■マーケット
GPIF 運用改革後初の“通算赤字”に転落
公的年金の積立金を運用するGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人はきょう、今年4月から6月期の運用損益が5兆円を超える赤字だったと発表しました。2四半期連続の赤字となったGPIFの年金運用。2014年10月に運用資産の構成を見直して以降、はじめて累積収益額が赤字に転落しました。円高による影響が、GPIFの保有している国内株や、海外の株式、債券に及んだことによります。GPIFは「短期間の赤字がすぐに給付に影響するものではない」と話しました。また、7月以降の相場については、「株式市場自体は回復基調にあると思う。一方ドル円相場は横ばいの状態なので引き続き注意深く見守っていきたい」と話しました
FRB議長 利上げに意欲
米国で開かれているジャクソンホール経済シンポジウムでFRB=連邦準備制度理事会のイエレン議長が講演をしました。イエレン議長は利上げの根拠がここ数カ月で強まっているとして利上げに向け意欲を示しました。議長は講演の中で雇用市場に加え、経済活動とインフレ見通しが堅調であることをその理由として挙げています。イエレン議長は経済を冷やさず過熱させない程度の金利水準を示す「自然利子率」は低下しているため、今後のペースについては緩やかになる可能性も示唆しています。
中継担当:NY支局進藤隆富記者
■ニュース特集
値下げの夏「低温経済」の真相
今月、グッチやカルティエなどの高級ブランドが相次いで値下げを発表しました。一部商品を平均9~10%値下げするといいます。理由は円高です。東京・北区にある西友では、きのうから商品価格を据え置く『プライスロック』の第7弾を開始。さらに今回は324品目の値下げも行うことで消費者の節約志向に応え、多くの客を取り込みたい狙いです。東京・品川区の居酒屋「さか膳」では60分600円で、それ以降は1分10円の飲み放題が人気です。客の単価は下がっていますが、回転率は2倍に上がっていて、収益を確保しています。26日、総務省が発表した7月の全国の物価指数は、前年比で0.5%下落しました。マイナスは5ヵ月連続で、物価の下落は止まりません。街角100人にインタビューを行ったところ、値下げなどで「財布のひも」を緩めた人が多く、「良いモノを安く」買っている人が目立ちました。
【“値下げの夏”止まらない物価下落・なぜ高級ブランドが続々!?】
沢山の店が立ち並ぶ東京・銀座。しかし買い物をしている人は少ない様子で、たまに見かけても低下価格帯の袋が目立つ。そんな銀座にある異変が見られる。今月、高級ブランドが次々に値下げを発表。カルティエは高級時計などを平均で10%、グッチは革製品の一部を平均9%値下げした。理由は円高だ。今年初め120円だったドルは今100円になっている。高級ブランド店の値下げは国内の買い物客を減らさない為でもある。さらに輸入物を扱う大塚家具も今月から約3600品目を値下げしている。相次ぐ値下げの実態を検証する。
【消費現場に異変】
円高の影響で輸入品の値下げが相次いでいる。さらにそれ以外のものでも値下げの夏となっている。スーパーでは幅広い日用品に値下げの波が広がっていて、消費の現場で異変が起きていた。
【スーパーで300品目も安く!?】
スーパーの西友では去年から食品や日用品を6か月以上値上げしないプライスロックを実施していて、昨日からその第7弾を開始した。従来の約2倍となる509品目を価格据え置きにしただけでなく、その内の6割に当たる324品目は値下げに踏み切った。サントリー「伊右衛門濃いめ」500mlペットボトルや最近人気の徳用タイプの台所洗剤が含まれるなど、消費者の節約への関心が高い事がうかがえる。さらに節約はするものの商品の質にはこだわりたいという消費者が増えている。西友ではそうした消費者意識を捉えて商品単価を下げてでもより多くの客を取り込みたい狙いだ。
《西友商品本部/木下数基さん》
「昨年2015年にやったプライスショックの商品は平均して20%売り上げが増加している。特にこのプライスロックというのが安いことがお客様に伝わって、どんどん新しいお客様が増えていくことを期待している。」
【60分600円で飲み放題!】
デフレの再来を思わせる動きは夜の街にも見られる。東京・品川区の人気の居酒屋・さか膳。一番の売りは1分10円飲み放題。最低60分以上の利用と料理2品以上の注文が条件だが、それでも飲み代を1人約1500円に抑える事ができる。去年このサービスを始めたところ利用客がみるみる増え、今では8割がこの飲み放題を選ぶという。飲み放題を始めてから客単価は下がったが、客の回転は2倍に上がっている。
