のりひめのひとりごと Monologue of Noriko

2012年からオーストラリアと日本を行き来しています。日常のいろいろを書いてます。

昭和家族のお中元★のりひめエッセイ

2011-09-29 18:36:08 | のりひめエッセイ
夏に書いたエッセイで~す


その8「昭和家族のお中元」

 お世話になっている人に感謝の気持ちを贈
る「お中元」の季節がやってきた。

 わたしの家にも、父宛にいろいろなお中元
が届いていた。
 だいたい毎年どこからは何が来ると決まっ
ていて、フルーツの缶詰や水ようかん、クッ
キーやドライケーキの詰め合わせは子供心に
「当たり」、サラダオイルや石鹸詰め合わせ、
かつおぶしや海苔、スープの缶詰やかに缶な
どは「はずれ」だった。(親は逆だったよう
だが)

 戦後は生活必需品を贈っていたようだが、
生活が豊かになるにつれ、少しよそいきで、
生活に彩りを添えるものに変わってきた。

 贈り物が届くと、父が帰るのを待って母が
「あなた、お中元が○○さんから来たわよ」
といって、まだ開けてない包みを見せる。
「○○さん、いつも早いなあ。中は何?」と
聞くと、「貝新の佃煮みたいよ」といって母
は結わいてある紐を切り、箱をあけてみせる。

 お菓子ではないのを察して、わたしが「あ
~はずれ!」というと、母は「こら!高いの
よ、上等なのよ、ここの佃煮。さっそくご飯
でたべましょう」といって、詰め合わせの中
から一つ選んで食卓に出す。

 今半の牛肉のしぐれ煮などが届くと、父は
「今半の肉はうまいぞ。すき焼き、こんど行
くか。まあ、典子はわからないかもしれない
けどな。」などという。父に連れて行っても
らった浅草の今半のすき焼きは、ほんとうに
おいしかった。

 家族の会話もはずむお中元の時期。夏休み
も近く、うきうきとしていたものだ。

 お中元をいただくのも楽しみだが、贈るの
も楽しみ。デパートが好きな母は、今はない
池袋三越に6月に入ったら早々と出かけてい
って、ついでに自分で自分の家にもひとつ送る。
贈るものは毎年、決まっていて、変えない。
父に言わせると理由は2つ。好物を毎年楽
しみにしているということ、相手が品物をみ
て顔が思い浮かぶから。

 また、記憶に残るのは、届いたらすぐにす
るお礼の電話。携帯もない、留守電もない時
代でも、ちゃんと連絡がついた。

「結構なものをいただきまして。お変わりあ
りませんか?」と、母がお礼の電話をかけて
る。子供から見ると、大人の会話だ。毎回毎
回繰り返される決まり文句。わたしは、ずい
ぶん大人になってから初めて使った。とっさ
に口をついて出た瞬間「あ、こういうことだ
ったのか。」と、腑に落ちた思いがした。

 贈り合う習慣を、お互いにやめれば無駄が
ないといって、やめてしまう場合も多い。
確かにお金もかかるし、気も使う。
 しかし、死者を迎えるお盆に対して、お中
元は生きていることを喜び合うという起源が
ある。贈る、いただく、楽しむ、会話するこ
とは、生きている確かな温かな思いを、お互
いに交わし合うということである。

(2011年8月6日)



お嫁にいってお中元贈る側になりましたが
いつも先にいただいてしまう不調法な嫁です・・・
ちゃんとしないとね~

言わないのが親の愛★のりひめエッセイ

2011-09-28 18:33:50 | のりひめエッセイ
夏に書いたエッセイを掲載してます~

その7「言わないのが親の愛」

 終戦記念日が近い。毎年両親から戦争の頃
の話をきく。私の両親は昭和7年と8年生ま
れ。終戦のときは14~5歳だったので、戦
争中の記憶がある。

 母は西宮に住んでいて、大空襲の被害から
は道一本で逃れることができた。食べるもの
がなく、鍋釜鉄製品も国に持っていかれ、い
ものつるとか大根のごはんを食べたが、お弁
当のある子はまだましだったという。

