『 自然は全機する 〜玉の海草〜 』

惚けた母がつぶやいた〜 「 生きてるだけが仕合せだ 」♨️

《玉断》 庄内人らしく〜 極上の香りをまとった俳優 「成田三樹夫」

2022-11-04 01:54:18 | 歴史・郷土史

__ 成田三樹夫、この人が出演しているだけで、その映画やドラマを観てしまう、そんなお人だった。

いまや、絶滅危惧種となった、ニヒル、ダンディー、掛値なしに強い悪玉のボスを演じさせたら、天下一品他の追随を許さない入魂の芝居を魅せてくれた。

インテリ893には、いい漢のエッセンスが含まれていると思うんだよね、これがサマになる役者は、間違いなくいい役者である。

そんな陰翳を帯びたイイ男の代表格が、成田三樹夫である。

 

【画像=『柳生一族の陰謀』より、烏丸少将文麿の片肌脱ぎ。これほど、成田三樹夫の天稟が生かされた配役はなかった。万能の後鳥羽院の御例もある。

 

【この、繊細さというか脆さに、湊町・酒田人の栄華を垣間見る。酒田の街は、各々がプライド高すぎて、一向に纏まりがないんですね。他郷からは「殿様商売」と揶揄されてます。】

 

 

 

🔴  一周まわって‥‥
[2019-10-04 01:08:09 | 王ヽのミ毎]

 

いま、山形県内では今は亡きニヒルな悪役俳優・成田三樹夫のCMがリバイバルで放映されています (嬉しいっ )
そーいえば、来たる2020年で早や没後30周年にもなる

 

【成田三樹夫の「メンズ・ニシムラ」CM全集、10本あります ♪ 】

 

昔、バリッとしたスーツ姿で「メンズニシムラ(山形県内チェーンの紳士服販売店)」のコマーシャルに出演されていました
私は、大阪に上阪する時に、酒田市のメンズニシムラで濃紺の仕立てのいいスーツ一式を求めました


そー、母校 (酒田東高の先輩・成田
三樹夫に憧れていたからです
彼は、数学好きで東大の理学部に入ったのですね (中退したけど)
高校の頃、たしか日曜の午後二時ころでしたか…… テレビ版『柳生一族の陰謀』が放映されていました

なかでも、極めて異彩を放っていたのは……
映画版から引き続き、宮中の軍師・烏丸少将文麿 を演じた成田三樹夫でした

そもそも新陰流の麒麟児とうたわれた柳生十兵衛に匹敵するほどの公家侍なぞ、まったく想定外でしたが、しかし考えてみれば、鬼一法眼に端を発する「京八流」や「鞍馬古流」を修めた公卿がいても、何らおかしくありません

たとえば、蹴鞠は高度な身体操法を有する武技でもあるのですから、それでも筋肉隆々で馬上にて佩刀を片手斬りにする烏帽子の兵法者は、きわめて斬新でした 

こんなにカッコイイ武人は初めてです、『五条霊戦記』の遮那王(源義経の幼名)みたい

[※  後年に、今川流剣術の創始者・今川氏真公が、烏丸少将と同じく烏帽子を冠った文武両道タイプなのに気がついた、こちらの拙稿もご参照くだされ]

リンク ▼

意外にも剣豪〜 蹴鞠名人の今川氏真公 - 『 自然は全機する 〜玉の海草〜 』

加えて、優雅で円やかな公家言葉も、そのギャップ故に萌え上がりました 


当時、進学高に通っていた私は、数学の章末テストとゆーものが二週に一度あるのですが、合格点とるまで何度でも追試を行うのです

追試受けているうちに、次の章末テストが来たりして 、まさに自転車操業の忙しさでした
心も追い詰められて荒んでいたものです

そんな状況下で、この烏丸少将と三条大納言(テレビ版では中院通村)との、朗々と歌うように喋る公家言葉のイケズで間延びした遣り取り(おそらくテレビ版 📺 第六話だと思う、大傑作です ♪)には、