佐賀市がCO2販売 “迷惑モノ”を有効活用
佐賀市のごみ処分場で、ごみを燃やした時に出るCO2=二酸化炭素を分離・回収し、民間企業に売却するという、世界でも初めての試みが始まりました。CO2分離施設を手掛けたのは東芝です。自社の火力発電所で実証実験を行った環境技術を使って、佐賀市から受注しました。そして、佐賀市からCO2を購入するのがベンチャー企業のアルビータです。アルビータは購入したCO2を使って「ヘマトコックス」という藻を培養し、サプリメントや化粧品の原料として商品化する計画です。メーカーから買うより4割ほど安くCO2を購入できるため、商品の価格競争力にもつながるといいます。また6~8億円の売り上げを見込んでいます。佐賀市は環境省からの補助金5億円を合わせ、施設の建設に14億5,000万円を投じました。17年間稼働すると計算し、赤字にならないようにCO2の売却価格を決めたといいます。また市では雇用や税収が生まれるといった経済効果に期待しているといい、環境対策とともにビジネス需要の創出にもつなげていく狙いです。
《佐賀市バイオマス産業都市推進課/本山剛弘課長》
「(新施設が)全国の清掃工場にできれば、CO2の排出量が抑制できる。ごみ処理施設は迷惑施設と言われていますが、私たちはそれを少しでも変えて、地域にとってありがたい施設だなというふうに変えたいと思っています。我々にとってボミは宝の資源なんですね。」
TICAD開幕へ アフリカ市場に売り込め
27日からアフリカ開発会議=TICADがケニアのナイロビで開かれます。アフリカは2050年に総人口が20億人を超えるとみられ最後のフロンティアとして高い経済成長が見込まれます。日本企業は現在680の拠点を持って投資に力を入れているが中国の投資額とは差があります。「最後のフロンティア」として高い経済成長が見込まれるアフリカ市場、中国などが投資を急拡大させる中、勢いに劣る日本も売り込みのチャンスとして期待をかけています。ナイロビに到着した安倍総理大臣はケニヤのケニヤッタ大統領などと会談し、「官民が連携してアフリカの発展に貢献していく」と話しました。また今回、企業関係者も大勢同行し、アフリカ市場の開拓に勤めます。その拠点となるジャパンフェアには100社以上参加する展示会で、パナソニックはマラリア診断システムやソーラーライトを紹介しています。ほかにもバイクやかつらなども展示されています。
アフリカ初TICAD、政治的な思惑も…
日本がアフリカに熱視線を送る背景にはアフリカの成長を日本の成長につなげる経済的な思惑に加え国際社会での日本の存在感を高める政治的な狙いもあります。尖閣諸島や南シナ海をめぐり日中が対立する中、国際社会で日本の立場への理解を深めるためにも54か国が集まるアフリカ諸国は大きな存在です。国連安全保障理事会の常任理事国入りに向けアフリカ諸国は大票田です。日本としては潤沢なチャイナマネーを使って「規模」で影響力を高める中国に対し、地熱発電などインフラ整備や運用する人材育成支援の「質」でアピールします。こうした経済的なメリット以外にも、アフリカ諸国との連携を強めることは日本の国際社会でも立場への理解を広げる政治的な思惑もあります。
■ニュース
近鉄「青の交響曲」を運行
近鉄は豪華観光特急“青の交響曲(シンフォニー)”の運行を始めます。3両編成で、大阪阿部野橋駅と奈良県の吉野駅を1時間20分で結びます。落ち着いた色合いに高級感漂う装飾品があしらわれ、奈良の地酒が楽しめるバーカウンターもあります。“青の交響曲”は来月10日から運行を予定しています。
厚生労働省 過去最大31兆円要求へ
厚生労働省は来年度予算の概算要求額を31兆1,217億円として自民党厚労部会に提示しました。内閣府に移管された保育所運営費などを合わせると過去最大で、年金や医療など社会保障費の自然増分としては6,400億円を要求しています。政府が重要政策と位置付ける「働き方改革」の実現に向けては、877億円を計上し改革に向けた大規模な組織再編にも乗り出します。同一労働・同一賃金についても、非正規労働者の正社員への転換や労働改善を推進するため、企業経営者からの相談窓口として各都道府県に支援センターを設置することを盛り込みました。
「共謀罪」名称変え提出へ