 食べ物がないので、母の母(祖母)が着物
を持って農家にわけてもらいにいく。だんだ
ん着物がなくなって、上等な紬の着物もつい
にいくらかの野菜に化けた。

 一方父は、満州に移住していた引き上げ組
だ。紳士服地の商売を現地でしていた家で、
引き上げのときは兄弟姉妹の7人と父の母と
命からがら引き揚げ船に乗ってきた。

 いざ引き揚げのときに、父の母は、肉を味
噌で塩辛く煮て、ひとりひとりに持たせた。
「人にあげたらいけない、自分で持って、すこ
しずつ食べなさい」といったそうだ。

 引き揚げ船ではご飯もでない、たいそう劣
悪な状況だ。人がいっぱいなのではぐれるか
もしれない。「とにかく生き延びて日本に戻
る」それが祖母の強い願い、いや意思だった
のだろう。

 ところがこれらの繰り返し話される話を、
わたしは祖父祖母から直接、ついぞきいたこ
とがなかった。大変な自己犠牲をはらって子
供たちを守ってきたのは間違いない。子供た
ちはそれをよく覚えているので、それを自然
に語りついでいる。

 母が昨年から脳梗塞で倒れ、その後すぐ肺
癌の手術をした。昨年の夏は家族中が震撼と
した。 麻痺は残ったが幸い命はつながり、
現在は家で父が介護している。

 買い物好きな母だったが、一年以上スーパ
ーにさえも出かけることができなかった。こ
このところ、散歩がてら近所の大型スーパー
にも車椅子と歩きで行けるようになった。

 次はデパートだと、父は介護タクシーを予
約した。「好きなもの買っていいから行って
来なさい。ただし上等なものを買っていいご
飯を食べるように」父から母へのプレゼント
だ。私を姉は強制的に同行することになった。

 普通の年金生活なので、上等な、といって
もたかが知れている。せいぜいブラウス一枚
と、デパ地下で父の好きなおつまみを買って
くるぐらいだろう。

 戦争を通り過ぎてきた両親、雪崩のように
いやおうなく時代に流されるときもあった。
人生を大きく揺さぶられる体験したからこそ、
親の愛を理解して子供につなぎ、生涯の伴侶
を愛しぬく強さがある。

 父も母も「自分はこれを子供たち・伴侶に
してやってきた。あのときも、このときも」
などと、決していわない。それが愛なのだ。
近頃になってやっと少し理解できるようにな
ってきた気がする。

(2011年8月3日)



後日談です~

このあと念願のデパートにいきました!
予算5万円ということで
クレージュスポーツでかわいい色のTシャツや
動きやすいパンツを買い、
ミセスのフロアでお気に入りのシャツジャケットを見つけ
一階でヨネックスのウォーキングシューズをゲット
総額5万円きっちりのお買い物(食事代なし)

ブラウス一枚の時代もあったのに
自由奔放な老人になった母なのでした・・・
まあ 一年ぶりだもんね 嬉しかったみたいです♪

車椅子でも買い物欲はばっちり、
家にかえって並べて組み合わせを吟味しご満悦
デイケアにいってみんなにほめられて
嬉しそうに話してるのをみて、
父も嬉しくなっちゃったみたい

やっぱりアツアツの夫婦だわ♪

その後もたまにデパートにいってショッピングしてます。

引き出しは人生の宇宙★のりひめエッセイ

2011-09-28 15:09:52 | のりひめエッセイ
のりひめの1200字エッセイ掲載中で~す

「引き出しは人生の宇宙」

 あなたの居間の引き出しはなにが入ってい
ますか?

 わたしの20年来愛用している引き出しは、
ホームセンターで買った黒い3段の事務用引
き出し。自宅だけでも8回引越ししているが、
ずっと使い続けている。
 一番上には、爪きり、耳かきや、画びょう、
セロテープなどの文房具。2段目は内服薬、
3段目は外用薬である。
 この中味は、ほぼ変わらない。私はコンタ
クトなので、朝と夜はメガネをかけなければ
なにも見えないのだが、それでも必要なもの
はみつけられる。安っぽいので、引越しのた
びに買い換えたいと思うのだが、リビングの
どこかにすっとおさまり、日常に溶け込んで
役にたっている。

 吉祥寺にいたときには、作りつけの家具が
あり、そこにも引き出しがあった。しかし、
一番使うものは、黒い引き出しに入っていた
ので、そこには二番手の大事なものがしまわ
れた。次の引越しのときに、ダンボールに入
れられたそれらは、ダンボールのまま、次の
引越しまで開けるられることはなかった。

