武 順子(Take Junko) ひとり語りのひとりごと

わがままな朗読家の我がままなひとりごと。「縁側の猫を枕に日向ぼこ」…猫が好き。詩を書く人でもあります。

実りの秋に 馬肥ゆる秋に 悲しくてならないこと

2011年11月02日 10時44分27秒 | Weblog
実りの秋だ


どんどん食べたいものがなくなっていく

去年の今ごろには、長野県別所温泉までマツタケ料理のコースを食べに行った。
房総半島の大原漁港へ伊勢海老も食べに行った。

冬になり年が明け、鮟鱇を食べに行きたいね、福島の海岸へ…

友人が予約を取ろうとしていたのが3月11日だった。用事が重なり行けなかった。

もしもあの日…。会うたびに、そんな話をする。

あれから、私たちのグルメは、休業中だ。


美しい紅葉も
静かな海も
そよと吹く風も
なにもかもを
無心に堪能することが
できなくなり

無機質な
アスファルトの道に安堵し
道端の吹き溜まりに
恐怖する

異国の土に
触れたとき
なぜか
愛おしく
頬ずりをし
風はこんなにも
おいしいものなのだと
両手を広げる

この地で
おいしい深呼吸を
できる日がくることを

絶望せずに
願うのだが

絶望せずに
願うのだが

繊細な者たちは
みな心を病み
あきらめた人たちが
闊歩するのか




食べるものは、選ぶことができる。
紅葉は、映像で楽しめばよい。
風は、選ぶことができない。この地にある限り。
せめて悲しみの声には、立ち止まり耳を傾ける。

かさこそと落ち葉を踏む足音に恐れをいだくなんていうことがあってはならない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする