●黒字化の戦略と達成(その1)
病院局の職員達、とりわけベテランと言われる人たちは何故黒字化を目指す意欲を失ってしまっているのか。調べてみると、病院局には転入転出を繰り返して通算勤続年数が長い職員が係長各以上の幹部に多い。発生主義と複式簿記という経理事務や企業としての病院経営、さらには労働基準法に基づく組合交渉も含め、県庁で一般的な行政職場とかけ離れた特殊性から、それに適応できた職員が繰返し任用されてきているということが想像に難くない。"経験者の熟練"の活用は効率的である一方で、ベテランとして実情を知り過ぎている故の割り切りや消極さをもたらしてしまっているのではないか。綿々と折り重なってこびりつき、厚い社風にさえなっているかのようなこの"諦観の雰囲気"を何とかできないものか。そのためには、病院局全体に向けて私が独りいきがってみても誰もついてきてはくれないだろう。
15病院(当時)をひとまとめにして赤字赤字と騒ぐ基調が根強くある。国が示す経営指標や各種制度が何事も県立として一括りにして捉える側面があるので致し方ないのだが、15病院を一つ一つ見ていくと、置かれている地域の医療需要や連携相手、診療内容や規模などが全て異なり、経営改善の処方箋も個別に考えるべきて、個々の取組の結果として15病院全体の赤字幅を減らしていくというアプローチが肝要であるはずだ。
ところが、病院毎の経営戦略や収支改善計画は、病院現場に任されていて、これまでの状況を見聞きした私に言わせればそれは放任に近い状態であり、本局は電話や現場訪問により都度都度叱咤激励や発破を掛けるのではあるが、結局は見守る姿勢や追認に過ぎないものであった。大方の本局のベテラン職員達は異口同音に言う。「現場は院長や医師の言うことでしか動かない。院長や医者達も医者の言うことしか聞かない。所詮事務職であり現場から遠く離れた県庁に座す我々本局の職員が、医療現場の経営を能動的にどうこうしようなどというのは現実的には不可能なのだ」と。
本当に私のような事務方には病院経営に関与することができないのたろうか。皆が口を揃えるキーパーソンであり、医療における絶対的存在であるが故に誰もがどうこうできる相手ではないと思考停止してしまう「医師」という存在を、事務サイドから動機づけできる方策は本当にないのだろうか。
これまで医者の世話になった経験が少なく、親族に医者もおらず、どうにも勘所が無い私は、取り敢えず、年度初めにまとまる前年度の決算資料の説明を理由にして各病院の院長と面談させてもらえないかと各病院に打診してみた。毎年4月下旬に新年度における本局と各病院の幹部メンバーが顔合わせする懇親会とセットで開催している院長事務長会議において決算の全容は説明済みなのだが、個別の病院毎に詳しく説明して経営者たる院長のご意見を伺いたいという体に仕立てたのだ。
(「病院局総務課4「黒字化の戦略と達成(その1)」編」終わり。「病院局総務課5「黒字化の戦略と達成(その2)」編」に続きます。)
☆ツイッターで平日ほぼ毎日の昼休みにつぶやき続けてます。
https://twitter.com/rinosahibea
https://twitter.com/rinosahibea