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昼の部の「勧進帳」とともに、夜の部の「極付 幡随長兵衛」の海老蔵丈が素晴らしく
十二世の一年祭に相応しく将来の團十郎としての覚悟がみてとれる舞台だった。
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「矢の根」
松緑丈が曽我五郎を祝祭性豊かにおおらかにみせてくれて、田之助丈の十郎がさすが!
「極付 幡随長兵衛」
海老蔵丈はナイフの鋭さを感じるような凄味のある長兵衛で、
一人で水野邸に乗りこんでいくのも納得のスケールの大きさがあった。
そして妻子を思う情にも厚いところもしっかりみせ、
とくに長松を抱えて別れるところは情感豊かに泣かせてくれた。
時蔵丈のお時と男女蔵丈の出尻清兵衛が上手い。
亀三郎丈の極楽十三ら子分たちを次世代を担う若手が揃って居並ぶのも嬉しい。
菊五郎丈の水野・彦三郎丈の近藤が絶妙な加減で海老蔵丈を支えている。
「春興鏡獅子」
菊之助襲名の時は、とにかく愛らしかった弥生が、観る度にしとりとした風情がより増してきて
お祖父さまと重なるようなところもあった。
獅子になってからは、勇壮というより、この人の獅子は霊獣という神格性がある。
最後まで綺麗に円を描くような素晴らしい毛ぶり、幕が下りる直前の安定感のあるバランス
若い人たちの目覚ましい成長を感じることのできたいい團菊祭であった。
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