新潟久紀ブログ版retrospective

人事課行革班1「異動内示後の放置にやきもき」編

●異動内示後の放置にやきもき

 4カ所目の職場として32歳の私が内示を受けたのは総務部人事課。大学時代に経営組織論をゼミで学んでいた私は、県庁組織の管理運営の全体を垣間見れる人事課は入庁直後から関心のあった部署だ。出世や人事評価などには無関心であり、まだ若く怖い物知らずだった私は、人事課に配属と聞いても畏れなどはなく、色々な意味で失敗は許されない職場なのだろうな…と漠然と感じた程度だった。
 ただ、職員録などで組織体制を調べてみると、人事課は「企画調査係」「任用組織係」「給与係」「福利厚生室」で構成されており、私の配置先として内示表に示されていた「行政システム改革班」は見当たらない。内示を受けた時点での職場の上司らも「なんだその班は。聞いたこと無い」と言うばかり。後から思えば、その時に開会中の2月定例県議会において組織改正の説明はされていて報道発表もされていたのだが、無骨な農業専門職集団である我が職場の面々は、自身が関わる農林水産部などを除いては殆ど県庁組織には無関心で、人事課に新設される班など知るよしも無かったのだ。
 新しい仕事に関する情報が皆無であるということに加え、異動内示があると通常は翌日くらいに電話で連絡される、新所属からの庶務手続き等の案内について全く音沙汰が無い。若干の不安に感じた私は「行政システム改革」というワードを元に関連情報や予備知識を拾い集めてみるか、と思い立つ。異動直後に怒濤の繁忙に巻き込まれるかも知れないということが何となく予感されたからだ。しかし、当時の県庁は庁内LANが構築途上の段階であり、業務情報のアーカイブス化はどの部署も未整備の状況で、端末も一人一台など程遠く、各係に一台程度の配置。情報収集は現在に比べて容易では無かったのだ。
 人事課からの連絡は一週間ほどなしのつぶてであり、辛抱たまらず、業を煮やしてこちらからアプローチすることに。内示表を見ると、現在人事課の職員でそのまま行政システム改革班へ移行する職員がいたので電話してみた。「行政調査員」という聞き慣れない職名のその人は、丁寧ながらも迷惑そうな口調で答えた。「"例の問題"でバタバタしており、新体制の事務分掌などをまだ調整しているところ。今暫く連絡を待て。」というのだ。
 "例の問題"…。そう、つい先日に大方の日程を終えたばかりの2月定例県議会においても大変な問題として大騒ぎとなっていた"旅費の不適正支出問題"のことだ。県庁の幾つかの部署で、実績を伴わない旅費を請求して公金をプールするなどし、別用途に使い込んでいたことが市民オンブズマンの指摘などを通じて露見したという事案だ。職員や組織としてのいわゆる不祥事であることから、人事課は議会や報道含めた内外との対応のいまだ渦中にあったのだ。
 行政調査員は現在の職務においてその旅費問題に関する実務を一手に担っており、それが片付くまでは新たな職務となる行政システム改革班の班長としての準備に取り掛かれないということなのだな…と理解して、私は言うとおりに黙って指示を待つこととした。私が配属される新設の「行政システム改革班」は、その名から推測すれば、前向きで建設的な仕事に専念するチームに違いない。旅費問題対応のような"汚れ事案"の後始末とは無関係であり、行政調査員は、私を始めとする班への転入者を受け入れる前に、旅費問題をきれいさっぱりにしてくれるのだろうと考えて疑わなかったのだ。
 結局、年度末の3月の最終週になって、ようやく行政調査員から電話が来たが、新設となる行政システム改革班の仕事の内容は4月に入って新メンバーが揃った時に説明するというのみであった。私は、新設される組織なので"走りながら考えていく"ということなのかな…ぐらいに前向きに受け止め、出たとこ勝負で行くかと楽観的な気持ちになっていた。その後、地獄のような繁忙に巻き込まれるとも知らずに…。

(「人事課行革班1「異動内示後の放置にやきもき」編」終わり。「人事課行革班2「敷居が高く緊張の職場でよそ者扱いの船出」編」に続きます。)
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コメント一覧

グリーンデジタル
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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