やっぱり本も好き

忘却率がUPしているのでメモとして

ジャンプ       佐藤正午

2005年04月08日 16時33分04秒 | 
何の先入観もなく読み始めグイグイ引き込まれ一気に読んだ。
ミステリ-なのかもしれないが、人物描写が上手で、さりげなく
誰にでもある「もしもあの時ああしていれば」が身につまされ
自分の人生も振り返りつつ考えさせられた。

 新聞の書評
  ジャンプはヒロインの意志を描いた長編と読めないこともないが、
  けっしてそうではない。失踪したヒロインは青年を映す鏡だ。
  自分の人生を選びとったつもりでいる青年の真実を映す鏡だ。
  この逆転の構造がすばらしい。

Xへの手紙      小林秀雄

2005年04月08日 11時17分13秒 | 
 この世の真実を陥穽を構えて捕らえようとする習慣が身について
この方、この世はいずれしみったれた歌しか歌わなかった筈だったが
その歌はいつも俺には見知らぬ甘い欲情を持ったもののように聞こえた。
で、俺は後悔するのがいつも人より遅かった。
習慣が身についてこの方というよりも、自分の弱点がはっきりして
この方と言った方がいいかも知れない。俺も人並に自分の弱点から
逃れようとはしなかった。逃れようとするどころか、どうこいつを
可愛がろうと心を砕いて来たに相違ないのだ。
そして人並に三十になって、はじめて自分の凡庸が
しみじみと腹には入った。

ある苦労人に言わせると「光陰矢のごとし」という諺が、
凡そ人間の発明した諺のうちで、一番いい出来だそうである。
なる程何はともあれこの諺は極めて悲劇的である。
悲劇的なものは、何はともあれ教訓的なのだろうと俺は思う。

俺は元来哀愁というものを好かない性質だ、あるいは君も
知っている通り好かない事を一種の掟と感じてきた男だ。
 
  小林秀雄はミ-ハ-本読みには、全部を理解はできないけれど
  何か魅力的な男を感じさせる文体で好きです。