金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

ハガレン再アニメ化

2008-08-22 20:27:35 | 鋼の錬金術師
やけにコマーシャルが増えた。もしや?と予測はしましたが、今ギアスサーチからハガレンネットに飛んで「再アニメ化」の文字に納得。人気ありますしね。
ところで、原作に沿ってということは、ラッセルの出番は無いでしょうね。
うーん、実のところそのほうがいい気もします。あのアニメの絵のままでしたら。合わないんです。小説版のイメージと。
銀色の姿。守ると決めた存在を逆に苦しめていた、おろかで、愛しい兄。
・・・ライのイメージと重なってしまって。
ともかくもこの情報のおかげでコードギアスが終わってからも、生きる気力が出てきます。
大げさな言い方のようですが、生きる理由とは案外その程度の方がいいのでは。

ともかくも、今は皇帝失格を楽しみに生きてます。

感想もどきの後の感想をアップしさらに感想後の妄想をアップしたので妄想後の追走を。

2008-08-19 20:28:12 | コードギアス
「愚か者、その宰相とやらに踊らされた事にすら気が付かないとは」
星刻はここで一度息を継いだ。出血が多かったせいか、息が苦しい。だが、言うべきことは言ってしまわなければならない。
「どういう動機であれ、ゼロがブリタニアを憎悪していた事に変わりはない。ゼロの知力もほんものだ。彼以上の頭脳をどこに見つけるつもりだ。藤堂、君のしたことは利敵行為だ。私的感情で暴走し、軍の規律を乱し、指揮官を敵に売り渡した。
ゼロが逃亡できたのは、ロロとかいう少年の勇敢な行動ゆえだ」
ここで星刻は自分の言葉に内心で苦笑した。少年の勇敢な行動、あのロロという少年にこれほど似合わない言葉もあるまい。
「ゼロは最初から俺達を裏切っていた!俺は、信じてたのに、ちくしょー、こんな事ならあの時処刑されていた方が」
叫ぶように答えるのは玉城のみだ。あの会談に出た中で、星刻が来てから感情を見せるのはこの男ひとり。それを思えば以外に大物かもしれない。
「どうしてなんだよ。なんでゼロが皇子なんだ!」
玉城がだんと机を叩いた。その振動が星刻にはつらい。ずっと下腹部に感じている痛みが増幅されるようだ。エリア11に赴任したころから強くなった痛み。あの臨床検査技師の言葉は正確だった。『この種類の痛み止めも効かなくなります。おそらく1年以内に。そうなったら神経麻痺剤しかありません。しかし、麻痺剤を使えば数ヶ月で多臓器不全を起こします』
技師の正確な診断に感服する。麻痺財は使えない。使えば動けなくなる。ならばこの痛みはわが身に背負ったものとして耐えるしかないのだろう。
 扇も藤堂も沈黙を守っている。彼らはわかっているのだ。自分達が何をしたか。
「ゼロは安全な場所にはいなかった。いつだって一番危ないところで、指揮をとっていた。ナリタのときも。全然強くないくせにナイトメアで白兜とやりあって」
あげくに機体を壊しまくり、ラクシャータに怒られていた。
そういう時ゼロは普段とは打って変わりしょんぼりとうなだれて見えた。
ゼロには自分が強くない事に自覚はある。しかし、王の駒は一番最初に戦うべきだと。そう言って、実行して、また機体を壊して・・・。いつも偉そうにしているゼロが怒られていると、なんだか小さな子供に見えてきて、おかしかったのを扇も藤堂も玉城も覚えている。
いや、ゼロは本当に子供だったので。あのスザクと同じ歳。
幼いころから手塩にかけた弟子であったスザクのことを藤堂は覚えている。今は敵対していても、スザクの剣さばき。あれは藤堂が教えたもの。真剣で殺しあってなお思う。スザクほどの弟子はいない。だからこそ、壊れていくあの子供を師であった自分の手で止めたかった。
もう、こんなことになってしまったが。
 そうだったのか。藤堂はいまさら合点がいく。ゼロの王様風なあの動き。あれは子供のころのスザクだ。殺し合い、憎みあい、求め合う、あの子達は今もともだち、だった。
藤堂はいつも厳格な顔をしているといわれる。確かに満面の笑顔をうかべる藤堂など誰も見た事がない。しかし、ずっと一緒にいる四聖剣には、今は千葉しかいないが、藤堂の表情がわかる。いま、藤堂はかすかに微笑んだ。
 17歳のゼロ。自分達は、いい年をした大人がそんな子供に責任を押し付けて、責めて、殺そうとした。否、殺そうとした方がまだましだった。憎むべきブリタニアに売り渡そうとした。
玉城が拳で机を叩いた。




「藤堂、総司令としての命令だ。反逆罪で扇要を処刑せよ」
玉城でも言葉を失うときがあった。今がそうだった。
「わかった」
返答は藤堂ではなく扇からあった.




