『 自然は全機する 〜玉の海草〜 』

強くなり過ぎた戦狼〜 卓球王国・中国

卓球・女子団体決勝戦___

何か、混合ダブルス敗北の責任をとって代表を降ろされた感がある劉詩雯(リュウシブン)選手の代わりに…… 王曼昱(オウバンイク)22歳、なんと世界ランキング4位の若き実力者である

リザーブ選手ですら、こんなに強い中国の選手層の分厚さを感じさせる(劉詩雯は、「日本人キラー」だから戦略的な采配だったのかも知れない)

 

総人口14億人のうち、卓球人口は3000〜8000万人、学校や公園やらどこにでも卓球台は設置されていて、国民皆が卓球プレイヤーである

私は、中学時代卓球部でシゴかれたので、卓球については一家言もっている

中国の卓球代表選手はだから、私のよーな経験者の五月蝿い批評につねに晒されているわけだ

そんな中から揉まれて昇りつめた卓球エリートたちは、ちょっとやそっとの技術レベルではない

そんな卓球自慢の国民の憧れとなっているのが、中国国内の卓球リーグ『超級リーグ』である

福原愛ちゃんも、このリーグへ挑戦して所属選手となり活躍した(「国民の妹」としての愛ちゃんの人気は未だに凄まじく、ウェイボーには500万人以上のフォロワーがいる、離婚騒動にも曰く「何があっても愛ちゃんを永遠支持する!」ーーーちなみに石川佳純選手のウェイボー・フォロワー数は57万人以上であります)

 

日本なんか、昔タモリの唱えた「卓球地味」説どおりで、長い間根暗でマイナーなスポーツであり続けたから、競技人口は現在どのくらいなんだろー?

中国の8000万人といえば、日本人の総人口の3人に2人がやっている程の莫大な規模である

日本でフツーにやっていては、最初っから到底敵わない

365日、卓球に人生を懸けている人にして、やっと同じスタート・ラインに立てるくらいでしょー

伊藤美誠ちゃんは、お母さんの全面的な支援もあって、のびのびと創意工夫をこらした卓球に励んで来た

ただ中国では、国家事業だから、指導陣からして違うのだ

技術レベル・戦略・メンタル強化まで、熟練の指導者が専門に子ども達(ごく一握りの才能のある幼児が選抜されて英才教育をうける)を鍛える

 

石川佳純にしても伊藤美誠にしても、中国語に堪能だが……  中国語を覚えると中国の練習方法についての理解も深まり、中国独特の戦術を実行できて実際に強くなるそーだ

中国では、ドライブやスマッシュにつかう特別な卓球用語が幾つもあるからだ、卓球の打球に対する意識がまるで違うのだ、例えば、

日本語でスマッシュと言えば思い切り叩くイメージ。だが中国語では戦術や力の入れ具合によって幾通りもの言い方がある。

「ディエン」「ファリー」「コウシャ」

ディエンは表ソフトラバーで30%の力で打つ。ファリーは70%。コウシャは一撃で仕留める100%そして120%「ファスーリー」

より細かく分かれた豊富な語彙により技を明確に表現出来るから技術を正確に短期間で習得できる。

‥‥ コトバと身体の操法とは密接なつながりがある

格闘王・前田日明選手も云っておられた

> 生きてて、運動関係であっても、見たものを自分の中で言葉にする能力ってすごい大事なんだよ。
言葉に出来なかったら、イメージ出来ないんだよ。
イメージ出来なかったら、身につかないんだよ。

[※ YouTube で朝倉未来選手との対談にて]

‥‥ つまり、ただ打つスマッシュを、コトバによって意識してイメージすることによって、幾つものパターンを修得しているわけだ

人間は、思考するためにはコトバが必要不可欠である、コトバで思考するからである

この練習方法は、中国では中国拳法の「功夫(クンフー、カンフー)」と同じである

同じ「站樁功(たんとうこう=立禅)」であっても、心が身体にイメージさせるものが違うと全く別物になってしまう(例;円柱を抱きかかえるように馬歩する等)

その「イメージ」こそが、何を想ってその動作をするのかが、その流派の「秘伝」となっているのである

卓球でも、細分化された技術は戦略に有益である

 

卓球コラムニストの伊藤条太さんに拠ると‥‥ 

孫穎莎(ソンエイサ)は、終始徹底して伊藤のバック側を狙って打ったと云ふ

 

    【写真】 表ソフト・ラバー(粒々の凹凸が有る)

 

