のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『葛飾北斎展』

2007-10-22 | 展覧会
小平次!
小兵次!
念願の小兵次に会うことができました。
中田小平次じゃございませんよ。
こはだ小平次でございます。

ひひひ...


と いうわけで『葛飾北斎展』へ行ってまいりました。
(それにしてもリンク先↑のやる気のなさったらどうでしょう)
天才ほくさいさんのおそるべきデッサン力とデザインセンス、そしてユーモアを堪能してまいりましたとも。
小平次さんは連作『百物語』のうちの一枚でございまして、本展にはこの他二点(これこれ)が展示されておりました。

骨ばかりの両手で蚊帳を押し下げ
沼のような暗闇から、ぬたりと顔を出す小平次。
その恨みがましい視線の先には、妻のおつかと、その情夫で小平次を殺した太九郎(左九郎)がいるはずでございます。
のろが「ラジオ名人寄席」で聞いた怪談「生きている小平次」では、
たしかおつかと太九郎が夫婦で、情夫が小平次だったと思いますが
まあとにかく、三角関係のすえ小平次が殺されるんでございます。
ところが、殺されたはずの小平次が、二人につきまとうんでございますね。
頭を切られ、喉を切られ、沼に沈められてもなお。殺しても、殺してもなお、生きている。
コワイですねえ。
コワイですねえ。

ほくさいさんが描いた小平次はもうすっかり死んで怨霊と化しておいでのようですが
すっかり骨ばかりの姿になりきらず、肉色を残している所が恐ろしうございますね。
画面手前にはずるずると長く引き延ばされて揺らめく炎。
骨ばかりの頭にも、赤黒い炎がまとわりついております。
風の吹かない、じっとりと淀んだ空気と、小平次の恨みの深さを思わせる造形ではございませんか。

しかし恐ろしいばかりの絵かというとそうでもございませんで
むしろ「提灯お岩」同様、ユーモラスな雰囲気もございます。
小平次はにんまり笑っている表情にも見えますし
ポーズもおずおずとしていて、なんだか可愛らしうございます。
こへいじ。
こへいじ。
こへいじ。
ほーら、だんだん可愛く思えて来たでしょう。

とまあ、ひととおり小平次語りをさせていただきましたが
本展の目玉はやはり肉筆画でございましょう。

完成作品もよろしうございますが、画稿も興味深く拝見いたしました。
こう、ナマ、と申しますか、直、と申しますか、完成された作品、特に浮世絵よりもはるかに直接な感じがして
ちょっとどきどきいたしますね。
このを描いた一本の筆の、反対側の端にはほくさいさんの手があったか、と思うと感激もひとしおでございました。

肉筆画は浮世絵と違っていわば一点ものでございますから、そういつでも見られるもんじゃございません。
会期は長くはございませんが、この機会にぜひお運びんなることをお薦めいたします。

えっ
遠くて行けない?
そうですか。そりゃあ残念でございましたねえ...
ひひひ...