感想の後の妄想

2008-08-18 22:29:02 | コードギアス
感想の後の妄想

さて、感想もどきの後の感想をアップした後なので、今度は感想後の妄想を。

ゼロに反逆した扇・藤堂グループの行動は、おそらく宰相殿下の手で宣伝される。
それを知り、動揺する各国軍。その動きを牽制しながら、星刻は単身斑鳩へ。

(ゼロに限らずですが、星刻も単独行動が多い傾向があるのでは。普通の指揮官なら、母艦を離れてナイトメアで戦うのは避けるでしょう。
星刻は神虎の機能を使った方が戦況を見やすいという理由もありますが、戦闘力に自信があるのと何よりも血が滾るのでしょう。強い相手と戦いたい、自分自身が強く生まれてきたゆえの本能のような欲望。小説版でスザクと切りあいを演じたのも、どういう言い訳をしてもけっきょくは本人が戦いたかったからなのでしょうね。)
 《大事な親友が根本のところで本能を優先させるのでは洪古さんも気が気ではないですね。天子さまが同じ母艦にいれば、少しは保身を図るだろうとの洪古さんの思いも知らず、総司令自身がナイトメアで白兵戦を演じ、さらに負傷するとは。
 ラウンズが出てきては、しかもワン様が出てきては、いずれ星刻自身がお相手しなくては納まらなかったでしょうけど。それでも最初から出ずっぱりというのは、総司令としては血の気が多すぎでは》

ゼロに反逆した扇・藤堂グループの行動は、おそらく宰相殿下の手で宣伝される。
それを知り、動揺する各国軍。その動きを牽制しながら、星刻は単身斑鳩へ。
斑鳩にて、すべての事情を聞きだし、ゼロ(ルルーシュ元皇子)が現状逃亡中であると聞いて、星刻の決断は。
「藤堂、総司令としての命令だ。反逆罪で扇要を処刑せよ」

(もし、扇と藤堂を比べた場合、軍人としての星刻はやはり藤堂を選ぶと考えます。ブリタニアとの決戦のなか、藤堂の軍人としての能力は失うわけにはいかない。でも、反逆罪を処罰しないことは立場上不可能です。そこで罪を事務総長である扇に帰し、藤堂に処刑させる事で軍としての正義を貫く事とする。無慈悲なようですが、必要な選択です。)





「愚か者、その宰相とやらに踊らされた事にすら気が付かないとは」
星刻はここで一度息を継いだ。出血が多かったせいか、息が苦しい。だが、いうべきことは言ってしまわなければならない。
「どういう動機であれ、ゼロがブリタニアを憎悪していた事に変わりはない。ゼロの知力もほんものだ。彼以上の頭脳をどこに見つけるつもりだ。藤堂、君のしたことは利敵行為だ。私的感情で暴走し、軍の規律を乱し、指揮官を敵に売り渡した。
ゼロが逃亡できたのは偶然、いや、正体は知らないがロロとかいう少年の勇敢な行動ゆえだ」
ここで星刻は自分の言葉に内心で苦笑した。少年の勇敢な行動、あのロロという少年にこれほど似合わない言葉もあるまい。
「ゼロは、最初からわれわれを裏切っていた。あの悪魔の瞳で」
「人を自由に操る悪魔の瞳か、邪眼というべきか、そう珍しい話でもない。朱元帝にも天瞳がありそれゆえに中華の統一はなった」
それは伝説であった。どこからか現れた白い、いや、銀の身体と髪をした赤い瞳の戦士が、戦乱の中華を統一し朱王朝を立てた。今の天子はその子孫という事になっている。






