自由民主党 柏市議会議員・円谷のりひと 公式ブログ

千葉県柏市議会議員 円谷のりひとの議会・活動報告、政策提言など。記事には政治活動以外の内容(雑記)も含まれます。

“急造野手”が157キロ右腕を打ち砕く=東都大学野球・国学院大vs.中央大

2010年05月18日 18時59分46秒 | 野球(ライター時代の記事)
“急造野手”の一振りが試合を決めた。東都大学野球リーグの春季リーグ戦、国学院大vs.中央大1回戦が18日、神宮球場で行われ、国学院大が2対0で勝利した。0対0で迎えた4回、1死走者なし。打席には、投手として登録されている畠山翔平(4年=能代高)。フルカウントからの6球目、中央大のエース・澤村拓一(4年=佐野日大高)のストレートを強振すると、神宮には「カツン」と乾いた音が響いた。
「思い切り振り抜けた。まっすぐ一本と割り切れたのが良かったと思います」
157キロ右腕のストレートを狙い打った打球は、次の瞬間、ライトスタンドにライナーで飛び込んだ。

 畠山は本来投手だ。今春のリーグ戦でも国士舘大2回戦(4月7日)に登板している。しかし、第4週の東洋大戦(4月29日~)を前に、竹田利秋監督から「(ピッチングの調子が)良くなかったので、『やってみろ』と言われました」と野手に挑戦することになった。  
 その東洋大1回戦でいきなり二塁打を放ち、非凡なセンスを見せた。そしてこの日、チームを勝利に導く本塁打を放った。畠山は「外野の頭は越えるかな、と思ったんですけど、まさか入るとは」と端正なマスクに笑顔がはじけた。
 竹田監督も「あんな小さい体なんだけどねえ」と170センチの小兵の一発に驚きの表情。そして「澤村君は調子が悪くても別格。よく打ってくれた」と称えた。
 
 一方、打たれた澤村はがっくりと肩を落とす。
「自分の力不足です。(ストライクを)入れに行ったストレートをやられました」
 これで中央大は7勝5敗となり、優勝はより一層遠のいた。
「まだ最低でも(リーグ戦は)1試合ある。きちんと準備したい」
 いつも強気な背番号18だったが、この日はそう絞り出すのがやっとだった。

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「2番手」から「2枚看板」へ シャイなエースの誕生=東都大学野球 国学院大vs.東洋大

2010年05月01日 01時17分35秒 | 野球(ライター時代の記事)
【国学院大 0-3 東洋大】

 V奪回へ、東洋大の快進撃が止まらない。東都大学野球の春季リーグ、国学院大vs.東洋大の2回戦が30日、神宮球場で行われ、東洋大が3対0で勝利、勝ち点を3に伸ばした。東洋大は立正大2回戦から6連勝で第4週を終え首位。2季ぶりの優勝へまた一歩前進した。

 これまで、彼がチームの主役になることはなかなかなかった。もうすっかり定着した“2戦目の先発”。しかし、今季の藤岡貴裕(3年=桐生第一高)を2番手と呼ぶにはあまりにも失礼だ。開幕戦を落とし、負ければいきなり優勝争いから脱落となりかねない立正大2回戦でリーグ戦初完封をマークすると、続く亜細亜大2回戦でも完封勝利。そしてこの日も最速145キロの直球と100キロ台のカーブ、スライダーを巧みに使い、4安打3四死球11奪三振、148球の熱投で3試合連続の完封勝利を挙げた。

 躍動感あふれるマウンドさばきは、2番手のそれではなく、“2枚看板”と呼ぶにふさわしい。1学年上に同じ左腕の乾真大(4年=東洋大姫路高)がいる。リリーフには高校の先輩でもある鹿沼圭佑(4年=桐生第一高)も、同学年で先に脚光を浴びた内山拓哉(3年=浦和学院高)もいる。そんな中、藤岡は与えられた役割を無心にこなし続けた。着実に実績と信頼を積み重ねた。そして、上級生として迎えた今季、どこか頼りなかった下級生時代の彼は神宮にいなかった。