 先日実家に帰って気がついた。実家の引き
出しも同じものが収納されている。一番上の
段は、わたしの引き出しの中身とほぼ同一だ。
 ついでにたんすものぞいてみた。下着、靴
下、Tシャツ、そのほかの衣類の分類も、同
じである。勘であけてみても、すぐに探して
いるものが見つかる。

 夫の実家の母の引き出し。これも一番上が
文具だが、2段目3段目は書類が入っている。
薬は別の場所にしまってある。

 夫の引き出しと夫の母の引き出しはよく似
ていて、十分なあきスペースがあり、きちん
と区切って行儀よく整理されている。
 対して私と私の実家の引き出しは、分類は
されているが、入れ方が適当だ。引き出しの
中ではものが自由にただよっている。多くな
ったらいらないものを捨てる。

 引き出しというのは、その人の暮らし、生
きてきたにおいが染み付いているものではな
いか。親の世代、その親の世代から脈々と受
け継がれた伝統があるのではないか。何世代
かさかのぼっても同じ配置だったりして。

 引き出しになにかをしまうことは、自分の
人生の小さなダイジェスト版をしまうことな
のだ。

 居間の引き出しは公共の場所だが、オフィ
スの引き出しは、かなり私的だ。
仕事の書類や必要な文具とともに、自分だけ
のものがひそんでいる。飴、胃薬、使いやす
い修正液、綿棒や糸ようじ、書きかけの手紙
や、誰かに渡そうとしている誕生日カード、
家族の写真など。あなたの写真もだれかの引
き出しにそっと入っているかもしれない。

 ひとりひとりの人生がちょっとだけ詰め込
まれた引き出し。小さなものたちの集合に、
人生の宇宙が映し出されている。

(2011年7月31日)

電卓たたいて口実を考える★のりひめエッセイ

2011-09-27 11:07:51 | のりひめエッセイ
のりひめ1200字エッセイその5
「電卓たたいて口実を考える」

 さして壊れていなくても、ものを買い換え
たいときがありませんか?

 とはいえちょっと良心がとがめてしまう…。
そんなとき、「買い替えの口実」が必要だ。
 ちょっと電卓をたたいみて、一日あたり使
用料金を出してみてはどうだろう。
 実は私も今買い換えたいものがある。ジュ
ーサーだ。毎朝ジュースを飲んでもう4年半
になる。非常に体の調子がよいので、習慣に
しているのだが、洗うのが面倒なのが難点だ。

 最近、洗うのが楽なジューサーを発見した。
これは欲しい。

 今のジューサーは1万円ほどで購入したも
ので、最近は音がやたらうるさく、洗っても
果物の色素がとれなくて、内側が茶色くなっ
てしまった。ジュースを受ける容器も壊れて
代用品をなんとか使っている。でもあと一年
くらいは使えるかもしれない。悩むので電卓
をたたいてみる。

 1年のうち旅行に行くこともあるので、3
00日使用すると考えるとすでに1350回
は使っている。一回あたり、7円40銭である。
 ここまで使えば、使い切ったと考えてよい
のかなと思う。よし、買い換えよう!

 家具や家電にはこの考え方はよさそうだ。
 10万円で買ったソファセット、4年で処
分を考えたとき、どう考えるか。
 使用料金を計算すると一年あたり2500
0円、一日あたり70円、一ヶ月あたり20
83円だ。一回の安居酒屋の飲み代と考えれ
ば、そう高いものではない。買い換えてもよ
いのではないか?

 さて、「買わない口実」というのもある。
 キャンピングカーが最近ブームだ。昔は1
000万円くらいのものしかなかったが、最
近は一般駐車場に入る小型の車両も出てきて
いる。かなり小さいもので300万円、そこ
そこで600万円ほどで買える。1000万
を松、600万を竹、300万を梅とすると、
「竹」を選んでしまうのが心情。だから、こ
の600万円モデルが大人気なのだ。

 キャンピングカーはアウトドア好きには夢
が広がる車だ。展示会などにいけば、それこ
そ買いたい欲求は高まっていく。

 では、キャンピングカーで何回旅行に行く
か考えてみよう。春夏冬の休みに出かけたと
して、各6泊ずつと仮定して18泊。気候の
よい春秋の週末などに8泊と考えると、計2
6泊。600万円を泊数で割ると、一泊23
万円だ。家族4人で1人5万円の計算になる!
5年間このペースで乗れば、一人一泊1万3
千円。たまにはホテルに泊まりたいとか、旅
行は友達と行くといわれない限りは。

