「ミュンヘン」オリンピック・テロ事件の黒幕を追え
マイケル・バー=ゾウハー&アイタン・ハーバー著 横山啓明訳(ハヤカワ文庫)
ミュンヘンオリンピックの選手村に、パレスチナのテロリストが潜入し、イスラエルの選手団を虐殺した事件と、その後イスラエルが暗殺チームを編成し、テロ組織の幹部に報復してゆく課程を題材に描かれたノンフィクション作品。
スピルバーグが監督した同名の映画(http://www.munich.jp/)が、つい先頃、公開されていたが、この本はその事件とそれに至った背景を、過去から現在に至るまで克明に描いた作品である。
また映画の参考図書として「標的(ターゲット)は11人」モサド暗殺チームの記録 ジョージ・ジョナス著 新庄哲夫訳(新潮文庫)がある。
この物語はミュンヘンの事件を計画指揮したテロリストで、「レッド・プリンス」と呼ばれたアリ・ハッサン・サラメの親子三代にわたるストーリーであり、イスラエルの報復の物語でもある。
第一部は第二次世界大戦前から始まり、父ハサン・サラメがパレスチナの指導者として活躍する時代を描いている。
第二部は息子アリ・ハサン・サラメとイスラエルとの戦いが描かれている。その頂点となるのがミュンヘン・オリンピック選手村襲撃事件である。
イスラエルはその報復として、暗殺チームを結成し、テロ組織「黒い九月」の幹部たちを次々と殺害してゆく。
そのなかで、「黒い九月」のリーダーであり、PLOのアラファトをして、私の息子とまで呼ばれたアリ・ハサン・サラメは、幾度も暗殺の手を逃れて生き延びる。
しかし、そんな「レッド・プリンス」にもついにイスラエルの手が……
ドキュメンタリーなので、どうしても読んでいて重く感じました。
とくにパレスチナ人の置かれている状況には同情するけれども、その解決の手段として、テロを行うということに対しては、まったく共感できません。
むしろ読んでいると、テロに対するイスラエルの強硬な態度に、強い共感を感じるくらいです。
主人公は父子ふたりのハサン・サラメですが、何ひとつ共感を得ることなく、むしろ何時になったら、この主人公が殺されるのか、というのが楽しみになってくるほどでした。
クライマックスは、なんといっても、ベイルートで愛人と隠れ暮らすアリ・ハサン・サラメに、イスラエルの暗殺の手がおよぶ部分になります。
ミュンヘン・オリンピックの惨劇から七年後の、まさしくこの一瞬のために、この長い物語が語られたのだと感じられる部分です。
はっきり言って、読んで面白いのは「標的(ターゲット)は11人」でしょう。ただ、この物語が、実話かどうかは議論の分かれるところではあります。
映画「ミュンヘン」を見た、あるいは「標的(ターゲット)は11人」を読んだ、という人で、もっと背景を詳しく知りたい、という人はぜひこの物語「ミュンヘン」を読んでみてください。
マイケル・バー=ゾウハー&アイタン・ハーバー著 横山啓明訳(ハヤカワ文庫)
ミュンヘンオリンピックの選手村に、パレスチナのテロリストが潜入し、イスラエルの選手団を虐殺した事件と、その後イスラエルが暗殺チームを編成し、テロ組織の幹部に報復してゆく課程を題材に描かれたノンフィクション作品。
スピルバーグが監督した同名の映画(http://www.munich.jp/)が、つい先頃、公開されていたが、この本はその事件とそれに至った背景を、過去から現在に至るまで克明に描いた作品である。
また映画の参考図書として「標的(ターゲット)は11人」モサド暗殺チームの記録 ジョージ・ジョナス著 新庄哲夫訳(新潮文庫)がある。
この物語はミュンヘンの事件を計画指揮したテロリストで、「レッド・プリンス」と呼ばれたアリ・ハッサン・サラメの親子三代にわたるストーリーであり、イスラエルの報復の物語でもある。
第一部は第二次世界大戦前から始まり、父ハサン・サラメがパレスチナの指導者として活躍する時代を描いている。
第二部は息子アリ・ハサン・サラメとイスラエルとの戦いが描かれている。その頂点となるのがミュンヘン・オリンピック選手村襲撃事件である。
イスラエルはその報復として、暗殺チームを結成し、テロ組織「黒い九月」の幹部たちを次々と殺害してゆく。
そのなかで、「黒い九月」のリーダーであり、PLOのアラファトをして、私の息子とまで呼ばれたアリ・ハサン・サラメは、幾度も暗殺の手を逃れて生き延びる。
しかし、そんな「レッド・プリンス」にもついにイスラエルの手が……
ドキュメンタリーなので、どうしても読んでいて重く感じました。
とくにパレスチナ人の置かれている状況には同情するけれども、その解決の手段として、テロを行うということに対しては、まったく共感できません。
むしろ読んでいると、テロに対するイスラエルの強硬な態度に、強い共感を感じるくらいです。
主人公は父子ふたりのハサン・サラメですが、何ひとつ共感を得ることなく、むしろ何時になったら、この主人公が殺されるのか、というのが楽しみになってくるほどでした。
クライマックスは、なんといっても、ベイルートで愛人と隠れ暮らすアリ・ハサン・サラメに、イスラエルの暗殺の手がおよぶ部分になります。
ミュンヘン・オリンピックの惨劇から七年後の、まさしくこの一瞬のために、この長い物語が語られたのだと感じられる部分です。
はっきり言って、読んで面白いのは「標的(ターゲット)は11人」でしょう。ただ、この物語が、実話かどうかは議論の分かれるところではあります。
映画「ミュンヘン」を見た、あるいは「標的(ターゲット)は11人」を読んだ、という人で、もっと背景を詳しく知りたい、という人はぜひこの物語「ミュンヘン」を読んでみてください。