「去年までは2つ上の学年もいて、緊張したりもして(笑)、投げるので精一杯だったんですけど。今は周りも見えるようになったし、声もかけられるようになりました」
 藤岡が語るように、マウンドでの視野が広がったことが今季の快投につながっている。「今日は重心が後ろすぎたんで、前にするイメージに修正しました」と4回に乱れた制球を自ら改善することもできた。
 オフの間に取り組んだフォーム改造も生きている。「真っすぐのリリースが早かったので、前で話すようにシャドーとか、キャッチボールで意識して取り組みました」。結果、球持ちが良くなり、制球力も球威も増した。精神力・技術力がとも向上したのだから、今季の好結果も納得だ。

 連続無失点記録は、この試合で「31」イニングに伸びた。東都の歴史に燦然と輝く「56回3分の1」を持っているのは、OBであり臨時コーチを務める松沼雅之氏だ。「56回ですかぁ。いやー、ちょっと……」と藤岡は笑うが、「目標にしてがんばります」と謙虚に話す。高橋昭雄監督も「あんなの、(連続完封の)記録がかかってなかったら代えてるよ」と言いつつも、満面の笑み。「学生野球にはそういうの(個人の記録)も大事だからね」とバックアップする構えだ。

 次週は事実上の優勝決定戦と目される中央大との対戦が控える。相手は澤村拓一(4年=佐野日大高)ら好投手をそろえるが、「ピッチャーと対戦するわけじゃないので。バッターとの対戦なので、意識しないで投げます」(藤岡)。
 少しだけはにかみながら、ていねいに取材に応じる姿は1年生のときから変わらない。シャイな性格とは裏腹に、凄みを増す左腕が、東洋大に再び栄冠をもたらす。
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人情の指揮官が見せた怒り=東都大学野球 立正大vs.東洋大

2010年04月08日 00時18分00秒 | 野球(ライター時代の記事)
東都大学野球 春季リーグ戦(4月6日・神宮) 
【立正大 4-3 東洋大】

 いつもどおりの明朗な口調の端々に、怒りがにじんでいた。
「あいつには明日からユニホームを着させない」

 高橋昭雄・東洋大監督が敗戦の後に選手を批判することはめったにない。ピッチャーが打たれる、チャンスで凡退する、エラーが出る。それが野球であり、しかもプレーしているのはプロでも社会人でもなく、大学生。ミスが出るのは当然なのだ。以前、高橋監督はそんな意味の話をしていた。

 人情の指揮官でもある。昨夏の大学選手権・創価大戦では、限界だと悟っていたにもかかわらず、鹿沼圭佑(4年=桐生第一高)の「大丈夫」という言葉に続投を決断した。結果、鹿沼は打たれ敗戦。しかし、「これまで鹿沼に頼って勝ってきた。それなら、ここは賭けてみようと。打たれたのは責めることはでません。監督の責任です」とエースの負けん気を信じたことに後悔はまったくなかった。それが、高橋昭雄という監督なのだ。

 その高橋監督が、はっきりと表した怒り。それは、ファースト・鮫島勇人(3年=浦和学院高)が犯したふたつの失策に向けられている。ひとつ目は、2回2死二塁の場面でゴロを後逸し、先制点を許した場面。もうひとつは、7回1死二塁で同じように打球を逸らし、決勝点を献上したプレーだ。

いずれも、完全に打ち取った打球だったが、一二塁間寄りのゴロに対しミットだけで捕りに行き、バウンドに合わせ切れなかった結果の失策だ。得点圏に走者がいて、併殺を狙う場面でもない。ならば内野手はどんな守備をするべきか。「体の正面で打球をさばく、最低でも胸に当てて前に落とす」。それが“やるべきこと”だった。
 
 鮫島は、それを怠った。高橋監督はミスをしたことではなく、軽率なプレーを2度も繰り返したことに怒っているのだ。
「かわいそうでもなんでもない。やることやらないんだから」
 そう吐き捨てる高橋監督の言葉には、闘志を持たない者、軽いプレーをする者にはグラウンドに立つ資格はないという指揮官として意思が表れていた。