感想

2008-08-17 19:47:41 | コードギアス

先ほど、感想ともいえない感想を上げてしまったので、改めて。
大量のフラグが立っていたので驚きはしませんでしたが、黒の騎士団がゼロを結果的に追放しました。おそらくあの4番格納庫でゼロに銃を向けたのは古株の仲間、つまりブラックベリオンを生き残り、ゼロに助けられた人が多かったのでは。新参者では逆にあの決意は付かなかったでしょう。
テロリストのときなら、リーダーの首の挿げ替えはよくある話です。しかし、黒の騎士団はすでに軍隊です。軍隊になってから入隊した人も多いでしょうし、そういう立場の人から見れば今回のゼロ追放は旧扇グループと旧解放戦線のトップに対する反逆に見えるはずです。
そして他の国の軍隊で黒の騎士団の名を冠した者達にとっては、この藤堂・扇グループによる反逆は寝耳に大水です。当然、他国軍にも政府にも動揺があるでしょう。
国家は1日にしてならずですが、1日にして崩壊する。
一番難しいのは中核国家である中華連邦。ゼロがいなくなった以上、自動的に総司令の星刻が最高司令官となります。崩壊する危機にある連合を再度まとめるのか、だとしたらその旗印は誰か。誰かというよりも星刻以外ありえないわけですが、そんなことになったら彼の命がどこまで続くのか?
いやなフラグがありますね。天子様の名前、なぜいまさら公式で出ているのか。
このフラグが成立しないように祈るばかりです

感想になるかな?

2008-08-17 17:45:18 | コードギアス
さすが、公式!という言葉を感想ブログにてよく見かけましたが、今回小生もそれを言います。
そして、第2皇子様の事務スタッフの有能さにも拍手。ギアスのことを知ってまだ数時間ですよね。
それなのにもうギアスにかけられた人の名簿さえできている。・・・おそらくはバトレーの情報もあって以前から調べていた人もいるのでしょうけど。
さりげなく表紙の紙がブリタニアの国旗だった事に感動です。さて、上海の内戦は本来なら行方不明のゼロの代理として、100万と1人目のゼロと呼ばれるようになる星刻の話にするつもりでしたが、通称としてoneと呼ばれます。その中で星刻は黒の騎士団の中でさえもゼロを完全に信じていないものが多いことや、あまりにも異常でありすぎた高亥の死の前の言動を追うことになります。でも、公式であぁこられたので・・・。予定は未定。未定ははったり。はったりは嘘の同義語です。(笑)

上海事変その11 

2008-08-17 00:37:18 | コードギアス
上海事変その11

星刻が連れて行かれてもう5時間。いまだに黒の騎士団からは何の連絡もない。
不安、星刻を失うのではないかという恐怖感。
その感情を共有する女性がふたり、黄金と朱で彩られた部屋にいた。

香凜が桃華園で天子を見つけたとき、ちょうど斬月のパイロットが星刻を連れ去るところだった。星刻の病状を知る香凜は、おそらく彼が吐血したのだと推定した。だが、今回のように意識を失うほどの大量の吐血は過去にはなかった。
(神虎に乗り続けた事で、病状が急に悪化したのでは?
なぜ、無理にでも止めなかったのか)
止めて止まる男ではないと分かっている。それでも香凜は自分を責めた。
(今、一番失ってはいけない人なのに。
どうして自分は今回の上海戦に付いてかなかったのか?)
その答えは分かっている。星刻が止めたからだ。
『私が付いているより、君が付いていると思えば安心できる。すぐに戻ってくる。』
星刻は悪い男だ。ここで香凜の耳元に急に唇を寄せるとささやいた。
『天子様を頼む』
そんなふうに言われて、うなずく以外の何が香凜にできただろうか。

上海事変その10

2008-08-15 20:16:04 | コードギアス
上海事変その10
ひとりでできるもん 天子様サイド



朱禁城の自分の部屋にどうやって戻ったのか天子は知らない。
ただ、チャンリンがシンクーの代わりのように、しっかり抱きしめてくれていた。
チャンリンは暖かくて強くて優しい。シンクーと同じ。
それでも天子は泣かなかった。空の一角、斑鳩が去った方向をずっと見上げていた。

女官長に言わせれば、この件は星刻の独断で専横で越権行為であった。
当の本人の星刻がいないので、女官長は今回の件がいかに大罪であるか副官の周香凛に3時間も言い続けた。今回の件に関しては香凛も女官長と同意見だった。
(どうしてひとりで、せめて私に声をかけてくだされば)
考えても仕方ない事だが、常からの星刻の独断体質が恨めしくなる。
(確かに私にはあなたと同じように考える事はできません。でも同じように想うことはできるのに)
「ゼロは私の考えを読める。これからの策は(ゼロとなら)楽にできるな」
上海に行く前にふともらした星刻のあの言葉。
結局星刻様にとって、対等の意識を持ちえるのはゼロだけだったのか。