お腹の筋肉 がよじれるほど笑わせてもらいました ♪

暗く苦しい高校生活で、腹の底から笑いが込み上げてきたのは、この「おじゃる言葉」の掛け合いだけだったかも知れません

[ この公家の口語「〇〇でおじゃる」は、梅津栄さんの発案創始されたものです。室町時代の公家はこのよーに遣ったよーですが、江戸時代の公家に「おじゃる」と喋らせたのは梅津さん夫妻の図書館通いの成果と飛び抜けたセンスであったのです]

 

 

ーご自身のブログのなかで「俳優 成田三樹夫論」をアップされ、最大限の賛辞をお寄せくださっている『花房院長のブログ』から引用させていただきます

詳しくは、リンク ▼

俳優 成田三樹夫論 : 下田循環器・腎臓クリニック 花房院長のブログ

 

 

> 先日発売の「昭和40年男」の、俺たちのダークヒーロー特集に俳優として唯一取り上げられていたのが成田三樹夫でした。
「ニヒルな知略家から不気味な悪玉、そして憎めない小悪党まで、昭和の映画やドラマを盛り上げたダークヒーローと言えば、この男優をおいて他にない。にじみ出る知性とダンディズムで俺たちを痺れさせたミッキーの魅力に迫る!とありました。

 

> フランス文学者の鹿島茂は倚馬七紙なる作家であり、100冊目の記念に上梓した「甦る昭和脇役名画館」において、12人の俳優をあげていますが、最後にあげられているのが成田三樹夫です。
勝新太郎主演「兵隊やくざ」において

「長身の引き締まった肉体

いかにも強烈な意思の力を感じさせるアゴ

睨み付けるだけで相手を縮みあがらせる鋭い眼

大きく尖った鼻の下で真一文字に結ばれた口・・・」

とその独特の風貌を彼独特のレトリックで描写して、鍛え上げられた悪の魅力を論じています。
主客転倒、まさに主役と互角に渡り合う成田に悪のエロスを醸し出しているといいます。


成田三樹夫という強烈な個性の悪役は、そのマイナスベクトルのエロスをしっかり受け止めて、これを跳ね返すほどのプラスベクトルのエロスの持ち主が主役を張っていない限り、少しも輝かない。
換言すれば、成田三樹夫と渡り合える主役級の俳優はそうはいないということになります。

 

> 能や焼き物などの骨董に造詣が深く、文芸評論家の小林秀雄や画家の梅原龍三郎とも親交があった随筆家 白洲正子の随筆集『ほんもの』 の中で、

「雲になった成田三樹夫」なる随筆を発表しています。
白洲正子が特に注目したのは、ヤクザ役イメージを払拭できない成田がNHK大河「新平家物語」で保元の乱で敗れてしまう藤原頼長という平安末期の当代一の大学者役を演じるそのギャップと、


「品のいい立ち振る舞い、衣装束帯の似合う役者は、歌舞伎の世界にもまれにしかいない」と言わしめています。

そして「ワキ役とはいえ、彼が現れると、主役を喰ってしまう場合が多かった。いわゆる「花」のある役者とは違うのだが、強いていうなら 黒百合の花にたとえられようか」と述べています。

 


 

 

‥‥ 嗚呼、あの藝に人一倍厳しい白洲正子女史をして、エッセイの主題に据えざるを得ないほどの役者だったんだねえ〜
感無量です、「太陽の塔」背面の「黒い太陽」のごたる凛乎たる存在感をお持ちだったと思います

 

最後に、成田三樹夫遺稿句集『鯨の目』🐋より


朧世の底つきぬけ櫻は散るぞ   (病中)

物云いたげな急須の口や秋深し

恋終り空のひろさや

【なんと箱入りなんですよ、私も愛蔵しています。醒めた色味の薄紫の表紙が実に渋い、句風は西東三鬼を思い出します。】

 

 

 

🔴成田三樹夫を慕っていたお人

[2017-03-20 16:23:34 | 王ヽのミ毎]

 