「こんなの優勝を意識するチームがするプレーじゃないよ。“奪回”なんて絵に描いた餅だ」
 ミスで開幕戦を落としたことに、厳しい言葉が並ぶ。2季ぶりのリーグ制覇への前途は多難だ。
だが、1番に坂井貴文(4年=春日部共栄高)、を置き、林崎遼(4年=東洋大姫路高)を3番に据える新打線には手ごたえを感じた様子。ドラフト候補に名の挙がる南昌輝(4年=県和歌山商)を5回途中でKOし、さらに9回にも満塁のチャンスをつくった。
「最後、だめだったけど、形をつくったからね。あとは1勝できれば(変わってくる)」
 この言葉どおり、ほしいのはとにもかくにも白星だ。持ち前の勝負強さを発揮し、連勝で勝ち点を奪い取りたいところだ。
 
 最後に、鮫島選手。失った信頼を取り戻すのは容易ではない。しかし、そのパンチ力のある打撃が必要になるときが必ず来る。そう信じて、毎日の練習に励んでほしい。筆者もその日を待っている。

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悲願成就 長野、“最後の夏”を涙で終える=第80回都市対抗野球・決勝

2009年09月02日 02時24分55秒 | 野球(ライター時代の記事)
 第80回都市対抗野球大会の決勝、トヨタ自動車(豊田市)vs.ホンダ(狭山市)が1日、東京ドームで行われ、ホンダが4対2で勝利した。本田は1996年以来13年ぶり2度目の優勝。MVPの橋戸賞には今大会3勝を挙げ、ホンダの日本一に貢献した筑川利季也が獲得した。
 そのほかの個人賞は、準優勝のトヨタ自動者から佐野比呂人が敢闘賞に当たる久慈賞を獲得。首位打者賞は長野久義(ホンダ)、打撃賞は松田孝仁(東京ガス=東京都)が輝いた。また、優秀な新人に贈られる若獅子賞は須田幸太(ホンダ)、榎田大樹(東京ガス)、村尾賢吾(日立製作所=日立市)が選ばれた。

* * * *

 最後の打者が放った飛球をセンターの小手川嘉常がつかむと、マウンドにホンダナインの歓喜の輪ができた。しかし、そこに背番号10の姿はない。そのとき、長野久義は、2塁ベースの後方で泣き崩れていた。
「日本一になるためにずっと練習してきたんで、最後は込み上げるものがありました」

 昨秋、長野が巨人入りを熱望し、千葉ロッテへの入団を拒否したのは周知の事実。だが、その選択は巨人への憧れだけが理由ではない。ホンダで日本一になりたい。その思いも長野を社会人野球に留まらせた大きな要因だった。

 今大会、長野は絶好調。昨年、4強で涙を飲んだ悔しさを晴らすかのように、19打数11安打、打率5割7分1厘で首位打者賞を獲得と打ちまくった。
 この決勝でも、3回に2点タイムリーを放った。川戸洋平のタイムリーで1点を先制した直後、ランナーは二、三塁。「2アウトからつないでくれたので、絶対にかえそうと思った」と気合を入れて打席に立ったが、カウント2-2なると「2ストライクになってからは、後ろに西郷(泰之)さんもいるし、つなげばいいと思った。その切り替えがタイムリーにつながったと思います」。状況に応じた冷静な判断が、相手を突き放す貴重な一打を導いた。
 大会を通じ、文句なしの活躍を見せた長野だったが、その口から出たのは「少しでもチームに貢献できたかな」という謙虚な言葉。そのひと言ひと言から、フォアザチームの精神がにじみ出る。

「(ドラフトのことは)そのときになってみなきゃわかりません。ワールドカップ、選手権と日程的にきついので、ケガがないようにやっていきます」。
“最後の夏”に、東京ドームで悲願成就。だが、長野の視線の行く先は巨人のユニホームを着て、この東京ドームで試合をすることではない。プロの世界に飛び込む前に、アマチュア球界でもうひと暴れするつもりだ。
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日本文理の驚異の粘りと完璧な夏=夏の甲子園

2009年08月25日 02時12分26秒 | 野球(ライター時代の記事)
 秋。
 その悲報は、北信越大会の直前に届いた。大井道夫監督の愛妻、秀子さんが亡くなった。指揮官は選手へ動揺を与えまいと、その事実を隠したが、どこから伝わったのか、そのこことはナインの耳に届いていた。
監督と奥さんのために――。その想いを胸に戦ったナインは見事北信越大会を制覇。センバツ出場を勝ち取った。

