPINow」の現在の物価上昇率はおよそ1.4%。価格は上昇していますが、やはり2%には届いていません。その物価上昇率の足を引っ張っているのはサービス価格と渡辺教授は指摘し、賃金が上がることがサービス価格の上昇につながると話します。一方、東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは物価上昇のためにできることは限られていると分析し、政府による規制緩和や成長戦略、構造改革などを進めていく必要があると語りました。
街の物価を独自に点検
日本銀行の黒田総裁による金融緩和が始まってから4日で丸3年となった。金融緩和の最大の目的である物価の上昇はどうなったのでしょうか。
《宇井キャスター》
日銀はデフレからの脱却を目指して「黒田バズーカ」とも言われる大規模な金融緩和を続けてきた。2013年4月、第1弾として量的質的緩和を導入(国債買い入れ年50兆円)。この時、黒田総裁は2%の物価上昇目標を2年程度で達成すると自信を示していた。当初、日銀の狙い通り物価は上昇に転じたが、2014年夏頃に原油安の影響を受けて物価は伸び悩む。そこで10月に量的緩和の規模を拡大した(国債買い入れ年80兆円)。この時も物価目標の達成時期は2015年度を中心とする期間に事実上先送りしている。さらに2016年1月、マイナス金利政策の導入を決定。この時も2%の物価上昇の達成時期は2017年度前半としさらに先送りした。今年の2月の消費者物価指数は0.0%、1年前と比べ変わっていない。日銀が独自に出している原油価格などを除いた上昇率でも1.1%と、2%の目標に対してはまだ道半ばです。
なぜ物価は上がらないのか。約1000店のスーパーの情報を元に独自の視点で物価指数を出している専門家と消費の現場を取材した。大江キャスターのしゅざうに同行してもらうのは東京大学大学院の渡辺努教授です。
(1)練馬区のスーパーの商品から物価動向を見ていく。渡辺教授は独自の物価指数「日経CPI Now」を開発、スーパー(約1000店舗)の販売データから価格や数量を分析、政府が出す消費者物価指数よりより実態に即した物価の変化を見ることができるという。渡辺教授は円安による仕入れ価格の上昇で冷凍食品の特売がなくなり、インスタントコーヒーに価格が上昇していると指摘。乳製品の供給量の調整ができていないと解説。コメの値段は上昇傾向にあるとした。
消費者も物価上昇を実感し始めている。「日経CPI Now」による物価上昇率は約1.4%だった。
--今スーパーを見ましたけれども、物価を見るのは他にもあります。
A.そうです。私たちが生活する上で商品以外でお金を使うのがサービスです。
(2)15年前の開業した練馬区のクリーニング店「さんくす」を取材。値上げは5年前にワイシャツを10円上げただけ、店主はできればあげたくないとした。さらに、美容室「19eラボブ」を取材、ここでは10年以上価格は据え置きとなっている。物価上昇の足を引っ張るのはサービス価格で、渡辺教授は従業員の賃金に注目する。美容室では基本給は変わっていないとした。サービス業のコストの大半は人件費。つまり賃金が上がることがサービス価格の上昇につながると渡辺教授は言い、サービス価格の上昇とともに賃金も上がることを時間をかけて訴えていくことが必要だとした。
その賃金について経団連の榊原定征会長は今日「これまで一定の賃上げは実施してきた」という見解を示した上で、日銀のさらなる努力に期待を示した。榊原会長は十分なデフレ脱却、経済再生は進んでいない、日銀の役割は大きいとした。
《東短リサーチ・チーフエコノミスト/加藤出氏》
--物価上昇に向けてまだ日銀にできることはあるんでしょうか
「マイナス金利を下げる金融機関収益が打撃を受けますので、金融緩和の流れが却って阻害される恐れが出てきます。全体としては金融機関策の限界が近づいてきている。イノベーション(革新)が起きやすくなるような、あるいは新しいビジネスを始めることが可能になるような、規制緩和など成長戦略と構造改革を地道にやることしかない。」
“四輪駆動の日”制定の狙い
四輪駆動車を世界で初めて開発したとされるメルセデス・ベンツ。四輪駆動の日にあわせて発表したのは「Gクラス」の特別仕様車。四輪駆動車で高いオフロード性能を誇り、深さ1mまでなら水中を走ることもできます。価格は3,510万円と、日本で販売するラインナップで最高価格です。メルセデス・ベンツ・日本のSUVの売り上げは、去年全体の16%に留まっていますが、今年は3割ちかくまで引き上げたい考えです。