そこまでして伊藤のバック側を狙ったのは、伊藤のバック側の「表ソフト」というラバーを攻める方針だったからに他ならない。

表ソフトは回転がかかりにくく、自分も難しいが相手も難しいという、いわばハイリスク・ハイリターンのラバーだ。

我慢して一定レベルのボールを伊藤の表ソフトに送り続けていればハイリスクの欠点が出て、必ず伊藤が先にミスをするはずだ、それまで待つという作戦だ。

‥‥ 伊藤選手が貼っている「表ソフト・ラバー」は、1980年代に中国が世界王者であった時に使っていたが、1990年代に欧州で主流となった「裏ソフト・ラバー(表面がツルツルの普通使いのラバー)」による強烈なドライブに敗れ去り、中国は「表ソフト」を捨てることによって王座を奪還した経緯があるそーだ

「表ソフト・ラバー」に対する付き合いの年季が、美誠ちゃんでは遠く及ばない奥行きをもっている

それに加えて、ドライブボールの回転量を調節していたと云ふ

全身を使って回転をかけるふりをしながら、わずかに手首の動きを抑えて回転の少ないドライブを打つ、いわゆる「ナックル・ドライブ」を連発していたのだ。

‥‥ しかも、同じフォームで、パワー・ドライブとナックル・ドライブを打ち分けるのだからエゲツない

美誠ちゃんがよく、ネットに引っ掛けていたのは、そのせいだと云ふ

孫選手は、美誠ちゃんのサーブには、かなりの高回転をかけて返していた

表ソフトラバーに回転量で負担をかけてきた、高速卓球はカット(回転をかける)より打つ(スマッシュ)に重点をおくから

 

孫穎莎は、いままで中国国内では「小魔王」と呼ばれ親しまれてきたが……  このたびシングルスで「大魔王・伊藤美誠」を完膚なきまでに叩きのめした功績が買われ、めでたく「大魔王」に昇格成ったよーだ

日本チームは確かに強いが、気をつけなければならないのは伊藤美誠だけだから、われわれには「大魔王・孫穎莎」がいて伊藤の相手をしてくれる、中国の金メダルは揺らがないと…… 

そして、その通りとなった、中国はエース・陳夢でなく、団体戦に若手の孫穎莎を二回起用してきた、テレビ報道では中国と紙一重の実力などと調子のいいことを言っていたが……  まだまだ、たとえ孫穎莎を破ったとしても、その先がまだまだあるのが卓球王国・中国の懐の奥深さなのだ

現状、孫穎莎に二戦連続して完敗、なす術のない実力差がある

中国国内では、女子シングルスの決勝の同国対決はまるで盛り上がらなかったそーだ、やはり鎬を削る敵国、ハラハラさせる実力のある国が必要なのだ

 

「勝ち上がってきた過程を見れば、日本はとても強い。今や、彼女たちを抑えられるのは中国しかいない」

‥‥ こーした情況に追い込まれることこそ中国人は望んでいる、強力な他国の好敵手あっての優勝こそ一番盛り上がりやり甲斐もあるととらえる国民性であるよーだ

このあたりは、隣国K国とは違い、よって立つ気概と誇りがあるよーだ

その点で、強すぎるがあまり、勝つのが当たり前であるが故に、いま中国では卓球が不人気となっているし、今回のオリンピックでそれに拍車をかける形になってしまった

中国が本気を出して立ち向かうほどの強敵はいない

 

こんなに選手層は厚く、多彩な才能をもつ超エリート選手を大勢かかえているにも拘らず…… 

決勝の日本戦に臨む李準監督の心構えが、真におそろしい

「私たちは毎日(日本に)恐怖を抱き、熟考している。この5年間、毎日が恐怖だった」

‥‥ さすが、「孫子の兵法」を産んだ国ですなあ〜 

つねに、油断なく全力であたるのですな、日本では「楽しんで」などと口走るが、全力を尽くして試合にあたれば、おのずから「楽しい」のです

いみじくも、羽生結弦選手が金メダル獲ってから後続の選手にこーアドバイスしていました

「全力で楽しんでください ♪」

 

‥‥ 女子レスリングの川井梨沙子選手(五輪2連覇達成 ♪)も云っておられました

彼女は日本代表の資格を得るために、4連覇の偉材・伊調馨 選手を打ち破らなければならない荊の道を歩まれた御仁です、さすがに凄いお言葉だと思いました

> 「終わりを考えていると、今日の試合に隙ができるような気がして…… 」

‥‥ 対する『ZIP!』のインタヴュアー吉田沙保里の応えは、

> 「私もリオのオリンピックで4連覇を狙ってて……  梨紗子選手が『これで終わろうという気持ちでは絶対に隙がでる』と言いましたが、私はズバリそのままでしたね。だから『姉妹でそろって金メダルで終わろう』という気持ちがなかったからこそ、この2連覇が達成できたかと思います」

 

‥‥ 今に集中するのが、全力で楽しむことだと思います

「結果は、つねに副産物」 これ、誰の言葉だったかな?

         _________玉の海草

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