 春。
 2年ぶりに迎えた甲子園の舞台。相手は、清峰高(長崎)。大会屈指と言われた右腕・今村は、大きな壁だった。投げては12三振で完封、打っては先制の本塁打。この大会の優勝投手となる豪腕の前に、日本文理高はなすすべなく敗れた。
このままでは、全国では、通用しない。

 夏。
 センバツで感じた全国との差を、死にもの狂いで埋めた。
 甲子園だけを目指した新潟大会。初戦の2回戦・新潟東高戦に11対0で大勝したのを皮切りに、3回戦・長岡向陵高戦、7対0。4回戦・佐渡総合高戦、8対1。準々決勝・高田農高戦、10対0。準決勝・新潟県央工高戦、10対0。そして決勝・中越高戦、12対4。まさに無敵に強さで甲子園への切符を手にした。

 そして迎えた夏の甲子園。
 初戦で藤井学園寒川に鮮やかな逆転勝利。ドラマはここから始まった。3回戦、準々決勝と、地区大会から活発な打線が2ケタ得点を挙げる。準決勝の県岐阜商高(岐阜)戦では、全国きっての古豪相手にエース・伊藤が11奪三振で1失点完投。誰もが予想しなかった決勝へ駒を進めた。

 決勝。相手は過去6度の優勝を誇る名門中の名門・中京大中京高(愛知)。さすがの伊藤もこの強打線に捕まり、快進撃もここまで。そう誰もが思った。しかし、彼らの真骨頂はここからだった。6点差の9回2死、切手が四球で出塁。続く高橋隼から2死四球をはさみ4連打5得点。4点差、満塁で迎えた伊藤の打席では、甲子園に手拍子と大きな大きな「イトウ」コールか起こった。最後の打者、若林がサードライナー倒れた瞬間は、異様な光景だった。優勝を決めた中京大中京ナインに、歓喜の笑顔がなかった。そこにあったのは、「やっと終わった」という安堵の表情だった。

 歴史に残る粘り。「組み合わせの妙」の声にふたをする、熱い戦い。全5試合のマウンドを1人で守り抜いた背番号1の背中。愛妻を失ってもチームを鍛え続け、本大会の準決勝では熱中症になりながも選手とともに戦った指揮官の情熱。すべてが、目に焼きついている。

 第91回全国高校野球選手権。みちのくの怪物・菊池(花巻東高)、史上最多7回目の優勝を遂げた中京大中京高の大黒柱・堂林、打っても投げてもセンス抜群の今宮(明豊高)。東西の横綱を立て続けに破った県岐阜商高(岐阜)。そして日本文理高。ことしも甲子園は熱かった。
 スター、名門の貫禄、波乱、そして感動。何ひとつ欠けることのない完璧な夏が、そこにはあった。

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選手層の差が分けた勝敗 越えられない壁=全日本大学野球選手権・第6日(決勝)

2009年06月15日 02時27分30秒 | 野球(ライター時代の記事)
【決勝 法政大 5-1 富士大】

「東海大、近畿大、それにうち……こういう流れの選手権なのかなあ」
 準々決勝で敗れた東洋大・高橋昭雄監督がつぶやいたように、優勝候補が次々に消えていった今大会。ほかに東北福祉大も初戦で敗れた。今大会を一言で表すなら、「波乱」という言葉がぴったりだ。
 しかし、14日の決勝に波乱はなかった。戦前に挙げられた有力校のなかで唯一順調に勝ち上がった法政大(東京六大学)が、エース・守安玲緒(4年=菊華高)を中心に快進撃を続けてきた富士大(北東北大学)を退け、14ぶりの頂点に立った。

 法政大を勝利に導いたのは、2番手でマウンドに上がった二神一人(4年=高知高)だ。6回、0対1とビハインドの場面で登板。「リーグ戦ではないことですけど、こういう(トーナメントの)大会だから関係ない。初回からでも行くつもりだった」と語る右腕は、150キロ近い直球を主体に、富士大打線を牛耳った。
「とにかく流れを持ってこようと思っていました。うちの打線も抑えられてるけど、こういう試合はワンチャンスで流れが変わる」
 味方を信じていた。相手の攻撃時間を短くし、流れを持ってこようと速いテンポで投げようと心がけた。そして、終盤、その“流れ”がやってきた。