 かくいう私の家にはキャンピングカーがあ
る。夫婦二人で乗るから一泊あたりのコスト
は3年目の今でもセミスイートルーム級だ。
買わない理由と買いたい理由のせめぎあいで、
買いたいという思い=感性が電卓という理性
に勝った結果である。

(2011年7月30日)

後日談
この文章を書いてジューサーを買いました
自分を説得してどうする・・・

でも買い換えたらとってもよかったです^^

それからキャンピングカーで旅行にきました
使わないともったいないですからね

どこまでも小市民ですみません・・・。

引越し中毒★のりひめエッセイ

2011-09-26 14:39:13 | のりひめエッセイ
転勤もないのに結婚6年で引越し6回、通算10回
次の引越しはきっと近い未来・・・


その4「引越し中毒」

 引越しを、何回したことがありますか?
 かの葛飾北斎は93回引越しをしたが、日
本人の生涯引越し回数は3回をわずかに超え
る程度だそうだ。

 わたしは結婚して6年、引越しを6回した。
 自営業なので、転勤による引越しではなく、
自宅の引越しと事務所の引越しである。
 それぞれの引越しに理由はあるのだが、
「引越し」となると夫婦二人でわくわくして
しまうので、ついつい回数が多くなる。

 引越しの一番のお楽しみといえば、知らな
い街、知らないお店。生活圏は車で動くにも
電車で動くにしても知れているので、ひと駅
引っ越すだけでも、見える風景は全く違う。

 そしてなにもない部屋。持ち物を配置する
前のがらんとした部屋は、きれいにリフォー
ムされている。この新しいキャンパスに自分
たちの思うような生活を描いていくのだ。

 とはいえ、引越しそのものは大変な労力が
伴う。引越し会社に梱包荷ほどきをたのむの
でなければ、自力でやるしかない。

 いままで住み慣れた家があっという間にダ
ンボールで埋まっていく。ためこんだものの
多さに愕然とする。一日中立ち働いて体はぼ
ろぼろ。前日になれば、最後に使う食器だけ
出して冷蔵庫の中味の処分に頭を悩ます。

 引越し業者が到着すると、いままで3日か
けてつめこんだダンボールを、あっという間
にはこびだしていく。ダンボール100個あ
っても、大型の冷蔵庫や洗濯機、家具類も含
めて2時間とかからない。このすばやさに、
なにかすこし残念なような気持ちがしながら、
最後の最後に残った荷物が意外に多く、紙袋
にかき集める。

 引越し先に移動すると、またまたすごい勢
いで荷物が運び込まれる。山になった荷物は
しるしがあっても、なにがなんだかわからな
い状況だ。とりあえず、食卓テーブルの周り
だけスペースを確保し、テレビをつけて一息。
晩ご飯は、新しい地での初めての外食だ。

 引越しするとたくさん捨て、買う物も増え
る。
 カーテンはそのまま使えたためしがないの
で、新しい寸法のものに。間取りが変わって
エアコンが必要になり、食器棚、ソファ、テ
ーブルを買い揃えたり、洗濯機も乾燥機つき
にしたり。家具家電の選手交代だ。

 地デジ化にともない、テレビをパソコン兼
用にして、無料のインターネット電話スカイ
プで、英語やギターのレッスンが、リビング
で可能になった。夫はそのパソコンを使って
念願の作曲編曲をするために、音楽コーナー
を設置した。趣味も勉強も一歩前進。

 引越しするたびに、居心地のよい住まいに
なってきたし、仕事も効率化してきた。こん
な部屋にしたいというささやかな夢がかなっ
たり、人生の目標に一歩近づいたり。

 わたしにとって引越しとは新しい人生の扉
を開ける刺激的なイベントだ。当分やめられ
ない。
(2011年7月28日)  


後日談
4月に引越ししたばっかりなのに
友人が11月に引越しするというのをきいて
夫婦してまた「引越しっていいよね~」
とわくわくしてしまった
なんなんでしょうね まったく・・・

おそるべしパワー!社会人バンド★のりひめエッセイ

2011-09-26 12:11:46 | のりひめエッセイ
その3「おそるべしパワー!社会人バンド」

 バンド活動というと、若者の文化のような
イメージがあるかもしれないが、大人、いや
おやじバンドが今静かなブームである。

 平均年齢40歳以上のおやじバンドが熱き
闘いを繰り広げるNHK主催の「熱血オヤジバ
トル」。昨年で14年目を迎え、毎年数百組の
応募があるという。
 ほかにも札幌、仙台、墨田などで行われる
ジャズフェスティバルにも、社会人のアマチ
ュアバンドが広域から参加している。その年
齢層は30代から70代と幅広い。

