武 順子(Take Junko) ひとり語りのひとりごと

わがままな朗読家の我がままなひとりごと。「縁側の猫を枕に日向ぼこ」…猫が好き。詩を書く人でもあります。

被災地の海は、静かで…

2011年04月07日 00時55分14秒 | Weblog
激励コンサートに参加した。
当初朗読をする予定でいたが、時間配分の関係で割愛された。

ほんとうに情けないのだけれども、ホッとした。

ぎりぎりまで演目を迷った。もう現場の様子で決めるしかないなと思い、いくつかの本を持参した。

斎藤隆介の作品集も持っていった。千葉県の作家でもある。
「ソメコとオニ」を読もうかと思った。時間的にも短くて、これならきっと笑ってもらえる。
でも…。
昔話百選から楽しい話を読もうか。
でも…。
いっそのことラブユーフォーエバーを語ろうか。
でも…。

何を選んでも、「でも…」と思ってしまう。


結局私は、司会進行を引き受け走り回っていた。音楽に合わせて、手をたたき、歌もうたった。若いころを思い出し、ちょっとだけ胸がきゅんとなった。


避難所には、被災者が数人いるだけだった。それに加えて30人くらいのデイサービスのお年寄りがいた。避難所へというよりもむしろ、デイサービスへの慰問のようであった。

さて終演後、被災者の男性と男性に付き添っているボランティアの女性と話をした。

被災者は津波で奥さんを失った。お二人には子どもがいない。
「なんで自分だけ生き残った…」。男性が後追いをする心配があるのでボランティアが付きっきりで看ているとのことだった。
「天涯孤独」と男性は言う。天涯まで孤独、と言う。静かに、ほほ笑みながら。


こうやって文字にすると、なんだか軽くなってしまう。
書きたいことは山ほどあるのに、書いてしまうのが怖い。



最後に、手を握り締めた。男性の手は、食後だというのに、冷たかった。




慰問を終えた後、旭市の海岸に行った。

海は静かだった。様々なものを呑みこんでなお、静かだった。
老紳士も静かだった。愛する者もすべてを失って…静かだった。


「生きていてよかった」を言える日がきますように。心から、祈る。

与えられて在るいのち。大切に。大切に。
コメント (3)
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