夏に書いたエッセイで~す
その8「昭和家族のお中元」
お世話になっている人に感謝の気持ちを贈
る「お中元」の季節がやってきた。
わたしの家にも、父宛にいろいろなお中元
が届いていた。
だいたい毎年どこからは何が来ると決まっ
ていて、フルーツの缶詰や水ようかん、クッ
キーやドライケーキの詰め合わせは子供心に
「当たり」、サラダオイルや石鹸詰め合わせ、
かつおぶしや海苔、スープの缶詰やかに缶な
どは「はずれ」だった。(親は逆だったよう
だが)
戦後は生活必需品を贈っていたようだが、
生活が豊かになるにつれ、少しよそいきで、
生活に彩りを添えるものに変わってきた。
贈り物が届くと、父が帰るのを待って母が
「あなた、お中元が○○さんから来たわよ」
といって、まだ開けてない包みを見せる。
「○○さん、いつも早いなあ。中は何?」と
聞くと、「貝新の佃煮みたいよ」といって母
は結わいてある紐を切り、箱をあけてみせる。
お菓子ではないのを察して、わたしが「あ
~はずれ!」というと、母は「こら!高いの
よ、上等なのよ、ここの佃煮。さっそくご飯
でたべましょう」といって、詰め合わせの中
から一つ選んで食卓に出す。
今半の牛肉のしぐれ煮などが届くと、父は
「今半の肉はうまいぞ。すき焼き、こんど行
くか。まあ、典子はわからないかもしれない
けどな。」などという。父に連れて行っても
らった浅草の今半のすき焼きは、ほんとうに
おいしかった。
家族の会話もはずむお中元の時期。夏休み
も近く、うきうきとしていたものだ。
お中元をいただくのも楽しみだが、贈るの
も楽しみ。デパートが好きな母は、今はない
池袋三越に6月に入ったら早々と出かけてい
って、ついでに自分で自分の家にもひとつ送る。
贈るものは毎年、決まっていて、変えない。
父に言わせると理由は2つ。好物を毎年楽
しみにしているということ、相手が品物をみ
て顔が思い浮かぶから。
また、記憶に残るのは、届いたらすぐにす
るお礼の電話。携帯もない、留守電もない時
代でも、ちゃんと連絡がついた。
「結構なものをいただきまして。お変わりあ
りませんか?」と、母がお礼の電話をかけて
る。子供から見ると、大人の会話だ。毎回毎
回繰り返される決まり文句。わたしは、ずい
ぶん大人になってから初めて使った。とっさ
に口をついて出た瞬間「あ、こういうことだ
ったのか。」と、腑に落ちた思いがした。
贈り合う習慣を、お互いにやめれば無駄が
ないといって、やめてしまう場合も多い。
確かにお金もかかるし、気も使う。
しかし、死者を迎えるお盆に対して、お中
元は生きていることを喜び合うという起源が
ある。贈る、いただく、楽しむ、会話するこ
とは、生きている確かな温かな思いを、お互
いに交わし合うということである。
(2011年8月6日)
お嫁にいってお中元贈る側になりましたが
いつも先にいただいてしまう不調法な嫁です・・・
ちゃんとしないとね~
その8「昭和家族のお中元」
お世話になっている人に感謝の気持ちを贈
る「お中元」の季節がやってきた。
わたしの家にも、父宛にいろいろなお中元
が届いていた。
だいたい毎年どこからは何が来ると決まっ
ていて、フルーツの缶詰や水ようかん、クッ
キーやドライケーキの詰め合わせは子供心に
「当たり」、サラダオイルや石鹸詰め合わせ、
かつおぶしや海苔、スープの缶詰やかに缶な
どは「はずれ」だった。(親は逆だったよう
だが)
戦後は生活必需品を贈っていたようだが、
生活が豊かになるにつれ、少しよそいきで、
生活に彩りを添えるものに変わってきた。
贈り物が届くと、父が帰るのを待って母が
「あなた、お中元が○○さんから来たわよ」
といって、まだ開けてない包みを見せる。
「○○さん、いつも早いなあ。中は何?」と
聞くと、「貝新の佃煮みたいよ」といって母
は結わいてある紐を切り、箱をあけてみせる。
お菓子ではないのを察して、わたしが「あ
~はずれ!」というと、母は「こら!高いの
よ、上等なのよ、ここの佃煮。さっそくご飯
でたべましょう」といって、詰め合わせの中
から一つ選んで食卓に出す。
今半の牛肉のしぐれ煮などが届くと、父は
「今半の肉はうまいぞ。すき焼き、こんど行
くか。まあ、典子はわからないかもしれない
けどな。」などという。父に連れて行っても
らった浅草の今半のすき焼きは、ほんとうに
おいしかった。
家族の会話もはずむお中元の時期。夏休み
も近く、うきうきとしていたものだ。
お中元をいただくのも楽しみだが、贈るの
も楽しみ。デパートが好きな母は、今はない
池袋三越に6月に入ったら早々と出かけてい
って、ついでに自分で自分の家にもひとつ送る。
贈るものは毎年、決まっていて、変えない。
父に言わせると理由は2つ。好物を毎年楽
しみにしているということ、相手が品物をみ
て顔が思い浮かぶから。
また、記憶に残るのは、届いたらすぐにす
るお礼の電話。携帯もない、留守電もない時
代でも、ちゃんと連絡がついた。
「結構なものをいただきまして。お変わりあ
りませんか?」と、母がお礼の電話をかけて
る。子供から見ると、大人の会話だ。毎回毎
回繰り返される決まり文句。わたしは、ずい
ぶん大人になってから初めて使った。とっさ
に口をついて出た瞬間「あ、こういうことだ
ったのか。」と、腑に落ちた思いがした。
贈り合う習慣を、お互いにやめれば無駄が
ないといって、やめてしまう場合も多い。
確かにお金もかかるし、気も使う。
しかし、死者を迎えるお盆に対して、お中
元は生きていることを喜び合うという起源が
ある。贈る、いただく、楽しむ、会話するこ
とは、生きている確かな温かな思いを、お互
いに交わし合うということである。
(2011年8月6日)
お嫁にいってお中元贈る側になりましたが
いつも先にいただいてしまう不調法な嫁です・・・
ちゃんとしないとね~