 8回、亀谷信吾(4年=中京大中京高)の犠飛で追いつくと、9回も無死一、二塁のチャンスをつくる。ここで打席には5番の佐々木陽(3年=作新学院高)だったが、初球バントがファウルになる。すると、金光興二監督はすかさず大八木誠也(3年=平安高)を代打起用。ここは当然、送りバントだろう。誰もがそう思った。
 だが、大八木は金光監督にある進言をしていた。
「もし、(内野手が)突っ込んできたら、バスターしてもいいですか」
 
 この場面、富士大の青木久典監督は「バスターは頭になかった」という。そして、マウンド上の守安はバントと決め付けたわけではなかったと言いながらも、どこかで油断があった。「相手は初球ですし、外そうかどうか迷ったんですけど……」というストレートは、迷った分だけ甘く入り、大八木のバスターの餌食となった。右中間への見事なタイムリー二塁打だ。結局、この1点が決勝点となった。

 連投で疲れの見えるエースを2番手に待機させた法政大。「守安がいたおかげでここまでこれた。代える気はなかった」(青木監督)と準決勝まで4戦3完投の投手を使い続けるしかなった富士大。代打で起用された選手が、見事な判断とバッティングを見せた法政大。9回を終え、1人の選手交代もしなかった富士大。選手層の厚さが優勝と準優勝を分けたのである。波乱が多かった今大会、中央と地方の差は縮まっていることを実感させたれた。しかし、それでも超えられない壁を決勝で見た思いだった。
 
◇ ◇

 試合後の表彰式の様子を急いで付け加えておく。「準優勝、富士大学」のアナウンスがあると、スタンドから大きな拍手と歓声が上がった。この日、神宮に訪れた大学野球ファンは、今大会の富士大の活躍を、忘れないだろう。

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富士大の“すげえ”選手たちと涙の指揮官=全日本大学野球選手権・第5日(準決勝)

2009年06月14日 01時03分16秒 | 野球(ライター時代の記事)
【準決勝 富士大 2-0 創価大】

 9回、ジエゴ・フランサ(4年=八王子実践高)のミットにボールが収まった瞬間、青木久典監督の目に涙が溢れた。男泣きだった。一戦一戦、たくましさをます選手たちに、「お前ら、すげえぞ」という気持ちを抑え切れなかった。

 誰もが予想しなかった決勝進出だ。前日12日、近畿大(関西学生)から金星を挙げた。その勢いは認めても、ここまで全試合で勝ち星のエース・守安玲緒(4年=菊華高)が疲労しているのは明らかだった。少しでも体力を温存しようとしているのか、攻撃の間のキャッチボールもほとんどが山なり。果たして投げ切れるのか……。

 そんな心配をよそに、守安の好投は続いた。低めの変化球が、面白いように決まる。ストレートも自己最速の145キロを計測した。終わってみれば、散発3安打の完封勝利。文句なしの投球だった。
 これには創価大(東京新大学)・岸雅司監督も脱帽だ。5回から4連投となる大塚豊(4年=創価高)を使ったのは、「(守安に)エースが出てきたから、追加点はもらえないぞと思わせたかった」から。攻撃だけでなく、守備でも揺さぶりをかけたが、守安はその戦略のさらに上を行く投球を見せたのだ。「浮き足立って、余分な四球とかを出してくれると思ったんですが、たいしたもんだ」と相手指揮官も絶賛だった。

 涙を流す青木監督を、ナインは「何泣いてんすか! まだ早いですよ」とたしなめた。そう、まだ決勝が残っている。相手は、青木監督の母校・法政大(東京六大学)だ。
「法大の4年間があるから、今の自分がある」
 学生時代は、同期の稲葉篤紀(現・北海道日本ハム)らとともに多くを学んだ。その恩返しは、勝つことにほかならない。
「選手の力を引き出してやることが、自分の仕事だと思っています」と語る指揮官は、“すげえ”選手たちの歓喜の輪を見ながら、本当の男泣きをすることだろう。