落っこちそうなほどに大きく瞳を見開いて、空の一角を見つめていた天子は先ほどようやく眠った。
涙は1滴も落ちなかった。



3時間も続けて文句を言い続けた後、女官長はため息をつき独り言のように言った。
「だいたいあの子は昔から勝手で気まぐれなところがあって、人のいう事は聞かないし、いつか取り返しのつかない失敗をしやしないかと、心配して」
香凛は真っすぐ女官長と視線を合わせた。
女官長は星刻様を嫌っているとおもっていたが、心配・・・?してくれていた。
香凛の視線の中に「あなたはあの方の味方ですか」と言う言葉を読み取って、女官長は鼻白む。
「私は宮のモノ、宮を正しく守るのが私の役目です」

女官調は50歳。51年前、ある後宮の女と宦官の間に生まれた。
おかしいとおもわれるかもしれない。しかし、朱禁城に使える女官が清浄女であるというのは完全な建前だし、皇帝しか入れないはずの後宮が、大宦官をはじめとする権力者達の遊び場なのも事実。この時代、宦官といっても本当の意味での宦官(去勢済み)はほぼいない。
女官長は45歳まで後宮以外を知らなかった。その意味では天子以上の籠の鳥であった。だが、彼女はただの籠の鳥ではなかった。後宮に群れる男女を統率し、秩序を守る権力者。日本人には春日の局をイメージしてもらうのが分かりやすかろう。そんな女官長が、権威や秩序を破壊し天子を我がものにしている、と見える星刻を気に入るはずがないのだが。



斬月で花婿強奪(?)から戻ってから、藤堂は上の空だ

『わたしを一人にしないで』
天子の声がずっと藤堂の耳から離れない。あんな小さな少女なのになぜか消えない。強烈な存在感。またあの声が聞こえる。
ティーカップを見つめ、目の前に座った千葉に気付こうともしない藤堂。千葉の瞳に苛立ちのトゲが浮かぶ。その2人を朝比奈はめがねの向こう、ガラスの向こうからわらって見ている。

両王手2

2008-08-15 10:47:34 | コードギアス
両王手2

 そして、フレイアの光がすべてを飲み込んだ。
光の消えた後には何も、政庁の建物すらも、本来ならあるはずの残骸さえも残らなかった。
星刻は通信で連絡を受けた。フレイアによる被害の様子。
なぜかゼロが狂乱し、指揮系統が混乱している事。早急に東京疎開の本陣に入り、指揮を取ってほしいとの要望が各国から出ている事。
 しかし、すでに神虎は日本を遠く離れていた。レーダー網にかからない超高空、大気園を外れた高空に神虎はいる。ここから見ると地球が球形であることが実感できる。
足元の画像が変化していく。神虎は地球重力園をすでに突破した。地球は神虎を無視して自転していた。
『神虎は第7世代のなかでもユニークな存在でねぇ。月の兎さえ取りにいけるのよう』
それはすなわち神虎が対宇宙用に創り出された機体であるという事である。

月のうさぎ。純白の毛皮のふわふわしたウサギをお土産にしたら、彼女は私のこれからスルコトを許してくれるだろうか。
通信に対して、総指揮権を藤堂に委任すると返答し、さらに扇事務総長にすでに作戦を告げてあるので彼に従うようにと付け加える。
ここで通信が切れた。切ったのではない。準宇宙空間ともいえる高空にいるため、気温はマイナス50度、電圧が下がって通信機が停止したのだ。
「改善の余地がある」
星刻は口の中で呟く。ラクシャータが知れば嬉々として改造してくれるだろう。
もしも神虎が無事に帰れたならば。

ゲフィオン・ディスタバーが破壊され、形勢が逆転したとき、星刻は決意した。皇帝を叩くと。
神虎ならできる。神虎にしかできない。
マシン・スペックを最大限に生かした大気園外からの攻撃。この方法の唯一の問題は彗星のようなマシンの動きに自分の体が持つか?である。

だが、フレイアによる破壊、いやあれは消滅だ、を見たとき考えが変わった。
神舟を使って、ブリタリア本国の首都を脅す。場合によってはあの破壊しか知らぬブリタニアに自分自身が破壊される事を経験してもらおう。

