__Amazon Prime のTV CM「その特別な時間が、きっといちばんの特典です」特別版(1:50秒)
子どものいない熟年夫婦の日常の一コマを、物語風に切り取った、心温まるショートドラマ……
背景に流れる、Zac Banc『 Something Real 』の囁くよーな声音も、市井で懸命に働く二人の背中を押しているよーな……
わたしも、最初みたときは、「何をいいオトナがそんなことするかねえ」と懐疑的だったが……
何回も繰り返しみているうちに、いつしか二人の表情を追って釘づけになっている自分に気がついた
ー世間では、このCMが「気持ち悪い」と顔を背けるひとも、かなりいるみたいだ
日本の大衆目線でどーなのか、賛否の中身を探ってみたい
まず、気に入っている私の印象から述べる
最初は、CMに出そーにない北村有起哉の渋チンの風貌から惹きこまれる
子どもがいない様子のこの夫婦、あるいは同棲している熟年の二人なのかしら?
「いつでもこの頃に戻れる券」を見つけ、会社が終わって彼女が社屋から出てくる処をねらって待っている
かるく手を上げて、引っ込み思案に合図する処が実に昔の男みたいで好い ♪
この、若いカップルがするよーな恥ずかしいシーンに(自分を駆り立て)強引にもってゆく姿勢に、リアルを感じる
彼女が、彼の突然の出現にビックリする処は、さすがプロの役者、「戻れる券」を目の前に出され……
「どうしたの?」と呆れたとゆーか心配顔した彼女がなんとも佳い、「まだ… 使える?」とたどたどしく不安げな口調もグッと来る……
今おきている事態を理解しよーとフル回転させて、戸惑いながらもすべて受け入れて、にんまりと歯をみせて微笑む彼女が、天使にみえる
これは今現在の感想なのだが、最初みたときは彼女の唇の表情(口が曲がってる感じ)に抵抗があった
なにか、この口の表現はひっかかった、憶えがあるよーな、なにかキャリア・ウーマン的な(ウーマン・リブ的かしら)……
このCMを、YouTubeで観よーと検索にかけて、ようやくこのひっかかった訳が分かった
彼女は、昔ぼくの大好きな役者さんだったのだ
高野志穂 さん、NHKの朝ドラ『さくら』で、ハワイから英語助手で岐阜の飛騨古川に赴任した主人公を演じた
なんと、このCMで夫役の北村さんとは、本当の夫婦なのだそーだ Σ('◉⌓◉’)..ナンデスト〜🌿
あの「さくら」がねえ、私は彼女が壁や人に不用意にぶつかっては、無惨にはね返されるシーンをこよなく愛していたのだ(江戸っ子の金魚屋の祖父母が、小林亜星と中村メイコだった ♪)
なにごとにも一生懸命に果敢に挑む「さくら」だっただけに、その弾むよーな仕草に妙に諧謔味があった
岐阜の郡上八幡の祭りの風景も、深く伝統が浸みわたっていて佳かった、ぞっこん岐阜が好きになって……
岐阜といえば、織田信長の命名、美濃の道三、濃姫びいきで、最近では朝ドラ『半分、青い』の舞台にもなった、いまでは毎日つかう食器が「美濃焼」になってしまった
そんな高野志穂の演じる、現代の「職業婦人」であったが、CMの終幕で、そっと指を絡ませ手を握りあうシーン……
お互いの顔を見合って、照れながらもみせる笑顔に、実に人間らしい喜びが迸っている(このシーンは、TV CM用の30秒バージョンには映っていない)
さいごの場面は、部屋に届いたアマゾンの段ボールが映しだされるが、私はこれ、夫が妻にサプライズ・プレゼントを注文したんだとばかり思っていた
なかなかやるじゃん、俺とおんなじだとか勝手に共感を深めていた、つまり段ボールにお宝が入っているものとして観ていた
しかし、なるほどストーリーを追ってゆけば、妻に頼まれた品々(黒板に書かれていた)を即日配達のアマゾンで手配した日用品だと見るのが自然であろー
それらを買い物する時間を、ふたりの久しぶりのデートにあてたわけか…… まー、これはこれでリアルな日常ではあるが……
東京の夜景がみえる埠頭(?)で、ふたりはようやく手を繋ぐわけだが、薄暗く、辺りに誰もいない情況があって初めてそーゆーことが出来た二人なのかも知れなかった
この、つつましい愛情表現や小さな喜びを深く味わえる人生が素的なのだ
さて、このCMを「気持ち悪い夫婦」と感じる人々に思いを致せば……
Yahoo!知恵袋によれば、「お洒落な」夫婦ともみえるらしい、若干の嫉妬まじり?
「こんな夫婦いないよ」が、真実に近い印象なのかも知れないのだが、生活共同体の同士たる連れ合いに、こんな浪漫的なアプローチを持ちこまれるのは「イヤ」なよーだ
会社に訳分からんチケット持って来られた時点でキレるんだって
「いやよいやよ」も「すき」の内の「イヤ」ではないよーだ…… 独身としては悲しいシビアさである
あの、吾々田舎人の心をくすぐる夜景は、「春海橋公園」だとか……
まー、年齢の割に若々しすぎる高野さんなのかも知れんけど、わたしはもーひとつ別の観方をしている
帰国子女で日本に馴染もうと日々努力している妻を、労っている不器用な夫の一コマであってもよい
あの、高野さんのひっかかった口元は、帰国子女にとってのアタリマエを抑えて日本に合わせなければならなかった、心の歪みが露われているよーにも見える(彼女は実際に帰国子女である)
なにか複雑に渦巻く人間模様を、この実生活でも夫婦である二人の俳優が、色々な顔(可能性)をみせて演じた「都会のサラリーマン家庭」の過ごし方であったのではないかと思う
ー要するに、わたしはいたく心打たれたのである
YouTubeで、長い(1:50)特別版を繰り返し鑑賞している
懸命に、精一杯生きているって、お互いを思いやるって素晴らしいなと単純に感動(神動)している
これだけ、馥郁たる薫りを漂わせながら、自己投影させることによって、さまざまに受けとられるパラレルワールドを暗示させ……
なおかつ市井のつまらない反復と日常の狭間に、肌身に迫るリアルな「生活」と小さな 思い遣り(おもいやり)を描いてみせた、この二人の俳優(わざおぎ、業招ぎ)の自然な演技に感銘を亨けた
>複雑な哲学も、教義もいりません。
私たち自身の心が寺院です。
思いやりが教義です。
[※ ダライラマ14世『いのちの言葉』-より]
‥‥ はて、あの段ボールの中には、何が入っていたものか
続編があったら、覗いてみたいと切に思った夕べであった
_________玉の海草
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