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夢は遼遠 東洋大、散る=全日本大学野球選手権・第4日

2009年06月13日 02時52分09秒 | 野球(ライター時代の記事)
【準々決勝 東洋大 5-6 創価大】

 夢の4季連続日本一が儚く散った。「(東都)リーグの意地を懸けて、というのもあったんですけど。相手の執念が勝りましたね」と創価大(東京新大学)を称えた指揮官は、「鹿沼(圭祐・3年=桐生一高)、乾(真大・3年=東洋大姫路高)、それにキャッチャーの佐藤(貴穂・3年=春日部共栄高)も最後まで出た。負けて得た物といえば、そういう経験です」と、継続中のリーグ連覇に向けて収穫を口にした。しかし、それは努めてプラス思考に転じようとしただけのようだ。短い公式取材時間のなかで、何度も「悔しい」という言葉が口をついた。

 敗因は、自慢の投手陣が崩れたことだ。先発の乾が2回もたずにKO。試合前、「暑いのは苦手なんですよね」と顔をしかめていた不安が的中してしまった。前日11日の九州共立大(福岡六大学)戦では、絶対的な信頼を寄せ先発に起用した鹿沼がピリッとせず、この日ために温存するはずだった乾のリリーフを仰いだ。狂った歯車を修正するには、時間が足りなすぎた。

 それでも打線の奮起でなんとか創価大に食らいつく。そこには、“戦国”東都リーグを勝ち上がってきたチームの強さがあった。鋭いスイングで好投手・大塚豊(4年=創価高)から5点を奪った。
 しかし、同点で迎えた8回が分岐点だった。1死二塁の場面でマウンドに向かった高橋監督は、「鹿沼は限界だ」と思っていた。それでも交代はしなかった。「あそこから藤岡(貴裕・2年、桐生一高)でもよかった。でも、鹿沼が『大丈夫』と言うから続投させた」と話す。
「これまで鹿沼に頼って勝ってきた。それなら、ここは賭けてみようと。打たれたのは責めることはでません。監督の責任です」

 高橋監督は、1回戦後に言っていた。
「(鹿沼には)やっぱり疲れがある。春のキャンプで腰を痛めて、2週間くらい出遅れてるからね。そのつけが今出ている」
 不調に気づいていても、最後までエースの負けん気を信じた。人情家の高橋監督らしいさい配だった。打たれた鹿沼は、悔しさを押し殺しながら「大塚さんは決め球が豊富だった。自分ももっと球種を増やしたい」と相手先発を称えた。そして、「(負けたことで)秋はまたチャレンジャーとして臨むことができる」と一からの出直しを誓った。

「ごめんね、弱くて」
 今季も取材に応じてくれたお礼を言った筆者に、高橋監督は申し訳なさそうに謝った。まだ30にもならない一介の記者に、還暦を過ぎた大学野球界きっての名物監督がこともなげにこんなセリフを言う。だから、このチームは応援したくなる。そして、勝ち続けるという夢は、なんと遼遠なものなのかと、思い知らされた。
 中立が前提の取材者がこんなことを言ってはいけないのかもしれない。けれど、敗戦の苦味は「ああ、おれはこの監督に魅せられているのだな」と、筆者に教えてくれた。 

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創価大・大塚、最後の選手権に懸ける思い=全日本大学野球選手権・第3日

2009年06月12日 02時06分08秒 | 野球(ライター時代の記事)
【2回戦 創価大 4-1 東北福祉大】

 そのスケールは一回りも二回りも大きくなっていた。創価大(東京新大学)・大塚豊(4年=創価高)が東北の雄・東北福祉大(仙台六大学)を黙らせた。高校時代から磨きをかけ続けたフォークボールは、記者席から見ても「打てないな」と思わせるものだった。5安打1失点で前日の広島経済大(広島六大学)戦に続く無四球完投勝利。安定感抜群の投球は、まさにエースと呼ぶにふさわしかった。

「同じ相手に2度は負けられない」
 昨秋の神宮大会で敗れた相手に、リベンジを期してのマウンドだった。半年前に打たれた相手を抑えられたのは、冬場のハードなトレーニングのたまものだ。
「ケガを恐れずに投げこみました。あとはランニング中心の練習です」
 伝家の宝刀のフォークを生かすために、ストレートを磨くことに専念した。そして、「キレが増して、ストレートでも勝負できるように」なった。

