10月。初日は雨も降り、朝からヒンヤリしていました。
衣替えの続きに、生前絵を描いていた母の、入院前に片づけていったままの物置をひとつ整理しようと奥をのぞいてみました。スケッチブックや完成した絵や、画材などのすき間に長方形の白い箱。横には、「古美研時 落葉と種」と書かれたメモが貼ってありました。
ふたを開けてみると、一番上の薄い包み紙の中から銀杏やもみじ、芙蓉やヒイラギなどの乾いた葉っぱがカサカサ音をたてて出てきました。きっと、美大で古美術研究をしていた時、訪れた場所で拾い集めたものでしょう。その下には、小さな封筒やビニール袋に分けられた、まだ皮がつやつやしている栗のような木の実やいくつかの枯芙蓉たち。袋それぞれに、山下公園、建仁寺、唐招提寺、哲学の小路、吉祥寺、不退寺と場所が記され、日付が添えられていました。
それらを広げたら、一気に、遠くの深い秋をひっぱり寄せた気がしました。
明日、庭の木立の下にまこう。ここにはいつか、ロサンゼルス郊外の海辺ですくってきた一握りの砂もまいたことがあります。家族の歩いてきた時間と場所が重なって(物置の肥やしも、これでほんとの肥やしになって)新しい土に変わっていくでしょう。芙蓉(Hibiscus mutabilis)のmutabilis は、ラテン語で「変化しやすい」という意味でもあるそうだから。
バリ島サヌールで、静かに、ゆったりとやってきた日暮れに撮った写真です。
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/