 社会人バンドは、学生バンドに比べて、時
間はないがお金がある。40代にもなれば、
旧友たち昔とった杵づかで、青春再来である。

 都内のライブハウスも、プロを呼ぶより人
が集まるのが、社会人アマチュアバンドライ
ブだ。出演料どころか、チケットノルマがあ
っても、大きなスピーカーと舞台があれば喜
んで演奏する。ふだんがらがらのライブハウ
スも、アマチュアバンドデーは満員になる。

 ライブハウスの仕組みについて、少しだけ
説明しよう。アマチュアバンドライブは、1
バンド30分程度の演奏で、4、5組から1
0組ほど出演する。ライブハウスは通常プロ
が出演していても、イベント日を作ってアマ
チュアバンドの出番を作るのだ。

 出演バンドは、15枚から25枚ほどのチ
ケットノルマが課せられる。一枚千円から千
五百円で、お客様を呼べたら、それでよし、
呼べなかったら呼べなかった分をバンドで負
担する。千円のチケット15枚がノルマなら
1バンドの負担は一万五千円、5人グループ
なら一人三千円だから、お客が一人もこなく
てもスタジオで練習するより安いくらいだ。
 しかし本番にはお客がいて欲しいもの。ど
のバンドも実に頑張って人を呼ぶ。先日、六
本木の老舗ジャズライブハウスでのアマチュ
アコンサートは、5バンドで、観客数が百名
を軽く超え、超満員となった。

 社会人バンドマンは、楽器にはこだわって
いいものを持つ。プロについてレッスンもす
る、仲間を集め、スタジオを借りて練習に励
み、本番ともなれば衣装を用意。さらに身内
はチケット代を自分で出して招待、終わった
ら打ち上げと、かなり活発な消費行動をとる。
最近は晩婚だが、バンド活動が縁で結婚する
人もいる。地元近郊にとどまらず、地方のフ
ェスティバルに遠征もする。

 不況不況といわれるが、不況の荒波真った
だ中の世代の人たちが、バンド活動のときだ
けはそんなことは忘れ、けちけちせずに時間
もお金もエネルギーもかける。それが社会人
バンドのパワーだ。

 メールやSNS、ネットゲームなどの、顔
を会わせないコミュニケーションが普通とな
っている世の中だが、顔を合わせて音楽とい
う非言語コミュニケーションをし、人を集め
て盛り上がり、人生の喜びを創造してどんど
んお金を使う。日本の未来はそう暗くない。
(2011年7月27日)

監獄でナンバーワン★のりひめエッセイ

2011-09-25 18:28:07 | のりひめエッセイ
その2「監獄でナンバーワン」

 「患者様、ご入院で~す」
 まつげもしっかり盛ったミニスカートのナ
ースが、出迎える。
 「一番具合の悪い方は?」との問いに、一
歩前に出ると、ナースは1メートルもある大
きな注射器をもちあげる。
 「ちくっとしますよ」といわれ、首をすく
めてこわごわ手を差し出すと、甲にぺたんと
スタンプが。

 「うそで~す」
 「な~んだ」ばかばかしくもほっとする。

 ここは渋谷の円山町、アルカトラズE.R.と
いう居酒屋である。

 わたしは、この居酒屋に自分では累計15
0名以上連れて行っている。
最大人数は40名程度、だいたい8名から2
0名で、月に1回くらい通っていた。

 さて、注射が終わったら手錠をかけられ、
間接的にミニスカナースと手をつないだよう
な状況で、歩き始める。
 おどろおどろしい人体標本などが並んだ実
験室のような通路をぬけると、そこは監獄。

 お客の人数に応じて、2名から40名ほど
収容できる、檻のような個室が並んでいる。
手術着のウェイターとナースが、注文をとる。
 メニューも念の入ったもので、「しびんビ
ール」(リアル!)や、試験管に入った何種
類ものカクテル、さらに「正露丸」というメ
ニューは大きな海苔に丸く包まれたマグロの
たたきで、ソースが赤い。