1990年、55歳をもって此の世を去られた、クールな俳優・成田三樹夫……

故郷の酒田で執り行われた、彼の葬儀にかけつけ、憚ることなく泣き崩れた俳優・渡瀬恒彦の姿は、口伝てに酒田市民に広まり、人びとの胸にあたたかいものを灯して行ったものだ

 

成田三樹夫遺稿句集『鯨の目』🐳 (無明舎出版刊にも、真心の込もった追悼文をお寄せ下さっている

>成田三樹夫さんの事 ”            渡瀬 恒彦

困っています。

原稿用紙を前にして、困り果てています。

成田さんの事を書かなければならないのに、書けることがないのです。成田さんと共演した映画を調べてみました。

 

『仁義なき戦い・代理戦争』

『安藤組外伝・人斬り舎弟』

『実録外伝・大阪電撃作戦』

『赤穂城断絶』

『影の軍団・服部半蔵』

 

以上の五本のはずです。ですが、面と向ってカランだ記憶がないのです。

成田さんと酒席を共にした事も、たった一度しかないのです。

成田さんと食事をした覚えもないのです。ただの一度も。

成田さんは酒が好きでした。

成田さんは犬が好きでした。

成田さんは当然映画が好きでした。

東映京都撮影所でお会いすると、野太い声で「元気?」「飲んでる?」後は犬の話し。格別 何かの話をしたという事もないのです。

 

ですが、いつも何か気になる存在でした。この人には「イヤな奴」と思われたくない。ブザマな所は見せられない。そう思ってしまうのです。

私が成田さんと共有できた時間の短さに驚きながら、私にとって成田三樹夫さんは何だったのか、どうして成田三樹夫さんの事が気になったのかを考えてみました。

答えは簡単でした。

私は成田三樹夫さんのファンだったのです。

古武士を思わせる風貌と失われつつある日本人の原点を持っていた成田三樹夫さんに魅了された一ファンだったのです。

先輩として見たこともなく、同業者として見たこともなく、いつもファンという立場で、成田三樹夫さんの事を見ていたのです。

残念です。

 

‥‥ お兄さん・渡哲也の大ヒットドラマ『大都会』三部作〜『大追跡』〜そして、渡瀬さん主演の『大激闘マッドポリス’ 80』へと続く

MPを率いるキャップ・氷室は、黒づくめのタイトな感じで、ハンチングでRX–7を乗り回し、すこぶる武闘派のカッコよさ……

やはり「眼」がよかった

なんかリアルな感じがしましたね

 

 

 

 

大野雄二の「大激闘のテーマ」の名曲にオーバーラップして遜色ない役者、バイオレンス物なのにそこはかとなく哀愁が漂っておりました

科学忍者隊でゆーと、兄貴の渡哲也さんが大鷲のケン、渡瀬さんはコンドルのジョーって感じでありましょー

地球を救ったのは、ジョーがベルク・カッツェに投げつけた羽根手裏剣だったのです

人に知られず尽くす御仁(人気シリーズ『おみやさん』に結実)、渡瀬さんにはそんなスサノオ振りのイメージがあります

 

ー三國連太郎がそーであったよーに、成田三樹夫もみずからの生業を「河原乞食」の様なものと自認していた

菅原文太の読んだ弔辞に「あなたは芸能人ではなく、俳優であり続けたのです」とあったよーに、成田三樹夫は「わざおぎ=俳優」で在り続けたのである

俳句がブームになっているので、彼の遺稿句集『鯨の目』より私好みを引用する……

 

> 大空の下で大根を抜く

> 一線をまたげば異邦去年今年 (こぞことし)

 

> 背をのばせばどこまでも天

> 友逝きて幽明界の境も消ゆ

> 逝きし友万化の宙に俳優げり(わざおげり)

 

> ひそと動いても大音響

> 神々ののどかさよ天に満ち満ち

> 天上も天下も抜くよわらべかな

 

> 波ひいてもぬけのからのいとおしき

> 春ゆくや煮こごりのくづれゆく

 

> 咳こんでいいたいことのあふれけり  (病室)

> 荒海や王道自在のシロナガス  (病中)

> 痛みのなかで安心 (あんじん微笑をかいまみる   (院中)