両王手

2008-08-13 23:19:29 | コードギアス
両王手

「総司令、負傷。指揮権を予定通り、参報長官周香凛ニ移行します。」
オペレーターの声は冷静だ。機械的なまでに。その無機的な声が扇要の狼狽をいくらか鎮めた。


『あなたの名は中心という意味があるのですね。変革はいつも地方から始まると言いますが、それは中心があってのこと。中核のない変革は混乱になるのみです』
天子強奪のあの日、他の中華軍はすでに引き上げたが、星刻のみは神虎の起動がうまくいかず、斑鳩にとどまっていた。
 同盟軍の将官といっても昼間は戦争をしていた当の相手、まして星刻に直接殺された者の遺族も斑鳩にはいる。敵討ちとばかりに襲う可能性は高い。それを考えて扇要は星刻の近くを離れなかった。
 扇はその危険をゼロにも訴えたのだが、ゼロはあっさりと答えた。
「あの黎星刻を殺せるような腕のやつは日本人にはいない」
扇はそういう問題じゃないはずだとさらに言いかけたが、ゼロは一方的に通信を切った。
黎星刻が優秀な軍人で、個人挌闘家しても藤堂並みに強いのは分かっている。問題はそれが起きたときの影響が、と教師時代の癖で説明しかけたのだが、ゼロは教師のいう事などもともと聞く耳持たない生徒であった。

幸い星刻は温厚で控えめな態度を崩さず、騎士団の一般隊員が向ける悪意ある視線やささやきにもロイヤルスマイルクラスの微笑を返す。女性隊員の中にはその視線のみで真っ赤になる者もいる。
『あなたがいるから、ゼロも安心して飛び出していける。ゼロの場合はもう少し自重してもいいようですが』

扇に対しても社交辞令の枠を超えた高評価をさりげなく見せる。
『あの男は単なる軍人ではないぞ。政治家としても一級だ。』
シーツーの言葉は事実そのままだった。



予定通りという事は、あの黎星刻は自分が指揮を取れなくなる可能性を計算していた、予定していたのか。
斑鳩は超合衆国軍団たる黒の騎士団の中心である。すべての報告がここに入ってくる。本来なら扇がそれをすべてさばかねばならないのだが、狼狽している間に旧軍人グループがそれぞれに対処してくれた。
 
『よい副官は1国に勝る。1916革命の司令官の勝利宣言の出だしにありましたね。』星刻はこの時代の者には珍しく歴史に詳しいようだった。
つれづれなるままにと、将棋版をはさんで扇は星刻と向かい合っていた。同盟軍になったばかりの将官にどんな話題をふればいいのか、暗中模索していた扇に星刻のほうから『日本の文化の将棋を教えてほしい』と申し出てくれたのだ。駒を打ちながらの会話は直接顔を見なくていいので、気が楽になった。
『私にも良い副官がいます。彼女に任せておけば私自身が動くよりもうまく事を運んでくれます』
『天子さまのことは心配ではないですか?』との扇の言葉に星刻は少し苦味を帯びた笑顔で答えた。
その顔は彼の年齢からして、むしろこちらのほうが本来の笑顔ではないかと扇には思えた。

『両王手』
不意に笑いを含んだ声がした。
あわてて盤を見ると、形勢はすっかり逆転していた。大駒の竜(飛車)と馬(角)に扇の王は同時に狙われている。
「降参」
扇は本気で両手を挙げた。駒の動かし方から始めた素人に完全に負けた。
『よい教師は、よい勝負師にならない』と言いますから。
駒を片付けながら星刻はロイヤルスマイルをうかべる。
『扇さんはむしろ老師のほうが向いていらっしゃる。おかげでよい生徒になれました』





「扇事務総長に黎総司令より電文入電いたしました」
オペレーターの声に扇は現実に戻った。
「読んでくれ」
「両王手を掛けに行くので、馬を叩いて飛ばしてください。」
読み上げるオペレーターの声に疑問符が重なる。
暗号めいた文面に第一艦橋のスタッフの誰もが、何を言いたいんだ?と疑念を持った。
そんななか唯ひとり、扇だけはうなずいた。
あの男は直接王を捕りに行くつもりだ。だから、こちらの大駒も動かせと言ってきている。
飛車は敵陣で竜に成る。昇竜にさせてはならない。地に落ちさせてはならない。
そのためにこちらの角たるゼロを馬にして鞭をあてる。

慌てて走り出して靴が片方脱げたのも気がつかないまま、駆け抜けていく扇に第一艦橋のスタッフは「トイレかなぁ」と見送るばかりだった

上海事変その9 ひとりで、できるもん序 天子様サイド

2008-08-12 22:04:15 | コードギアス
上海事変その9 ひとりで、できるもん 天子様サイド
(思えばこちらを先に書くべきでした。)

