わたしの浅~い浅~いオペラ経験の中で
初めてブーイングの出たオペラです。
コンヴィチュニー演出、わたしは意外と好きだったんですけどね。
前の座席の人なんか途中何度も肩を震わせて笑っていたし
拍手しない人もたくさんいたし、最後はあちこちから「Boooooo!」の声。
もちろん「Bravo!」もあったけど、衝撃的一夜でした。
何がそんなに受け入れられなかったんだろうか。
わかりやすいところで、まずはセットと衣装かな。
「アイーダ」っていうのは、舞台は古代エジプトなわけですが、
今回は白い壁に囲まれた1部屋とソファが1個というセッティング。
エジプトはまったく関係ない。
また、衣装も古代エジプトには程遠い。
アムネリス(エジプト王女)はシンプルなドレスに身を包み、
アイーダ(エジプトの奴隷でエチオピア王女)はメイド服、
ラダメス(エジプトの将軍)は白いシャツに白いズボン、
エジプト王はタキシードで、司祭は牧師さんのような格好、
アモナスロ(アイーダの父でエチオピア王)は近代的な軍服姿。
次に、拒絶反応を示されたのは、やっぱり演出そのものかな。
エジプト将軍のラメダスは、とっても子どもっぽいキャラクターで
ソファに乗っかって騒いだり、すぐにしかめっ面したり、お守りに
アムネリスから象のぬいぐるみをもらったり(←象のぬいぐるみだよ~、
プップッ )、能天気な感じで愛を謳ったり。
アイーダとアムネリスがラダメスをめぐって争っているときに
出陣前の儀式で他の女の人(巫女)とセックスしてしまったり。
ちなみに、演出家のコンヴィチュニーによると、この儀式のシーンでは、
「一個人の国家に対する責任の重さ」を暗示しているそうです。
普通に見ているだけだとそこまでは読み取れない。
アイーダといえば、凱旋のシーンですけど、その有名で壮大な
凱旋シーンもなし。その代わりにエジプト王、司祭、アムネリスの3人が
乱痴気騒ぎをしています。他人に戦わせて良いとこ取りのこの3人だけが勝者。
掃除道具を持ったアイーダも、ボロボロの象のぬいぐるみを片手に血だらけで
呆然としているラダメスもこの3人にいいようにされた人なのね。
最後のシーン、ラダメスとアイーダが地下に生き埋めになっちゃうシーンも
生き埋めではなく、遠ざかっていく感じ。セットの部屋の白い壁が取り除かれ
都会の夜景が背景に出てきたんだけど、そちらに向かって消えていく感じ。
アムネリスが最後までいっしょにいたから、3人いっしょに最後を迎えることに
したのかと思ったら、それは間違いだった。かわいそうなアムネリスだから、
仲間に入れてあげて3人で最後を迎えるという結末があってもよいのに。
とりあえず、ブーイングの理由を考えてみたけど、「アイーダ」に対する
思い入れの少ないわたしとしては、こういう「アイーダ」もアリ~ダ。
先月新国立劇場で観たゼッフィレッリ演出の「アイーダ」もすっごく
良かったけど、お伽話(←本当はおとぎ話が大好きなんだけど)ではない、
もっと人間のドロドロしたところが浮き彫りになっている今回の演出も好き。
観れば観るほど味が出る、スルメのような存在のオペラだと思うよ。
もうひとつ。ヴォルフガング・ボージチの指揮が熱かった。
彼の手の動きと頭の動きに合わせて、透明な綿菓子みたいに
メロディーが、旋律が客席に飛んできた!
透明な綿菓子って何って感じだけど
とにかく重量はないけど濃密な感じってことよ。
最後に歌手の声が一部でなかったこともありハラハラしたけど
全体としては大満足の「アイーダ」でした♪
僕も土曜日に同じヴェルディの「仮面舞踏会」を見に行きましたよ。僕はこれがオペラデビューでしたが、すっかり魅了されました!このブログの影響が大きい?
ところで、どこでみたの?
まさか、シドニーのオペラ座?
いいなあ~
今度カルメンの感想おしえてね。
あと、メルボルンの生活についても。