新潟久紀ブログ版retrospective

土木部監理課10「組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その5)」編

●組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その5)

 私の若い頃は、役所において業務の民間委託というと"安かろう悪かろう"といううがった封建的な物言いが時折聞かれたものだ。民間活力の積極的導入などが叫ばれて久しい昨今、"安かろう悪かろう"を招くのは、むしろ役所側の発注の仕方に問題があるのだということが定説となり、業務品質や精度を担保する仕様をしっかりつくることの重要性が共有されてきている。
 それでも、利益を追求するのが民間の本質なのだから。網目を掻い潜るような手抜きなどが皆無とは言えないのではないか…。私は疑い深くなっていたのだが、そうした疑念の思いは民間委託道路パトロールに関しては吹き飛ぶことになった。
 待ち合わせて同乗したパトロール車は、安手のバンかと思いきや、なんと直営のパトロール車と同車種で、カラーリングや装備もほぼ同じ仕様となっていて、先ずは驚かされた。一般車両と区別のつかないような車両が路肩でウロウロ作業をしていれば普通の人は怪訝に思えるだろうとのことで、道路パトロールの請負を機に会社が購入して整備したのだという。もちろん委託費で賄えるものではなく会社自らの負担だという。しっかりと道路パトロールを請け負うという姿勢を内外に示したいとする社長の思いがあったのだという。
 道路パトロールの業務そのものも直営と全く遜色のないものであった。それでも私は、同乗開始から随分と時間が経って運転手や助手席の作業員と打ち解けてきた頃合いを見計らって敢えて、「民間では利益確保の下で軽微な道路のキズなどは見逃したり対応を先送りしたりすることもあるのでは」と意地悪に投げかけてみた。
 運転手も作業員も発注元である県からの視察者である私に気遣って露骨に怒りを見せることはなかったが、抑制的な穏やかな口調で応答した。「そんな手抜きをすれば地元の住民が黙っていませんよ。請負の○○組は手抜きをしているぞと直ぐに県へ通報されますわ」と作業員。運転手も「道路管理というのは事故があれば生死に直結するもの。それを見る目は厳しい。」と続け、「なによりも我々は地元で創業した建設業者。地元の道路を維持保全する意識は、転勤で数年ほどで出先機関を入れ替わる県職員とは比べ物にならないくらい高いですよ」と"とどめ"をさしてきた。私はよく知りもせず軽薄なことを言ってしまったものだと反省の弁を申し上げた。
 いずれにしても、道路パトロールの直営と民間委託の双方に同乗視察した私は、その後の組合交渉でも、論点を的確に押さえて現場の感覚に適ったやり取りができたと思う。現場に足を運んで体験したことを組合役員から評価もされて少しこそばゆくもあったが。委託を受ける民間側のプライドや誠実さを真摯に伝えるなどして民営化議論の深まりに寄与もできたとは思うか、道路パトロールに限らず役所においては、業務に携わる者の職域を減らすことにつながる委託化の拡大はそう簡単ではないこともまた、交渉を通じて改めて再認識させられもしたのであった。

(「土木部監理課10「組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その5)」編」終わり。「土木部監理課11「収用委員会の事務局は景気低迷で良くも悪くも低調」編」に続きます。)
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