シンクーが上海から帰ってきた日、あまりにも多くのことが天子の周りを流れていった。
まず見たのは深い青。空よりも、たった一度だけ見た海の青より深い青。神虎の蒼。
その色を見たとき天子は駆け出した。
帰ってきた。シンクーが。

次に見たのは白いパイロットスーツ。漆黒の髪と真反対の色。その対比に見とれているうちに天子の足元はおろそかになる。あっと思ったときは顔が床の近くにいた。それをふわりと受け止める大きな手。天子はこの手を知っている。
自分のための手。
永続調和の契りをかわした手。
「シンクー」
名を呼んだ後、天子には次の言葉が分からない。
カグヤはなんといっていたかしら。夫を迎える妻の心得・・・。
なぜだか、天子のほほが赤く染まる。


言葉を捜している天子は星刻の目から見て、 凄くかわいい。
大きな瞳が天子本人は知らないのにわずかに揺れる。でもずっとそれをさせると彼女は泣きそうな顔になる。
それにほかのだれにもこんなにかわいい彼女を見せるものか。
自覚はないが、黎星刻24歳はけっこう嫉妬深かった。

だから星刻は堪能したところで、優しく声をかける。
「上海討伐軍司令、黎星刻ただいま帰還いたしました」
天子が次に見たのは黒。天子の姿だけが写るシンクーの瞳。

次に見たのは桃色。初めての世界の色。
でも、次に見たのは
赤、強烈な赤。それと匂い。さきほど抱き上げられたとき感じた鉄の匂い。
天子は誰かに訴える。
「わたしをひとりにしないで」

それなのに
あの時自分をさらったナイトメアの残月は、今度はシンクーを連れて行ってしまった。
生きているのが不思議なほどに血の色を失ったシンクーを。こうして、天子の世界は色を失くした。

《入力者注釈。斬月の主なお仕事。花嫁強奪。花婿強奪。以上》

上海事変その8  天子様の『独りでできるもん』 初めての勅令

2008-08-10 22:49:30 | コードギアス
洛陽の支配者の名において、黎武官を謹慎処分と処す





「よーいろおとこ!しょぼくれやがって!お姫様にふられたのかよ!」

玉城の口の悪さは黒の騎士団の中では周知の事実で、最近は誰もが玉城の台詞を5割ぐらい聞き流しているのだが、この場合からんだ相手が悪く、また言った言葉も悪かった。






黎星刻が神虎の起動キーを握りしめたころ、ラクシャータはいつものキセルを片手に神虎(むすめ)と星刻のデータを調べていた。調べれば調べるほど興味深い、星刻が神虎に乗ったのは偶然のはずなのにまるで『この男のためだけにこの神虎(むすめ)は生まれてきたような』錯覚さえ覚える。
心・技・体。どこをみても完璧な男。
「いい男のみほんだねぇ」
ラクシャータは惚れ惚れと呟く。
ラクシャータの見るところ、ゼロはきれいだし心理戦の天才だが、まだ未熟な面がある。おそらく年齢的な要素だろう。
その点星刻はもう男として完成している。誠実で、たくましくて、要求されるどんな形容詞にでも堂々と応えるだろう。時には狡猾で残忍な面も見せるが、そういった面も含めてますますよい男に成長するだろう。
(最高の男を手にできたねぇ)
今まで、そのハイスペックゆえに孤独で、さまざまな批判を受けてきた神虎。その不幸を補って余りある最高の対の相手。

しかし、気になる。その好い男のバイオデータが。特に肝臓系の数値があまりにも異常なのだ。ALP AST ALT LAH GDP。異常な高値を出している。 
花嫁強奪のあの日は天子が星刻の傍を離れなくて、そういう話はできなかった。かわいい女の子に心配をかけてはいけないというのがラクシャータの信条である。
同盟軍とはいっても味方とはいえない。ムスメムコに次に会えるのはいつになるのか。できれば大きな戦闘が起こる前に精密検査とバイオチェックを受けさせるべき・・・。(ちなみにラクシャータのバイオチェックとは、あの藤堂さえも悲鳴をあげたというおそるべきしろものである。ゼロは受けた事がない。必要がないということもあるが、ゼロは貧弱なのでいじりがいがないとはラクシャータの名言とされる。)