 きわめつけは、21時から始まるショータ
イム。おもちゃの銃を持った手術着のウェイ
ターが、迫力たっぷりに、がちゃんがちゃん
と各個室を開けて、逃げた囚人を探し周り、
お客の一人が通路に引き出され、衆人環視の
中、ミニスカナースにおしりに注射をされる。

 お客のグループには必ず初めて来店する友
人がいて、連れてきた人は、反応をみるのが
楽しみだ。こんな人もいる。

 「いま俺、アルカトラズにいるんですよ」
 と、長野の20代の農業青年が電話をして
た。彼を誘って2年位前にこの店にいった。
 「全部で50名で来たんです。」
 20代の農業青年たちが、大いに盛り上が
っている中、声を枯らして電話をくれた。

 お店の魅力は、いかがわしさだ。とはいえ、
まじめな人でも乗りやすい軽さがある。
 接客のセリフまで一貫している。
 トイレに行くと「検尿、お疲れ様でした。」
帰りは「ご退院、おめでとうございます。」
 入店してから退店するまでのストーリー、
起承転結もわかりやすい。

 通っていたときは、ビジネスセミナーの懇
親会後の二次会で行っていた。「手錠の会」
なるものまでできて、セミナー受講生さんの
活性化に大いに貢献してくれたお店だ。

 ついつい話題にしてまた新しい人を連れて
行ってしまうこのお店、わたしの中では「居
酒屋ナンバーワン」である。
(2011年7月26日)

選挙前だけ挨拶に来るな★のりひめエッセイ

2011-09-25 09:40:13 | のりひめエッセイ
1200字のエッセイ連載はじめます
まえに20個くらいかきためたものをアップしますね
コメント大歓迎です^^

その1「選挙前だけあいさつに来るな」

「こんにちは。弘幸君いますか?中学のと
きに同級生だったM川です。」
 市議選まであと数日という時期。わざわざ
たずねてきてくれたM川君を、夫は歓迎し、
久々の会話が弾んだ。

 彼が帰ったときに夫に様子をきいた。
 「それがね、選挙に出るんだって。ついで
に新聞まですすめられたよ。」
 20数年ぶりの再会、アポイントもなく平
日訪ねてきて、4時間の滞在の用件がこれで
ある。

 日ごろのコミュニケーションもなく、急に
頼みごとをされて、気持ちの良い人はどれく
らいいるだろう。しかし、ビジネスの場面で
も同じようなことが頻繁にあるものだ。
 アポもなしに訪ねてくる保険屋、銀行員、
 しつこく電話をかけてくるインターネット
モールや投資の勧誘…。
 こうしたものへの対応に、余計な時間を費
やす羽目になった経験のある人は多いのでは
ないだろうか。

 ビジネスにしても、選挙活動にしても、話
しかけをした相手に喜んで応援してもらうた
めには、相手の気持ちにすっと入り込む手順
が必要だ。

 マーケティングの基礎用語に、消費者心理
を表す「AIDMA(アイドマ)」という言
葉がある。AはAttention(注意・注目)、
IはInterest(興味)、DはDesire(欲求)、
MはMemory(記憶)、最後のAはAction(行
動)である。
 何かを購入する、あるいは誰かに協力する
意思決定する場合、そこには心理的な段階が
あるというわけである。

 では、選挙活動M川君を例にとってみよう。

 M川君「俺今度、市会議員に出るんだ」
 夫  「ふうん、すごいね」夫は(Att
ention/注意、注目)をした。

 M川君「あとさ、新聞とってくれない?」
 夫  「・・・・・・・・・。」(絶句)

 夫はM川君に対して、注目することはした
が、興味を持ち欲求を持って行動に起こそう
という段階をふまないまま、意思決定をせま
られた。もうお分かりだと思うが、心理的な
段階を無視した、乱暴なコミュニケーション
を、M川君はしてしまったのである。
だから夫は絶句するしかなかったわけだ。

 もしかしたら、事情を聞いたら思わず、
 「わかった!協力するよ!」という展開も
こともあったのかもしれない。
 人に話をするときに、心理的な段階をふま
えているか無視しているかで、相手のとらえ
方は大きく違うもの。初対面や疎遠にしてい
た相手なら、丁寧に慎重に作戦をたてるべき
だ。

実はこのAIDMA、会話だけではなくメー
ルなどの文章や、様々なコミュニケーション
の質の向上にとても役立つ。まだ試していな
い方は、一度お試しを。

(2011年7月22日)