 いくらフォークが良くても、それ以外の球種が並みのボールなら、全国では通用しない。しかし、今の大塚は打者の狙いによって決め球を変えることができる。それが「コントロール重視で、打たせて取るタイプ」と自ら語る大塚にもかかわらず、10奪三振を奪う快投につながった。

 この日の投球に岸雅司監督は「八木(智哉・現北海道日本ハム)を思い出した」と言う。2005年、この全日本選手権で5連投。1大会最多奪三振(49個)の記録もつくった創価大史上に残る大エースを引き合いにした最大級の賛辞である。さらに「(八木を)越えろと言っている」と更なる期待をかけている。
 
 1年生のときから投げ続けて、今回が4度目の全日本選手権。1、2年時にはいずれも4強まで進出した。だが、その頃は「結果を気にせずに全力でやればそれでよかった(大塚)」
 それでは、今は――。
「4年生になって、全員で戦ってる感じがする。今が一番楽しい。このチームで勝ちたい。日本一になりたい」
 
 悲願の日本一へ、「疲れたなんて言ってられない」と八木さながらの連投も辞さない構えの大塚。岸監督も「エースたるもの、疲れたなんて言ってられない。本人もいくつもりでしょう」と明日もマウンドを託すつもりだ。
 最後の全日本選手権、創価大が誇る背番号18が完全燃焼する。

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「投げなくてもいい」“ミスターノーヒッター”が選んだ道=全日本大学野球選手権・第2日

2009年06月11日 00時55分41秒 | 野球(ライター時代の記事)
【1回戦 九州共立大 10対9 国際武道大】

 九州共立大(福岡六大学)の“ミスターノーヒッター”山内晴貴(4年=沖縄水産高)にとって、全日本選手権は鬼門のようだ。前回大会、山内は1回戦の上武大戦に先発。しかし、4回に5点、5回に3点を奪われ敗戦投手になった。そして今年は、まったく自分の投球ができないまま、2回途中2失点で降板という不甲斐ないマウンドだった。

 思うようなピッチングができなかったことには理由がある。実は山内は、右のわき腹を肉離れしていたのだ。負傷したのはこの1回戦を10後に控えた5月31日。紅白戦の最中の出来事だった。

 当初は、「ジョギングするだけで痛かった(山内)」というほどの重症。キャッチボールもままならず、もちろん本格的な投球練習もできなかった。それでも仲里清監督は、山内に先発を任せた。それは、「山内でリーグ戦を戦ってきた」というエースへの信頼からだった。
 
 事実、 今春のリーグ戦で山内は、自身2度目のノーヒットノーランを含む5勝(ほかにも延長戦で打たれはしたものの、9回を無安打に抑えた試合もあった)と大車輪の活躍を見せていた。しかし、国際武道大(千葉県大学)だって厳しいリーグ戦を勝ち抜いてきたチームである。いくらプロが注目するほどの実力者・山内でも、手負いの状態で抑えられるほど甘い相手ではなかった。2回、北圭介(4年=福岡工大城東高)のヒットを足がかりに、あっという間に2点を奪い山内を引きずり下ろした。

「思うようなボールが行かなかった」
 試合後、ダッグアウトに姿を見せた山内は、そう言って肩を落とした。しかし、試合は大乱打戦を制して勝利。「リーグ戦で頼りっぱなしだったから、みんなが恩返ししたのかな(仲里監督)」というほどの猛打で、初戦突破を果たした。

 次戦は11日、王者・東洋大との対戦だ。最後の全日本選手権。投げたくないはずはない。だが、
「自分では行きたい気持ちがあります。でも、(けがをしている自分が)出ないほうが勝てるなら、それでかまいません。監督には(チームとって)ベストのさい配をしてほしい」と山内は言う。

 もちろん、投げろ言われれば、たとえ傷が痛んでも全力を尽くすつもりだ。反対に、チームに迷惑をかけるくらいなら投げないほうがいいと達観した気持ちもある。とにかく、チームが勝てるように――。山内はマウンドに立っても立たなくても、自分にできることをただただ、やり続ける。

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