新潟久紀ブログ版retrospective

新発田地域ふるわせ座談会18・「次なる展開を考える」

●次なる展開を考える

 政令都市の新潟市の北東に隣接する新発田市、阿賀野市、胎内市、聖籠町で構成される新発田地域。域外への若者の流出が続きそれが少子化を進めるという負のスパイラルの中で、住み続ける若者をできるだけ減らさないようにし、更に、定着してくれる若者を域外から呼び込むにはどうしたらよいか。
 この地域に限らず、新潟県は、肥沃な平野、海、山、川に恵まれ、米はもとより野菜や果物、海産物まで豊富で何を食べても美味い。他県から来訪する殆どの人が言ってくれることだ。住と食の近接が重要であった時代には間違いなく魅惑の地であったに違いない。
 半世紀前の高度経済成長以来、流通も含めてあらゆる技術革新の中で、全てがカネで片を付けられる東京圏へと人が集中し、その基盤を強化するために新潟は若者を育てて送り出す供給元になってしまった。東京に太く早く直結させる高速交通体系の充実も良い事ばかりでなく、それを加速させる仕掛けになってしまっているというのは皮肉なものだ。
 新型コロナ禍が「密」は大きなリスクであることを顕在化させたので、地方への回帰へと人の流れが変わるかとも思われたが、政策的にはなんらテコ入れはされなかった。社会経済を動かす政財や人材育成の拠点が中央集中である限り、その地は何よりも最重要になるのだろうから、どんな事態からも優先的に護られる地となることが透けて見えるので、将来ある若い人の大勢が東京圏を目指すのは”道理”であるに違いない。
 私自身は、社会経済の偏在を法的効力をもって調整して、ヒトとモノの均霑化により、未開の地方においてなんとか稼ぎを上げなくてはならない状態を構造的に創り、地域資源への投資による潜在的価値の浮き彫り化や需要を創出することこそが、行うべき政策だと思う。
 しかし、リアルな地方で構成されているという視点での国家的な政策議論は全く見えてこない。今、ここに至って右肩上がりの時代を振り返ってばかりいたり、実効が期待できない動きを嘆くばかりではいられないので、自らが現実的に影響力を行使できる範囲で、それでもなんとか蟻の一穴になるように、あがいてみるしかない。
 新潟県の議員のみならず新発田地域の業界幹部からも「若者が一度は東京に出るのは仕方ない」という声が聞かれて驚く。一度出れば殆ど戻ってこない実態を知っている筈なのに、社会インフラ維持に不足する「労働供給制約」の瀬戸際が近いとの危機感がまだ薄いのだ。"ある日突然"の「地域死」を避けるべく深刻さを共有しなければならない。
 実は、新発田地域においては、農業や個人商店のみならず、そこそこの規模の工場や中小でも優良な企業が点在していて、人材不足に悩んでいるものも少なくない。
 現在主流のネットでの企業比較などを見れば、東京圏より低い給与水準が際立つので、先日意見交換した学生達からも「食べて行ける収入で企業を選んだ」という声が多く聞かれた。そこで、生活費用面で地方の物価水準を考えると収支としてはむしろ新潟が有利と抗弁したいところだが、生活や娯楽サービス等の集積による利便性など額面によらない質的な価値を勘案されると地方優位は怪しくなる。働く場や住みたい環境におけるアパートの数や単価、コンビニの近さや公共交通機関の利便性など、正に日々の生活のリアルを考えると説得力が弱くなっていく。
 それでも、先ずは実家で低廉に暮らせること、馴染みの空間があること、そして街活性化の活動家との意見交換において海外での仕事に一定の成功を見ながらもUターンした理由として真顔で語られた「新潟に暮らして新鮮さがあってこその美味いもの」がある。
 量質というか硬軟というか、とにかくあらゆる視点や角度を総動員して、就職適齢期以前の中高生くらいから、「働いて住むなら地元」と意識付けして、地元企業へと関心を向けさせる取組が強化されるべきだと思う。
 中学生の職場体験や高校生の企業見学などは各市町村で進められているが、一時的な印象付けで終わらせずに、長引く関心付けを頻度高く展開する必要がある。
 そして、特に普通科高校における進路指導においては、偏差値により大学リストから選ばせるようなことではなく、卒業後の進路として、地元企業に求められて有難がられる人材になれるかどうかという情報を、生徒に伝えることが必須とされるくらいの取組が必要だとも思う。
 地元企業への就職誘導については、産業政策に関する機能を持たない地域振興局長という私の立場では、関係する団体や機関に遠回りにお願いしていくしかないのだが、公的な視点からの地域づくりや街づくりへの貢献という担当範囲に基づいて、もっとやれること、やるべきことはないだろうか。

(「新発田地域ふるわせ座談会18・「次なる展開を考える」」終わります。「新発田地域ふるわせ座談会19・「若者と経営者で座談会」」に続きます。)
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