春も本番になり、大型がねらえるシーズンの到来です。
キロを超えるようなアオリを直接見たことはありませんでしたが、
ネット上で、大型を釣り上げている動画は色々見ていました。
心惹かれたのは、堀田光哉さんが南伊豆で3キロのアオリを釣るシマノTVの動画。
ロッドが低く弧を描き、ドラグがうなる。エギンガーの「夢の瞬間」です。
でもこれは経験を積んだエキスパートの世界の話。
自分の目標は、秋より釣れにくいと言われる春に、
とにかく1杯釣ることです。ついでに自己記録(520g)を更新できれば、
理想のシーズン開幕戦になります。
東伊豆某港。前回にならって夕方4時半頃から始めます。
やや強めの風との予報でしたが、着いてみるとひどい強風です。
釣り人は誰もいません。
堤防先端付近から外洋向けにキャストします。
追い風なので飛距離は出ます。
が、落水の恐れがあるので、いつもより水際から一歩退いて立ちます。
そのため竿先を足元水面に向けるいつもの構えが出来ず、調子が狂います。
さらに、追い風はロッドとラインを持ち上げるように煽るので、
エギからの情報を受け取っている実感がほとんどありません。
釣りが成立しない状況とはこういうことかもしれません。
それでもせっかく来ている以上、即撤退はできません。
風の様子を見て、キャスト、様子見、キャスト、様子見、と繰り返し、
1時間ほど過ぎると、風が少し弱まりました。
そのお陰で、水際でもしゃがみ込んだ姿勢なら落水の危険は感じません。
この姿勢で、竿先をなるべく海面に近づけて保持すれば、
ロッド、ラインへの追い風の影響も少なくなります。
これでいつもの釣りの感覚に近づきました。
キャストを繰り返し、30分程経つも反応はありません。
強風に吹かれ続けて体が冷えてきました。
しゃがんだ姿勢の保持が体力を奪うためか、
段々と集中力が無くなっていきます。
そろそろ一時撤退かな、と思いました。
最後のエギチェンジをおこなって、
これを何回か投げたら撤収しようと決めます。
一投目。着底。ジャーク、フォール、ずる引き。しゃくり、フォール、ずる引き。
集中力が無いので、一番シンプルなパターンを機械的に繰り出すことしか出来ません。
二投目。着底。ジャーク、フォール、ずる引き。しゃくり、フォール、ずる引き。
最後のずる引きで、ラインにテンションが出ます。
合わせを入れました。するとどうでしょう!
ロッドが大きく曲がり、ドラグがうなりをあげます。
強い重量感で、ラインが勢いよく沖に向けてズゴーーーンと引かれていきます。
最初の走りがなかなか止まりません。スプールからどんどんラインが
無くなっていくのを見て不安になります。実際どれくらいラインが出たか
分かりませんが、感覚的には15m位走られた気がします。
ようやく止まりました。ドラグを少し締めて、ゆっくり寄せます。
タモはセッティング済みでした。
寄せながら、タモを伸ばして、取りやすい位置にスタンバイさせます。
寄せてくる間、2、3度小さく走られましたが、大きな反抗はありません。
でもやたら重いのです。
水面に浮いてくる様子はありません。
パワーの弱いロッドで、バットから曲がりきっているので、持ち上がらないのでしょうか。
姿が見えないので、ある疑念が頭に浮かびます。これはアオリなのか?
もしかしたら、巨大なコウイカ類とか…
足元まで寄せてきました。薄暗い時間帯なので、水面付近まで上げないと
姿が見えません。見えました。といっても白い花びらのように開いた足だけが
見えました。見えたと同時に、真下にゴーーーンともぐります。
再び巻き上げ、白い足が見えたところで、タモを入れます。
タモを近づけると、また真下にゴーーーンともぐります。大量の墨が吐かれます。
再度水面まで巻き上げ、もぐられてもいいようにタモを深めに差し入れて、
すくいあげます。入りました。ランディング。
湯船に浸かった時のような「う゛あ゛ーー」という声が出ます。
緊張が一挙に解けたのです。
タモの上で横たわるこのイカは何イカなのか。
裏返った胴体が白々としています。
ひっくり返して表にします。見慣れたベッコウ色を見て、疑念は晴れました。
胴長46cm、重量約3.2kg(現地釣具店計量)のアオリイカです。
これ以上何もする気が起きず、納竿です。
【メモ】
・ヒットエギは墨族ノーマルタイプのレッドクリア4号です。
・釣れたのは満潮直前でした。
・天気は曇りで、少し薄暗い時間帯でした。
【振り返る】
予期せぬ大型が釣れました。
前回の教訓からタモの準備が出来ていたのはラッキーでした。
ほぼ満潮だったこともあって、思ったより楽に取り込めました。
たまたまひとつだけ持っていた4号のエギで釣れました。
「大型には大きなエギ」というセオリー通りになった形ですが、
狙っていたわけではなく、カラー選択でたまたまそれを選んだ結果でした。
でもこれ以降は、このセオリーに引きずられて、
4号のエギを必ず1、2本携行するようになりました。
まさか自分が、ネットの動画で見ていた「夢の瞬間」と
同じ状況におかれるとは思いもよりませんでした。
貴重な経験を与えてくれた伊豆の海にとにかく感謝しました。
今回の釣果は、さまざまな条件がたまたま重なった偶然・奇跡だと思いました。
技術・経験・知識の無さ。これは言うまでもありませんが、
なによりも、大型を全くねらっていなかったのです。まさしくまぐれの釣果でした。
いつか大型をねらって釣りたい。これが自分にとっての遠い目標になりました。