政府は、テロなど組織ぐるみの犯罪を準備した段階で処罰できる「共謀罪」について、「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を変え、国会への再提出を検討していることが分かりました。早ければ、来月から始まる臨時国会に提出したい考えです。共謀罪をめぐっては、過去3回廃案になった経緯を受け、今回は処罰対象を絞り込み、犯罪の構成要件を厳しくする方針です。
民進党 代表選 前原氏が正式出馬表明
民進党の前原元外務大臣は、「次の総選挙こそが政権交代を目指す戦いだ」と述べ、9月の党代表選への立候補を正式に表明しました。民進党結党以来、初めての代表選は、すでに出馬表明した蓮舫代表代行と前原氏の2人を軸に進むことになります。そのほか党内では玉木雄一郎議員も出馬を目指して調整を続けています。
韓国ロッテ副会長が自殺か
裏金疑惑で検察の捜査が進む、韓国ロッテグループの李仁源副会長がけさ、遺体で見つかりました。近くの車の中から、遺書のような紙が見つかったことから、首をつり自殺したとみられます。李副会長は、重光昭夫会長の最側近で、系列会社を統括する立場でした。韓国の検察は、系列会社を使った裏金作りに関与していた疑いで、李副会長の事情聴取をきょう行う予定でした。
3行合併で「きらぼし銀行」に
東京TYフィナンシャルグループは、傘下の東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京が合併して発足する新銀行の名称を「きらぼし銀行」にすると発表しました2018年5月をめどに合併し、システム統合などによる収益拡大で年間100億円ほどの増益を目指します。
■【THE行列】ベトナムサンドイッチ
東京・高田馬場にある「バインミー☆サンドイッチ」は、都内でも数少ないベトナムサンドイッチの専門店です。フランスの植民地だったベトナムでは、サンドイッチにフランスパンを使うのが一般的です。驚きなのは、中に入れる具材。日本でもお正月におなじみの“なます”が定番の具材なんです。また、パクチーをトッピングで追加すると、具材が見えないぐらい山盛りにしてくれます。一見、合わなそうな組み回せですが、さっぱりとした味わいがクセになると評判に。今では日に350本も売れる大人気商品となりました。
取材先・月待の滝「もみじ苑」
■【トレたま】進化するコーヒーマシン
人工知能搭載のタブレットに話しかけると自動でコーヒーを淹れる。
今年度中にはコーヒーを親が頼むと安否確認として子どものスマホに届く機能や会話だけでメッセージを送受信することができる。
《ネスレ日本飲料事業本部/島川基部長》
「スマホを使ってコーヒーを入れることができる。自分の好きなの見方も選ぶことができる。」
【商品名】ネスカフェバリスタi(アイ)
【商品の特徴】スマホで自分好みのコーヒーが入れられるほか、IoTやAIを活用した新サービスもある。
【企業名】ネスレ日本
【住所】神戸市中央区御幸通7-1-15ネスレハウス
【価格】7,389円(税別)
【発売日】10月1日
【トレたまキャスター】北村まあさ
■【コメンテーター】大和総研チーフエコノミスト/熊谷亮丸氏
・“値下げの夏”止まらない物価下落・100人に聞いた「財布のひも」
--この夏以降、値下げを実施する主な企業は、カルティエ、グッチ、大塚家具、バーガーキング、西友、成城石井、ABCマートなど。こうした値下げの動きをどう見ていますか。
「かなり幅広い業種に広がっていて、短期的には消費者のお財布にやさしいと思うんですけど、長い目ではちょっと心配な現象なんじゃないかなと思います。」
--この値下げの流れなんですけど、統計にも表れてきています。今日発表されました7月の消費者物価指数です。変動の大きい生鮮食品を除いたものなんですが、前年比0.5%低下ということで、5ヵ月連続でのマイナスとなりました。なんだかこうして見ますと、デフレに後戻りしているような感じがするんですが、では実際に消費者のお財布のひもはどうなっているのか、街角で100人の方に話を聞きました。
東京・銀座では「しめた」、巣鴨では「変わらない」、原宿や赤羽では「ゆるめた」という人が多く、全体で見ると「ゆるめた」人が多いという状況になったんですが、この結果をどう見ますか。
「背景としては実質賃金、私たちの懐具合と物価を比べたときに、いま実質の手取り額が増加してきているという事がある。足下で見ると前年比で1.8%伸びていますから5ヵ月連続の増加、これが消費の態度を少し好転させているという状況だと思います。」
・値下げすると消費は増える!?
