こんにちは。
どんな1日をお過ごしでしょう。
ほっとひと息つきながら
おつきあいいただけたら
嬉しいです.。.:*
外出自粛期間中
少しずつ片付けをしています。
お裁縫箱の中をきれいにしていた先日のこと。
刺繍糸を手にとった時
ふっとIさんのことを思い出しました。
そして、次に本棚をきれいにしていると
以前書いた「野の花だより」が出てきました。
どんなことを書いてたかな?と
懐かしくめくっていたら
そこにはIさんのエピソード!
不思議(*˘︶˘*).。.:*♡
今日は少し長くなりますが
以前書いたIさんのお話を
させてくださいね。
.。.:*♡.。.:*♡.。.:*♡
「ししゅう糸」
先日、裁縫道具の整理をしました。
大きなガラス瓶に色とりどりの糸が無造作に入っています。
それを一度全部取り出して、
たらんと飛び出した糸を、くるくるっと糸巻に巻きつけたり、
くしゃくしゃになったししゅう糸の束をきれいに直したり。
そんな時間は不思議と安らいできます。
ふと「あぁ、このししゅう糸、Iさんがくださったものだなぁ。今、どうしておられるかなぁ。お元気ならいいなぁ」と
Iさんを想い起こしました。
Iさんは看護婦さん。
もうずいぶん前、長く入院していたことがありました。
そのときの担当の看護婦さんがIさんでした。
Iさんはきびきびとお仕事をされる凛々しい方でした。
今だから白状しますと、そのきびきび加減に、気の小さい私は、最初はおっかなびっくりでした。
けれども長い入院生活の中で、とてもあったかいIさんのお心にだんだん気づいて、だんだん好きになりました。
時々、夕食時に、診察のために病室を離れて、遅く戻ってくることがありました。
こういうとき、ベッドサイドに夕飯が置いてあります。
その中で、器に丁寧にラップがかけてあり、「おかえりなさい。温め直しますから、いつでもおっしゃってくださいね」と書かれたメモが添えてあることがありました。
こんな温かなお心遣いをくださるのは、きまってIさんでした。
メモを手に、優しさが沁みたことを、今でも懐かしく想い出します。
また、こんなこともありました。
手術以来、おおかた1年ぶりに自宅に一泊で戻ることになりました。
すると、手に包みを持ったIさんがベッドサイドに。
包みを開けてみると、中にはチューリップの球根。
それはそれはたくさん!
そして「今度の外泊で植えてきてくださいね。春には退院できるといいですね。退院して花に会えるといいですね」と書かれた手紙が入っていました。
今、想い出しても、なんだかじんとして涙がでてきます。
そのいっぱいの球根を、主人が土を耕して、ひとつひとつ植えてくれました。
そして春。
Iさんのお手紙どおり、私は家にいました。
縁側に座り、ひとつひとつのチューリップを、そして、チューリップにつどいたわむれる蝶やハチたちのいのちを、春のぬくもりの中で見つめたことを、懐かしく想い出します。
それから、こんなこともありました。
患者たちは、退院するときに、お世話になった看護婦さんにお礼を伝えたい・・と、心づくしの贈り物をしていました。
たいていの看護婦さんは「お気持ちをちょうだいします」と、そっと受け取ってくださっていたようでした。
が、Iさんは「病院の規則なので」と、どなたの贈り物も受け取られないと、人づてに聞いていました。
それでも私は、長い間本当にお世話になったIさんに、ささやかでもお礼がしたいなあと想い、
ベッドで編んだレース編みを「ありがとうございました」と、おずおずと差し出しました。
受け取ってもらえないかもしれないと思っていましたが、思いがけず「手づくりのものをいただけるなんて嬉しいです。ありがとう」と、とても嬉しそうに笑って受け取ってくださったのです!
話が大きくそれました。
そう、ししゅう糸です。
退院してしばらくした頃、私のもとに郵便が届きました。
中には色とりどりのししゅう糸が入っていました。
まるで、土や空や水や草木や花々や・・そんな自然の色をそっとすくいとったような色たちで、優しい気持ちがする糸ばかり。
いただいたチューリップの球根から、芽が出て、だんだんと育っていって、ついには花が咲いた・・その嬉しい情景を写真に撮って、Iさんにお送りしたのです。
するとIさんは「写真はお返しすべきでしょうが、とても嬉しかったので持っていたくて、いただかせてください。そのお礼に・・」と、たくさんのししゅう糸が、水色の画用紙に包まれて、ポストにふわり届けられたのでした。
どこまでもさりげなく、どこまでも優しいIさん。
私が歩いてきた道には、なんてたくさんの優しい顔、心が、そこここにあるんでしょう。
ガラス瓶にししゅう糸をそっとおさめながら、そんなことを想いました。
(2007年7月と日付があります)
.。.:*♡.。.:*♡.。.:*♡
書き写しながら、涙が出て、
鼻をくすんくすんしています。
20代の頃、病気をして、体も心もどん底だった時期のお話です。
年齢を重ねたことで、
Iさんのお心の豊かさや思いやりの深さが、改めて胸に沁みます。
(写真はフリー素材をお借りしました)
長いお便りになりました。
今日もお読みいただいて
ありがとうございました
みなさまに嬉しいこと
いっぱいありますように
ただただありがとう