ラクシャータの携帯がけたたましい音で鳴り響いた。
第一艦橋のスタッフがいっせいに振り返るほどのボリュームであった。音に負けない声量でラクシャータの声が響く。
「朱禁城へ飛べ。全速前進!」
ラクシャータの命令一下、斑鳩は緊急発進した。

参考ながらこのとき第一艦橋には副長の扇も将軍の藤堂もいたのだが、誰一人この越権行為を指摘するものがいなかった。黒の騎士団の実質的権力者が誰なのか、よく伝えるエピソードである。

星刻は突然空を覆いつくすように現れた斑鳩につれさらわれた。いやこの言い方は公平を欠く。
神虎の起動キーに仕掛けておいたチップの緊急通信で、星刻の異常を知ったラクシャータがムスメムコを助けに来たというのがもう一面の見方である。
星刻は案外悪運の強い男だった。このとき斑鳩が来なければ、すでにショック状態を起こしかけていた彼は間違いなく死んでいたのだから。中華の医療技術は世界標準から50年は遅れている。中華の医師では星刻を救えなかった。しかし、この後の彼の人生を見ればここで天子に見守られて死んでいたほうが良かったのでは・・・。




星刻は3日間意識を戻さないまま、ラクシャータの管理下におかれた。
動けるようになってからは、積極的に黒の騎士団のメンバーと交流した。以下はその一部ティールームでの出来事である。

それは朝比奈がたまたま写していた動画画面。
洛陽の朱禁城の公式発表。宦官の支配体制を覆し、親政を復活した中華の天子の最初の公式発言であったので世間的にも注目されていた。
黄金と朱で飾られた天子の座。そこに座る事を許されるのはただ一人、洛陽の支配者。
左に文官代表の周香凛、右に武官代表の洪古。本来なら天子の後ろに後見人たる黎武官が立つはずだが、当然この日星刻の姿は朱禁城にはない。
打ち鳴らされる銅鑼。
純白の髪の天子の唇から始めての言葉が発される。

「洛陽の支配者の名において、黎武官を謹慎処分と処す」

ティールームにいた全員が一斉に星刻を見た。天子の声が聞こえていないはずはないのに、星刻は静かだった。黒の騎士団の誰もが何かを言いたかったが、何を言っていいか分からない。あの藤堂すらも硬直したようにカップを見つめるだけだ。

そんな時、空気を読まない男が、凍りついた空気を叩き壊した。
「よーいろおとこ!しょぼくれやがって!お姫様にふられたのかよ!」

玉城の口の悪さは黒の騎士団の中では周知の事実で、最近は誰もが玉城の台詞を5割ぐらいスルーしているのだが、この場合からんだ相手が悪く、また言った言葉も悪かった。

ザッ!
空を切る音。

あまりにデリカシーの無い発言に眉をひそめ、にらみつける千葉たちの前で、玉城はへたり込んだ。

上海事変その7 守護者失格

2008-08-05 07:03:42 | コードギアス


大切な人の前では1番強い姿でありたい。
だから、いまは、会えない。





「あんたは生き別れのかわいい娘のたった一人の男だからねぇー」。
ふざけたような口調で、けっして押し付けることはなく、しかし彼女の言葉は誰も断れない。キセルをふりながら、神虎の生き別れの母はいった。
「ほっとけないねぇ」



星刻が意識を取り戻したとき、なぜだか分からないが『神虎の母』が見えた。
かなりの血が流れたはずなのに、身体はひどく重い。
あぁ、そうか。空っぽの風船と水素を詰めた風船。水素を詰めた風船の方が軽い。
そうか、血は空気より軽い。それが減ったからこんなに重いのか。
星刻の意識はまだ混乱と混濁から抜け出ていない。
彼が本当に意識を取り戻したとき、彼の苦しみが始まる。
大切な、守りたい人を守れなかった。
私が彼女を傷つけた。
その思いが彼の心を閉ざすことになる。


あなたも、守護者失格ですよ。私と同じように
星刻は幻覚かあるいは幽霊を見ているのだと思った。ラクシャータの姿に重なるように、長い銀髪の華奢な若者の姿が見える。
守っていた。そう思っていた。でも傷つけていただけだった。
あのこは強い。守る手はとっくにいらなかった。私にはそれが見えなかった。理解したくなかった。
守られていてほしかった。
それなのに私があのこを傷つけた。
幽霊か幻覚かは分からないが、銀色の姿は星刻の返答を待つでもなく一方的に話し続けた。