--ただ詳しくいろんな方の話を聞いてみますと、特に原宿や赤羽辺りのお財布のひもを緩めた方々というのは、値下がりをして安くなった商品も買っているという方が多かったんです。そうしますと、値下げすると消費は伸びていくということですか。
「私は値下げをしてもなかなか本格的には消費は伸びにくいのではないか。日本の場合はもう20年間、デフレに苦しんできましたので、デフレマインドが染みついていて、消費者の方々がなかなかやっぱり高いものを買わないし、全体として非常に切り詰める状態というのが続くんじゃないかと思います。」
--そのデフレマインドから脱却する為にはかなり大きなエネルギーが必要ということになるんでしょうね。
「そのためには、いま賃金が1.8%伸びているわけですが、これ(実質賃金)がやはり3~4%ぐらいまで伸びていかないとちょっと厳しい。この賃金を伸ばすためには、従来の3本目の矢という成長戦略を強化して労働生産性を上げて、そのことによって賃金を伸ばしていくということが、1つ目のポイントである。もう1つのポイントは、将来不安を解消するということです。何故将来不安があるかといえば、やはり社会保障制度の持続性に不安がある。この社会保障制度の抜本的な改革。もう1つは、労働市場がいま二極化してしまって、非正規雇用の人が非常に苦しい生活をしているわけですから、同一労働同一賃金の原則によって将来不安をなくす。この賃金を上げることと、将来不安を無くすということが、本格的にデフレから脱却するためのカギじゃないかと思います。」
・そもそも物価は上がるべき!?
--私たちはよく番組で「なかなか物価が上がらない」ということをお伝えするんですが、そもそも物価というのは上がらなければならないものなんですか。
「私は物価はやはり緩やかに上がるべきだというふうに思っています。その意味では、結局、物価が落ちるということは私たちの所得も落ちてしまって、いわゆるデフレスパイラルというような、どんどん経済が縮小均衡に向かう可能性がある。もう1つは、デフレの状況下では借金をしている人が非常に苦しくなってしまう。借金の実質的な負担がどんどん重くなってしまいますから、そうなると、だいたい借金をしている人というのは、お金をたくさん使う傾向があるわけですね。そういう人がお金を使わなくなると、経済がどんどん悪くなるということですから、やはり緩やかに物価は上がるべきだと思います。」
--そしてこうした値下げの動きというのが企業で相次いでいるわけなんですが、企業がこれから気を付けるべきことというのは何なんでしょうか。
「大事なことは商品の質に見合った価格の設定が必要である。安かろう悪かろうではなくて、ある意味で非常に良い商品を出しながら、合理化努力などによって戦略的に価格を抑える事がポイントだと思いますね。」
--結局みんなが値下げしていくというのは非常に良くない方向、つまりデフレの方向に戻っていくことになってしまう。
「先に抜け駆けして値段を下げた人はもうかるわけですが、それが全体に広がると、経済全体が悪くなってしまう。やはり商品の質を上げることがポイントだと思います。」
・上がらない物価…先行きを独自分析!
--いろいろなものの値段が下がっていると今日お伝えしましたけれども、そうすると日銀が掲げている2%という物価目標は達成なるのかどうかというのが気になるんですがどうでしょう。
「結論としてはちょっと難しいというふうに思うんですね。こちらのグラフをちょっと見ていただくと、黄色い線が消費者物価の動きで左側の軸で示している。それから緑の線がGDPギャップといって、経済の実力と比べてどれぐらい景気が過熱しているか、上に行くほど景気が過熱している状況を示している。この2つがかなり連動性があるわけですが、先々については日本経済は緩やかな回復の方向を見込んでいますので、物価は1%ぐらいまでは上がっていくんじゃないかと思います。2%は過去にほとんど達成したことが無くて、2008年の時に原油価格が140ドル台まで行ったときに3ヵ月だけ達成した。そういうことを考えると、ちょっとやはり2%は厳しいかなと思います。」
--今度9月に日銀金融政策決定会合で、これまでの政策を総括するということですが、じゃあこの2%の目標を取り下げることもありますか。
「2%の目標自体は取り下げないけども、将来的には時期を2年ではなくて、もうちょっとオープンにしていく可能性がある。」