 

‥‥ 成田さんの遺稿の読書メモより、私と共通する蔵書をピックアップしてみる

> メキシコ ヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファン

カスタネダのドン・ファンシリーズ6 二見書房

> 「うつろ舟」澁澤龍彦著 福武書店

> 「大仏以後」杉山二郎著 学生社

> 「ダヤン・ゆりの花蔭に」M・エリアーデ著 筑摩書房

> 「縛られた巨人」神坂次郎著 新潮社

> 「タルホ事典」潮出版社

> 〈 柔軟心 (にゅうなんしんを学ぶ=道元 〉

 

‥‥ 中沢新一の本も何冊か愛読されていたよーだ

このインテリ振りも宜なるかな、成田さんは内緒にしておられたのだが、東京大学を一年で中退されて山形大に入り直しておられる学歴をお持ちである

お兄さん方も頗る優秀で、そーゆー家風で育っておられたよーだ

この「雅び」な処が、最強のお公家さん・烏丸少将文麿に通じるのであろー

 

この遺稿句集『鯨の目』の巻頭の肖像写真……

白皙の額に彫りの深い風貌、白のブルゾンを立て襟にしてチェック柄のシャツ、着古したジーンズに人差し指を突っ込んだ憂い顔……

その凜呼たる侵すべからざる気品は、誇り高き湊町・酒田の先人たちが持ち合わせていたものである

 

渡瀬さんを出汁にして、成田三樹夫を語ったが、おとこ・渡瀬恒彦はそれをよしとして下さると信ずる

 

【松濤館流の天才空手家・江上茂(極真・安田英治の師、青木宏之の兄弟弟子)、早稲田大学で渡瀬恒彦にも教える。渡瀬恒彦は、ケンカが強すぎて芸能界最強と噂されたが、江上師から伝授された直弟子だったのなら充分頷ける。渡瀬さんの訃報は、伊勢白山道の記事にも取り上げられていた。(昭和に降臨した「獅子の神使」であり「真の男だな」と観ていたと)兄・渡哲也との兄弟ケンカは、『北斗の拳』なみに熾烈で凄まじいものだったらしい。】

 

 

🔴俳優成田三樹夫の境涯

[2009-04-05 13:47:03 | 玉ノ海]

 

勉強に明け暮れし、追試に追われる高校生活でしたが『書』に邂逅し、また成田三樹夫を母校の先輩に持てたことには、後年感謝すること頻りでありました

55歳の若さで病いで帰天された彼であったが将棋と俳句が好きなインテリ俳優であった

 

咳こんでいいたいことのあふれけり

目あくれば晒した顔をまだ見ている妻

 

    [※  遺稿句集『鯨の目』無明舎出版・1991-より]

 

 

今あれだけニヒルな悪役ができる役者がいるでしょうか? あれだけ憎めない悪役ができる役者がいるでしょうか? あれだけ......

いや、やめましょう。 あの人が素晴らしすぎただけなんです。

[ネット上のサイト『名優・成田三樹夫』からの引用]

 

※   尚、「名悪役」については、こちらの拙稿もご参照くだされ。(井上昭文、金田龍之介、梅津栄、成田三樹夫を語っています)

 

 時代劇 「おじゃる言葉」 をあみだした怪優 - 『 自然は全機する 〜玉の海草〜 』

__お公家さんの 「〇〇でおじゃる」 とゆー話し振りは、映画『柳生一族の陰謀』(1978)において、初めて登場した 深作欣二監督と、千葉真一ががっぷり四...

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松田優作が 最高の悪役” と讃えた彼の風姿には、善悪二つ枠では収まり切らない、人間の剥き出しの『生』の凄み、深み、滑稽味が滲み出ていた

 

悪役であって、美しい人 と云ふのも、映画史上稀れではあるまいか

 

湊・酒田の産んだ凄絶な二枚目俳優、成田三樹夫

光栄にも、彼の姪御さんとは同級生である

当時、スラッとした 端正な佇まい の心優しい美少女であった  。。。

         _________玉の海草

 

 

 

 

 

 

 

 



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