上海事変その6 桃華園にて起きた事。わたしをひとりにしないで

2008-08-03 09:35:24 | コードギアス
上海事変その6 桃華園にて起きた事。わたしをひとりにしないで


ごほっという押し殺したむせるようなせき。それがきっかけだった。

わたしをひとりにしないで

そのさけびを星刻は聞いた。確かに聞いた。だが答えることはもうできなかった。





透けるように淡い春の光。彼女の行くところに風は生まれ、薄絹とあそぶ。
(天女とはこのような存在を)
自分が周りからどのように見えているかという自覚は一切無しで、星刻は天子を見つめている。もし、スザク辺りが見れば(ナナリーを見るルルーシュとそっくりだ)と、中日軍事同盟の長たちが同種のたましいを持つ事を看破しただろうが。

「シンクー」
お小さいときから変わらないよびかた。口の中で、ころがすように。鈴の音にも似た声。彼女の声に合わせて、光の粒がはじけていく。
にっこりとしか表しようのない笑顔がただ星刻にだけむけられる。
(いつか、この方がこの国にいのちをよびもどしてくださる)
砂礫の大地に彼女が降り立つ。薄青く透ける桃の花びらで地が覆われる。星刻は一瞬幻想を見た。

幻想が収まった直後から星刻は息苦しさを感じた。上海でよく襲われた感覚。
胃の辺りが重い。星刻の手は無意識に神虎の起動キーを握る。手が真っ白になるほど力を込めて。

ごほっという押し殺したむせるようなせき。それがきっかけだった。
のどと横隔膜下に切り裂くような痛み。どろりと、腐ったものが落ちていく感覚。体の中へ。

食道静脈瘤の単純破裂、文字にすれば10文字に収まる。静脈瘤が神虎での白兵戦で限度を超えこのときに自爆した。処置が早ければ救命は可能だが、気管に詰まった場合死亡もありえる。
星刻は激しく咳き込み大量の鮮血を吐いた。余談だが、このとき吐けたからこそ星刻は助かったのだ。しかし、天子にそんな医学的知識があるはずもない。
天子はただおびえた。愛し守ってくれる人が血を吐いている。淡く透けるようだった花びらの色が赤く染まる。
わたしをひとりにしないで
天子は泣いていなかった。ただ訴えた。
誰にか。急速に体温を失っていく男にか、あるいは彼女の大切なものを奪おうとする天に向けてか。


わたしをひとりにしないで
そのさけびを星刻は聞いた。確かに聞いた。だが答えることはもうできなかった。

上海事変その6 若紫

2008-08-02 04:37:25 | コードギアス
上海事変その5 桃華園にて起きた事。『雀の仔をいぬきが逃がしてしまったの』


遅咲きの桃の花びらを淡い肩衣にまとわせて、天子は星刻に走り戻る。
桃華園を散歩していた人々は、あまり見かけないこの2人を最初は若すぎる父と愛娘と見た。一瞬たりとも視線を離さず愛しげに見つめる姿が親子に見えた。しかし、青年の視線のあまりの強さに気がついたとき認識は幼な妻と嫉妬深い夫に変わった。さらに青年のもとに書け戻る少女が余りに推さなく純真なことに気がついて、先の2つの認識を否定したが、さりとてそれに代わる認識がなかった。もし、日本人がいれば一瞬で解答しただろう。あれは若紫を見つけた源氏であると。
「シンクー」
呼ぶ声にすべての感情がこもる。春の喜び。ようやくかなった約束。ただ純粋に慕ってくる天子の心。
「天子様」
呼ぶ声、答える声が金色の春の光に融ける。今日、あの幼い日の約束は成し遂げられた。
だから、これからは新しい日々が。

新しい時間があると天子は信じていた。この人と共にと。
星刻は知っていた。彼女には新しい時間があると。その彼女の時間に自分はいないと。







一番大切で守りたい存在を、悲しませる守護者。そんなやつは守護者失格である。
という訳でうちのお兄さんたちは失格者ばかりです。ラッセルといい、武蔵といい、星刻といい。大事な相手だから悲しませたくないから、だから都合の悪い事は隠してしまって、挙句に自分で自身の鎖で縛られて動けなくなる。
そんな事をしたら、大事な人がもっと泣くのをちっとも考えてない。
それにしても、こんだけマイナーキャラだけのサイトも珍しいだろうなー。ギアスサーチから来た人はラッセルが誰か知らないでしょうし、まして武蔵は・・・。「お兄ちゃんをひとりぼっちにしないでくれー」これがうちの最高萌えセリフです。