・インドのカレー定食の話
インドの大衆食堂や列車の食堂では、カレーセットと言うか、カレー定食があった。普通、カレーと言えば「タリー」と言うこのカレー定食を指す。カレーの種類は野菜カレー、マトン・カレー、チキン・カレーがあったが、豚肉や牛肉の入ったカレーは無かった。インド人は宗教上ベジタリアンが多いので、特にマトンやチキンのカレーを注文しなければ、野菜カレーが出る。
今日(1969年2月9日)、食堂車へ行ってタリーを注文したら野菜カレー(1.5ルピー)であった。出された野菜カレーは、お盆にアルミ製のボールが5つ(値段によってボールの数が異なる)載せてあり、その内の3つのボールに強烈に香辛料やスパイスがきいた、種類の異なったカレーが入っていた。残りの2つのボールには、ヨーグルトと豆のスープが入っていた。叉そのお盆の上にご飯茶碗に3杯分位の量のご飯が山盛りに出され、更にそのご飯の山にチャパティ2枚が載っていた。その他、お盆の上に玉ネギ(日本の玉ねぎと違う。紫色で大きさ・形はラッキョウより少し大き目であった。)も付いて来た。カレー定食のビッグな量には驚きであった。寧ろ、我々日本人には多過ぎる感じがした。しかしそれでもインド人は、ご飯をお替り(お替りは自由)する人もいた。
インド人の食べ方は、カレーをご飯にまぶせ、直に右手でカレーとご飯を満遍なく掻き回し(と言うより、こねくり回し)、右手でそれを掴んで食べていた。何だか汚らしい食べ方であった。手を使って食べる習慣がない私は、給仕の人にスプーンをお願いして食べた。
野菜カレーと言っても中にジャガイモ、人参、玉ネギ等の野菜が入っているのか分らず、本当に野菜入りカレーなのか疑う程であった。ご飯は日本米の様にフックラ、モチモチ感がなく、ボロボロしていて不味かった。インドのカレーは、我々が普段食べているカレーと比べて非常(7倍から10倍位)に辛いので、私はほんの少しご飯にカレーを掛けるだけで、ご飯も半分食べるのがやっとであった。又チャパティも少しカレーを付けて1枚食べるのがやっとで、後はいつも残した。とにかくカレーは非常に辛く、ご飯やチャパティも不味く、それでも私は無理して腹の中に入れていた。
ヨーグルトも何か変な味がして、飲める代物ではなかった。カレーが辛過ぎる人は、ヨーグルトをカレーに混ぜて食べると辛さが薄まると言うのでやって見た。でも返っておかしな味になってしまって、余計に食べられなかった。インドの生水は、コレラや赤痢になってしまう恐れがあるので、カレーが辛くても絶対に飲む気になれなかった。インドは、タリーを食べるのも苦労した。このカレー定食は、安い所で1ルピーから高くても2ルピー以内で食べられた。