YOSHIの果てしない旅(人々との出会い、そして別れ)

ソ連、西欧列車の旅、英国滞在、欧州横断ヒッチ、イスラエルのキブツ生活、シルクロード、インド、豪州大陸横断ヒッチの旅の話。

1ルピーとその価値の話~ニューデリーの旅

2022-02-03 15:46:48 | 「YOSHIの果てしない旅」  第10章 インドの旅
・1ルピーとその価値の話
 インドは、〝人口6億人以上〟(実際には統計されない、出来ない人々が居て、7億とも言う)の人々が住んでいて、凌ぎを削って生きていた。そこには人を騙す様な行為が蔓延し、色々な場面、場所で激しいお金の遣り取りがあった。従って、「1ルピーの攻防」はインド滞在中、常にあった。
 「人を騙す様な行為」と言ったが、実際にこの言い方が、本当に正しいとは思っていない。
商品と言う物の値打ちが政府によって統制されてない、若しくは需要・供給のバランス関係がなく、値段が決まってないインドに於いて、商品の値段は売り手の値のまま買い手がその値で買えば、その売買は成立する。ようするに買い手は実際の物の価値を分からないが、お金を払えば「買い手は、その価値があった」と判断される。しかし買い手が売り手の値で納得しなければ、そこから個々に値段交渉が始まるのでした。
 統制され決まった値段であっても、売り手と買い手によって値段が変化するが、鉄道やバスの運賃は決められた通りであった。しかし、メーターがあるタクシーやリキシャの運賃は制度上決まっている様だが、何処の国でもあるように法外な、或は、ある程度の値段を吹っ掛けて来るのが彼等のやり方であり、常であった。
 インドの1ルピーは、彼等にとって大変価値ある金額であるし、勿論、我々の様な貧乏旅行者にとっても価値があった。例えば、1ルピーあれば大抵の事が出来た。1ルピーで食事(駅弁は1.5ルピー)が出来、チャイも3~5杯飲め、バナナは1房買え、リキシャなら交渉次第で相当な遠距離まで、バス・列車にも乗れ、またドミトリーにも宿泊出来た。1ルピーとは、価値ある金額であった。
  インドの一般的な生活感覚で行くと、1ルピーは日本の500円前後の価値があった。従ってインドに来て、『1ルピーがどの位の価値で使えるか』と言う事で旅の仕方が違って来た。そんな理由で、「たかが1ルピー(49円=公式レート、闇レートは39円)、されど1ルピー」であった。
 私も「郷に入れば郷に従え」の格言の通り、行動もそして考え方も、インド方式に近づかなければならなかった。

 

闇売買の話~ニューデリーの旅

2022-02-03 15:18:11 | 「YOSHIの果てしない旅」  第10章 インドの旅
・闇売買の話                                                  
 関から話を聞いたのだが実際、彼はスイスで安い時計を買って、インドで高く売るつもりで持ち込もうとしたのだ。その背景として、インドは自国の製品保護の為に電化製品、自動車、高級品等(カメラ、時計、トランジスターラジオ、万年筆等)を輸入していなかった。従って、インド製品は直ぐ壊れる粗悪品である事を彼等インド人も承知していた。金持ちのインド人は、高くても優れた物を求めているので、そこで闇売買が広く存在していた。
 自分の身の回り品、旅行の為に携行しているカメラや時計等は、インド入国時に申告すれば不正持ち込みにならない。この場合に申告された物は、旅券に記入される。もし申告された物をインドで売れば、出国の際に旅券に記入された申告物を提示出来なければ、売った事が分かり犯罪者として逮捕される。
 インド国境で私はセイコーの時計とキャノンのカメラを持っていたが、特に申告する程でもないと判断し、何も申告しなかった。厳密には、申告書に書かねばならなかった。同行仲間も同じであった。又、入国の際に係官は、厳しく私やロン、竹谷の荷物は調べなかった。もし申告するよう指摘されれば、旅行の必需品であり、申告すれば良い事であった。
 不思議な事なのだが、係官は最初から関が怪しいと睨んでいた感じであった。如何してなのか。札付きの悪者で他国から情報があったのか。否、彼はそれ程に悪い奴ではないと思った。それでは如何して彼が怪しいと睨んだのか、彼の態度から推測して怪しいと睨んだと思うべきで、それ以外に考えられなかった。
  没収される様な行為は、良い事だとは言わないが、それ程に悪い行為とは思わなかった。インドで最初の出来事であったので、私を含めて皆、役人の対応方を知らなかったのだ。後から考えると、『必ずしも彼等の目的は、関の時計を没収する事ではない』と言う事が想像出来た。それではどうすれば良かったのか。それは袖の下に入れるお金(賄賂)の額の相談が大事であった、と考えられた。
「彼は悪い奴ではない、お土産用に買ったのだ。或はインドでは売らない」等々を言ってみた所で、彼等からすれば、税関に関する規則で違反に当る事実を見てしまったのだ。従って口先だけで彼等の『目こぼし』はなかったのだ。彼等の心を動かす力、それは袖の下以外になかった。インドに滞在していると、袖の下も時に大事である、と感じた。