前半の途中、記者席は大混乱に陥った。
台風4号接近によるあまりの強風に、あちらこちらで資料のプリントが舞った。
かくいう筆者も、缶コーヒーを入れた紙コップが風で飛ばされ(倒れたのではなく、飛ばされたのだ!)、ノート一冊をダメにした。
ほとんど丸々一本分が入っていたにもかかわらず、ふわっと空中を舞い、ひっくり返ってしまったのである。
そればかりか、風で霧状になった雨も容赦なく襲いかかる。
いくらぬぐっても霧雨がメガネを濡らす悪天候は、これまでの取材経験から編み出した「円谷流雨天セット」を用意してきた私の想定を完全に超越していた。
そんな悪条件の理由を、記者席がスタンドの最上段にあるという構造的な問題に押しつけるのは簡単だ。
だが、だからといってそれ以外のスタンドがまったく大丈夫だったのかといえば、そんなはずはない。
この日のゲームが台風直下で行われた試合であることは確かなのだから。
朝からひっきりなしに台風情報が流れるような天気にも負けず、スタジアムには8千人の観衆が集った。
カシマスタジアムの収容人数は4万人。
それを考えると「わずか」と感じるかもしれないが、そう決めつけるべきではない。
確かに数字の上では収容人数の4分の1にも届いていない。
だが飛行機や新幹線はおろか、在来線も動いていない状況での試合である。
アウェイサポーターの動員は当然見込めないし、そもそも警報が出るような暴風暴雨のなかサッカー観戦に出かける人が、どれくらいいるだろう。
おそらく、よほどのサッカー好きかあるいは若輩のフリーライターくらいなのではないか。
そんな状況にもかかわらず、鹿島のゴール裏が真っ赤に染まった。
アウェイで0-1の敗戦を喫してむかえたナビスコ杯準々決勝第2戦。
アントラーズの12番目の選手たちの存在感は最後まで衰えなかった。
主審が笛を吹くまでは。自分の脚が動く限り。
選手たちをそう鼓舞するべく、ゴール裏からの歌声は、耐えることなく鳴り響く。
まるで、雨雲を追い払うかのように。
広島サポーターだって負けてはいない。
どうサバをよんでも50人しかいないような少数精鋭だが、彼らは叫び続けた。
なぜ?
建て前でも偽りでも、一応中立の立場で試合を見ようとする記者の目には、その姿はあまりにも健気に映る。
アジア杯で佐藤、駒野の2枚看板を欠き、若手のホープたちはU-20での激戦を終えたばかり。
それでも彼らは、サンフッレチェの勝ち抜けを期待しているのである。
これが、Jリーグ15年の歴史だ。
誰もが自分がサポートするクラブを心の底から応援しているのだ。
たとえそれが開催すら危ぶまれるような状況だったとしても、それは変らない。
それを目の当たりしたこの試合に限っては、選手や監督のコメントも、試合経過のリポートも必要ない。
そこには、アントラーズを信じるパワーがあった。
サンフレッチェに託す想いがあった。
カシマには、サッカーを愛するサポーターがいた。
それを報告することが、その場にいたサッカーライターとしての責務だと私は思う。
今日は自信を持って言おう。
「代表戦は燃える。海外サッカーも面白い。だけど、Jだって捨てたものじゃない」と――。
台風4号接近によるあまりの強風に、あちらこちらで資料のプリントが舞った。
かくいう筆者も、缶コーヒーを入れた紙コップが風で飛ばされ(倒れたのではなく、飛ばされたのだ!)、ノート一冊をダメにした。
ほとんど丸々一本分が入っていたにもかかわらず、ふわっと空中を舞い、ひっくり返ってしまったのである。
そればかりか、風で霧状になった雨も容赦なく襲いかかる。
いくらぬぐっても霧雨がメガネを濡らす悪天候は、これまでの取材経験から編み出した「円谷流雨天セット」を用意してきた私の想定を完全に超越していた。
そんな悪条件の理由を、記者席がスタンドの最上段にあるという構造的な問題に押しつけるのは簡単だ。
だが、だからといってそれ以外のスタンドがまったく大丈夫だったのかといえば、そんなはずはない。
この日のゲームが台風直下で行われた試合であることは確かなのだから。
朝からひっきりなしに台風情報が流れるような天気にも負けず、スタジアムには8千人の観衆が集った。
カシマスタジアムの収容人数は4万人。
それを考えると「わずか」と感じるかもしれないが、そう決めつけるべきではない。
確かに数字の上では収容人数の4分の1にも届いていない。
だが飛行機や新幹線はおろか、在来線も動いていない状況での試合である。
アウェイサポーターの動員は当然見込めないし、そもそも警報が出るような暴風暴雨のなかサッカー観戦に出かける人が、どれくらいいるだろう。
おそらく、よほどのサッカー好きかあるいは若輩のフリーライターくらいなのではないか。
そんな状況にもかかわらず、鹿島のゴール裏が真っ赤に染まった。
アウェイで0-1の敗戦を喫してむかえたナビスコ杯準々決勝第2戦。
アントラーズの12番目の選手たちの存在感は最後まで衰えなかった。
主審が笛を吹くまでは。自分の脚が動く限り。
選手たちをそう鼓舞するべく、ゴール裏からの歌声は、耐えることなく鳴り響く。
まるで、雨雲を追い払うかのように。
広島サポーターだって負けてはいない。
どうサバをよんでも50人しかいないような少数精鋭だが、彼らは叫び続けた。
なぜ?
建て前でも偽りでも、一応中立の立場で試合を見ようとする記者の目には、その姿はあまりにも健気に映る。
アジア杯で佐藤、駒野の2枚看板を欠き、若手のホープたちはU-20での激戦を終えたばかり。
それでも彼らは、サンフッレチェの勝ち抜けを期待しているのである。
これが、Jリーグ15年の歴史だ。
誰もが自分がサポートするクラブを心の底から応援しているのだ。
たとえそれが開催すら危ぶまれるような状況だったとしても、それは変らない。
それを目の当たりしたこの試合に限っては、選手や監督のコメントも、試合経過のリポートも必要ない。
そこには、アントラーズを信じるパワーがあった。
サンフレッチェに託す想いがあった。
カシマには、サッカーを愛するサポーターがいた。
それを報告することが、その場にいたサッカーライターとしての責務だと私は思う。
今日は自信を持って言おう。
「代表戦は燃える。海外サッカーも面白い。だけど、Jだって捨てたものじゃない」と――。