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英国のEU離脱

2016-06-25 23:04:49 | 日記
6月24日の国民投票の結果、英国はEUから離脱することを選択した。全体では離脱52%、残留48%であるが、地域別にみるとスコットランドやロンドンでは残留支持も、イングランド住民はEU離脱である。

さて、次の注目は、キャメロン首相がいつEU理事会に対して脱退の通告を行うかだ。EU条約第50条によれば、脱退通告がトリガーとなって脱退プロセスが動き出す。そして脱退通告の2年後にEU法は英国での効力を失う。なお、離脱派は即時の通告は不要との立場で、2020年5月の次回選挙までに脱退・新協定の非公式の交渉をして目処がたってから通告することを主張しているが、思い通りになるとは限らない。6月25日、ドミノ式離脱へと発展への懸念が高まる中、EUは英国に対して「なるべく速やかに」離脱するように促した。2017年、大統領選の仏、議会選の独蘭は、自国内のEU懐疑政党を勢いづかせないためにも英国に安易な妥協はしないであろう。

では、英国はEUとの間でどのような協定が結ばれるか?自由な市場へのアクセスとEU法の影響を受ける丸呑みのノルウェー・オプションや、120以上の個別合意を結ぶ(人と財の自由アクセスとEU法の影響を受ける)スイス・オプションは、取りづらい選択となるだろう。離脱派は、オーダーメイドな包括的経済協定(カナダ・オプション)の志向を表明しているが、EU市場への自由なアクセスを確保しつつ、EU法の影響を受けず、またEU予算への拠出もしないという良いとこ取りは、EU各国の反発を招くため、EUとの経済協定無し(WTOオプション)という状態で、まずは脱退先行となる可能性も捨てきれない。

上記に記載した通り、①EUへの脱退通告の時期、②EUとの交渉期間と内容、だけでなく、③英国内の意思決定も大きく影響する。キャメロン首相は、混乱させないために即時の辞任はしないとしているが、脱退交渉を含めた対応は、次の代表がすべきことと言い切った。EU関連法案の廃止や英国法への変更、EUとどのような新協定締結をしていくかの協議と意思決定は、下院で行われるとみられるが、現在の下院は残留派が多数を占める。

EU離脱による経済と金融市場への影響
6月24日、東京市場はポンド安、円高、株安が進んだ。1992年、英国が為替相場メカニズム(ERM)から離脱した際に、ポンドの実効レートは1ヶ月で15%程度下落した。注目されるのがシティへの影響である。金融サービスとして、欧州金融単一パスポートを英銀や第三国金融機関が喪失した場合、大陸側での現地法人設立やパスポートの取り直しが必要となるのか?また金融インフラとして、英国内でのユーロ決済業務を行えるのか、大陸に機能が移る可能性が否定できない。それでは英国内にある製造業はどのような影響を受けるか?EU離脱後の交渉次第だが、WTOの枠組みとなれば、年間90億ポンドのコスト増になるとみられる。輸出額の観点から、自動車、航空機部品、電気機器などで影響が大きくなるだろう。

今回の離脱で、英国の欧州におけるポジションが変わることになり、日本企業は欧州における英国子会社の位置付けを再考することが必要となるのか。細かい数値はここで出せないが、日系メーカーは英国より欧州域内へ輸出が多く、英国に取引先が留まるのかどうかも含めて、あらゆる可能性を考えておくべき状態である。

振り返りと考えたこと
今回の離脱の要因としてあげられているのが、移民問題であり、主権問題である。移民については、30万人の受け入れによって中産階級も職を奪われたりし、その矛先が主権を取り戻すという青い鳥と混ざり合ったポピュリズムで流れになってしまったものと思う。キャメロン首相は、スコットランド独立問題の時と同様に、まったく負けることはありえないとの認識で、安易に国民総選挙という劇薬に頼りすぎた感がある。必ずしも大衆が正しい選択をするとは限らず、問題をなんでも国民の判断に委ねるなら、プロの政治家としての職務放棄でなかったのかと問いたい。国民は、政治家を選ぶことができる、つまり民度の高さによって選ばれる政治家の質が決まる。そして政治を託された政治家が、国の方向性を推進しなくてはならない。企業も株主にプロの経営者として委任され企業経営を行う。企業買収などを含め専決事項であり、結果責任を問われる。安易に株主に決めてもらおうとするような経営者はいらないのと同じだろう。
移民問題は、何も英国だけのことでなく、いまや世界中の課題である。フランスを含め移民によって安易な経済発展を志向した結果、治安の悪化と失業という課題に直面している。移民については、受け入れ議論よりも、根本原因の解決に各国協調で取り組まないと、いつまでたっても解決することはない。放置や対処療法の先にあるのは、共倒れと詐欺師の暗躍であるから。