鴻海 郭会長の“本音”に迫る
2日にシャープと台湾の鴻海精密工業は共同記者会見を開きました。シャープ買収の合意内容は鴻海にとって有利な条件が盛り込まれています。出資額は当初の4,890億円から約1,000億円減額、さらに提携が破談になっても液晶事業は鴻海が手に入れられます。会見で郭会長はシャープの黒字化時期については明言を避けました。またさらなる出資額減額の可能性については否定。有機EL事業については「IGZO」などの液晶事業とともに力を入れることを強調しました。また雇用については、なるべく全員を残したいと語りました。提携破談は99.999%ないが、液晶事業買収について万が一のために入れたと主張。
《大浜キャスター》
週末の会見ではやはりディスプレイ事業の話が多かったんですが、今回の合意の内容はディスプレイ事業だけではなくて、シャープまるごと傘下に置くということですから、液晶や有機EL以外の事業でも相乗効果を出していくことが求められる。そのうちの一つがいわゆるインターネットとつながる次世代の家電スマート家電です。ここで勝ち抜くために必要なのはいったい何なのか。そのヒントになるベンチャー企業を取材しました。
大浜キャスターが東京都新宿区のアプリックスを取材。この会社はどんな家電もスマート家電にする技術がある。小さなチップを既存の家電に組み込むだけでスマート家電になるのです。世界中のメーカーから商談があり、現在国内外の約100社と商談中。アメリカの企業の開発商品、ネコのトイレの使用状況を知らせる。さらにネコのグッズのネット通販にも繋がる。家電とネット通販が結びついた新たなサービスです。このシステムを開発したアプリックスの郡山龍社長は日本の家電メーカーはビジネスモデルを根本的に変える必要があると考えています。
「どうしても日本のメーカーは技術偏重になってしまうから、ハイテクというよりはどう生活を変えられるのか、というところに注力すれば十分で移行できると思います。」
シャープのしゃべる家電シリーズ「ヘルシオ」や掃除ロボット「ココロボ」などコミュニケーションができる家電が知られている。鴻海とシャープは無事合意をしたわけですが、それでもまだ鴻海はシャープのディスプレイ事業が欲しいだけなんじゃないか、という見方が依然として強いです。スマート家電にどこまで本気で取り組むかが両者の信頼関係の試金石になる。鴻海のビジネスの人脈は多く、appleとの結びつきも強い。例えばそれらを使って将来スマート家電を共同開発ができたら業界はひっくり返るという関係者もいる。
予算前倒し実施を指示へ
安倍総理大臣は、政府・与党幹部の会議で、今年度予算を順次前倒しで実施するよう、5日の閣議で指示する考えを表明しました。また「G7=先進7ヵ国が世界経済の持続的かつ力強い成長を牽引しなければならない」と述べ、来月の伊勢・志摩サミットでは世界経済が主要テーマになるとの見通しを示しました。政府はまた、経済財政諮問会議を開き、6月をめどに取りまとめる経済財政運営の基本方針、いわゆる「骨太の方針」に向けた議論を始めました。この中で安倍総理は、名目GDP=国内総生産600兆円の実現に向けた道筋をサミットまでに示したいとの考えを明らかにし、民間議員が財政出動や減税などを通じた消費喚起策を検討すべきだと提言しました。
auが生命保険や住宅ローン販売
KDDIは携帯電話会社として初めて生命保険や住宅ローンなどの商品を5日から販売すると発表しました。 携帯電話の契約とセットで割り引きをするのが特徴で、生命保険の商品にau利用者が加入すると通信料金が5年間、毎月200円割り引きされます。また、じぶん銀行の商品「au住宅ローン」でも5年間、電子マネー「auウォレット」に毎月500円がキャッシュバックされます。
《KDDI 勝木朋彦さん》
「通信競争が均質化しているので、金融分野で一歩先行しいろいろなサービスを提供していく」
日本一のバスターミナル開業
東京のJR新宿駅に、発着便数が日本一のバスターミナル、「バスタ新宿」が開業しました。これまでバス乗り場は、駅周辺の19ヵ所に分散していましたが、それが「バスタ新宿」に集約され、1日最大、1,625便が発着します。駅と直結なので、電車からの乗り換えなど利便性の向上が期待されています。
■【トレたま】光る折り紙!?
【商品名】光る紙
【商品の特徴】切ったり、折ったりしても、電流を流せば光る薄いシート。
【企業名】アシオス
【住所】東京都港区南青山2-2-15 ウイン青山9F
【価格】800円(税別)~
【発売日】発売中
【トレたまキャスター】北村まあさ